Fecit-puella フィ-シトゥプエッラ   作:nasari

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はい、第3話です。今後はこれより遅いか同じくらいだと思います。えぇ頑張ります見て下さる方がいらっしゃいますから!ヾ(⌒(ノ•ω•)ノ


第3心 オネスト

 

「オネストさん!」

1人のメイドが駆け寄った。声をかけられ銀色のトレイに接着剤や折り紙を乗せたまま振り返るのは少し白髪混じりの黒髪に焦げ茶の瞳、目に小じわがある長年この屋敷に務めてきた執事長オネスト。

「どうしたのですか?クラルス」

「いえ、その、坊ちゃまのことで……」

走って来たことで少し乱れてしまった茶色い髪を直しながら、気まずそうに言った。

「奥様がお亡くなりになり相当ショックを受けているはずです、それなのに、誕生日パーティーなんて、喜んでいただけるのでしょうか」

クラルスは坊ちゃま達の事を心配しているよう、

おそらくこう言いたいのだろう、人が死んでいるのに祝い事なと不謹慎ではないのかと、だが、だからこそ。

「クラルス」

「は、はいっ!」

「だからこそです」

「えっ?」

「坊ちゃま達は心の支えを無くしたような状態なのです、だから、1人ではないのだと、私達が坊ちゃまを支えるのだと、その意識の現れとも言えるのです、そして、何も出来なかった私の罪滅ぼしもあるかもしれません……」

そうあの時、自分に何か出来たのではないか、奥様がお亡くなりになる前に何か、出来たのではないかとどうしようもない罪の意識が離れない、奥様……お嬢様だった貴方、私が初めてこのお屋敷に来た時、貴方はまだ幼かった。

 

30年前 20XX年,7月26日

自分が屋敷に来た時も、こんな夏だったのを覚えている。緊張して迎えの車の中は居心地が悪く、着なれたはずのスーツが新品のように固く感じた。そうあの時は驚いた、まさか雇い主が直々に迎えに来るなんて。

 

「あ、あの」

「ん?なんだい?」

「わざわざ私のような執事を迎えに来るなど、恐れ多いです……」

「あぁ!気にしなくていいよ、僕が来たくて迎えに来たんだから」

はっはっはっとおおらかに笑う蒼い髪に翠の瞳、黒いスーツ、赤いネクタイを着た今日から仕えることになる旦那様、ヨークス様。こんなに雰囲気が明るい人はあまり見たことが無い、と、屋敷に着いたようで私達が乗っている高級な黒い車が止まった。

「さぁ、着いた」

「は、はい」

車から降りるとそこは緑に溢れていた。風がそよぎ、芝の香りが舞う、真上に上がった太陽で白い外壁が光り輝き自然と調和しているようだ。私は今日からここに住み込みで働く事になる。と、屋敷の角、そこを白い何かがふと通り過ぎるのを見たような気がした。

「まず、荷物を置きに行こうか、部屋に案内するよ」

「あ、すみません!」

旦那様に促され屋敷の中に入ると、広いエントランスホール、そこの正面に螺旋階段の登り口がありそこを丁度メイドが通っていった。

「こっちだよ」

螺旋階段の左横を指さしながら歩く旦那様の後ろを最低限の荷物をいれたキャリーバッグを持ち歩く。

案内された部屋は螺旋階段のすぐ横だった、白いカーテンの窓、大きな本棚、クローゼット、ベッド、デスクと卓上ランプが1つづつ置いてある、だが少し家具に埃がかかっているようだ。

「すまないね、掃除がまだだったんだ、手伝うよ、それとクローゼットとか好きなように使っていいからね」

「いえ!これくらいは自分でします!お心遣い有り難うございます」

掃除なら自分でも出来る、これ以上他に何かやらせてしまったら流石に申し訳ない。だが旦那様は少し残念そうに笑いながら「じゃあ僕は部屋に行くよ、暫くしたらまた呼びに来るよ」と言って部屋を出ていかれた。

「ふぅ、随分と世話好きな人だなぁ……」

荷物を置き窓を大きく開けた。吹き込んできた風が家具などについた埃を舞い上がらせる。ゲホッ少しむせるな。掃除をしようとバケツや雑巾は無いかと部屋を見渡すが無く、仕方無いと部屋を出て探しに行く。

