本日も晴れ、鎮守府に異常無し《完結》   作:乙女座

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瑞雲はかわいい(白目)


五日目

5月○日

 

昼13時 商店街

 

5月になり鯉のぼりが村の各所で見られるなか、新田提督の鎮守府にも鯉のぼりがあげられることになった。準備するのは勿論、憲兵だ。しかし、鯉のぼりを置いていない(男の子がいないため)この鎮守府。買いにいくことになった。

 

「申し訳ありません。お手伝いさせてしまって」

 

「いえいえ、いつも買い出しを手伝ってくださっていますから。それに少し買うものもあったので」

 

憲兵の隣を歩くのは落ち着いた大人の雰囲気を出す女性、軽空母鳳翔だった。鯉のぼりを買うにしても、今まで買ったこともなかった物なので困っている憲兵を偶然見つけた鳳翔が声をかけたのだ。鯉のぼりを購入し、今は乾物屋へと向かっていた。

 

「憲兵さんは時間がある時は何をなさっているのですか?」

 

「そうですね………?」

 

「うぅ…………」

 

話している憲兵は前方で泣いている女の子を発見した。周囲を確認するが親らしき人物が見当たらない。今にも泣き出してしまいそうな女の子に近づき目線を合わせる憲兵。

 

「どうかしましたか?」

 

「…………」

 

「………迷子ですか」

 

「お母さんはどこにいるかわかるかな?」

 

鳳翔が尋ねるが首を横に振る。このまま一人おいて行くことも出来ないので連れていくことにする。この村には駐在所が商店街の外にあるため乾物屋に行った後に寄ることにする。最初はあまり話さない女の子であったが鳳翔が積極的に話しかけたお陰で女の子の顔には笑顔が戻っていた。

 

「おばあちゃんは肉じゃが作るの得意なんだよ!」

 

「ふふふ、そうですか…一度食べてみたいです」

 

「ほうしょーお姉ちゃんにも食べさせてあげるー!」

 

そんな二人の隣を無言で歩く憲兵さん。すると女の子は憲兵の手をいきなり握る。憲兵は少し驚いた表情で女の子を見るが女の子はにこーっとした笑顔で手を離さない。すると反対の手で鳳翔の手を繋ぐ。端から見れば親子のようである。暫くそのまま歩き乾物屋に着く。手を離してもらいたいが女の子は手を離そうとしない。仕方なくそのまま店へと入る。

 

「あらあら鳳翔ちゃん。いらっしゃい」

 

そこにはこの店の店主の老婆が座っていた。鳳翔はこんにちはと挨拶をする。憲兵も無言で頭を下げ女の子も元気に挨拶をする。

 

「あらあら、今日は旦那様とお子さんと一緒ですか?」

 

「ち、違います!」

 

頬を朱色に染めた鳳翔が否定するもほほほと笑う老婆。もうと目当ての乾物を探す鳳翔。憲兵は女の子を肩車したり、抱き上げたりし女の子と遊びながら鳳翔が買い物を済ますのを待っていた。

 

 

 

ありがとうねぇと後ろから店主の挨拶が聞こえ店を後にする。鳳翔が買い物を終えると憲兵の背中では静かに寝息をたてている女の子の姿。鳳翔はくすりと笑い駐在所へと行くことを促した。

 

「見つけた!小夏!」

 

商店街の出口を出た二人声をかけてきたのは何時も鎮守府に魚をくれる漁師の青年だった。青年は鳳翔と憲兵に頭を下げ女の子を起こす。眠り眼を開け青年の顔を見ると怒られると思ったのだろう。憲兵の背中から降りて鳳翔の背中に隠れた。

 

「帰るぞ!お爺ちゃんとお婆ちゃんが心配してる」

 

「や!」

 

「わがまま言わないでくれ」

 

「やー!鳳翔お姉ちゃんと憲兵さんも一緒に帰るの!」

 

鳳翔の着物を掴んで離さない。5分ほどこのやり取りが続き、ついに小夏は泣き出してしまった。

 

「やだやだ!鳳翔お姉ちゃんと憲兵さんも一緒に帰る!お父さんとお母さんいないのや!」

 

「小夏………」

 

その言葉を聞き僅かながらに憲兵の表情が歪む。青年は困り果ててしまいどうすることもできなかった。大きな声で泣く小夏。お父さんとお母さんに会いたいと泣くその姿を憲兵は見続けていた。すると鳳翔が小夏を優しく抱き締めながら頭を撫でる。

 

「小夏ちゃん……お婆ちゃんとお爺ちゃんが好きなのよね?」

 

「……うん」

 

「なら心配させないように帰らないと」

 

「鳳翔お姉ちゃんも………」

 

鳳翔は小夏の目を見て優しく微笑む。

 

「私はね、艦娘なの。だからね、一緒には帰れないの」

 

「………」

 

小夏の目から涙は止まらなかった。鳳翔はポケットから手拭いを取りだし、涙を優しく拭き取る。

 

「この近くの鎮守府に住んでるから何時でも遊びにおいで?いいですよね?憲兵さん?」

 

「勿論です」

 

それを聞いた小夏は少し落ち着いた。鳳翔は小夏に何時も着けている頭の簪を外し手渡した。

 

「これ…綺麗」

 

「これをあげるからお兄ちゃんを心配させたらダメよ?いいわね?」

 

うんと元気に返事をする小夏。青年は小夏の手を繋ぎ家へと帰っていった。その姿が見えなくなるまで小夏は鳳翔に手を降り続けていた。

 

「では、帰りましょうか。もうじきお腹をすかせた子達が沢山帰ってきますから」

 

「そうですね………」

 

こうして二人で鎮守府に戻るのだった。

 

 

 

夕方 18時 鎮守府中庭

 

「これでよし」

 

「できたね」

 

「っぽい!」

 

何とか鯉のぼりを完成させた憲兵。その作業を白露型駆逐艦の時雨と夕立が手伝っていた。

 

「綺麗な鯉のぼりだね」

 

「………えぇ」

 

「おいしそうっぽい」

 

「夕立……それはないよ」

 

的はずれなことを言う夕立に苦笑する時雨。何も言わず正門に戻ろうとする憲兵に時雨は様子が変だと気づき声をかける。

 

「どうかしたのかい?」

 

「………何でもありませんよ」

 

「嘘だね。憲兵は嘘をつくのが下手だからすぐにわかるよ」

 

時雨は憲兵の目を見つめる。憲兵は彼女の目が苦手である。何もかもが見透かしているように思え、心の中を見られているように感じるからだ。初めてここに来た時に話しかけてきたのは彼女だった。

 

「今日は少し疲れましたので失礼します」

 

しかし、心の内を話さない憲兵は自分の寮へと歩を進めていった。その寂しそうな後ろ姿を時雨と夕立は見続けていた。

 

 

 

 

本日の主な出来事

 

 

 

鯉のぼりを買いに商店街へ。鳳翔さんに手助けをしてもらう。女の子、小夏様を保護。少しアクシデントがあるも家族のもとへ

 

 

夕方

 

鯉のぼり完成。夕立さんと時雨さんと少し会話をする。

 

一言

 

私は……結局何も守れていなかった。私は一体何のために戦っていたのだろうか……

 

最後に

 

本日も晴れ、鎮守府に異常なし

 




シリアスに………

提督出番なし!

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