Fecit-puella フィ-シトゥプエッラ 作:nasari
テストが終わったので少しゆっくりできます(ノ´∀`*)
では、今回もお楽しみいただけたら幸いです!ヾ(*‘ω‘ )ノ
リビングのドアの前でしゃがみ、前で組んだ腕に顔をうずめてため息をついた。
マギと仲直りしようとしたのに、さらに怒らせてしまった。喧嘩するのはいつものこと、でも今回は何だか違う気がした。軽くなくて、凄く重いような感じだ。
マギとこのまま仲直り出来なかったらどうしよう……。ずっとこんな重いのが続いてしまうと考えたら、無意識のうちにまたため息が漏れてしまう。
「……どうしよ」
目が熱くなり、込み上げてくる感覚とともに視界がぼやけはじめた。
鼻を1回すすると、前の方から足音が聞こえ、バッと顔を上げた。
「……ナイト」
「マギ!」
マギが歩いてきたのだ。その後ろにはマキナがいる。俺はマギをちゃんと見れずに俯いた。どうやって謝ろう、また何か言って怒らせたくない。
「あ、あのさ……マギ……」
「……ごめん」
目を見開き、マギを見る。今、ごめんって言った?
「僕が悪かった。あんな風に怒るつもりは無かったんだ」
目の前にいるマギは、さっきまでの怒って怖い顔をしているマギではない。
マギは後ろにいるマキナを前に出させて、目線を下に向けた。
「その、コイツ……マキナのことも、すまない。」
素直に謝るマギがまるで別人のようで、俺はただポカンと聞いていた。でも、何だか嬉しくなって、フッと吹き出してしまった。
「ぷっ、あっははは!」
「な、何だよ、別に可笑しくないだろ?」
「違う違う!ごめんごめん」
俺は面白くて笑ったんじゃない、嬉しくて笑ったんだ。マギとマキナが仲良くしてくれそうで、俺とも仲直りしてくれるんだから、こんなに嬉しいことは無い。
「俺さ、すっごく嬉しい!マギとマキナ、仲良くしてくれるんだろ?」
「あ、あぁ。そうする、つもりだ」
「あと、俺とも仲直り、してくれるのか?」
「それに関してすまなかったと思ってる。ごめん、ナイト」
あぁ、今顔絶対ニヤけてるんだろうな。そのくらい嬉しいのだ。さっきまで泣きそうになってた自分はどこかに行ってしまったようだ。
と、突然後ろからドアの開いた音が聞こえる。振り返るとクラルスが顔を覗かせていた。
「坊ちゃま!リビングに入ってもよろしいですよ……って何かあったんですか?」
「何でもないよ!今行く!」
俺がそう言うと、クラルスはドアを少し開けたままリビングに戻った。マギとマキナの方を振り返り、ニッと笑顔を浮かべて言った。
「早く行こ!マギ!マキナ!」
*
ドアを開けると、リビングはパーティー会場のように飾り付けられていた。テーブルには様々な食事が並べられており、ナイトが「わぁっ!」と目を輝かせている。
「食事の用意が出来ました。では坊ちゃま、こちらへ」
オネストが一礼し、僕達を窓側へと誘導した。メイドや執事達がこちらを向き、僕達が注目される形になる。
皆それぞれその手にはクラッカーが握られている。
「コホンッ、それでは!今日はマギ坊ちゃま、ナイト坊ちゃまの誕生日です!坊ちゃま!誕生日おめで」
「あ〜!ちょっと待って!」
クラルスの合図で一斉にクラッカーを鳴らそうとしたのだろう。だが、ナイトが叫び、止めさせた。
「今日は、マキナも誕生日ってことにしない?」
「何で?」
ナイトに問いかけると、ナイトはマキナの肩を抱き寄せた。
「本当の誕生日は分からないし、マキナが今日家に来た記念日でもよかったんだけどさ、マキナが俺達の誕生日の日に来たのって、特別だと思うんだ!」
「特別?」
「あぁ!今日来たのはもしかしたら、母さんがそうさせたのかも……あっ」
ナイトは途端に気まずそうな顔をした。おそらく僕がまた怒るとでも思ったんだろう。でも……。
「ナイト、今日のこの日に、皆の前でそんな顔をするのか?」
「え?」
「今日は、特別な日だろう?俺とお前、あと、マキナの誕生日……だろ?」
僕は笑みを浮かべながらそう言うと、ナイトは表情を明るくしながら、「おう!」と言った。
「フフッでは、今日はマギ坊ちゃま、ナイト坊ちゃま、マキナお嬢様の誕生日、ということになりますわね」
セクトは前に歩み寄り、クラルスの肩に優しく触れながら言うと、クラルスは仕切り直すようにまた咳払いをした。
「コホンッ!では改めまして、マギ坊ちゃま、ナイト坊ちゃま、マキナお嬢様!誕生日おめでとうございます!」
パァーン!パァーン!
