Fecit-puella フィ-シトゥプエッラ 作:nasari
あ、コメントすごく嬉しいです有り難うございます
20XX年,7月7日
セリエース家豪邸
午前9時
様々な種類の自然豊かな木々に囲まれた全体が白い外壁、中はメイドや執事が行き交う長い廊下や1つ1つが広い部屋となっているセリエース家豪邸、そこから繋がっている周りより浮いた木目調の建物、道場。そこは朝早くから使われていた。
青みがかったショートカットの白髪が動く度に揺れ、白い道衣光に反射し輝いて見える。1人の少年が武術の稽古に勤しんでいた。
「セイッ、ハッ、ヤッ」
一連の動作を終えると執事に渡されたタオルで汗を拭い、水を飲み、ふぅ、と息をついた。
「う〜ん、いい汗かいたな!」
「お疲れになりましたか?ナイト坊ちゃま」
伸びをするナイトに執事のオネストが問いかけるがナイトはニッと笑って「全然!」と言った。
「そろそろお着替えになって下さいませ、もうじきアルド様がご到着すると連絡がありました」
「ほんと!?アルドおじさん来るの?」
さっきよりも目をキラキラと輝かせ、脱兎の如く更衣室へ向かった。その様子をクスッと笑いながらオネストは見ていた。
一方、豪邸のとある部屋、カタカタとパソコンのキーボード入力音が静かに響く少し薄暗く広い部屋、そこにブルーライトが反射し日光に当たるとは違う光り方の青みがかった肩ぐらいの長さの白髪の少年が1人、パソコンを打ち込んでいた。
すると、コンコンとノックの音が聞こえる。
「何?」
「マギお坊ちゃま、そろそろアルド様がご到着致しますわ、ご準備の方を」
「分かった」
素っ気なく答えるマギに、メイドは弱々しく、「失礼しました」と言って扉から遠ざかった。キリの良いところで止め、パソコンの電源を落とした。椅子にもたれかかり、ふぅ、とため息を零す。着替えようと椅子から立ち上がったと同時に扉がバンッと開いた。
「マギ!アルドおじさんが来る!」
「……知ってる、あと、開けるならノックぐらいはしたらどうだナイト」
白い道着から青いノースリーブのパーカーを着て、太陽のような笑みを浮かべて入ってきたナイトにため息をつきながら言った。ナイトはカーテンを勢い良く開け、部屋に光が入り込む。
「こんな暗くしてたらだめだろ?こんなに天気がいいんだからさ!」
「日光に当たりすぎるのも良くない、紫外線による皮膚へのダメージが」
「それずっと浴びてたらだろ?俺だってそのくらい知ってるって!それよりアルドおじさん!」
上手く騙せなかったため、こっそりチッと舌打ちをする。着替えるため、ナイトを部屋から追い出した。
「全く、騒がしいな」
正直言って、アルドおじさんは少し苦手だ、ナイトと同じように、いや、ナイトがおじさんと同じように騒がしくなった。その2人が揃うと本当に騒がしい、あの2人の声のボリュームを思い出すと、またため息をついた。
「いって!あ、マギ着替えた?」
「あぁ」
ナイトの背中をさする姿が目に入った僕が着替え終わるまでドアの前で座っていたらしい、扉を開けてぶつけてしまったようだ。
白いシャツに着替えた僕はエントランスホールにナイトと向かった。歩いている間、ナイトはソワソワと落ち着かない様子で、顔はあからさまに嬉しそうにしていた。
「嬉しそうだな」
「おう!でもおじさん以外にさ、なんかこう、嬉しい事が起きそうな予感がする!」
「嬉しい事?」
尋ねるとナイトはニッと笑った。よくもまぁ、そんなことが言えるな、『あんな事』があったのに……。
エントランスホールに着くと、見慣れたメガネ姿、カーキ色のシャツ、青い髪をオールバックにした髪型の人物がいた。
「坊っちゃま方、今アルド様がご到着したところです」
「おぉ!元気だったか〜?」
低い声が響き、ナイトは一気に駆け出して、子供のような笑顔を浮かべたアルドおじさんに抱きついた。反動でクルクルと2回回ってナイトを床へ降ろす。
「はははっナイトは相変わらずだなぁ、筋肉が大分ついたな、で、マ〜ギ〜は〜?」
アルドおじさんは顔をニヤつかせて僕に近づき、ヒョイッと持ち上げた。
「うわっ」
「お前も相変わらず軽いし細いなぁ、部屋にこもってばかりだろ?」
「うるさい、筋力とかいらないし、学力に必要無い。」
「ヘリクツ言うなって、っと、忘れてた、2人とも誕生日おめでとう」
優しく微笑みながら、僕とナイトの頭を撫でた。すると、あっと思い出したようにポンッと手を打った。
「おっと、忘れる所だった」
アルドおじさんはおもむろに玄関ドアの方を向いた。
「入って来ていいぞ!おいで!」
玄関扉に向かって呼びかけると、おずおずと、慎重に、『母さん』が現れた。
「で、どういう事か、説明してくれるよね?おじさん?」
日差しが入り込む明るく広い部屋の細長いテーブル、そこに俺とマギ、おじさんと女の子が向き合って座っていた。
低い声でマギがおじさんに問い詰めると、おじさんは気まずそうに頭を掻いた。
「ん〜、どっから説明すれば良いかなぁ」
「なぁマギ、そんなに怒らなくても……」
