本日も晴れ、鎮守府に異常無し《完結》   作:乙女座

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早く大和さん
作者の鎮守府に来てください


三日目

4月○☆日

 

早朝 晴れ 5時 鎮守府内憲兵の寮

 

憲兵の朝は早く、まだ周りが寝静まっている時から彼は準備を始める。初めに今日の1日の鎮守府の活動表からいつ出撃かなどを見て彼ら憲兵は活動する。今日は特に9時頃から鎮守府の広場で<那珂ちゃんらいぶ☆>があるため準備を始めることにする。

 

 

準備を進めること二時間である程度のステージと客席が出来上がる。首に掛けていたタオルで額の汗をふく。すると艦娘の寮から3人の人影が近づいてきた。

 

「わぁー!凄い!那珂ちゃん感激だよ!」

 

「ほほう!すごいなぁ。一人でここまで準備したんだ!」

 

「良かったわね那珂ちゃん。あ、憲兵さんおはようございます。それとお疲れ様です」

 

ステージに感激する那珂ちゃん。川内は感心したように観客席などを見渡す。神通はペコリと憲兵に挨拶をしていた。

 

「おはようございます。喜んでもらえてよかったです」

 

「うんうん。流石は那珂ちゃんのマネージャーさんだよ!そんな君には那珂ちゃんの新曲のCDをプレゼント!しかもサイン入りだよ!」

 

手渡せられたCDを憲兵は頭を下げて受けとる。那珂はステージに走って行きリハーサルを始めていた。

 

「では、私は鎮守府周辺の掃除をして来ます」

 

「見ていかないのか?」

 

川内が首をかしげながら憲兵に尋ねる。

 

「えぇ、私は憲兵ですので」

 

それを聞いてそっかーと残念そうにしている川内とお疲れ様ですと頭を下げる神通。開始2時間前だと言うのにチラホラと他の艦娘も集まって来ていたので憲兵は二人に頭を下げ掃除をしにステージから離れるのだった。

 

 

昼 14時 商店街

 

「いつも荷物持ちを手伝って貰ってありがとうございます!」

 

「いえいえ、これくらい大したことはないですよ」

 

笑顔でお礼を言う吹雪と歩く憲兵。買い出しに出るときは吹雪と憲兵で出ることが多い。

 

「間宮さんや鳳翔さんも感謝していましたよ!」

 

「それはなによりです」

 

楽しそうに話す二人を見て多くの人は親子?と勘違いしていた。そんな二人に声をかける一人の青年がいた。

 

「こんにちは憲兵さん!それと吹雪さん!」

 

「あ!お魚くれる人!」

 

いつも鎮守府に新鮮な魚を差し入れしてくれる漁師さんの孫である青年だった。憲兵は無言で頭を下げる。

 

「デートですか?」

 

「ち、違いますよ。買い出しの荷物持ちを手伝ってもらってるんですよ」

 

少し顔を赤くしながら必死に否定する吹雪。それを見てそこまで必死に否定されて少しダメージを受ける憲兵。青年と吹雪は世間話をしており憲兵は黙って吹雪の後ろに立っていた。疑いたい訳ではないがもしかしたらの可能性を考え彼女を守れる位置に移動していた。

 

「あ、その小雪ちゃんは元気ですか?」

 

少し顔を赤くして尋ねる青年。司令官は元気ですよ?と吹雪は首をかしげながら答える。青年はモジモジしながら意を決してポケットからあるものを取り出した。

 

「あの……これ……いつもありがとうって渡してください」

 

「わぁ!綺麗な簪!司令官喜ぶと思いますよ!」

 

青年が差し出したのは綺麗な青い花の装飾が施された簪だった。青年は吹雪に簪を預けた後、じゃあまたと凄いスピードで帰って行った。

 

 

帰り道に憲兵は吹雪に少し寄り道をしましょうと言い吹雪に村を一望できる山へと連れていくことにした。

 

「わぁ………いい眺めですね」

 

桜の花が満開に咲き誇り、村を覆い尽くす景色は圧巻だった。吹雪はその景色を見ながら少し寂しそうな表情をしていた。

 

「何か悩んでるんですか?」

 

「…はい」

 

ぽつりぽつりと話し出す吹雪。自分は本当に力になれているのか。戦艦のような力を持ってるわけでもなく、正規空母のように戦えるわけでもない。重巡洋艦の様なバランスのいい戦いや軽巡洋艦のように夜戦が得意な訳でもない。他の駆逐艦のように大きな特徴も無い。そんな自分が本当に必要なのかどうか分からないと

 

「だからこうやって暇なときには買い出しとか手伝ってるんですけどね………」

 

えへへと笑うが先程のように力がない。話を聞いていた憲兵は吹雪の隣に移動し、腰につけている双眼鏡を吹雪に渡す。吹雪はいきなりのことで理解できなかったが憲兵が指差す方向に双眼鏡を向け覗く。

 

「さっきの商店街ですか?」

 

「はい。次にあそこを見てください」

 

「漁港?」

 

「そして最後はあそこです」

 

そこには自分たちの働いている鎮守府。

 

「私は朝早くから貴方が努力しているのを知っています。トレーニングをしているのも、夜遅くまで勉強をしているのも。それに先日、北上さんが中破したときは貴方が敵の駆逐艦を撃破したと記録されています。それにあの青年のお爺さんの船が深海棲艦に襲われたときに守ったのも貴方です」

 

吹雪は双眼鏡を覗いたまま動かない。ただひたすらに何かを堪えているようだった。

 

「誇ってください。この活気があり、桜の花で彩られた村を、そして海を貴方達が守っているということを」

 

吹雪は堪えきれず声を出して泣き出してしまった。そんな吹雪を抱き締めたり、慰めたりせずただ隣で黙って立っている憲兵だった。

 

 

夕方 17時 艦娘寮前

 

買い出しの品を間宮、鳳翔に渡し部屋に戻る吹雪を憲兵は送っていくことにした。

 

「今日はありがとうございました。本当に色々と…」

 

「いえ、私は事実を伝えただけです」

 

「憲兵ですから………ですか?」

 

「む…………」

 

台詞を取られた憲兵を吹雪はえへと悪戯が成功した子供のような顔をして笑っていた。

 

「じゃあ、私はここで!ありがとうございました!」

 

そう言って元気に寮へと戻っていく吹雪を憲兵は黙って見送り、姿が見えなくなってから自身の寮へと足を進めるのだった。

ちなみに簪は無事提督に届けられ喜んでいたらしい。だがそれ以上に少し帰りが遅いのは何をしていたのかと食堂の時に提督と他の艦娘に問い詰められたらしい

 

 

本日の主な出来事

 

 

那珂さんのステージを作る。ライブは成功したらしい。

 

 

吹雪さんと買い出しに出る。青年と話をするが特に異常はなし。その後、悩んでる吹雪さんを高台へ連れていき話をする。

 

一言

何故か嫌な予感がしたので夕食は寮の自室で食べた。一体何だったのだろうか…あの悪寒は。

 

最後

 

本日も晴れ、桜の花も綺麗に咲き誇り、村、鎮守府に異常なし




吹雪ちゃんはかわいい。

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作者のメンタルは弱く、ほったらかされると一人で歌い出したりしますので。

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