Fecit-puella フィ-シトゥプエッラ 作:nasari
今回、文字数がとても多くなってしまいましたので、前編、後編と分けさせていただきます!
では、今回もお楽しみ頂けたら幸いですm(*_ _)m
約束の時間まであと15分ほど、少し早く用事が終わったため、暇が出来てしまった。
「時間が余ったな、どこかで休むか」
「約束の時間まであと少しですよ?」
「この近くにカフェがあったはずだ、あの距離なら大丈夫さ」
日射しの強い、レンガ造りの道路がその日を反射し、それがジリジリと肌に染み込むように当たる。
何も言わず歩き、カフェの近くまで来たが、何やら人が集まっているようだった。
「何かあったのか?」
「今日は特に祭典はなかったはずですよ?」
「……何か事故でもあったのか?」
だが、見た感じでは人身事故というわけでもないようで、ただ大きめの木箱が散乱していた。
(荷が崩れたのか。いや、でも何でこんなに人が……)
その時歓声が上がり、観衆の目線に僕達もつられて見ると、そこには大の大人がやっと2つ持てる程の重さであろう木箱を、軽々と4つ一気に持ち上げて車の荷台に乗せていくナイトの姿が目に入った。
「ふぅ、これで最後?」
「おう!助かったぜ坊主!いやぁ随分力持ちだなぁ!」
「この箱1個30kgはあるぞ?すげぇな!ホントに助かった!」
「これくらい何ともないよ!手伝えて良かった!じゃあ俺もう行くから!」
「おっじゃあな〜」
一仕事終えたというような清々しい表情で観衆から抜け出したナイトのフードを素早く掴んだ。
「ぐぇっ」と言いながら振り返ったナイトは、顔を引き攣らせた。
「えっあっマギ!?」
「何をしてるんだ、目立つ事をして……」
「ちょっまっごめんて!」
「マギ坊ちゃま、人を殴ってはいけませんよ?」
僕はまだ殴っていない。今にも殴りかかってしまいそうな表情でもしているんだろうか?
「……まぁいい、ほら、行くぞナイト」
「あ!ちょっと待って!セクトが服見てるんだ!」
そう言って、ナイトはすぐ近くにある服屋に向かって走って行った。はぁ、とため息を小さくついて僕は渋々ついて行った。
*
「え?いない?」
服屋に来たのだが、セクトはもういなかった。店員に聞いたところ、1度ちらりと見てからはいつの間にかいなくなっていて、いつ店から出たのかも分らないらしい。
「参ったな〜。」
「おそらく、お前がいなくなって探しに出たからすれ違ったんだろ、探すぞ。僕とオネストはこっちの通りに行く、お前はソイツとそっち側に行け、見つけ次第絶対に離れないで行動しろ、それで合流だ、いいな?」
メイドを主人が探すということになってしまったが、元はと言えばナイトが迂闊に離れたのが悪い。
素早く指示を出し解散する。出来れば見つけた合図が欲しいがそれを出す方法も無いため、とにかく離れないこと、ということにした。
それぞれが逆の通りに行き、街ゆく人に話を聞きながらセクトを探す。だが、なかなかブロンドの髪の女性という情報が出ない。いや、出たとしてもブロンドの髪という女性はこの街だけでもかなりいるため、スーツを着た女性という情報も加えて探す。それでもなかなか出てこない。
「これだけ聞いても手ががりが無いなんてな」
「たったこれだけの人数です、我々4人で探すのはやはり骨が折れますね」
「それでも探すしかない、元々ナイトが離れなければ良かったんだけど、さっき言った通り今言っても仕方無いんだ。片っ端から探そう」
「はい、坊ちゃま」
*
俺とマキナで探して1時間経過。
「おーい!セクトー!どこだー!」
「……。」
周りの視線も気にせず、大声を出す。じゃないと絶対見つからない、こんなに人が沢山いるのにセクトを見つけるなんて。しかし、その成果も出ず、返事も無いままただ街に木霊するだけだった。マキナは黙ってるけど、ずっとキョロキョロと周りを見ている。歩幅を狭めてなるべく離れないようにしている。
もう少しはぐれた場所から離れて探そうとした時だった。耳に微かに会話が聞こえた。
「なぁ、あのブロンドの姉ちゃん、きれーだったよなぁ」
