本日も晴れ、鎮守府に異常無し《完結》   作:乙女座

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遅くなりました




旅行 パーキングエリア

「憲兵さんこれどうぞ」

 

隣の蒼龍が某シェアしてハッピーなお菓子を差し出してくる。憲兵はありがとうございますと受けとる。蒼龍は憲兵の膝の上に座っているヲ級と足元のイ級ブラザーズにもお菓子を渡す。ヲ級は棒状のシェアハッピーなお菓子を嬉しそうにほうばる。シェアしてハッピーはおいしい。

 

「ありがとうございます」

 

「いえいえ、それにしてもヲ級ちゃんは憲兵さんに本当になついていますね」

 

蒼龍は憲兵の膝の上にいるヲ級の頭を撫でる。気持ち良さそうに目を細めるヲ級。後ろからなんで私の時は逃げるのに!とビッグセブンが悔しがっている声が聞こえたが聞こえない振りをする。

 

「ねぇ憲兵さん」

 

蒼龍と話をしていると後ろの座席にいた赤城が顔を覗かせていた。

 

「何でしょうか?」

 

「お腹が空きました」

 

にっこりと微笑む赤城。憲兵はいそいそと鞄から何かを取り出した。そして赤城に取り出したものを渡す。

 

「おにぎりです。加賀さんと分けてください」

 

「中身は?」

 

「鮭です」

 

「気分が高揚します」

 

憲兵が作ったおにぎりを食べる一航戦の二人。それを見ていた提督。食べてみたいなぁと思う反面、台所に立つ憲兵を想像する。

 

『小雪…朝ごはんが出来てるよ』

 

『ほっぺたにごはんがついてるよ』

 

「最高じゃない!!!!」

 

「うお!びっくりした」

 

「なんだ!敵襲か!」

 

突然叫んだ提督に近くで窓の外をワクワクしながら見ていた天龍が驚き、寝ていた木曾も目を覚ました。

 

 

パーキングエリアに止まり少しの休憩を取る艦娘達。憲兵はトイレで用を足しバスに戻ろうとする。すると近くに喫煙スペースを見つけた。

 

 

気がつくと手には煙草を持っていた憲兵。私はいつの間に煙草を……と困惑する。しかし禁煙をしてから早2週間が経ち久しぶりに口にした煙草に少し涙が出る。煙草を堪能しているとふと視線を感じその方向を見ると夕立が見ていた。

 

「…………何がいいですか?」 

 

「紫芋ソフトクリームっぽい!」

 

交渉が成立した瞬間であった。

 

 

パーキングエリア ベンチ

 

「ぽい~」

 

「ねぇ、夕立。それ……全部」

 

「買ったの?」

 

「すごい量……」

 

沢山のお菓子やジュースが入った袋を足元に置きアイスを食べている夕立に疑問を抱く時雨、村雨、白露。憲兵はげっそりした顔で近くのテーブルにいた。アイスだけでなくお菓子やらジュースをねだられてかなりの出費になった。煙草を買うよりお金が飛んだとなれば迂闊に煙草は吸えない。

 

「お疲れさまです。憲兵さん」

 

声をかけられ顔を上げると微笑む練習巡洋艦鹿島がコーヒーの入った紙コップを差し出していた。

 

「これどうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

受け取ったコーヒーを飲む。コーヒーの優しい甘さが口に広がるのが分かる。カフェオレなのだろう。すると今度はサンドイッチを差し出してくる鹿島。面倒見がいい彼女は以前の鎮守府から共に行動をする艦娘であり、憲兵としての仕事を始めてから艦娘に詳しい彼女に様々な事を教えてもらうことが多かった。異動してから1年経ったときに追いかけてくるかのようにこちらの鎮守府に着任したのだ。

 

「憲兵さん。ほっぺにケチャップが付いてます。じっとしててください」

 

「か、鹿島さん?」

 

ほっぺに付いていたケチャップを白い綺麗な指で拭き取りそのまま指を舐める鹿島。それを偶然見ていた暁があわわと顔を赤くしていた。

 

「……私は捕まりたくありません」

 

「大丈夫ですよ。憲兵さんは真面目ですから。それに………」

 

ずいと顔を近づけてくる鹿島に対し憲兵は後ろへのけ反る。

 

「私と憲兵さんの仲じゃないですか」

 

そう言って微笑む鹿島。ではまた後でとその場を後にする鹿島。憲兵は何時から彼女があそこまで変わったのかと頭を抱えていた。

 

 

 

 

 

「ひううう」

 

憲兵が見えてないところで顔を真っ赤にして悶える鹿島。彼女自身かなりの恥ずかしがりやなので本来はあのような大胆な行動はしなかったのだが姉である香取から授かった『男を落とす~香取著~』に書かれていたことを実践した。確かに憲兵のいつもとは違う顔を見ることが出来たが、かなり恥ずかしかった鹿島。

 

「わ、わ、わたしってば…………」

 

パーキングエリアでの休憩時間が終わるまでまともに憲兵を見ることが出来なかった鹿島であった。

 

 

 

パーキングエリアでの休憩を終え目的の海へと向かうバス。車内ではトランプ、ウノ等をして時間を潰す面々。憲兵はヲ級に本を読み聞かせていた。

 

「『ぼくはテトラのためになないろのはなをさがさないとだめなんだ。こわくなんかない!ぼくはおくびょうものだけどテトラをたすけるためなんだ!』」

 

物語は病気の少女の為に飼われていた青い鳥が人が入ることを許されない森へと入っていく場面である。ヲ級は物語に入り込み憲兵の袖をきゅっと握っている。

 

「こわくなんかない!こわくなんかないぞ!こうして青い鳥のアルバは禁じられた森へと入っていくのでした。続きはまた夜にしましょう。車酔いしてしまうので今はここでやめておきましょう」

 

ヲ級の頭を撫で今日はここまでにしようと言う憲兵。

 

「おい!いいところなんだからもっと話してくれよ!」

 

近くで聞き耳をたてていた天龍が続きを聞かせてくれと怒る。それをなだめる木曾。

 

「それにしても憲兵さんは読み聞かせるの上手ですね」

 

隣で聞いていた蒼龍は普段の憲兵から想像できない姿に驚いていた。

 

「まるでお父さんみたいですね」

 

「…そうですか」

 

そう言って僅かではあるが憲兵の顔に陰りが見えた。

 

 

 




沢山の感想ありがとうございます

就活もある程度落ち着いてきたので更新速度も少し上がるかな?

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