オーバーロード 四方山話《完結》   作:ラゼ

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なんか上手く書けなくて悩みました。ちょっと微妙な出来ですが、ご勘弁。

不甲斐ない作者ですまない…(カカシ感)


続く。

「ふぅ…」

 

やりきった顔で空を飛びながらクレマンティーヌを待っているオデンキング。花を摘みに行ったと思っていたが、大きい方にしても流石に遅すぎるなと思いそろそろ探しに行こうか思案していた。

しかし急に《メッセージ/伝言》がとんできたかと思うと、なんとゴブリンだけではなく高位の魔物なども押し寄せ戦線が崩壊しかねないという凶報が入ったのだ。

帝国の方はシャルティアが向かったとアインズから報告されたため、急いで王国の方へ向かう。

 

「…この場合って責任とらされるんだろうか。この森にそんなに高位の魔物は居ないって聞いてたのになー…」

 

そんなことを心配するあたりが小市民たる所以なのだが、本人は気付いていない。気付いたところで気にはしないだろうが。

 

「…っと…? なっ!?」

 

そしてそろそろ着く頃合いかと視線を先にやり、王国の軍や冒険者が豆粒ほどの大きさに見えてきたところで横からの飛来物に気付き一旦停止するオデンキング。

 

それが目の前にきて何者かを認識した瞬間、驚愕の声を上げる。

 

「え…? ペロロンチーノ、さん?」

 

居る筈のない、見覚えのある弓を装備した旧友。人間から見れば感情が窺い知れない顔でオデンキングを見つめているバードマンがそこに浮いていた。

 

それはギルド「アインズ・ウール・ゴウン」が誇る至高の41人の一人であり、シャルティアの創造主でもあるペロロンチーノその人であった。

しかしオデンキングはなんとも言えない違和感に気付き、少しだけ落胆したような雰囲気を出したあと残念そうに口を開いた。

 

「あ、パンドラズ・アクター…?」

「はい」

 

そう、それは懐かしい友ではなくドッペルゲンガーであるパンドラズ・アクターが扮した仮の姿であった。彼は至高の41人の姿を全て真似る事ができ、その実力さえも8割近く引き出すことが可能な万能タイプのドッペルゲンガーなのだ。

 

「びっくりしたー。まさか次元を越えて自分の理想の嫁に会いにきたのかと…」

 

酷い言い草だが実際にシャルティアやその他美女美少女がリアルに生きていると知れば、なんとしてでもこちらに来ようとするのは間違いないだろうという確信がオデンキングにはあった。

 

「今の混戦状態ではペロロンチーノ様の御姿がよいとアインズ様が仰いましたので」

「…まぁ、確かにそっか」

 

空を飛びつつ弓で属性攻撃を雨霰と降らせる絨毯爆撃に定評のあるペロロンチーノだが、ターゲティングしてピンポイントに速打ちで射ぬいていく技術も相当なものである。

 

今の混戦状態ではまとめて魔法で掃討することは難しいため、アインズの指示は的確ではあるのだろう。だが単に自分を驚かそうとした部分も絶対あるだろうと、オデンキングはいつか意趣返しでもしてやると心に誓った。

 

「ま、人に慣れさせる意味でもヴァンパイア、リザードマン、バードマンが最初ってのはありか」

 

少なくともいきなりヴァーミンロードやオーバーロードが姿を見せるよりはマシではあるかもしれない。そんなことを考えつつ遠目に見える王国軍の方へ急ぐオデンキング。

横に並ぶパンドラズ・アクターを見て少し嬉しそうな様子なのは、結局アインズの悪戯が成功している証明なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほぼ、互角。

 

蒼の薔薇とクインティア兄妹の戦闘を評するならその言葉が一番相応しいだろう。実力的に抜きん出ているのはクレマンティーヌであり、次いでイビルアイだ。

レベル的にはクアイエッセもそこまで劣るものではないが、いかんせん彼は近接戦闘に於いて取れる手段が少ない。生粋の戦士であるガガーランや変幻自在の忍術を駆使するティナとティアを相手取るには少しばかり荷が重いのだ。

 

加えて蒼の薔薇は連携の取れたチームワークで逐一有利な状況を作り出し、付け入る隙を見せない強かさがあった。連携のれの字も見えぬ兄妹には無い強みだろう。

 

「ち…厄介だな、っ! 下がれラキュース!」

「くっ…!」

 

