クオリアと世界の狭間で。   作:sorack

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前回の続きです。
今回文字数少ないです。


彼らの物語はいつ始まるのだろうか。

「たでぃーまー」

絶賛社畜タイムであろう両親が家にいない今、一人っ子の俺を迎えてくれるのは暗い部屋と脳内妹の『おかえり!』ボイスだけである。

リビングに入ると鞄を下ろし、制服がシワになるのも構わずにボスンと音を立ててソファに倒れこむ。

つーかーれーたー!

息しにくいな、そろそろ鼻血止まったかな、と鼻に詰めてあった紙縒りを抜く。

手足どころか、五感全ての情報をなるべくカット、翔太たんは現在休止中です。

誰も家にいないし、そのまま仮眠でも取ろうかと、うとうとしていると不意に初期設定のままの電子音が鳴り響く。

携帯を取り出し画面を確認すると、表示されてるのは『神崎友恵』という文字。電話をかけてくることは珍しくないとはいえ、先程別れたばかりなのに何用だろう、少し嫌な予感をしつつも通話ボタンを押す。

『んだよ』

『もしもしくらい言ってくれてもいいんじゃないですかね?』

『もしもしもしもし、んで一体なんの用だよ』

『せっかちさんですね~いや、それが少しお願いしたいことがありまして』

『……』

こう切り出す時は大抵かなりの面倒事だ。

それはもう思わず無言になるくらい。

いくら幼馴染みとはいえ生徒会に一緒に入ってくれと頼む奴などこいつくらいだろう。

とはいえ数ヶ月間やってみて少し分かったが、もしかしたらそれも友達少ない上に基本的に暇な俺のためなのかもしれない。

そしてなによりも無言になった理由は、こいつは昔から自分の面倒事に巻き込むことを是としない。

 

『もしもし?一条先輩?』

『いや聞こえてるけど、できたらこのまま切りたい』

『まあそういわずに聞いてくださいよ~』

『聞くだけならな』

『そんなこと言いながらも手伝ってくれる一条先輩が大好きですよ?』

『切るぞ』

大好きっていえば大抵のことは俺が手伝ってくれるとでも思ってんのかこいつ、ちなみに間違ってはいない。

『あ~ちょっと待ってください! 別に先輩にとっても嫌なことでもないではないと思いますよ?』

『それ大変ではあるってことだろ』

えへへ~と笑ってごまかし、話を仕切り直すために咳払いをしてから話し出す友恵。

『実はですね――』

 

――全く、どこがお願いなんだか。

 

※※※※※※※※※※※※※

 

 

翌日、俺は通常より三十分近く早く校門を潜っていた。

はいそこ、いつもが遅すぎるとか言わない。

靴を履き替え生徒会室に直行する。

ドアを開くと、どうやら俺以外の全員が既に集まっているようだ。

「やっときたわね」と机に座って片方の手はパンを持ち、もう片方はトランプを持ちながら石川。

「ほんっと遅刻体質だな! っと、うっし俺上がり~」とトランプを机に放り投げるカズ。

そうだね、君は遅れてくること少ないもんね、サボることが多いだけで。

「いや待て、俺遅れてきてないよね? というかお前ら何やってんの?」

「いーえ、女の子を待たした時点で遅刻ですよ。そして今してるのはババ抜きです、みてわかりませんか? あ、そーか先輩友達いないからババ抜きもわからないんですね」

にこりと満面の笑みを向けてくる友恵。

その柔らかそうな頬ひっぱたくぞ。

「そ、そうなんですか!? じゃあこれが終わったら翔太君もすぐ一緒にやりましょう」と微笑む海帆。

友恵に、お前とは何回もやったことあるだろうが! と口を挟む間もなく、海帆の優しさに傷つく。

「いや遠慮しとく」

「まあそんなことは置いといて、とにかくこれで全員揃いましたね」

そういった友恵が見回した生徒会室内にはいつもの俺含めた四人にプラス海帆の計五人が集まっている。

朝から集まったのは当然偶然などではなく招集したのだ、友恵が。……いや違うから、皆の連絡先知らなかったとかじゃなくて友恵が言い出しっぺだからだよ? いや本当。

 

「結局、私たちはなんのために呼ばれたのよ?」

石川の疑問に同意なようでカズと海帆もその瞳に懐疑の色を宿して友恵に向けている。

そういう疑問があるということは俺以外に教えていないということだろう。

一体どういうつもりだ説明しろ、という意味を込めて俺も友恵に視線を向ける。

 

「皆さん朝早くから来てもらったんだから眠いのは分かりますけど、ちょっと目付き悪すぎですよ、特に一条先輩」

「それは生まれつきだ」

「おいおい、夫婦漫才なら後にしてくれよ、こちとら深夜帯のアニメみて眠いの押してわざわざ朝からでばってきたんだぜ」

ただでさえ朝は弱いのに睡眠不足のせいも手伝ってか、少しご機嫌斜めのカズは用件を話せとばかりに急き立ててくる。

 

「あんたそれのせいで休むことになるんだから平日は控えなさいよ」

だが自他共にオタクであると認められているカズに対して石川の方がうんざりといった様子である。

 

