本日も晴れ、鎮守府に異常無し《完結》   作:乙女座

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遅くなりました




旅行 二日目 温泉 釣り

「け、憲兵さん!?」

 

タオル一枚の翔鶴。憲兵は何故彼女がここにいるのか理解できなかった。翔鶴自身もなぜ憲兵がここにいるのかを理解できていないのと、憲兵に無防備な姿を見られた羞恥により思考が停止していた。数秒沈黙が訪れるが先に行動したのは憲兵だった。翔鶴から視線を外す。

 

「申し訳ありません。今すぐ出ていきます。すみませんがタオルを巻いていないので向こうを向いていてもらえますか?」

 

「え、あ、ひゃい」

 

ばっと後ろを向く彼女を確認しタオルを腰に装備する憲兵。そしてそのまま翔鶴を視界に入れないように出ていこうとする憲兵。扉を開き出ていこうとした時だった。

 

「で、出ちゃうんですか?」

 

「当たり前です」

 

「見たところ入ってきたばかりなのでは?頭も濡れてませんし………そ、その私は気にしませんので一緒に入りませんか?」

 

「いけま………っ!」

 

「お願いします……憲兵さんとお話もしたいですし」

 

後ろから抱きしめられる憲兵。何としてでも出ないといけない状況だが抱きついてきた翔鶴を振りほどく術を知らない憲兵は硬直していた。

 

 

「成る程、女風呂が掃除中で仲居さんに男風呂なら今空いてるし入っても問題ないから入っていいと言われたんですね」

 

「は、はい………憲兵さんもまだ寝てると思って大丈夫だと……」

 

あの後なしくずしに一緒に温泉に入ることになり、湯船に浸かる二人。ヲ級はイ級ブラザーズと泡だらけになりながら体を洗っていた。翔鶴は話題を切り替えようと昨日の話を切り出した。

 

「それにしても昨日かなりべろべろになっていましたね。皆珍しそうにしていましたよ」

 

「申し訳ありません。ご迷惑を……他に何か失礼なことをしていませんでしたか?」

 

「いえ、特には……あ、比叡さんに酔っぱらって抱きついてました」

 

「……………それは本当ですか?」

 

憲兵の声が震えていた。比叡に抱きついた記憶がない。しかもかつての部下、しかも現役の憲兵に見られていた。艦娘保護法第20条、艦娘に対するわいせつな行為をした者に対する処罰が適用される行為なはずだと彼は考える。かつての上司だからと部下がみすみす見逃すことなどしない。憲兵隊は艦娘に危害を加える者が親や、兄弟、親友だとしても容赦なく捕縛する。冷酷な集団と言われる所以がこの憲兵隊の徹底的な捕縛体制、慈悲の1つもない事から言われる。

 

「比叡さんが気にしてないって言ってましたし、大丈夫だと思いますよ。憲兵さんの部下の人も憲兵さんなら大丈夫だって言ってましたし」

 

頭を抱える憲兵を見てくすりと笑う翔鶴。しかし、翔鶴はそれ以上に気になることがあった。

 

「あの……どうしてそんなに離れてるんですか?」

 

湯船には浸かってはいるが二メートルほど距離を空ける憲兵。

 

「気にしないでください」

 

「…どうしてそっぽを向いてるんですか?」

 

話しているときも憲兵は翔鶴の方を全く見ず明後日の方を見ている

 

「…………気にしないでください」

 

翔鶴は顔を少し赤くしそっぽを向く憲兵がかわいく見え少しだけいたずらをしようと肩が触れあうまで距離を詰めた。すると憲兵は離れていく。

 

「私の事嫌いですか?」

 

少し悲しそうにそう憲兵に問う翔鶴。

 

「ち、違います……翔鶴さんは女性としてとても魅力的ですし、その恥ずかしいと言うかなんと言いますか……お、お先に失礼します!」

 

かなり切羽つまっていたのであろう。顔を真っ赤にしながら立ち去っていく憲兵。少し残念そうに微笑む翔鶴だけが残された。

 

 

 

朝の事件から少し経ち憲兵は朝食をヲ級達と取っていた。すると隣失礼しますと赤城、加賀が座った。憲兵は昨日の事を謝罪する。会う艦娘すべてに昨日の事を謝罪する彼はホントに誠実なのだろう。

 

 

「大丈夫ですよ。憲兵さんにも酔っぱらいたいときだってあると思いますし」

 

「そうですね。気にしない方がいいですよ」

 

そう言って微笑む二人。謝罪したほとんどの艦娘も同じような事を憲兵に言っており笑って許してくれた。憲兵は少し泣きそうになりながら頭を下げる。

 

「おはよう憲兵さん!」

 

「おはようございます」

 

そこへ飛龍と蒼龍、そして後ろには瑞鶴と今朝温泉で一緒だった翔鶴がいた。翔鶴は今朝の事を思い出したのだろう。頬を赤くする。それにつられて憲兵も頬を赤くしていた。

 

「翔鶴姉どうしたの?顔赤いけど」

 

「な、なんでもないわよ」

 

感の鋭い瑞鶴。翔鶴と憲兵は内心ヒヤヒヤしながら朝食をとるのであった。

 

 

二日目の午前中は自由時間。海で遊んだり、町に出かけるなど各々好きなことをする。憲兵とヲ級、イ級ブラザーズは堤防でゆったりと釣りを楽しんでいた。ゆっくりと過ぎていく時間。波の音を聞きながら憲兵は手応えを感じリールを巻く。釣れたのは小さなアジだった。そのアジを見て彼は昔彼女と釣りをしたことを思い出していた。

 

 

 

『釣れた!えへへ……どう?釣れないってバカにしてたけど私だってやればできるんだよ』

 

『小さくないかい?』

 

『いいの!大きさは関係ないの!釣るまでの過程が大切なの!』

 

『……………』

 

『むぅ~』

 

 

 

あの時見せてくれた笑顔、膨れっ面。それを見ることは二度とできない。でも絶対に忘れない。忘れることなどできない。今でも彼が愛し続けているのは彼女だけなのだから。




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ちなみにこの小説が終わったら書こうと考えているものがいくつかあります。また活動報告に書きますのでよろしかったら見てください。

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