しかしそれでも拮抗しているのは、やはりクレマンティーヌの猛攻によりイビルアイとラキュースが防戦を強いられているからだろう。

魔法と支援と回復手段、この三つを自由にしてはさしものクレマンティーヌも苦戦せざるを得ないと判断しているのだ。特にラキュースは近距離と中距離の攻撃、支援に回復とチームの要と言っていいほどの役割を果たしている。つまりクレマンティーヌ達にとっては最優先で倒すべき目標だ。

 

しかし当然蒼の薔薇のメンバーもそれを理解しており、ラキュースへ攻撃が集中しそうになるとその機会を逆に隙と見て即座に連携を組み直す。まさに一進一退の攻防、入れ替わり立ち替わりの目まぐるしい動きは常人には何が起きているのかすら認識出来ないほどだ。

 

「やるねー。だ・け・ど…」

 

蹂躙ではない久方ぶりの殺し合いに興奮しきりのクレマンティーヌ。ここ最近で穏やかになってしまった気性が、どんどんとかつての残酷さと鋭さを取り戻していく。そう、人の本質とは容易には変わらないのだ。強敵との殺し合いは萎んでいた殺意と狂気を芽吹かせるには充分だった。

 

「この私に勝てるわけが…ねえんだよぉっ!」

 

今日一番の渾身の一撃。疾風と形容することすら生温い、振るわれる武器の速度は音速を越えて、凄まじい衝撃と共にラキュースの腹部に空洞を残す。

 

「かっ…は…!」

 

動揺し、隙を見せて総崩れになる蒼の薔薇。それを逃す二人ではなく、今までが嘘のようにあっけなく戦闘は終了する―――

 

ラキュースに致命傷を与えた後、そんな状況になるだろうと考えたクレマンティーヌ。

 

しかし現実は予想に反して、それどころか逆に無理をしてラキュースを狙ったことでイビルアイへの対策が疎かになりまともに魔法の直撃を受ける羽目になった。

 

オデンキングによって彼女の装備が、この世界のそれとは一線を隔すものに変わっていなければ勝負は決していたかも知れないほどの魔法の威力だ。

 

「―――っ、く…! 仲良しこよしの甘ちゃんだと思ったら…!」

 

魔法だろうが回復だろうが、あそこまで重傷では発動も覚束ないのは間違いない。

つまりラキュース以外に回復手段がなければ仲間の死亡が確定した瞬間だったのだ。そしてこれまでの動きから癒し手は一人だと確信していたクレマンティーヌ。

 

いくら最高の冒険者チームと言われる蒼の薔薇でも微塵の動揺すら無かったのは想定外だったようだ。しかしそんな衝撃も霞む事態が起きる。

 

「なっ…!」

 

クレマンティーヌの驚愕の声。それは既に完全復活を果たしているラキュースに対して上げたものである。

間違いなく致命的な一撃だった。一般人ならば即死でもおかしくないほどの重傷だ。ならば何故何事も無かったように立っているのか、クレマンティーヌには解らない。

 

いや解りたくなかったのだ。実際にはその理由はしっかりと把握している。

だが認めたくないためにその場で固まってしまったのである。

 

「大丈夫か!」

「ふむ…」

 

その様子を見てガガーラン達とクアイエッセも一旦攻防を終了させ、対峙した当初の間合いまで引き下がった。

 

「ちっ…」

 

一方魔法の直撃でも大したダメージにならなかったクレマンティーヌを見て苦々しい顔をするイビルアイだが、一先ず仕切り直しの間は出来たとラキュースの傍に走りよる。

 

「どうだ?」

「試しに使った時から思ってたけど、凄いわねこれ…」

 

致命傷すら完全に治癒したポーション、それが入っていた壜を見て呆れと感謝がないまぜになった声で呟くラキュース。

何故彼女が容易く復活したか―――それは凶刃に倒れた後、即座にポーションを使用したためであった。

 

だが、たかがポーション如きであの重症を治癒出来るのかと聞かれれば、それは否だ。巷で売られているポーションはあれほどの効果を持つことは無い。

 

厳密に言うならば無くはない、作れなくはないが、保存の難しさやコストパフォーマンスの面から見て今この場であの凄まじい効果のポーションがあるというのは不自然極まりないのだ。