「あぁ、長身でほっそりしてる感じでなぁ、スーツがよく似合ってたぜ。でもなんか人探してるみてぇで、このすぐ裏の路地裏に行っちまったなぁ」
「なんであんなところに?」
「知らねぇよ」
誰が話したのかは人混みのせいで分からなかったが、確かに聞こえた。
セクトは路地裏に行った、かもしれない。俺を探してるかも。
「マキナ!こっちだ!行こう!」
「まって」
一気に走り出し、細長く少し薄暗い路地裏を駆ける。1つ角を曲がったところで自分がスピードを出し過ぎたのに気づき、1回止まる。
「おっとと、ごめんマキナ!大丈夫か?……マキナ?」
振り向かずに声を掛けるが応答が無い。足音すら背後から聞こえない。まさかと、バッと後ろを振り返ると誰もいなくて、角を戻って大通りに続く道に出ても誰もおらず、その代わり、マキナの白い帽子が落ちていた。
「マキナ!」
マキナが、消えてしまった。
*
僕とオネストで探して2時間経過。
「セクト!」
セクトを探してやっと合流した僕とオネストは、まずセクトが何処にいたのかを訪ねた。
あの服屋を見ていて、店を出た時、そこにはナイトがおらず、焦って必死に街中探していたのだという。そこで僕達とこの大通りで会えたらしい。とにかくセクトと合流出来たため、次はナイトと合流しなければいけない。
「全く、ナイトの奴、もう少し大人しくしてろよ」
「申し訳ありません、あのすぐ近くにいたとは……ワタクシの注意不足でしたわ」
「合流出来たからそれはいい、とにかくナイトを探すぞ」
今アイツらが何処にいるのかは分からないが、1度服屋の方に戻ってみることにした。案外まだ近くにいるかもしれないという希望を抱きながら。
*
1時間前。
「はっ、はっ、はっ、はっ」
呼吸を荒げながら走る。路地裏の細い道を駆け抜け、しらみつぶしに探すが、白い髪の毛の端すら見当たらない。
「……マキナ、どこだ?」
俺が目を離してしまったから、今頃迷っているかもしれない、不安になっているかもしれない。セクトもどこにいるかも分からない。
ずっと、喉の奥が締め付けられている感覚が離れない。
怖くて仕方が無い、母さんだけじゃなくて、セクトやマキナまで本当にいなくなってしまうのではないかと不安で……。
足を止め、地面に視線を落とす。視界がぼやけそうになるが、すぐに顔を上げ首を振る。
「すぐに見つけるからな!マキナ!」
気持ちが折れないように声を出すが、今、2人を探す方法など、ただ走ることだけ。他に方法があるんだろうか?俺にある事なんて『動ける範囲が他の人より広い』というくらいで……。
「ん?」
他の人が探せない場所からなら?そう、例えば……。
俺はふと狭い路地裏の、狭い空を見上げた。
*
2時間15分経過。
服屋に戻っても収穫は無し、白髪の2人組という情報を出しても、居場所の特定までいかない。
「どこに行ったんだ、アイツらは……」
「……見当たりませんね」
「……。」
2人組を探し初めて30分、セクトを探すよりもまだ短いが、それでも見つからない事に苛立ってきてしまう。
セクトは俯きがちに歩いているが、恐らく自分が探されたことに対して申し訳なく思っているのかもしれない。僕は歩みを止めセクトの方を向いた。
「セクト、今回のことは勝手にうろついたナイトが悪い。セクトは探してくれただけまだいいよ、あいつもまぁ反省してたから、怒ってやらないでくれないか?」
「も、もちろんですわ!怒るだなんて、ナイト坊ちゃまから目を離したのは事実ですし、とにかく今は急ぎましょう」
セクトはぎこちなく笑みを浮かべる。
「今度はこっちに向かって探してみませんか?こっちはまだですわよね?」
「あぁ、こっち側はまだだ、行ってみよう。白髪の2人組、聞き込みするときはこのままで」
「お!さっきの坊主の連れじゃねえか?」
歩き出そうとしたときだった。頭にタオルを巻いた、ガタイのいい男が話し掛けて来た。どうやらさっきナイトが手伝っていた人達なのだろう。
「よう!これからどこか行くのか?」
「申し訳ありませんわ、ワタクシ達は急いでおりますので、失礼しますわ」
