Fecit-puella フィ-シトゥプエッラ   作:nasari

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前回よりも遅れて投稿です。今回はなるべく文に隙間を与え、読みやすくなるようにしてみました。

またお楽しみいただけたら幸いです。m(*_ _)m


第4心 街へ行こう

30分、だいたいそのくらい時間が進んだと思う。だんだん分かる花の名前が無くなって、暇になった。

 

マギは相変わらず本ばっかり読んでて何もしないし、走り回ろうにもマキナはまだ危険だ。下手に走って転んで怪我をしたら大変だし。

と、何もやることが無くただ暇を潰すだけの時間にも飽きて木陰のマギの隣に寝転んでいた。俺の隣にはマキナも真似をして寝転んでいる。

 

「あぁ〜暇だ〜」

「ひまだ?」

「……。」

 

いつになったらオネストの用事は終わるのだろう、暇で暇で死んでしまいそうだ、とぼやくと「たまには大人しくしてなよ」と冷たく言うマギの声が聞こえる。俺、そんなに大人しくないのか?

 

「なぁマギ〜なんか面白い遊びないか〜?本ばっかりじゃなくてさ〜」

 

「本を読むのは大切だし、本がくれるのは知識だけだ、無駄がない。絶対のようなものなんだよ、それも息を吸うのと同じくらいな」

 

何言ってるのか全然分かんねーや。

 

「僕にとっては面白いってことさ、ナイトは息吸うの楽しくないか?」

 

マギに言われてふと思った。息を吸うのなんて当然のことだ、でも意識して俺は大きく息を吸ってみた。

 

 

すぅぅぅ〜はぁぁぁ〜。

 

 

「あ、楽しいかも」

 

 

「……素晴らしいな」

 

 

おおっやばい!結構楽しい!空気が美味く感じる!おおっ!。

隣で深い深いため息をつくマギの姿は俺は見なかった。

 

 

馬鹿は時々本当に素晴らしく思う。単純なことも楽しくしてしまうのだから。

息吸うの楽しくないか?なんてただの冗談のつもりだった、いやどこかでナイトは本気にすると分かっていたのかもしれない。案の定ナイトは深呼吸を始めた。

 

「あ、楽しいかも」

 

「……素晴らしいな」

 

馬鹿だ。しかし、考え方を変えればそれはそれで幸せかもしれないな。ゴチャゴチャ考えないでシンプルに生きていると言える。

それが僕から見れば呆れるものもあるが、少し、羨ましくも思っている自分もいるのだ。

辛いことを忘却し、次へ進む。

それが……とても……

 

 

「……羨ましいな」

 

 

「すぅぅぅぅ〜はぁぁぁぁ〜。ん?なんか言ったかマギ?」

「何でも無い。それより、いつまで深呼吸してるつもりだ?」

「ん〜もうちょい」

 

寝転がり、空を仰ぎながら深呼吸を続けるナイト、そしてそれを真似するコイツ。あぁ阿呆らしい。

 

 

本を半分ほど読み終えフゥと息をつく。隣を見るとナイトは深呼吸とは違った呼吸になっていた。ゆっくりとした呼吸音が聞こえる、深呼吸を続けるうちに眠ってしまったようだ。

その更に隣を見るとコイツ、母さんの『模造』は眠っておらず目を開けたまま空をジッと見つめていた。僕と同じ翠の瞳がパチパチとまばたきをする。と、『模造』は僕の方に顔を向けた。

 

「まぎ」

「……何」

「うえ、うかぶ、しろい、の、なに?」

 

仰向けのまま空を指さした。上を見上げるとそこには青い空と白い綿雲がある。

 

「白いものは水蒸気を含んだ空気が気圧の低い高度まで上昇し、膨張し温度が冷えたもの。つまり雲だ」

 

「すいじょうき、くも。あお、は?」

 

「上にある青いものは地上から見上げた空間、太陽には様々な色があり大気に含まれる分子が太陽の、特に青い光を大気中に散乱させる。それによって大気が青く見える空間を空という。時間によって色が変わる。」

 

「たいき、そら」

 

何も知らないんだな。母さんの実験は聞いたことがある。

 

まずクローンの基礎を作り上げ『身体』を造る、そこから電流によって心臓を動かし脳を活動化させ、そこから脳波のデルタ波を確認。

肺などの臓器も活動が確認されたら人工呼吸器によって酸素を送る。それからは安定するまで経過を見守る、だったはず。

そこから知能をインプットし学習させると聞いていたがそれを行わなかったのだろうか。

学習させ、一定以上の学力が身についてから羊水に極めて似た溶液から出させるはずだ。

 

