Fecit-puella フィ-シトゥプエッラ   作:nasari

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どうも、nasariです(´・ω・`)

前回からの更新が遅れてしまいました。テストなどが重なりなかなか進行できなかったのです。すみませんm(_ _)m

さて、今回もお楽しみ頂ければ幸いです。m(*_ _)m



第5心 天才の分らない事

ガヤガヤと人の声や動物の鳴声、車の走行音が入り混じった『街の声』が今日も変わらず流れていく。

中心の時計塔をシンボルとしたこの街のこんな雰囲気が昔から好きだった。人が賑わい、活気がある感じがこっちまで明るくしてくれる。

 

「では、行きましょうか」

「ちょっと待って!」

 

街に着き、目的地の時計塔に行こうとした時、ナイトが大声を出し皆を引き止めた。

 

「何だ」

「あのさ、俺は別行動でもいい?街見て回りたい!それに、どうせ難しい話ばっかだろ?」

「ナイト坊ちゃま、やはり、ちゃんと皆で行かなければ……」

「いや、いいオネスト」

 

オネストがナイトを説得しようとするところを止めた。確かにまぁ、ナイトがついて来ても来なくても支障はない、それどころかむしろそっちの方がいいかもしれない。下手に落ち着きがなくウロウロとされても嫌だし。

「ナイト、時計塔は分かるな?」

「おう!」

「じゃあ12時、その時間になったらこっちに来い。それまで好きに遊んでろ」

「よっしゃ!」

 

飛び跳ねて喜ぶナイトは早速走って行こうとする。だが、僕はふと思い立ち、ナイトのフードを掴んだ。

 

「ぐえっ」

「ナイト。ちょっと待て」

「えぇ〜」

 

怪訝そうな顔をする。まぁちょっと待てって。

 

「セクト、ナイトについて行ってくれるか?」

「えぇ、構いませんわ」

ナイトが首を傾げるが、僕は特に何も言わず解散させた。ナイトはよく分からないといった顔をしていたが、まぁいいやとでも思ったのだろう、今度こそ走って行った。セクトも何とか走ってついて行った。

 

「さて、行こうか」

「はい」

 

 

街の中心、商店から外れたこの地域には時計塔がそびえ立っていた。

 

「……。」

「マキナお嬢様、これは時計塔というものですよ」

「とけいとう」

何も言わず上を見上げジッと見つめるマキナにオネストが言い、体を反らしながら塔の頂上を見続ける姿にオネストはフフッと微笑んだ。

 

「早く行くぞ」

 

先を歩いていた僕は2人を呼んだ。いちいち教えていても何の意味があるんだ。

高い高い時計塔、その下、常に鍵がかけられており一般人入れない黒いドアがある。黒い獅子が輪を咥えたドアノックを掴み、決まった回数とリズムをノックした。

 

トントトトン、トントトントト、トト

 

その数秒後、ガチャッと鍵の開く音がしてドアが開くようになった。

 

「オネスト、先に行けるか」

「はい、坊ちゃま」

 

ドアを開き中に入る。そこは書物で溢れかえり、本の山が左右に出来上がったエントランス。と、次の瞬間、突如として何かが降って来た。

オネストは1歩後ろへと体をずらし、パシッと両手で落ちて来た物を受け止めた。

 

「これは……」

「花瓶だな」

降ってきたものは、赤い色の花瓶だった。しかし、素材はガラスではなく軽いプラスチックのようだ。

 

「あららぁ、やっぱり受け止めちゃったか〜」

 

頭上から今度は声が降ってきた。上を見上げるとそこには、赤いチャスケットを目深く被り、襟を立てた黒いシャツに黒い裾の広がったズボン、腰には白いラインが脇に入った黒いパーカーを巻いている、全身黒ずくめの男。

 

「ルードス様、このような悪ふざけはお止め下さい」

 

オネストは呆れ、花瓶を持ったままため息をついた。しかし、この人は昔からこうだ、今更言っても仕方無いだろう。案の定、クククッと肩を震わせて笑い、八重歯を見せながらニタッと口角を上げた。