「なにおう!? 俺の嫁たちをバカにしてやがんのか!? いくらお前らでも許さねえぞ!」

「別にバカにはしてないわよ、あんたの嫁とやらに対しての愛の軽さはバカにしているけれど」

「俺の愛情のどこか軽いってんだ、原作と円盤はもちろん、キーホルダーにフィギュアにポスター果ては抱き枕まであるってなもんよ!」

ドン‼ という文字が背景に出そうなほどに決め顔でそういってのけるカズに、

「複数系な上に三ヶ月で終わる、なにより金銭で愛を示そうとするものなんてただの愛ではなく錯覚よ」

寒々とした侮蔑さえ秘めていそうな瞳を突き刺すようにカズに向ける石川。

 

「はぁ~……」

そんな光景に、どっちが夫婦漫才だよ、と思わず嘆息を一つつくと、俺と友恵と海帆、三人のそれが重なる。

 

「全く、あいつ必死すぎよ、そろそろ本当に説明してもらえるかしら? じゃないと時間なくなるわよ?」

偶然重なったことに三人で笑いあっていると、言い争っていた石川がいい加減にカズに付き合いきれなくなったのか、カズのことを吐き捨てるように言いながら脱線していた話を戻す。

 

「うわっ、本当だ」

友恵の驚いた声を上げたので時計を確認すると、時刻は八時二十五分。

確かに用件次第ではあるがホームルームに間に合うか微妙なラインだ。

 

「えーとですね、先輩方に集まってもらったのは前に今年の文化祭で何かやりたいなっていってたじゃないですか、それについてちょっとやれたらいいんじゃないかと思うことがあって」

 

「あ~そんなこといったような言わなかったような……?」

カズは覚えているのかいないのか自信がないような様子で何の儀式なのかクルクルと回っている。

八卦掌回天! とか言い出しそうだ、それとも悪魔でも召喚すんの?

 

「確かにいったけど……まだ一ヶ月と少しあるとはいえ、そんなに大きいことは出来ないわよ? それにいくら文化祭実行委員があるとしても私たちには生徒会で決められた準備もあるし、後任のことも色々決めないといけないし」

確かに石川の言う通り文化祭の準備はなかなかに骨が折れる。

文化祭実行委員の会議には生徒会からも行かなければならないし、やることだって少なからずあるのだ。

なにより後任、文化祭が終わり少し間を置いて行われる生徒会選挙があり、そこで次の生徒会役員が決まり、面倒くさいことこの上ないのだが、そいつらのために引き継ぎ作業なるものをやらねばなるまい。

 

つまり言外に何かやるのはかなり厳しいと言っているのだ。

 

それにこの前に皆で何かやりたいと言っていたのは出来ないのは知っているができたら楽しいだろうな、という理想の話である。

いわば宝くじがもし当たったら、というよく盛り上がる話と大差ない。

 

だが、そんなことは友恵も理解しているはずだ。俺もちゃんと指摘したのだし。

 

「わかってますよ、でも」

そこで一度区切り部屋の中の皆を、石川を、カズを、俺を、海帆を、期待を宿した瞳に写して、言う。

「ここにいる皆で何か出来たら楽しいと思いませんか?」

ニッコリと邪気のない笑顔。

幼馴染みの俺から見ても、その笑顔は夜の常闇で星々を束ね道を照らしてくれる月のように美しい。

 

思わず見とれていると、

「そうですね! 何をするのかはまだちょっとよくわかりませんし、状況はよく飲み込めていませんが、皆さんで何か出来たら楽しいと思います!」

海帆までが笑みを湛えてそういう。

その笑顔は朝日の陽光が夜の闇を祓うように眩しい。

太陽と月が同時に現れたような錯覚に陥りながらも、俺も言葉を紡ぐ。

 

「そうだな、まあ来年は受験だし、たまには面倒でもそういうのもいいかもな」

何故か友恵と海帆の顔を直視出来ずに頬を掻きながら言う。

 

「そうですよ! 最後なんですから!」

そこで一度言葉を切り、俺に流し目を向けニヤニヤと挑発してくるような表情の友恵。

「まあぁ~一条先輩はもしかしたら私と一緒の学年になってしまうかも知れませんけど」

「いってろ、俺の成績みて腰抜かすんじゃねえぞ」

もちろん悪すぎて。

「あはっ、一条先輩の頭の悪さで腰抜かすことなんて今更ありませんてぇ~」

「こ・の・や・ろ・う」

「痛いですって先輩!」

弱めのアイアンクローというか頭をガシガシ撫で回す感じでジャレつく。

いつものやりとりに弛緩した空気が流れ俺も友恵も笑みが溢れる。

 

「そっか、そうだな、んじゃあなんかやるかやるぞやろうぜ! 」

テンションが上がってきているのか、回転速度が上がっているカズ。

っていうかお前まだ回ってたのかよ……

 

「あんたらはいつも適当すぎんのよ……だからしっかり計画立ててやるわよ!」

なんだかんだ言いながらもしっかりやる気の石川。

 

「よくわかりませんけど、頑張りましょう!」

何故か率先して一番大きな声を上げる海帆に続き、全員で鬨の声を上げると同時に――キーンコーンカーンコーン――チャイムが鳴った。

 

「「「「「あ」」」」」

全員の声が重なった。

 

全員が先生に怒られたのは言うまでもないだろう。

 




そろそろPCで執筆してみたい。
受験やめて執筆だけしていたい。
愚痴ってすみません。

読んでくれてる方がいたら感想くれたら嬉しいです。
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