ならば、何故か。それは無言で立ち尽くすクレマンティーヌが一番よく知っているのかもしれない。

 

「…」

 

神の血と呼ばれる赤いポーション。

 

通常は青い色をしているポーションであるが、劣化をしない完全な魔法薬となれば血のごとき真紅に染まるのだ。そしてそんな伝説の代物はクレマンティーヌの知る限り非常に限られた場所、あるいは人しか持ち得ない。

 

一つは自分の相方。

 

一つは自分がかつて所属していた国の秘蔵の品。

 

そして最後の一つは、地獄の鬼でも裸足で逃げ出す悪魔の巣窟。死が支配する亡者の墳墓。自らの感性や常識を粉々に砕いた恐怖の場所、ナザリック地下大墳墓である。

 

可能性を考えるなら、王国の冒険者である蒼の薔薇が法国と関係があるとは思えないため、これは却下してもいいだろう。

 

オデンキングが王国に行った際に知り合った。これはあるかも知れない。

 

残る可能性はナザリックの関係者であるかもしれないということだが、これこそがクレマンティーヌが固まった理由の一つである。

 

だがしかし。そんな事は些末な事だ。

 

兄に会ったことや強敵との邂逅で彼女が忘れていた事実がある。それはこの合同作戦に関わっている勢力の一つがナザリックであるという、絶対に忘れるべきでは無かったことだ。

 

「やば…」

 

白目でだらだらと冷や汗を流すクレマンティーヌ。自分のせいでこの作戦が失敗に終わればいったいどうなってしまうのか、それを考えると戻りつつあった残酷さも鋭さも、狂気すらも急速に冷めていく。

 

「…?」

 

疑問の表情はクレマンティーヌ以外の全員が浮かべたものだ。そもそも彼女が発端となった戦闘であり、いきなり攻撃など仕掛けなければクアイエッセとて事情を完全に話すことは出来ずとも不可抗力のことだと説明するつもりではあったし、蒼の薔薇に関しては言わずもがなだろう。

 

その彼女が完全に戦意を喪失し立ち竦んでいれば戦闘が動かないのは至極当然だ。

 

「………………」

 

たっぷり十秒間。それがクレマンティーヌが悩み、そして言い訳を考え付くのに要した時間だ。

その間に誰も動くことが無かったのは、それだけクレマンティーヌの困惑と焦燥が透けて見えた証でもある。そして発した言葉は―――

 

「あ、あれー? ここはどこ? 私は一体…?」

 

そう、発した言葉は彼女の人生でワーストスリーに入る酷い言い訳であった。

自分でも心の中で無理だろそれと突っ込みを入れているのが物悲しさを感じるところだ。

 

「は、はあ…?」

「何を急に…」

 

そんな返しも当然のことである。しかしあまりに白々しい態度に逆に信憑性を少しだけ感じてしまう蒼の薔薇。正常とはとても言えなかった邂逅時のクレマンティーヌの狂気も一役かっていたりするのは不幸中の幸いである。

 

「森の中にいたらー、急に恐慌状態になっちゃって…」

 

なんだかんだで現状を一番把握しているクレマンティーヌ。作戦を説明されている彼女達には充分に信じることが出来そうな説明でなんとか窮地を脱しようと試みた。

 

「(どう思う…?)」

「(なくはないんじゃないかしら)」

「(胡散臭えけどな)」

「(猫耳が可愛い)」「(男の方に聞くのは?)」

 

ひそひそと会話する蒼の薔薇。結局男の方にも話を聞いてみようということになった。ちなみに現在絶賛戦線崩壊中である。

 

「そちらはどうなのかしら? 魔物達と無関係とは思えないのだけど」

「ええ、無関係どころかあれらは私が召喚したものですから」

 

物凄くぶっちゃけたクアイエッセの言葉に霧散しかけていた戦闘の空気を戻しかける彼女達。

しかしそれを気にもとめず話を続ける彼の図太さは流石である。クレマンティーヌの事も考えると、案外クインティアの血筋故なのかもしれない。

 

「ああ、そう色めき立たないで下さい。別に好き好んでこんなことをしている訳ではありませんから」

 

そうしてクアイエッセは事がここに至った事情を説明する。

 

ゴブリンの群れを掃討するために来たこと、手持ちの魔物を召喚したはいいものの急に暴走してしまったこと、クレマンティーヌとの関係は兄妹であること等々。

 

