本日も晴れ、鎮守府に異常無し《完結》   作:乙女座

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ゲーム、アニメのサブタイトルなどで好きなのは

「黄金の秋」ターンエーガンダムより

「バカがヨロイでやってくる」ガン×ソードより

「死してなお輝く」メタルギアソリッドⅤより

ですかね…

まぁ、とりあえず本編どうぞ!


十五日目

9月◇日

 

朝 9時 鎮守府中庭

 

9月に入ったがまだまだ暑さが残る朝。憲兵はせっせと中庭の雑草を抜いていた。そんな憲兵と同じようにヲ級も雑草を抜いていた。イ級は雑草を食べていた。

 

「おはようございます憲兵さん」

 

後ろから声を掛けられ振り向いた先に居たのは吹雪だった。近くの物陰に提督と電の二人が様子を伺っていた。憲兵は吹雪にあいさつを返した後、しゃがみこみ作業を続ける。すると隣にしゃがみこむ吹雪。憲兵は特に気にする様子もなくただ雑草を抜いていた。

 

「1つ質問いいですか?」

 

「なんでしょうか?」

 

「憲兵さんの本名って何ですか?」

 

ピタリと作業をしていた手を止める憲兵。吹雪は地雷を踏み抜いてしまったのかと冷や汗を流す。

どうして私が…と吹雪は心の中で悪態をつき朝の出来事を思い出していた。

 

 

 

朝 8時 執務室

 

「憲兵さんの本名を聞き出す?」

 

提督に呼び出された吹雪に下された任務は憲兵の本名を聞き出すことだった。提督はゆっくりと頷きまるで重要な任務を言い渡すかのような雰囲気を醸し出している。

 

「憲兵さんが来て二年になります。それまでに様々なイベントで私たちは憲兵さんと仲良くなりました。でも…」

 

ぐっと拳を握る提督。秘書艦担当の電は黙々と資料を纏めている。

 

「憲兵さんの本名を知らないことに気づかず二年も過ごしてたなんて!私ってほんとバカ!」

 

 

いきなり叫ぶものだから電は何なのです?!と驚いていた。

実は憲兵隊など派遣される人物の資料は大本営が管理し、現場の提督などには彼らの情報は伏せられている。

提督達の仕事が光とすれば、憲兵は影の仕事。しかし徹底的に管理されている訳ではなく、名前や年齢は派遣された憲兵個人の判断で伝えられてもよいとされている。

ここの憲兵の性格から見れば教えなくても大丈夫と考えているのだろう。

 

「とにかく吹雪ちゃんへの任務は憲兵さんの名前を聞き出すこと!いい!?」

 

「ひぃ!し、司令官怖いです!わ、わかりましたからぁ!」

 

凄い気迫で吹雪に詰め寄る提督。吹雪は完全に震え上がっていた。

 

 

「憲兵です」

 

「……」

 

「…冗談です」

 

冗談を言っているのか言っていないのか分からない微妙な表情をしている憲兵。吹雪は教えてくださいよぉと憲兵の顔を覗き込む。物陰では少しばかり憲兵さんと距離が近いんじゃないかなと愚痴る提督。電は提督の袖をひっぱり早く執務室で業務を終わらせないとダメなのですと提督を執務室へ連れて帰ろうとしている。

 

「お願いします!」

 

「いいですよ」

 

「本当ですか!?」

 

「はい」

 

普通に教えてくれると言う憲兵。そして名前を言おうとした瞬間だった。

 

「憲兵さん!遊んでほしいっぽい!」

 

どこからか現れたのか夕立が憲兵の腕を引っ張り猛スピードで連れ去っていってしまった。ポツンと取り残される吹雪。物陰で見ていた提督はうなだれ、電は提督を引っ張っていた。

 

 

 

昼 13時 執務室

 

「夕立ちゃん…いいところで…」

 

「あの…資料に判子押してほしいのです」

 

執務室の机で唸る提督。吹雪はどうしてこんなことに…と内心泣いていた。すると執務室にノックの音が響く。

 

「HEY!提督!ティータイムするネー!」

 

入ってきたのは金剛だった。金剛に腕を引っ張られる提督。

 

「金剛ちゃん!お願いがあるの!」

 

「何ですカー?提督のお願いなら例え火の中水の中デース!」

 

 

「私もご一緒してよろしかったんでしょうか?」

 

「問題ないデース!一緒にティータイムを楽しむデース!」

 

提督、吹雪、電、そして金剛型の輪の中に居る憲兵。少し困った顔で椅子に座っている憲兵を見て微笑む榛名。比叡は憲兵にお菓子をよそっていた。

提督の次の作戦はお茶会をしながら聞き出す作戦だった。

 

「どうぞ憲兵さん」

 

「霧島さん…ありがとうございます」

 

霧島から紅茶を受け取る。憲兵は紅茶を少し飲みおいしいですねと感想を言いながらそわそわとしていた。

 

「…あの榛名さん」

 

「なんですか?」

 

「近いです」

 

「榛名は大丈夫です」

 

憲兵に肩が触れあうほどぴったりと引っ付いて座る榛名。

 

「…提督」

 

「何ですか?憲兵さん」

 

「近いです」

 

「私も大丈夫ですよ~」

 

反対側にはぴったりと引っ付く提督。憲兵は懐から胃薬を取り出し飲む。最近減りが早いのでまた買い出しの時に買わなければと考えていた。

吹雪はそれを見て、提督に耳打ちをする。

 

「司令官…名前聞き出さないと…」

 

「んーそれは後で…」

 

すっかり当初の目的を忘れている提督。ただ時間が過ぎていっていた。そんな時だった。

 

「そう言えば憲兵さん」

 

「なんでしょうか?」

 

「憲兵さんの本名って何ですか?」

 

比叡があっさりと聞いていた。それに反応する提督とその他の艦娘。電はスコーンをおいしそうに頬張っていた。

 

「そう言えば吹雪さんも聞いてきましたね…」

 

「は、はい!」

 

「先程は教えれなかったので教えておきますね…横山明弘と言います」

 

普通に教えてくれる憲兵。いい名前ですねと霧島が言い、ありがとうございますと憲兵も返事をしていた。名前を聞き出せて満足する提督。すると比叡がひらめいたと言わんばかりの顔をする。

 

「あ!なら明弘さんって呼んだ方が良いですか?」

 

えへへと笑う比叡だったが憲兵の手が止まった。

 

「……その、憲兵さんと呼んでもらった方がありがたいです…」

 

凄く寂しそうに、そして悲しそうな声色。

 

「すいません。少し用事があるので失礼します。金剛さん…スコーンと紅茶ありがとうございます」

 

 

そう言って足早に立ち去っていく憲兵であった。

 

 

 

本日の主な出来事

 

朝 

 

雑草を抜く。吹雪さんと話をする

 

 

 

金剛さんのお茶会に誘われる。

 

 

一言

 

駄目だ…比叡さんの声で名前を呼ばれるとどうしても彼女を思い出してしまう…こんな事では駄目だ。乗り越えたのではないのか私は……

 

最後に

 

本日も晴れ、鎮守府に異常なし

 

 

 

 

 

 

 

 

 




感想、評価、アドバイスなどよろしくお願いいたします

活動報告に少しのアンケートがありますのでよろしかったら見ていってください。

※修正をしました。

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