しかし、この『模造』には一定の学力に到達せず言葉だけを話し、常識が無い状態。

もしかしたら、と、ふと考えが浮かぶ。あの襲撃が無ければコレは完成したのかもしれない、母さんが死ぬことも……。

 

「考えても仕方が無いじゃないか……。」

 

首を強く横に振り考えをリセットする。

考えても仕方が無いことは分かっているはずだ、考えても、願っても。

 

「くも、そら、くも、そら」

さっき教えたことを空を見上げたまま繰り返しているコイツを見ていると何故か苛立たしくなってくる。何故コイツが生きている?何故母さんは死んだ?何故……

 

 

────コイツが死ねばよかったのに。

 

 

ハッとして僕は口元を手で覆った。今、僕は何を考えた?グルグルと頭が混乱しそうになり膝に顔を埋めた。

 

 

「飾りこっちにわけてくださ〜い」

「はい、これでいいかしら?」

「ありがとうございます!」

 

ちゃくちゃくとダイニングが飾り付けされていくなか、オネストは何やら真剣な表情で顎に手を当て飾り付けの様子を見ていた。

こんなに派手にして、坊ちゃま達には幼いだろうか?いや、これくらい派手にしなければ。折角の誕生日なのだ、ちゃんと祝ってさしあげたい。

 

「オネストさん!料理の方はいかがいたしましょうか?」

「料理は夜にしましょう。昼は坊ちゃまと街へ行き、そこで昼食をとります。その間貴方達は料理の材料の調達を街でお願いします」

「はい!」

 

指示を出した後、キッチンへと向かった。すぐそこで、ドアがちゃんと閉まっておらず隙間がありドアノブに手をかけたときだった、会話が聞こえてきた。

 

「ねぇ、最近街で事件が起こってるそうよ」

「まぁ、どんな事件なの?」

「それがね……連続誘拐事件ですって」

「怖いわねぇ」

「何の話ですか?」

「キャッ!?」

 

話をしていたメイド達は気が付かなかったのだろう。話かけると肩を震わせて驚いた。

 

「あっオネストさん!すみません!すぐに準備を!」

「いえいえ、別に叱りに来たわけではありませんよ。ところで、さっきの事件とは何です?」

 

トレイを持ち、慌てた彼女達は動きを止め、顔を見合わせた。

 

「街の方で、誘拐事件が最近多くなっているそうです。若い方や子供が狙われているとか……」

 

街。今から行くというのにとても物騒だ、なるべく警戒しなければ。坊ちゃま達も例外では無い、しかし、街にはこの家の古い知人の方に会いに行かなければならないのだが……。

 

「あの、オネストさん」

 

メイドの1人、ブロンドの髪を後ろで束ね、青い瞳の少しタレ気味の目、170cm程の女性にしては少し高めの身長、セクトがダイニングからやって来た。

 

「街へ出向く際、ワタクシも同行してもよろしいでしょうか?」

 

最近事件があり物騒な街に行くには確かにもう1人いた方が安全だ。だが、女性を危険な目に遭うかもしれない場所に連れて行くわけにはいかない。

しかしセクトはニコッと微笑み、拳を前に握り締めて見せた。

 

「ワタクシの『力量』、お分かりですわよね?。だから普通の男性くらいならどうということもありませんわ」

「しかし、セクト……」

「大丈夫ですわ、ね?」

 

セクトが少し前のめりになって微笑む。他の執事やメイドには準備をしていて欲しい、あまり大人数で行くのも、それほどの用事でもない。ここはやはり私とセクトの2人で坊ちゃまに同行しよう。

 

「分かりました、では外出の準備をお願いします、セクト」

「はい」

私とセクトはそれぞれの部屋へと向かった。

 

暫くして執事服から普通のグレーのスーツに着替えた私は最小限の持ち物と、帽子を3つ持って部屋から出るとセクトも丁度出てきたようで、メイド服から青いスーツにサブリナパンツ、白い小さめのショルダーバッグを肩に掛けていた。

「では、行きましょうか」

「はい、オネストさん」

 

私とセクトは坊ちゃま達が待っているであろう外へ向かった。

外へ出て、玄関の石畳を少し進んで左側にある桜の木、そこにマギ坊ちゃま、ナイト坊ちゃま、そしてマキナお嬢様が並んで桜の木の下にいた。

 

「坊ちゃま、街の方へあの方に挨拶へ参りましょう、申し訳ありませんが屋敷にはまだ入れませんので、このまま外出となりますがよろしいですか?」

「僕は構わない。それより、ナイトを起こさないとな。」

 