まず螺旋階段のあるエントランスホールに出ると先程2階に上がっていたメイドとばったり会った。

「あ、新しい方ですか?初めまして〜」

「どうも、初めまして」

ニッコリと柔らかい笑みを浮かべて会釈され、出来る限り私も笑顔で会釈する。挨拶ついでに掃除用具が何処にあるか聞いてみよう。

「あの、掃除用具が何処にあるか教えて頂きませんか?」

「掃除用具ですか〜、あ、それならマリアさんが知ってると思いますよ〜」

「マリアさん?」

「はい、外にいるはずです〜」

「そうですか、有り難うございます」

玄関扉を指さされて、軽くお辞儀してエントランスホールを後にした。

外はさっきよりも風が強くなっている、木の葉が風に吹き上がって飛んでいる。なるべく早くマリアという人物を探したいが、ここである事に気づく。

「庭、広すぎる」

そう、このだだっ広い庭から人を探すのだ、地図も無く初めて来たこの場所でどうやって探せばいいのか見当もつかない。しかし、屋敷の中をあまりウロウロするのは良くない、とにかく探せば見つかるかもしれない。そう思ってまず屋敷の角を曲がろうとした時だった、会話が耳に入った。

「……じゃああそこの掃除お願いね」

「はい、お嬢様」

2人の女性の声が聞こえる、1人の方は離れたようで足音が遠のいた。そこに誰がいるのか気になり足を1歩前に出す、だが、パキッと小枝を踏んでしまったようで、いやに折れた音が響いた。

「誰っ!?」

声の主を驚かせてしまったようだ、このまま立ち去るのも気が引けて、素直に私は出ていく。

「あ、すみません、驚かせるつもりは……」

謝罪をしようとしたが言葉が詰まる。今目の前に対面した女性、フリルが肩や裾についた水色のワンピースを着て、青みがかった少し内巻きミドルロングの白髪、翠の瞳の少女、その外見に目を奪われたのだ。

「あら?あなたは……」

「は、はい!今日からこのお屋敷に務めさせ頂く者です!えっと、貴方は?」

「ごめんなさい!まだ言ってなかったね!私は……」

「お嬢様〜!何処にいらっしゃるのですか〜!お嬢様〜!」

話を遮られてしまった少女は何やらムッと顔をしかめハァ〜と湿っぽいため息をついた。

「セヴィアね……もう抜け出したのバレちゃった。ごめんなさい!私行かなきゃ、じゃあね!」

口早にそう言うと私の隣を通り抜けて屋敷に戻って行く。その様子を見て暫く呆けてしまった。それにしても元気そうな子だったなぁ。

しかし、掃除用具を忘れて部屋に戻ったとき何故部屋がピカピカだったのかは私は知らない。

その日の夜、屋敷にいるメイドと執事が呼び出された。ダイニングであろう広い部屋に集められ、私は今旦那様の隣にいる。

「皆、紹介しよう。新しく家に仕えるオネスト君だ、よろしく頼む」

「よろしくお願いします」

少しの緊張からか、深々と頭を大袈裟に下げてしまう。メイド、執事、コックも口々に「よろしく」「よろしくね」と言った。

「オネスト君、こっちは僕の妻と娘と息子だ」

「私はモリスです、オネストさん。そしてこっちは私の娘アモルと息子のアルド」

ロングの艶やかな白髪を右横に流しクリーム色のカーディガンを白いシャツとロングスカートに羽織った優しい青い瞳で微笑む奥様、モリス様。そして、その隣に座っているのは、昼間出会ったあの元気な女の子と今初めて見る男の子。旦那様と同じ蒼い髪、青い瞳、まだ幼くソワソワと椅子に座っているアルド坊ちゃま。隣の女の子、アモルお嬢様は昼間のような元気な雰囲気は今は無く、母親であるモリス様と同じ穏やかな雰囲気を身にまとっている。

「アモルです。オネストさん、よろしくおねがいします」

スッと立ち上がりまるで洗練されたような動きでお辞儀をし、私はハッとしてまたさっきよりも深々と頭を下げてしまう。クスクスと奥様の微笑む笑顔と声を聞き少し恥ずかしくなった。私をジッと見つめるアルド坊ちゃまの視線に気づかずに。

その後、部屋に戻りベッドに倒れ込むようにして寝転がるとフゥとため息を吐く。スーツのジャケットを脱いでやっと身軽になったように感じた。月明かりが入り、薄暗い部屋を上体を起こし見回す。まだ開けてもいない黒いキャリーバッグが目に入り、服などをクローゼットに移そうとしたときだった。コンコンッとノックの音が入り込んだ。