法国の特殊部隊「漆黒聖典」であることこそ話しはしないが、蒼の薔薇ほどの者達であればそれなりに推測も立つと考え素性に関しては一切を省いて説明した。

 

「ふむ…」

「なんて間の悪い…」

 

おおよその事情を把握した彼女達。嘘には見えないクアイエッセの言、それに充分な整合性もあるためようやく力を脱いて溜め息をついた。だがそんな蒼の薔薇に追い打ちを掛けるようにクアイエッセは言葉を続ける。

 

「ところであちらの加勢はよろしいので? 崩壊しかけていますが」

 

彼らが話している間に総崩れと言ってもいいほどに戦線が乱れている王国軍。それを見て慌てて加勢に向かう彼女達だったが――――結論から言うとその必要は全く無かった。

 

「…!」

「わあ…!」

「おいおい」

「わ、私のモンスター…」

 

花火もかくやと言ったほどの空に瞬く光の軌跡。兵士や冒険者が苦戦する魔物をただの一発で貫き絶命させるその様は、英雄という領域を遥かに越えた神業を想起させる。

それを披露するのは猛禽のような目で戦場そのものを蹂躙する一人のバードマン。

 

そしてそんな奇跡のような力を見せる男の横に居る、一人の人間がクレマンティーヌの元へ降り立つ。

 

「こんなとこに居たんだ? あ、蒼の薔薇の皆さんもお久しぶりです」

 

平常運転のオデンキングである。異形種への風当たりが少しでも弱まればと、蒼の薔薇にも出陣してもらっていると聞いていたオデンキング。クレマンティーヌと一緒にいるのは意外だったが、まあそういうこともあるかと特に気にしていないようだ。

 

「え、ええ。こちらこそ。…あの方はそちらの?」

 

上空から弓で攻撃を繰り返すバードマンを見て問いかけるラキュース。内心で弓での攻撃と認めたくないのはここだけの秘密である。

 

「ええ。すぐに終わらせてくれますよ。それよりこの状況は…? というか…っと、ちょ、クレマンティーヌ?」

 

オデンキングの腕を掴み、引きずり少し離れたところに移動するクレマンティーヌ。ひそひそと小声で耳打ちし始める。

 

「実はかくかくしかじかで…」

 

「まるまるうまうまと…。じゃなくて何やってんの!?」

 

「めんご」

 

謝意の欠片も感じない謝罪だが、掴まれ続けている腕に当たる柔らかい感触に怒るに怒れないオデンキング。男なら仕方ない。

 

「ま、まあその辺は上手いこと誤魔化しとくから…」

 

その言葉に花が咲いた様に笑うクレマンティーヌ。ただし花の種類は首切り花か死人花か、ろくなものではないだろう。

 

「で、あの男の人は?」

 

そしてこちらの様子をちらちらと窺っているクアイエッセを見て問いかけるオデンキング。

少し嫌な顔をしながら答えようとするクレマンティーヌだが、視線が自分に向いたことを感じ取ったクアイエッセがそれより先にオデンキングに近寄り自己紹介を始める。

 

「どうも、クレマンティーヌの兄のクアイエッセと申します。妹が随分と御迷惑をお掛けしているようで…」

「ああ! 貴方が噂の…! いえいえ、こちらもお世話になっている部分も多々ありますので…」

 

ごく普通の一般人のような会話をする二人。しかし此処は弾幕飛び交う戦場で、二人ともに世界で上から数えた方が速い実力者であることを考えるとなんとも奇妙に頓珍漢だ。

 

「じゃじゃ馬なんて言葉じゃ表せない妹に夫が出来るとは感慨深いですねえ…」

「へ? あ…はい…」

 

夫という言葉に口調が乱れる。クレマンティーヌをちらりと見れば蒼の薔薇の女性達と何か語り合っている。クアイエッセが近寄って来る時に渋い顔をして離れていき、そちらの方へ離れたのだ。

 

そんなクレマンティーヌの後ろ姿を見て、彼女との関係はどう表せばいいのかと改めて考えるオデンキング。

 

最初はただの利害関係だった。解っていながらも色仕掛けに引っ掛かって面倒事を引き受けたのだ。

そしてナザリックでの生活で少し変わったように見受けられ、慕われていることは疑わなくなった。その後、帝国で少しの間だけ旅をしてなんとなく絆が深まったように感じたのは勘違いではないだろう。

