本日も晴れ、鎮守府に異常無し《完結》   作:乙女座

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遅くなりました

どうぞ!


十九日目

10月●◇日

 

朝 8時 執務室

 

10月の2周目に入り、美香隊員がこの桜村の鎮守府に慣れ

だしたこの日。美香隊員は提督に呼び出されていた。話したいことがあるからすぐに来るようにと言われ執務室へと急ぐ美香隊員。すれ違う艦娘達が彼女に挨拶をし、それに笑顔で元気よく挨拶を返す。

 部屋の前まで来た美香隊員は服装が乱れていないかを確認し、大きく息を吐く。

 

「提督、秋山研修隊員であります!」

 

ノックをし、中にいる提督に声を掛け返事を待つ美香隊員。部屋の中からどうぞと返事が聞こえたのを確認しドアを開け中に入る。提督が腰かけている来客用のソファーの向いに腰掛けるように言われゆっくりと腰を下ろす。すると電がお茶なのですと暖かいお茶を美香隊員と提督に用意し、テーブルに置く。美香隊員はおずおずとお茶を飲む。程よく暖かく少しの苦味がするのをゆっくりと飲む。すると提督がゆっくりと口を開いた。

 

「実はですね…来週に桜村ではお祭りがあるんです」

 

「お祭りでありますか?」

 

「はい。花火大会なんですが今回は美香さんにも参加してもらえるかどうかを確認しようと思って呼びました!」

 

お茶を飲む提督。美香隊員はこんな自分を気に掛けてくれることに喜びを感じていた。

 

「いいのでしょうか」

 

「いいんです!」

 

即答された美香隊員はふふふと笑う。それにつられて提督もえへへと笑い和やかな雰囲気に包まれる執務室。

 

「それにしても珍しいですね。この季節にお祭りとは」

 

「この村では毎年しているみたいです。なんでも桜村の昔話での記念日がそのお祭りの日らしいんです」

 

「昔話…でありますか?」

 

「はい…聞きたいですか?」

 

「聞きたいであります!」

 

 

 

昔、昔、この村は小さいながら豊かで活気がある村でした。そんな村をまとめていたのは臆病な村長で、村人は村長が臆病であることをバカにしていました。しかし、村長は村人から馬鹿にされていることに気づいていながらも村が豊かになるよう努力しました。

 そんなある日、この村に海から巨大な化け物が現れ襲ってきたのです。村人は化け物の恐ろしさに恐怖し、戦うこともできずただ逃げ回るだけだった。

 

「ここは通さんぞ」

 

怪物の前に現れたのは村長であった。手は震え、足も震えている村長の姿を見た化け物は大笑いしました。

 

「そんなに震えているお前なんぞに私が倒せるものか」

 

そう言って村長を吹き飛ばしました。そして村を壊そうと前進しようとする化け物の前にまたも村長が立ちはだかる。

 

「ここは…ここは村の人々が長い年月をかけて作り上げてきた村だ。それをお前のような化け物に破壊されてなるものか。私は臆病な人間だが、この村を見捨てて、村人を見捨てて逃げるような卑怯ものではない!」

 

何度吹き飛ばされようが、何度地面に叩きつけられようが立ち上がり化け物と戦う村長。ついに村長は化け物を倒すことができました。

 恐怖で震え上がり動けなかった村人が村長の元へと駆け寄りました。しかし、村長は微笑みながら死んでいました。村人は悲しみました。彼は臆病ではない、彼は誰よりも勇敢で勇ましい男だったと…

 この村は命をとして戦った村長を忘れないために、彼が好きだった桜を村中に植え、春には桜の花で彩られる美しい村へと変わっていくのでした。

 

 

「この村長さんを忘れないために村人が桜を植えた日が来週のお祭りの日になるらしんです」 

 

話終えた提督、美香隊員を見ると号泣していた。

 

「わた…しも、村長さんみたいに、皆を守る憲兵になりますぅ」

 

提督は美香隊員を泣き止ますために尽力したのはまた別の話である。

 

 

 

夜 19時 食堂

 

「提督の前で泣いてしまいました」

 

「…」

 

「桜村の昔話聞いたっぽい!」

 

「僕もあの昔話好きだな」

 

憲兵と時雨、夕立と夕食をとる美香隊員。憲兵はもくもくとカレーを食べ進めており、その隣で時雨と夕立は美香隊員と昔話について話していた。

 

「そっか、来週がお祭りなんだね」

 

「楽しみっぽい!」

 

「リンゴ飴とか食べたいな…」

 

来週のお祭りを楽しみにする美香隊員と時雨、夕立。お祭りで何を買うか、花火はどんなものなのかを話をする。

 

「それにしても昔話の村長さんはどうして馬鹿にされてたのに戦ったんだろう」

 

夕立がカレーを食べながらそう口にする。

 

「…それは…村が村人が大切だからではありませんか?」

 

美香隊員がそう答えるが納得しない夕立

 

「でも村長さんは村人に馬鹿にされてたんだよね?なのに…命と引き換えになんて…」

 

 悲しそうな顔をする夕立。それを聞き確かに何故彼が自分をバカにしていた村人を守ったのだろうと思う美香隊員。

すると今まで黙って話を聞いていた憲兵が口を開く。

 

「彼は馬鹿にしながらも自分を愛してくれた村人を、守りたかったんでしょう。臆病なだけで村のために頑張っていた村長ですから…彼は愛されていたんでしょう。まぁ、これは私の考えですが」

 

それを聞いた夕立は納得したのかカレーのおかわりに向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本日の主な出来事

 

朝 

 

提督に執務室に呼ばれお祭りのお誘いを受けました。この村の昔話を聞いて情けない話、提督の前で泣いてしまいました。

 

 

横山殿と時雨さん、夕立さんと夕食を食べる。横山殿の考えに驚きました。

 

最後に

 

本日も晴れ!鎮守府に異常ありません!

 

 

 

 

 

 

「これでいいでしょうか?」

 

「問題ありません」

 

 

 

 

 

 




感想、評価、アドバイス、誤字脱字などあればよろしくお願いいたします。

今回は平仮名がおおいですが、昔話は平仮名だと考え昔話は全て平仮名で書きました。すいません

※平仮名を漢字にし、読みやすくしました!皆様に読みにくい文章を出してしまい申し訳ありませんでした。


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