なんとかなだめようとするが、マギは「怒ってない」、と静かに答える。いや、態度がもう怒ってるじゃん。
「まずは、そいつについて話してよ、おじさん」
ジロッと女の子を睨んだ。それでも、女の子は動じずマギの視線を感じたのか、マギを見る。女の子は本当に無機質というか、何も考えていないような、ただそこに存在しているだけのような、そんな雰囲気がある。
「あ〜、お前らアモル、お母さんがなんの仕事をしてたかは知ってるよな?」
俺とマギが同時に頷く。
「人口生命の研究、人を材料から創り出すことをやっていた、そして、その『作品』がこいつだ、ただ、あの研究所は襲撃を受けて、こいつだけはなんとか逃げてきた、だがアモルもその部下も死んでしまったんだ。」
マギは声を出さずに、口を開けたままになった。俺は驚いたあまり急に立ち上がって椅子を倒した。あの事件に生存者はいないはず、そしておじさんが言ったのは、今目の前にいるこの女の子は『人造人間』であるという事、母さんはやはり死んでしまったという事。
20XX年,7月3日
母さんが死んでしまった事を執事から聞いたのはこの日だった。
早朝の5時頃、突然電話の音が鳴りその音で目が覚めた僕とナイトとオネスト、オネストが出て、しばらくして電話を切り悲しげな面立ちで、僕たちにゆっくりと話した。
「坊ちゃま、悲しいお知らせです、お母様がお亡くなりになりました。」
突然の宣告、僕とナイトは目を見開いた。ナイトはオネストに突っかかり、襟を掴んで、なんで、なんで、と叫んだ。
「何者かに襲われた模様です、しかし、それは国家機密となるようです、お母様の研究に関わることだと、先程政府から連絡がありました、生存者は、いないとのことです……」
なんとも勝手すぎる決定。研究、人工的に生命を創り出す研究をしているというのは知っていた。つまり、必然的にその研究を狙って襲う奴が現れたということになる。しかし、それでも、僕は納得出来なかった。何故母さんは殺されなければならなかったのか。約束していたんだ、今年こそは一緒に誕生日を祝おうって、今年は一緒にいようって、それなのに、母さんは……。
「うっうぅ、かあ、さん」
ナイトが肩を震わせ涙を流している、泣くな、泣くな、自分にもそう暗示しているが、頬に雫がつたう感覚がして、それは次々とつたった。そして、膝から崩れ落ちて、ナイトと泣き叫んだ。信じたくない、信じたくない、そんな思いだけが心に積み重なった。
*
母さんが死んだ知らせを聞いた4日目の今日、ナイトは自然に振舞おうとしているが僕は相変わらず、いや以前より口数が少なくなったとナイトに言われた。いつまでも引きずっていても仕方が無い、死んだ人間が、悲しむ事で生き返るわけじゃない。
そんな時に、来たのがアイツだ。母さんと僕達と同じ白髪、母さんの面差し、本当に母さんが帰って来たと思った。でも、母さんなら僕達を真っ先に撫でたり、抱き締めたりするし、何より身長が低い。僕の身長は172cm、アイツは大体20cm以上低い、母さんとは5cm位の差だったはずだ。それに……
「研究所の襲撃って、生存者がいないんじゃなかったのか?」
「あぁ、アモルが死に際に逃がしたらしい、そこで、お前達に頼みたい事がある。」
アルドおじさんは真剣な眼差しで僕達を見据えた。すると、立ち上がり頭を下げた。
「コイツを頼めないか?」
なんだって!?アルドおじさんは僕達にこの母さんの『模造』を預けたいらしい。勿論僕は反対だ。
「もちろんだおじさん!任せろ!」
このっ!!僕は反対だって!こんなわけの分からない奴なんか任せられたくない!。そう言ったのだが、ナイトは
「母さんが残してくれたものなんだ!それに、頼まれて断る理由も無い!」
キリッという効果音が付きそうな程凛々しい表情で言った。あぁ、迷惑な話だ。
「すまない、ありがとう。あの襲撃の生き残りのこいつはいつ狙われるか分からなんだ、でも俺だけじゃ守りきれない、それに俺はこれからまた北部に戻る。調べたい事があるんだ。」
「母さんの事?」
「あぁ、とにかく謎が多すぎる。死んだ知らせは電話一本だけ、事件の詳細も知らされて無い、遺体が返ってこない、とにかく情報が無いんだ。だから、今すぐにでも出発する、何か分かったら連絡する。じゃあ後は頼んだぞ」
口早にそう言うと、エントランスホールに戻り扉を開け、外へ足を一歩出した時だった、ふと思い出した様に振り返る。
「そうそう、そいつが言ってたんだが、そいつの名前はお前達に決めてもらいたいらしい、アモルからの遺言だそうだ、じゃあな」
そう言い残して扉が閉まり、外から車のエンジン音が離れて行った。
「母さんの遺言か、じゃあ早速決めないとな!」
ナイトが笑顔で嬉しそうに言った。無理に貼り付けたような笑顔が、どうも違和感があった。僕は笑顔など貼り付けようだなんて思わない、あからさまに仏頂面であろう顔に頬杖をついた。
いかがでしたか?これからもこの拙い文章を見ていただき、もしよろしければ面白いなんてふうに思って下さればすごく嬉しいです