マキナお嬢様の隣、ナイト坊ちゃまは熟睡している様子で口を開けて眠っていた。

ナイト坊ちゃまは1度眠ってしまうとなかなか起きてくださらない。これは少し長丁場になってしまうか?と思ったときだった。

 

おもむろにマギ坊ちゃまは読んでいた本を閉じ、その次の瞬間。

 

 

バンッ

 

 

本の背表紙をナイト坊ちゃまの顔面に容赦無く叩きつけたため、打撃音が響く。

 

「ぶっ」

「起きろ、ナイト、出かけるぞ」

 

顔面に本を叩きつけられたナイト坊ちゃまはまだ寝ぼけた目を擦りながら上半身を起こす。

 

「んあ、マギ?」

「マギ坊ちゃま、本は人の顔を叩くものではありませんよ?」

「それはすまない、でもナイトにはこれが丁度いいんだ」

 

ナイト坊ちゃまを見ると、欠伸をし、グーッと背伸びをして立ち上がった。

本で叩きつけられた顔はあまり気にしていないようだ。しかし、寝起きがとても悪い坊ちゃまがこれほど簡単に起きるとは、どれほどの力で叩いたのだろうか。

 

「じゃあ行こうか、オネスト」

 

スッと立ち上がり、着いた草を払うと私を見ながらそう言い、本を持ったまま歩き出そうとするマギ坊ちゃまを引き止めた。

 

「何?」

「本を持たれたまま行かれるんですか?他のメイドを呼んで預けさせましょう」

「いらない、別にこのままでもいい」

 

引き止まった足を再び動かし歩き出す、が、またピタリと止まり、クルリと反転して私ではなく、今まさに立ち上がろうとしていたマキナお嬢様を見下ろした。

 

「……まさかだとは思うがこいつも連れていくのか?」

 

まさか。マギ坊ちゃまはその『まさか』という言葉を使う必要は無いと思っているはずだ。目がそう、訴えているのだから。

確かに、マキナお嬢様も連れていくつもりだった。そのため、帽子を3つ持っているのだ。

 

「はい、マキナお嬢様も街へ行く予定に変更しました」

「置いていけばいいだろ、ソイツはまだ歩くのだって危ないんだろ?それを人混みの中に連れていって怪我をされても迷惑だ、あとソイツにお嬢様なんてつけなくていいだろ」

 

冷たく淡々と話し、フンッと鼻を鳴らした。口調と態度からよほどマキナお嬢様が気に食わないんだろう。しかし、お嬢様とつけるのは当たり前だ、彼女だって……。

 

「マギ坊ちゃま、マキナお嬢様もかぞ……」

「こんなところでいちいち時間を潰さなくていいだろ?さっさと行くぞ」

 

話を遮り、帽子をパッと取って足早に歩き出そうとした時だった。3度目、マギ坊ちゃまの足が止まる、しかしそれは私でもセクトでもナイト坊ちゃまでもなかった。マギ坊ちゃまの服を掴み、止めたのは……。

 

「……何だよ」

「マキナお嬢様……」

 

キョトンとした顔でマギ坊ちゃまの服の袖口を掴んで止めたマキナお嬢様は、口を開く。

 

「まきな、おく、いく、まきな、やしき、おく」

 

言葉を継ぎ接ぎに繋ぎながら、何とか話していき、1度呼吸を少し深く吸って、空気と共に吐いていく。

 

 

「おいて、いかないで」

 

 

今まで継ぎ接ぎだった言葉が文になる。短く、だがそれだけの意味がある。マキナお嬢様に続いて帽子を被ったナイト坊ちゃまが詰め寄った。

 

「マギ!連れていったっていいだろ?マキナだって行きたがってるんだし、オネストとセクトだっているんだ、大丈夫だって!」

 

少し眉を寄せ、声を張るナイト坊ちゃまに、ハァとため息をつくと後頭部を抑えたマギ坊ちゃまは、「仕方ないな……」と本当に仕方なさそうに呟く。

ニッと笑みを浮かべ、マギ坊ちゃまの前へ行くとパッと振り返るナイト坊ちゃまは足踏みを3回程すると、「なぁ!早く行こう!」と、門を指さした。

 

「……騒がしい」

不貞腐れたマギ坊ちゃまと元気が有り余って仕方ないというようなナイト坊ちゃまとその勢いになかなか追いつけないマキナお嬢様。お嬢様に1つ残った帽子を被せ、その3人を見守りながら同行する私とセクトが街に着くまであと15分。

 

 

 




いかがでしたか?今回はマギがグラグラと揺れますね。次回も新キャラを出す予定です。

気になる点がございましたら、いつでもどうぞm(_ _)m

では、また次回で
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