 

「マギ様、オネスト様、こちらへどうぞ」

 

奥の階段からヒョコッと顔を出した彼の養子、アーレアは微笑みながら階段を登るように促す。が、戻ろうと階段を1段登ったときだった、パッとまたこちらを向いて凝視した。

 

「あれ?マギ様、後ろの方は?」

「……オネスト、頼む」

「……はい。こちらはマキナお嬢様です、今日こちらに来ましたのでルードス様にもご挨拶をと」

 

目を逸らし、説明をオネストに任せて僕は何も話さなかった。しかし、彼女は特に何も言及せず、また階段を登るように僕達を促した。

 

 

「うお〜!やっぱ人多い!」

「マギ坊ちゃま!あまり走らないでくださいませ!ワタクシが追いつけませんわ!」

 

レンガの建物やテントの店が立ち並び、それぞれ活気のある声で客引きをしている。そしてそれに引き寄せられた人々で賑わっていた。

 

「あっごめんごめん!楽しくてさ!足、痛いか?」

「ふぅ、ふぅ、いえ、足は大丈夫ですわ。ただこの靴では上手く動けませんの」

 

セクトはヒールの爪先を地面にコンコンッと軽く叩きつけた。少し高いため動くのは少し大変だろう、でも……。

「セクトならあんまり疲れないんじゃないの?」

「まぁっ何故ですの?」

「だってセクト格闘技強いし、俺にいろいろ教えてくれるじゃん?」

「持久力と力は違いますわ、それにワタクシは女性ですのよ?あまりおおっぴらに動きませんの」

少し頬を膨らませて言うセクトに「ごめんごめん」と謝る。それからは少し歩幅を狭めゆっくり歩くことにした。

食べ物からアクセサリーまで、様々な商品が店頭に並べられあっちこっちと目が追いつかない。

 

「あ、ナイト坊ちゃま」

「ん?なんだ?」

振り返ると、セクトは俺の方を見ずに別の方向を見ていた。その視線の先を見ると様々な服を着たマネキンが店頭に並んだ店。おそらく服屋だろう。

セクトはそこをジッと見ていた。

 

「セクト、服見たいのか?」

「えっ?あ、あぁ!はい!そうなんです!」

「じゃあ行って来なよ!俺待ってるからさ!」

 

服が見たいなら言ってくれればいいのに。セクトも見たいものがあるんだ、俺は一向に構わないから笑顔でそう言うと、セクトは頭を俺に向けて下げ、少し駆け足で服屋に向かった。

 

「ん〜、女の人が服見んの長いんだよなぁ。ん?」

 

両手を頭にまわし、レンガの壁に寄り掛かっていると、何やら人だかりが向こうに出来ているのが見えた。その中心に何かあるのだろうか?

自分の好奇心がウズウズとして、少しだけなら……。と、その人だかりに向かって走った。

 

 

「さぁて、改めて、誕生日おめでとう。マギくんは14歳かぁ、あ、ナイトくんもかぁ。いやぁ時間ってのは早いねぇ」

 

太陽の光が少なく、少し薄暗い部屋に僕とオネストは座り、しみじみとしたように、窓に向かってうんうんと首を縦に振るルードスさん。僕達は別に祝いの言葉を貰いに来た訳では無い。クルンと反転し、今僕達が座っている焦げ茶色の年季の入ったテーブルの正面に座り、手を組んだ。

 

「で、用件は何かなぁ?」

「今日は知らせに来たんです。母さんのことです」

「クククッ嬉しい知らせかなぁ?もしや研究が進んだのかな?」

「研究は進んだ、でも嬉しい知らせじゃありません」

「……何かな?」

 

 

「母さんが、死にました」

 

 

沈黙が流れる。上げていた口角を下げ、顔を俯かせた。

 

「……いつかな?」

「訃報が届いたのは4日前、その日に死んだのか、それより前かは分かりません」

 