「はい開いてます、どうぞ」

キィッと静かに音を立て扉が開き、そこには桃色のネグリジェ姿のアモルお嬢様がニコッと笑みを浮かべていた。

「ア、アモルお嬢様!」

「こんばんはオネスト、夜遅くにごめんなさい」

アモルお嬢様は昼間の様な元気そうな笑みで部屋に入って来る。

「昼間、ちゃんと自己紹介出来なくてごめんなさい。貴方はオネストでいいのね?」

「はい。しかし、何故このような時間に、それも私など部屋に……」

「あ〜、えっとね……」

お嬢様は少し目を逸らしながら頬を掻いた。何か言いたいことでもあるのだろうか?と、私は昼間のことを思い出し青ざめた。もしやあの立ち聞きに怒っていらっしゃるのかもしれない、すぐに謝罪しなければ!

 

「さっきの私は違うの!」「申し訳ありません!」

 

『……えっ?』

 

声が重なりシン……と静かになる。しかし、お嬢様は今なんと仰られた?謝罪するのに必死で上手く聞き取れなかった。

「えっ?どうして謝るの?」

「え?昼間のことを怒っていらっしゃるのでは……?」

「昼間?何のこと?」

「その、私がメイドの方とお嬢様の会話を立ち聞きしてしまって、それで……」

また静寂、しかしそれはお嬢様の含み笑いによって破られる。私は何が何だか分からずオロオロとしてしまう。

「私は別に怒ってないよ!それにその話はあなたのことでもあったんだもん!」

「え?」

「お父様ちょっと忘れんぼうというか、この部屋のお掃除をね自分でやろうとしてたの。でも忘れてたからマリアにお願いしたの」

マリアとは自分が探していた人物の名だ、あの時お嬢様と話していたのはマリアさんだったのか。

「ところで、お嬢様?」

「何?」

「先程は何を言おうとしていらっしゃったのですか?」

「あぁ〜、それね」

お嬢様はポスッとベッドに腰掛けた。話によると、さっきの態度は旦那様と奥様の前でのみ極力とるらしく気にしないでほしいとのことだった。父親が医療機関に携わっていることから、よくパーティなどが行われ、そこで失礼が無いように接するためだと言う。

「それは、旦那様や奥様から言われたことですか?」

「ううん、私が自分で決めたの。それにお父様やお母様におてんばな姿を見せて心配させたくないから……」

この方は10の年でこのようなことをお考えになるのか。私は感心と同時に不安になった。今の年頃、おてんばだっておかしくない、もっと遊びたいなどというふうに思っているはずだ。

私は気がついたら口が開いていた。

「お嬢様、もしよろしければ、私などで良ければ話し相手でも何でもなります」

「えっ?」

「だから、せめて私の前では気張らずに、お好きなようにしてください」

自分でも言っていて失礼だと思った。雇い主の娘に話し相手になるなど身の程知らずにも程がある。しかし、お嬢様はパッと顔を明るくした。

「本当に?何でもいいの?」

「はい」

「本当に何でもしてくれるの?」

「はい」

やった!と言わんばかりに目を輝かせるお嬢様はトンッとベッドから立ち上がり、向かい合うとズイッと顔を近づけた。

「やっぱり初めて会ったときに思った通りね!あなたは優しい人だと思ったの!ありがとう!約束守ってね?絶対よ!」

扉へ向かい手を振って、お嬢様は慌ただしく部屋を出ていった。さっきまでやろうとしていたことをすっかり忘れてしまった。

 

 

その後仕方無く寝ようとしたが何故かよく眠れず、朝よほど眠そうな顔をしていたのだろう、お嬢様に笑われてしまったのを思い出し、フッと自然と口角が上がってしまう。

「オネストさん?」

「あぁ、何でもありませんよ。さぁ、早く準備をしてしまいましょう、坊ちゃま達が待ちくたびれてしまいます。」

「はいっ!」

元気よくパタパタと音を立てて走るクラルスの後ろ姿を見て、私も準備をせねばと銀色のトレイをダイニングへと運んだ。

 

 




いかがでしたか?今回は主人公達から外れて執事のお話です。次回の更新はおそらく結構遅くなるかも知れませんすみませんm( __ __ )m
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