 

長く滞在している帝都では少しばかり離れていたけれど、彼女からの親愛は消えていないように思うオデンキング。

どうにも口にしづらい関係であり、懇ろの仲でありながら自分から愛を囁くなどといったことは一度も無かった。

それは猫のような気まぐれさがある彼女に明確な関係を迫って、今の関係が崩れるのを恐れたからかもしれない。

 

 

真剣に言葉を送って、返事を聞くのが怖い。

 

 

そう、オデンキングは――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小学生レベルの恋愛初心者である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後の顛末は語るほどでも無い。

 

パンドラズ・アクターが早々に戦いを終らせた後、惜しみ無い称賛を受けながらアインズの元へ戻った。オデンキングは事の次第をそれぞれに説明し、不幸な行き違いによる事故だったということになったのだ。

 

無論詳細な説明はごく限られた者にのみだけで、殆どの者はゴブリン以外にも脅威が蔓延っていたのだという認識に落ち着いている。不満はあったが起こってしまったことは仕方ない。

 

死者が奇跡的におらず、石化したものや怪我を負った者は残らず治癒されたことで不満は最低限に抑えられたのだ。

特に冒険者の方は特別報酬が出たため一部は喜んでいたりもしていた。

王国の財政担当は渋い顔をしたそうだが。

 

 

 

 

とにもかくにも異形種と人間種が共闘して事に当たり、助け合ったという事実は出来た。ほんの小さな一歩だが、踏み出さなければ何も始まらない。

ここからの舵取りは手を取り合って協力出来るのか、出来たとしても船頭が多くなれば船も道先を失うかもしれない。

 

課題は大量、問題は山積み。それでも歩みは止められないのだ。きっと長い時を要する種族の垣根を越えた融和、それはもしかするとアインズやオデンキングの様な楽観的に事を進める者の方が案外上手くいくのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アインズ様」

 

ナザリック地下大墳墓、玉座の間。作戦終了後の雑事が終わり、ある筈のない疲労を感じながら深く腰かけるアインズ。そんな彼にアルベドは声を掛けた。

 

「アルベドか…どうした?」

 

分厚い冊子を抱えたアルベドに何だろうと首を捻るアインズ。

 

「はい…! アインズ様も待望されているアレの段取が出来ました」

「アレ…?」

 

いったいなんだろうと「アレ」の正体を考えるアインズであったが、デミウルゴスがアルベドに仕事の引き継ぎをしたのを思いだしそれの正体に見当がついた。

 

「ああ、ここのところの事態で有耶無耶になっていたな。忘れていた訳ではないぞ? 私もそれについてはとても大事なことだと思っているとも」

 

延び延びになっている蜥蜴人の協定や王国からの招待。それぞれの国が恐る恐るナザリックとの関係を手探りをしている今こそ、それの重大性が解ろうというものだ。

 

「ア、アインズ様…! 私も…私もでございます。いえ、これより大事な事などありません!」

 

「そ、そうか…? それほどに関係を大事におもっていてくれたとは嬉しい限りだ。段取りについてはお前に全てをまかせるとしよう」

 

いつのまにやらナザリック以外にも目を向け、蔑みも無くなっているアルベドに満足気なアインズ。勘違いとは夢にも思わない。

 

そしてうかつにも持ってきた書類には目を通さず、日時が決定すれば報告するようにと申し付けた。

 

うかつ過ぎである。

 

「必ずや素晴らしい式に致します! ああ……くふぅ…!」

 

「式典というほどの盛大さは…いや、それもありか…? だがやり過ぎないようにだけは注意してくれ。王国や帝国のトップについては話も通しているのでな、アンデッドに対する忌避感も見られなかったし無理をしすぎなければ大抵の事は大丈夫だろう」

 

悲しいほどにすれ違う二人。行く先は悲劇か喜劇か。

 

「そこまで考えていて下さったのですね! アルベドは、アルベドはもう…。アインズ様ぁー!」

 

「うおぉ! 落ち着くのだアルベド! ちょ…」

 

誤解の深まる丑三つ時。盛大な結婚式には人間も少し混ざりそうだ。




次が最終回です。ラストは腹筋クラッシュさせてみせましょうか…








え? そんなに自信満々で滑ったらどうすんのって? 

自分を追い込んでるんですよ。ほら、期待しろ期待しろー(棒)

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