小気味よい音が響き、リビングに硝煙の香りが立ち込めた。
クラッカーが鳴り終わり、次は拍手の音が響き渡る。
「おめでとうございます!」
「おめでとう!」
「おめでとうございます、坊ちゃま」
皆それぞれ祝いの言葉を言い、拍手も終わるとオネストが窓を開けた。窓からは涼しい風が流れ込んで、硝煙の香りを消していった。
席につき、食事を始めてしばらく経った頃。テーブルの上に並べられていた夏野菜をふんだんに使った野菜やマリネ、パスタなどに手をつけ、他の料理も食べようとしたときだった。
「坊ちゃん坊ちゃん!」
正面の席に座っている執事の1人、濃い茶色の短いスポーツ風の髪に青い目のカウサがフォークを持ったまま話しかけてきた。
「今日の料理はどうっすか?」
「あぁ、美味しいよ。このマリネなんか本当に美味しい」
「それは良かったっす!オネストさんの自信作って言ってたっすから、喜ぶっすよ!」
カウサはフォークを3つ隣にいるオネストに向けた。そういえば、買い物の際、随分と材料を選んでいた。
「なるほどな。道理で今日は買い物が遅かったわけだ」
「駄目ですよカウサ。人にフォークを向けては」
カウサの隣に座る、茶色寄りのブロンドで前髪が少し長い、青い目のキトーが柔らかい口調でカウサを注意した。カウサは「へぇーへぇー」と切り分けられたステーキをフォークで取り、口に入れた。
「坊ちゃま、今日街で何かあったのですか?随分と帰りが遅かったようですが……?」
「あ!それ俺も聞きたいっす!」
「あ〜それか……」
少し身を乗り出すカウサと優しい笑みのまま聞く体勢に入っているキトーに見つめられ、仕方無く話すことにした。
「簡潔にまとめると、セクトを探していたらマキナが誘拐にあった。以上だ。」
「え?」
「いやいやいや、まとめ過ぎっすよ!それじゃあよく分かんないっす!」
キトーはキョトンとし、カウサは手を横に振りながら言う。まとめらていて、分かりやすいと思ったのだが、どうやらよく理解できなかったようだ。確かに少しまとめ過ぎか。
「えっと、まず、セクトが迷子になって、僕とオネスト、ナイトとマキナで二手に別れて探してて、しばらく探していたら、ナイトが屋根の上を飛んでたんだ」
「そこの時点でたいぶぶっとんでるっすね」
「こら、最後まで聞きましょう?あ、坊ちゃま、続きをどうぞ?」
「あぁ。で、ナイトに話を聞いたらマキナが誘拐されたと言ってな、屋根伝いにジャンプして路地裏を上から探していたそうだ。僕とオネストは警察に行って捜索を頼んだんだ。それからはとにかく路地裏を探した。だがな、アイツ、ナイトの奴の叫び声が聞こえたんだよ」
多少長くなってしまうが、カウサもキトーと聞き入っている。ここから僕も少し説明に熱がこもったな。
「ナイトがマキナの名前を叫んで、その声を頼りに路地裏を走った。そして、やっと犯人を見つけた!と思ったら肝心のナイトとマキナがいないんだ」
「それで、お2人はどこに……?」
「警察が犯人を縛っているときにな?上から声が聞こえたんだ。上を見上げたら、マキナを抱きかかえたナイトがいたんだよ」
おお〜という歓声が3人の口から漏れる。3人というのは、クラルスも一緒になって聞いていたからである。
「これで、犯人も捕まって、マキナも救出、めでたしめでたし、ってね?」
「そんなことがあったのですね」
「いや〜さすがナイト坊ちゃん!屋根の上を飛び越えるなんて!流石っすね!」
「アイツは運動神経だけは誰にも負けないからな。それもあったから今回は見つけられたんだろうな」
チラリとナイトが座っている隣に目をやる。そこではナイトがマキナの前に様々な料理を並べ、食べさせている。何を食べれるのか知る、というのをやっているのだろう。
「マキナ!これ食べれるか?マリネっていうんだぞ!」
「まりね?」
「ほら!食べてみな!どうだ?」
「おいしい」
「うん!エラい!」
ワシワシと頭を嬉しそうに撫でるナイトは、あの身体能力の持ち主にはとても見えない。まぁ、僕はずっと知っているから別に違和感はないのだけれど。
「……では、その誘拐犯が捕まったということはもう事件は解決、ということですね!」
「え?あぁ、そうだな。誘拐事件はもう解決……」
そう、解決。そう言い切ろうとしたが、違和感を覚えた。
あの時、あの誘拐犯、最後何て言っていた?
