本日も晴れ、鎮守府に異常無し《完結》   作:乙女座

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前回の投稿から遅くなってしまい申し訳ございません!

ではどうぞ!


二十五日目

12月24日

 

朝 8時 鎮守府  

 

憲兵の異動騒動から2週間が経過した。鎮守府では憲兵が安心して本部に異動できるように多くの艦娘が自分達の生活態度を見直し鎮守府の掃除や中庭の手入れなどを進んで手伝うようになった。中でも曙と吹雪がよく手伝っており憲兵の後ろをついて回っている。しかし、天龍はいつも通り憲兵に追いかけ回されていた。鈴谷に至っては毎日のように憲兵の部屋に忍び込み彼に抱きつくように眠ることが多くなり憲兵の胃薬を飲む量が増えたとかどうとか。榛名や大和は出撃や演習以外では彼の近くに居り彼との思い出を多く作ろうとしていた。

 そんな変わりつつある鎮守府にもクリスマスの時期がやって来た。朝から多くの艦娘が鎮守府の飾り付けをする。提督や憲兵も鎮守府の飾り付けを手伝っていた。憲兵の後ろを付いて回るヲ級とイ級ブラザーズ。クリスマスの飾り付けを手伝ってはいるが何故飾り付けをしているのかは理解できていなかった。

 

「…ツリーを出さないといけませんね」

 

「ヲ?」

 

「キュー?」

 

ふと呟いた憲兵の言葉を聞きツリーが何であるかが気になる一人と二匹。憲兵は頭を撫でながら驚かせようとヲ級達を部屋で待っておくように伝え、ツリーを取り出すために倉庫へと足を進めた。

 倉庫に到着した憲兵は自分の身長より大きいツリーの置物を見る。どう考えても一人で運ぶのには無理のある大きさである。誰かに手伝って貰おうと考えているときだった。

 

「憲兵さん?何してるのですか?」

 

偶然倉庫へ飾り付けの為に使う脚立を取りに来た大和が声を掛けてきた。憲兵はツリーを出すのに誰かに手伝って貰おうと考えていたことを伝える。

 

「なら私が手伝いますよ」

 

大和が快く手伝いを買って出てくれた。

 

◇ 

 

鎮守府中庭

 

大和に手伝って貰い中庭にツリーを運び出した憲兵。そこへヲ級達が駆け寄って彼の足へと抱きつく。憲兵はヲ級を抱き上げツリーを見せる。

 

「ヲー…」

 

ツリーの大きさに圧倒されるヲ級。イ級達もツリーの回りを走り回っていた。

 

「では…飾りつけですね」

 

 鎮守府内の放送が掛かり中庭へと集まるように言われ、鎮守府内で飾り付けを終わらせて来た艦娘達が続々と集まってきた。提督が集まった彼女達の前に立ち、皆で飾り付けをすることを伝える。駆逐艦はどこに付けようかと相談しながらツリーの装飾品を選んでいる。軽巡艦の艦娘達や重巡艦、戦艦、空母組は駆逐艦の手の届かない場所の飾り付けを担当していた。彼女達が作業しているのを提督と並び眺める憲兵。

 

「皆とてもいい笑顔ですね」

 

「そうですね…本当にいい笑顔です」

 

二人で話をしていると鈴谷が憲兵の空いている腕にしがみついてきた。

 

「ねぇ~憲兵さん。上に付けるの届かないから肩車して?」

 

ね?とお願いしてくる鈴谷。提督はあわわと不思議な声を出していた。憲兵は無理ですと伝える。しかし、最近の鈴谷は引き下がらない。お願いと少女特有の甘い声と自慢の胸を憲兵に当てながらお願いする。憲兵はポーカーフェイスではあるが冷や汗を流しながら彼女のお願いを断る。

 

「鈴谷さん…無理を言ったらダメよ」

 

助け船を出してくれたのは加賀だった。鈴谷はちぇーっと言いながら憲兵の腕を解放し飾りつけへと戻る。

 

「助かりました加賀さん」

 

「いいのよ…これでサンタさんからプレゼントが貰えますね…」

 

やりましたと小さくガッツポーズする加賀を見てほっこりする憲兵。そこへ赤城もやって来た。

 

「サンタさんには国産のお米と松阪牛をお願いしました」

 

ふふんとどや顔をする赤城。やはりかと内心思った憲兵だが顔には出さずサンタが二人のもとにも来ると伝える憲兵だった。

 

「憲兵さんは何を貰うのですか?」

 

わらわらと飾り付けを終えた駆逐艦組が彼の周りに集まってきた。

 

「私の元へはサンタさんは来ません」

 

「そうなんですか?」

 