「そっか」

 

そう、短く言うと、椅子から立ち上がり窓辺に向かって、空を見上げた。

その後、詳しく話し、政府からの連絡だということも伝えた。

 

「うん、政府からの連絡ということはやはり確かなのだろうねぇ」

「それに加え、その現場近くにいたアルドおじさんが今日来て、確かに死んだと話しました」

「そっか」

 

まるで呟くように話すルードスさんの頬が一瞬キラリと光ったような気がした。しかし、すぐにそれを拭ったルードスさんはこちらに向き直った。

 

「うん!まぁ、何とかなるさ!今は特に政府からの連絡はないんでしょ?」

「はい」

「じゃあ、どうする事もできないねぇ、ま、普段通りにすればいいのさ。ボクも、君達もねぇ」

 

大袈裟に腕を広げ空を仰ぐ。フゥ、とため息をついて、ふと、後ろの階段に目を向けた。

 

「ん?そういえば君達は3人で来なかったかい?」

「はい、そうです。オネスト」

「はい、坊ちゃま」

 

立ち上がったオネストは恐らく下にいるのであろうアイツを呼びに階段をおりた。一体何をしているんだアイツは。

間も無く、オネストがまた階段を登ってきた。アイツの手を引き、エスコートしながら。

 

「ルードス様、この方は今日屋敷にアルド様と共に来た、マキナお嬢様です」

 

階段を登りきり、アイツが姿を現した。

その瞬間、スッと何やら素早い動きをするものが目の端に映った。それはルードスさんが素早くアイツの側に近づいたと気づいたのは、正面に向き合っている姿をしっかり視覚したときだった。

 

「これは……」

「……。」

「ちょっとごめんよ〜」

 

帽子で隠れていたソイツの顔に触れ、顎をクイッと上向かせ、視線を下に向けるようにすると「カラーコンタクトではないようだねぇ」と呟く。

 

「とても似ているね、あの子に、君のお母さんに」

「先程の、研究が進んだ、というのはソイツのことです」

「そっか〜、彼女はクローンを造る事に成功したんだねぇ」

 

マジマジと見つめ、髪にサラリと触っては降ろす。すると、顔を両手で包むように触れた。

 

「やぁ、ボクはこの時計塔で鐘を鳴らし、守る一族の14代目、ルードス・カンパニュラ、君は彼女が何も話さないときと雰囲気が似ているよ。もちろんマギくんもお母さんに似ているけど、この子は何とも無機質だねぇ」

「……学力がまだ備わっていないようです、母さんは知能のインプットを中断したのかも知れません」

「そうかもね、でも、たとえインプットしたとしてもそれだけじゃあ『人』の表情は出来ないよ〜?」

「?。どういう事ですか?」

「この子に無いのは、そう……」

 

 

「心だよ」

 

 

「心……」

 

一通り触るのをやめ、再び椅子に座ったルードスさんは手を組んで、組んだ手に顎を乗せた。

 

「で、君達の用件はその訃報を知らせに来ただけかな?」

「はい、そうです」

「じゃあ、もう帰るのかなぁ?」

「そうさせていただきます」

「うん、分かったよ」

「では……」

 

席を立ち、階段へ向かおうとしたとき、「マギくん」と、声を掛けられた。

 

「何ですか?」

「そういえばなんだけどねぇ、君、いつからボクに敬語を使うようになったんだい?」

「年上の方には敬語を使うのが常識でしょう?僕ももう子供ではありません」

「ふ〜ん、ボクからしたら、昔みたいに普通に話して欲しいかな。そっちの方が気楽じゃないかい?」

「……そうですか、じゃあこれでいいかルードス」

 

ニイッと口角を再び上げたルードスは満足そうにした。すると、チョイチョイと手招きをしたため近くに行く。

 

「ねぇ、君は随分あの子を嫌っているようだけど、何かあったのかい?」

「嫌っている?」

「あぁ、君の視線、声のトーン、表情、あの子に対して嫌悪を表すものばかりだ。」

 