セクトが僕の前に立ち、短く言って去ろうとした時だった。男は「さっきの坊主なら見たぞ!」と言い、僕はセクト腕を掴む。
「セクト、一応聞いてみよう」
怪訝そうな顔のセクトを横目に、男の前へと出た。相手の背が高いため少し見上げる形になる。
「白い髪の人物を2人見ましたか?」
「おう、2人じゃねぇが、坊主が走ってたなぁ、何か切羽詰った感じだったなぁ」
「そうですか。では、ソイツはどこに走って行きましたか?」
うーん、と顎に男らしいゴツゴツとした手を当てながら話すと、男は今僕達が行こうとしていた道の正反対の方向を指さした。その方向は街の中心、時計塔の方角だった。
「あっちに走ってったよ」
「情報ありがとうございます、では」
軽く会釈をして僕はすぐに時計塔に向かって歩き出した。
「あっちに行ってみよう、多分アイツの足ならすぐに遠くなる」
「はい」
「……はい」
オネストとセクトが返事をする。だが、サッサと歩き出す僕の後ろで、セクトが男を睨んだのは見えなかった。
*
不明。
せまいせまい道。だれかにつかまれて、だきあげられて、自分ははしっていないのに地面がうごいている。
「おい、おせぇよ」
とまった。おろされて、地面に足をつけた。
「しょうがねぇだろうが、あのガキ足はえぇし、チョロチョロ動きやがるし、ここまで誰にも見つからねぇで来ただけでも充分だろうが」
「30分もかけといてそれかよ、ったく、今回の金、お前は半分な」
「はぁ!?んだよそれ!ふざけんな!!」
「まぁまぁ、落ち着きなよ、依頼はこれで成功したんだし、いいじゃないか」
人がいる。しらない人。おとこのおとなが2人、頭に布を巻いた人と小さくて服がダボダボした人。おんなのおとなが1人、くちが真っ赤で、くつがたおれそうなくらい高い人、だれもしらない。
「しっかし、このガキ1人のために雇われるなんてね、ま、金が良かったからいいけどさ」
「あぁ、かなり稼げそうだな」
「なぁ、やっぱりアイツも連れてきた方がよかったんじゃねぇの?コイツの兄貴みてぇだったし、同じ髪と目だろ?」
「バーカ、あんなの暴れるに決まってんだろ。アイツよりコイツ連れてきた方がすぐ仕事が終わるってもんだ。それに依頼はコイツだけ誘拐だろ?」
「それもそうだな、コイツ全く暴れなくてなぁ、連れて来やすかったぜ」
頭をつかまれて2回たたかれた。これは何をしているんだろう?なんだかイヤだ。
「暴れなかった?妙だね、普通嫌だって暴れるもんじゃないのかい?」
「それがよぉ、叫ぶどころか何にも言わねぇんだよ」
「ふ〜ん」
くちが真っ赤な人が顔を近づけきた。
「ねぇアンタ、今の状況分かってんの?」
「……。」
頭をかたむけた。じょうきょうとは何のことだろう?
「ナイト、どこ?」
「あぁん?あぁ、あのガキか、別にどこにいようがどうでもいいだろうが」
「まきな、ないと、かえる、ないと、の、ところ、かえる?」
今はまず、ナイトがいない、はなれてはいけないとマギに言われたのだ。でも、しらない人達は大声を上げて笑った。
「はははははっ!コイツ、全然状況分かってねぇよ!」
「あっはははっあんたはねぇ、私達誘拐犯に、誘拐されなんだよ?返すわけないじゃない!」
返さない?自分はナイトのところに行けない?
「アンタはこれから私達のためのお金になるの、だから帰れないのさ!さぁ、移動するよ、アンタ達」
帰れない、だめ、帰らないと、マギに言われた、はなれちゃいけない。
「おら、行くぞ」
腕をつかまれる。このまま行ってはだめ。
「おい!さっさと動けよ!」
動かない。行ってはだめ。帰る。
「何してるんだい!時間に遅れるよ!」
だめ、だめ、だめ。
「あぁ!鬱陶しい!こうすればいいだろうが!」
バシッ
ビリビリとした感覚が顔に広がる。ジンジンとほっぺが熱い、これは、痛み?
「マキナぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
声、それが、空から降ってきた。人と一緒に。その声はしっていた。しっている声だった。
いかがでしたか?続きは後編にてありますので、そちらの方へ(∩´。•ω•)⊃ドゾー