不思議そうに首を傾げる吹雪。

 

「私はもう大人ですからね…」

 

「大人になると貰えないっぽい?」

 

「えぇ…」

 

憲兵は少し寂しそうに答える。実は子供の頃からプレゼントを貰ったことがない憲兵。孤児院はお金があまりないためクリスマスパーティーはあったがプレゼントは用意できなかった。しかし、彼女と出会ってからは毎年のようにお互いお小遣いを集め渡しあっていた。それは大人になっても続いていたが彼女が亡くなってからはそれも無くなっていた。

 飾り付けもほぼ終わり後は星を付ける作業になる。憲兵は装飾品が入れられていた箱を倉庫へと運んでいた。すると提督が憲兵の元へとやってきた。何か忘れていたのかと思った彼は何かありましたか?と提督に聞く。すると

 

「憲兵さん!今年は憲兵さんが星を付けてください!」

 

そう言って彼の腕を引っ張り中庭へと連れていく。中庭では

二人を待っていた艦娘達が並んでいた。憲兵は榛名から飾りつけの星を受け取る。

 

「私なんかでよろしいのでしょうか?」

 

申し訳なさそうに聞く彼に提督は憲兵さんじゃないとダメと言い、周りの艦娘もうなずく。憲兵はでは失礼しますと脚立に登り星をツリーのてっぺんに付ける。

 一時間ほど掛けて飾り付けしたツリーは様々な装飾品に彩られ立っていた。それを眺める一同。するとぽつぽつと見上げている顔に冷たい感触がする。

 

「雪なのです!」

 

空から雪が降ってくる。駆逐艦はきゃいきゃいとはしゃぐ。今年も素敵なクリスマスになる。そう確信する憲兵。

 

「さて!じゃあ食堂でパーティーだ!」

 

提督の掛け声と共に食堂に向かう一同であった。

 

 

夜中 12時 艦娘寮

 

パーティーも終わり皆が寝静まる中、憲兵は赤と白の服を身に纏い赤い帽子、そして白い髭を装着し艦娘のプレゼントが入っている袋を背負っていた。

 

「さて…行きましょう」

 

一人気合いを入れ彼女達の部屋にプレゼントを枕元へ置きに行くのであった。

 

○赤城と加賀の部屋

 

「赤城さんは松阪牛と秋田県産のコシヒカリですね」

 

台車で運んできたプレゼントをぐっすりとよだれを垂らしながら寝ている赤城の枕元へ置く。

 

「加賀さんは髪留めと櫛ですね…綺麗な髪なのでこれが似合いますね」

 

すやすやと眠る加賀の枕元へとプレゼントを置く。

まだまだ先は長いとそっと部屋から出ていく憲兵であった。

 

○時雨、夕立の部屋

 

「時雨さんは本ですね…『素敵な奥さんになるためには』と『男を魅了する料理』…ですか…好きな男性ができた時のためでしょうか?」

 

不思議に思いながらも時雨の枕元にプレゼントを置く。

 

「夕立さんはスカーフですね…喜んでくれるといいのですが…」

 

布団を蹴飛ばし眠る夕立に布団をかけ直し枕元にプレゼントを置く憲兵であった。

 

○吹雪、電の部屋

 

「吹雪さんは髪留めと簪、電さんは熊の人形ですね」

 

まだ子供だなと思い心の中で微笑みながらプレゼントを枕元に置く憲兵であった。

 

 

 

 

 プレゼントを渡し終えた憲兵。気づけば夜中の3時を越えていた。へとへとになりながら部屋へと戻る憲兵。服を着替え寝巻きになり布団へと横になる。あと少しで本部へと戻ることを実感する。あと数日であることに少し寂しさも感じるが永遠の別れでは無いと考える。色々な事を考えている内に彼も深い眠りへと落ちていくのであった。

 

 

本日の主な出来事

 

本日は朝から鎮守府内の装飾。そしてツリーの飾り付けを行った。私に星の飾りを付けさせてくれくれた彼女たちは本当に良い子ばかりである。

 

最後に

 

本日は雪、鎮守府に異常なし

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。少し寒いことに気づき目が覚める憲兵。何故か昨日閉まっていた窓が空いており不思議に思う彼の枕元には小さな箱が置いてあった。何だろうと思い箱を開ける。中には綺麗な花のネックレスが入っており手紙も同封されていた。手紙を空けそれを読む憲兵。

 

『メリークリスマス』と書かかれていた。




感想、評価、アドバイスお願いします!

今年の投稿は今回で終わりです!来年も本日も晴れ、鎮守府に異常なしをよろしくお願いします!

次回作のアンケートを活動報告に載せています!よろかったらどうぞ!

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