本日も晴れ、鎮守府に異常無し《完結》   作:乙女座

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遅くなって申し訳ありません

決して蟻から地球を防衛するゲームをしてたわけではありません…

今回のお話は憲兵さんが来て、半年ぐらいの時系列です


蒼龍の回想

彼はいつでも私たちの味方でいてくれる

 

そんな憲兵さんが好き…

 

無意識に目で彼を追ってしまう

 

彼の一つ一つの行動が愛しく思ってしまう

 

いつからだろう…彼を好きになったのは

 

 

 

 

 

彼と出会ったのは一年前。私が桜村鎮守府に配属された日のことです。初めての土地だったので私はその…恥ずかしいんだけど迷子になってしまいました。どうしようと途方に暮れている私に声を掛けてくれたのは彼でした。見た目が怖いので最初は助けてー!って叫んだりしましたっけ…

その後、彼は私の荷物を持ってくれて鎮守府まで案内してくれました。彼は時間になっても来なかった私を探しに来てくれたみたいなのです。この時は見た目は怖く無口。でも優しい人なんだなって印象でした。

配属されてから数週間経ち、ようやくここでの暮らしに慣れてきた頃でした。その日、私は初めての出撃でした。戦場に慣れるために出撃すると言うことで練度の高い電ちゃん、榛名さん、霧島さん、時雨ちゃんそして私。私はこの時自信に満ち溢れていました。二航戦として、立派に戦ってやる!って意気込んでました。でも敵を目の前にして私は動くことができませんでした。

 

『恐怖』

 

それが私を支配した。体が震え、目の前の敵に対して私は何もできないと思ってしまった。震え上がり、動けなくなった私を敵が見過ごす訳がなかった。敵の攻撃…しかもたった1発被弾しただけで大破してしまいました。震えしゃがみこんだ私を榛名さんが守り、電ちゃん達が敵を掃討していました。提督は通信ですぐに帰投するようにと言い、私は何もせずに鎮守府へと帰っていきました。この時の私は情けなくて…悔しくて泣きながら帰っていきました。

鎮守府の埠頭へ着いた私たちを待っていたのは提督でした。提督は私に大丈夫?早く入渠しないと大変!と気遣ってくれました。そして私が入渠するために歩いていたときに憲兵さんと鉢合わせしました。彼は俯いていた私にお疲れさまですと声を掛けてくれたのに…私はその時に、何もできなかったの!って泣きながら怒鳴ってしまい、そのまま彼の元から走り去ってしまいました。

 

 

その日の夜、私は眠れなくて外に出ていました。埠頭に座りぼーっと海を見ていた時、また彼に会ってしまいました。彼は隣よろしいでしょうか?と聞いてきたが私は昼間のこともあったので黙って頷きました。彼は隣に座り海を眺めていました。彼と私の間には会話は無くただ時間だけが過ぎていく。

 

「蒼龍さん」

 

「…」

 

「敵が怖いですよね」 

 

「…ッ!」

 

敵を思いだし震える身体。殺されるかもしれない恐怖。また深い海の底へと沈んでしまうかもしれないと思うと震えが止まらなかった。心の奥底にしまった筈の記憶が甦る。

 

「おかしいですよね…戦うために生まれた艦娘。しかもニ航戦が…」

 

「貴方は一人の女性、怖がって当然なんです。強がる必要はありませんよ」

 

すごく優しい声だった。それを聞き心を縛っていた何かが壊れ様々なものが溢れだしてきました。

 

「…死にたくないよ…怖いよ…もし沈んだらあの冷たい海の底に沈んでいくなんて…もうやだよ……」

 

 

「…」

 

ぼろぼろと溢れでる感情を言葉にしながら泣く私。すると彼はポケットからハンカチを取り出し私の涙を拭いてくれました。

 

「ここには私と蒼龍さんしか居ません。我慢しなくてもいいんですよ」

 

その言葉を聞き私は憲兵さんの胸に泣きついてしまいました。憲兵さんはわんわんと泣く私の背中を優しく子供をあやすようにぽんぽんと叩いてくれました。彼の優しさに包まれ、そのまま私は泣き疲れて眠ってしまった。その後憲兵さんが私を部屋まで運んでくれたらしいです。

 

 

 

 

初めての出撃から三日経ち、私は出撃しました。出撃する際に提督が手作りのお守りを渡してくれました。そして私も今回は着いていく!と言ってボートで着いてこようとしてましたが叢雲ちゃんに止められていました。

前回と同じ編成で海へと出る。そして偵察機から敵艦隊を発見したとの報告が入る。そして目の前に現れた敵を見て身体が震えた。

 

沈んだらまた暗い海の底…

 

怖い…

 

死にたくない…

 

 

 

そう思っていたときでした

 

 

 

 

 

 

 

『蒼龍ちゃん!がんばれええええええ!』

 

 

 

無線から聞こえたのは提督の声でした。そしてふとお守りを渡されたときに言われた提督の言葉、そして三日前の夜に話をした彼の言葉を思い出した。

 

 

『蒼龍ちゃんは一人ぼっちじゃないからね!』

 

『蒼龍さんは一人ではありません。他の艦娘や提督が付いていらっしゃいます』

 

そうだ。私は一人じゃない。

 

眼を開き敵を捉え、

 

弓を構える

 

 

「攻撃隊!発艦始め!」

 

 

敵を見事撃破した私を提督、そして一緒に出撃した皆が泣きながら喜び、私も泣いちゃいました。

私はあの人にも伝えたいと思い、いつも彼がいる正門まで走っていきました。そこにはやはり無表情で立っている彼がいました。

 

「お疲れさまです憲兵さん!」

 

「お疲れさまです。そしてお見事です蒼龍さん。貴方ならできると分かっていました」

 

「提督や電ちゃんたち、そして話を聞いてくれて…泣いてる私を慰めてくれた憲兵さんのおかげです…」

 

「私は何もしてません。ただ強い一人の女の子にハンカチを貸しただけです」

 

そう言って僅かではあるが優しく微笑んだ彼の顔を見て…

 

 

彼に…憲兵さんに恋をした…

 

 

 

 

 

 




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関係ないですがガンダム0083を久々に見て、ガトーを見て夕立しか出てこなかった

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