この短時間でそこまで気づくとは、流石心理学の元教授、といったところか。

 

「そうか、それなら僕から1つ聞くよ。アイツに手っ取り早く『心』を持たせるにはどうしたらいい?」

「随分短絡的だねぇ、心を持つなんて、簡単だけど難しいことだよぉ?」

「矛盾してないか?」

「いや、それでいいのさ。あの子には分らないことが沢山あるだろう。それを君達が教えてあげるのさ、彼女の遺品であるあの子には君達が1番良いパートナーさ」

「……ふん、僕がアイツを毛嫌いしてると気づいててもなお、1番良いと言えるの?」

「クククッそうさ、君とあの子は少し似ているのさ、顔ではなく中身がね」

「中身?」

「もちろん内臓とかじゃなくて、知らない、分かっていない、というところさ」

 

分かっていない?この僕に分らないことなんかあるものか。大体全てにおいて把握出来る、僕の頭。分らないことがあるなら驚くよ。

 

「いや、君は分かっていないのさ。逆にボクも今少し驚いてるよ、頭の良い君ならすぐに分かりそうだけど、今実際分かっていない。君が何故あの子を嫌っているのか、分かっていないだろう?」

 

ピクッと一瞬表情筋が引き攣るのを感じた。そうだ、僕は何故アイツを見ると苛立つのか、自分の中で渦巻くものがあった。ルードスはそれを知っている?僕ですら分かっていないのに?

 

「今すぐ教えろ、という目をしているね。クククッでもごめんよぉ、それは自分で気づかなければ意味が無いんだよ。ま、君ならすぐに気づけると思うよ」

 

 

「その歳で博士課程を修了した天才的頭脳の君ならね」

 

 

「……そうか、じゃあ僕達はこれで失礼する、それと、そろそろ時間じゃないのか?」

窓辺の上に取り付けられた木目調の時計を見やると、12時の15分前を指していた。

 

「いや、まだ時間には少し余裕があるよ。でも少し見ておかないとねぇ」

 

立ち上がり、ここよりもさらに上に行くための梯子の前に立つと階段を降りようとした僕達の方を向いた。

 

「じゃあ、道中気をつけてねぇ、最近は誘拐事件だなんてものが流行っているようだから」

「承知しております、その危険性を踏まえ、今日は私が同行してきたのですから」

 

オネストが言うと、それなら安心だ、というようにニヤッと口角を上げる。

階段を降り、出口の扉を開き外に出る。と、アーレアが手を振っているのが見え、それに軽く返して扉を閉めた。

 

 

「ルードス様、鐘の点検お手伝いします!」

「ありがとうアーレア」

「あの、ルードス様?」

「ん〜?なんだい?」

「その帽子はいつも被っていますけど、ご自分で買われたのですか?」

 

アーレアはボクの被っているこの赤いキャスケットの帽子が気になるようだね。それもそうだろう、ボクの趣味は基本真っ黒になるからね。でも何故趣味でもないこの帽子を被っているのか。

 

「これはねぇ、預かり物なんだよ」

「誰から預かっているのですか?」

「マギくん、ナイトくんのお母さん、アモルからだよ。彼女は自分が遠くに行って、帰るときが少なくなってしまうからと、自分を忘れないで欲しいと自分のこの帽子をボクに預けていったのさ。帰って来たときに返して欲しいとね」

 

でも、君はもう戻らないんだね。何故君がこの帽子を預けたのかは今も分らないけれど、これは僕が持っていていいのかい?

 

約束、守れなかったねぇ……アモル……。

 




いかがでしたか?
ドアのノックの回数はモールス信号となっていてこのようになっています。
トントトトン、トントトントト、トト
『 マ キ ゛ 』

今回の新キャラとしてルードスは心理学の元教授なので、マギのマキナに対する嫌悪にはすぐ気づきました。

これからマギはどうするのかそして今まで大分空気だったナイトも次回なんとか出していこうとおもいます。

では、また次回でm(*_ _)m
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