「ちょっと!離してよ!私達は雇われてあのガキを攫っただけなんだから!!」
雇われた?誘拐犯が、何の為に?一体誰が雇ったというのだ?何の理由でマキナを攫おうとした?
眉間にシワを寄せ、顎に人差し指を当てがった。何か違和感がある、これは、何だ?
「マギ坊ちゃま、どうしたのですか?」
声に戻され、ハッとする。ふと見上げると、僕の座っている椅子の後ろにいつの間にかセクトが他っていた。
「いや、何でもない。」
「そういえば、最近誘拐事件が連続して起こっていたんですよね?」
「あぁそれならオネストに聞いた」
「今日、オネストさんに言っていたんですよ。街に行くとき、気をつけてと」
「オネスト……知ってたならせめてもう少し早く言ってほしかったな」
「いえ、オネストさんはきっと下手に言って心配をかけさせたくなかったんですわ。オネストさんなりの気遣いですわよ」
それはそれで助かるが、やはりせめて行く前に話してほしいと思った。
だが過ぎたことだし、考えても仕方無いか、と目の前にあるソーセージにフォークを刺し、口に運んだ。
「結局、誘拐犯は捕まったんですよね?」
「あぁ、警察が連れていくのをちゃんと見たからな」
僕がそう言うと、クラルスは両手をパンッと合わせてホッとしたような顔をする。
「それなら、誘拐事件ももう起きませんね!よかった!」
そう、アイツらが犯人ならこれで終わりだ。それにそんなことに首を突っ込んでも、関係の無いことだ、無駄な苦労というものだろう。
僕は、口いっぱいになってリスのように頬が膨らんだマキナを見て、笑いをこらえながら水を飲んだ。
*
日が沈み、昼間に比べてとても涼しくなった外は風が吹き、さらに涼しく感じる。
俺しかいないこの庭には噴水の水が流れる音と、風が植物を揺らす音が静かに聞こえる。
サクッサクッ
足音が後ろから聞こえ、振り返るとそこには、クラルスが貸した白いパジャマを着たマキナがいた。ゆっくりと歩き、隣に来て俺を見上げた。
「マキナ?どうした?」
「ねむれ、ない」
「そっか。マキナ、こっちおいで」
玄関前の階段に座り、手招きをする。マキナが隣に座るのを見て、上を見上げるとマキナも真似して見上げた。
「今日はよく星が見えるな」
「ほし?」
「おう。マギに聞いてみな?きっと教えてくれるからさ」
頭を優しく撫ででやると、マキナはコクンと頷いた。
今日は随分と長かったような気がするなぁ、と少し息を深く吸って吐く。朝にマキナが来て、買い物に行ったはずが誘拐事件にあってしまったんだ。マキナだって疲れてしまっただろう。俺はあまり疲れてないけど、マギなんてついさっき部屋に直行したから、相当疲れたんだろうな。
でも、楽しいって思った。マキナが来た時からずっとドキドキ、ワクワクしてた。母さんにそっくりの女の子、でも小さくて、細くて、歩くのも少し危なっかしい、守りたいと心から思う、新しい家族。新しいことが始まるんだって、今までと違う何かが変わるのかもしれないって感じた。
不意に左側から体重がかけられる感触がし、見てみるとマキナがスースーと静かに寝息を立てていた。その頭を撫でると、まぶたをキュッとしめ、小さな声で「……あもる」とつぶやいた。母さんの夢でも見てるのかな?いつか母さんのことを聞いてみよう。マキナは母さんと、どんなふうに過ごしたのか……。
俺はマキナをそっと抱き上げ、起こさないようにそーっとクラルスの部屋に連れていった。
いかがでしたか?
今回は9話目にしてやっと1日が終りました_:( _ ́ω`):_
次回もできるだけ間を開けたくないですね(´;ω;`)
では!次回でまたお会いしましょう!( ・∇・)ノシ♪