Fecit-puella フィ-シトゥプエッラ 作:nasari
ナイトが活躍します(今まで空気っぽかったなんて言えない……)
では、お楽しみ頂けたら幸いですm(*_ _)m
2時間25分経過。
飛ぶ、飛ぶ。その度に下を少し向いて見る。誰もいなかったらまた次を飛ぶ。
「いないな、次」
俺はいま、家の屋根を飛び越えている。屋根伝いに飛んで、上から路地裏を見ている。下で走るよりずっと良く見えるし、早く探せる。
俺の身体能力ならこんなの簡単だ。まだ飛べる、とにかく探さないと。
────もう、失くすのは嫌だ。
だいたい20回くらい飛び越えたときだった。次の屋根を飛ぼうとしたとき、声が聞こえた。
「ナイト!!」
その声が明らかに俺の名前を呼んでいたため、すぐに足を止め、大通りを見下ろした。
「お前何をやってるんだ!」
マギだ。その隣にはセクトがいた。良かった、見つかったんだ。その前に、マギに言わなければならない。
俺は屋根から飛び降り、着地するとマギに駆け寄ってマキナがいなくなってしまったことを話す。
「さ、さっき、ま、ま、マキナが!ろろっ路地裏で!」
「まて、ちゃんと落ち着いてから話せ。深呼吸しろ、で、アイツがどうした?」
「すぅぅぅ〜はぁぁぁ〜。俺が路地裏に入ったとき、ま、マキナがいなくなったんだ。俺がスピード出し過ぎて、後ろ向いたらもう、いなくて」
「……チッ、ナイトお前また……」
「ちょっと待てって!本当に一瞬でいなくなったんだ!」
舌打ちをするマギに、瞬時に首と両手を振って弁明する。目がこえぇもん。
「で?周辺は探したのか?」
「もちろん探した!でもどこにもいなくて、街走り回ってた」
「アイツ……だから連れて来たくなかったんだ」
「それ、多分違うと思う」
「……何で?」
「マギ、マキナが勝手に離れたって思ってるだろ?マキナはまだ走れないんだ、離れたって遠くに行けない。それに、俺考えたんだけど、もしかしてマキナは……」
そう、マキナがあの一瞬でいなくなるなんてこと出来るはずが無い。バカな俺でもこんな事を考える、マギは目を細め、視線を横に移して静かに言った。
「誘拐された、とでも言いたいのか」
「俺それしか考えられないんだけどさ、どうだろ?」
口元に手を添えて腕を組むマギに問い掛ける。するとオネストが「マギ坊ちゃま」と声を掛けた。
「最近この街では誘拐事件が多発していると聞きました、子供や若い人が主に誘拐されているようです」
オネストが話し、マギは口元に添えていた手を離した。視線をオネストに向け、口を開く。
「オネスト、すぐに警察を呼べ、セクトは僕と来てくれ。ナイトは探しに戻れ、見つけたら何かしら合図しろ、いいな?」
「了解!」
俺はすぐに屋根に駆け登った。それからまたまだ探していない路地裏を上から見下ろして探す。
と、マギが何か下から叫んだような気がしたが俺はよく聞こえなかった。
*
「ナイト!自分の役割忘れるなよ!!」
下から叫んだが聞こえなかったのだろう、ナイトは屋根を飛び越えて行った。
「はぁ、僕達も行くぞ。オネスト、任せた」
「はい坊ちゃま」
「行くぞセクト」
「は、はい!」
オネストを警察を呼びに行かせ、僕とセクトは走って路地裏を探していく。誘拐されたというのなら堂々と大通りにいるはずがない、人目の少ない場所を選ぶだろう。主にそんな場所を探していく。
「ぼ、坊ちゃま!あまり無闇に探しても危ないですわ!」
「……時間を掛けたくない、移動されていても困る」
「……。」
全く、何故こんな事になったんだろう。何でわざわざ探しているんだろう。そんな疑問が頭に浮かびつつも、心の端には何故か、「探さないと」と焦る自分もいることにこの時僕は気づかなかった。
*
マギ達と別れてすぐ。俺は屋根伝いに飛び越え探している。
と、もう一度数え始めて10回目、下を見下ろしたとき人影が目に入った。
飛び越えた先で足を止め、こっそりとしゃがみ、下を改めて見下ろした。そこは路地裏でもかなり人目のつかない場所で、行き止まり。そこに男の人が2人と女の人が1人、そして囲まれている小さな人影、それは見間違えるはずが無い。
「マキナ……!」
今すぐにでも下に降りて行きたいが、ハシゴが無い。それに警察はオネストが呼んだだろうから、きっとすぐに来る、とにかくこの場所を教えないと。
「おい!さっさと動けよ!」
位置を知らせに行こうと立ち上がったとき、男がマキナの腕を掴んだ。マキナはそれに抵抗して動こうとしない、このままではまた連れて行かれてしまう!、と焦りを表すように汗が頬を伝った。
バシッ
男の1人が腕を振りかぶり、手のひらがマキナの頬に容赦無く平手打ちをした。
その瞬間、俺の中で何かが切れた。気がつけば俺は空中にいた。
「マキナぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ダンッ!
音を立てて、両足で着地する。目の前には驚きで目を見開く誘拐犯、でも誘拐犯だろうが何だろうが構わない、マキナを殴った、こいつらが、マキナを連れて行こうとした!
俺は行き止まりの出口を塞ぐように立ち、言った。
「離せよ……そいつは……俺の家族だ」
*
今、何が起こった?人が降ってきた?
私達は今、とんでもない奴の目の前にいる。どこから来た?窓が開いていたわけでもない、屋根から降ってきたコイツは平然と目の前に立っている。
そんなの有り得ない、だって、6mはある!そんな高さを怪我1つせずに飛び降りる?人間にそんなの出来る?
「離せよ……そいつは……俺の家族だ」
ソイツが口を開き、ハッとする。まずい、現場を見られた、すぐにでも何とかしないと。
「何してんだい!すぐにソイツを黙らせな!」
「お、おう!」
まぁ、コイツを黙らせればいいだけのこと、すぐにでも終わるでしょ。
人間離れした動きを見せらた瞬間は動揺してしまったが、そんなの問題無い。子供が大人に敵うはずがない。と、余裕を持ったが、その余裕もすぐにかき消される。
殴りかかった次の瞬間には、ドサッと音を立てて地面に倒れた。ガキではなく私の仲間が。
「は?な、なんで!?」
有り得ない、有り得ない有り得ない!明らかに体格だって差があるはずなのに!あの細い腕でどうやって投げ飛ばしたというのだ。
「別に、力だけでも投げ飛ばすなんて出来るけど、相手の重心をかけている部分をちょっと払うだけで簡単に転ぶんだ」
「おらぁ!」
地面に転びながらもガキに足払いをするが、ジャンプをしてかわされた。
「チッおい!もうコイツ生かすこともねぇだろ!」
ポッケからナイフを取り出しガキに向けた。だが、特に表情を変えることもなくただそれを睨むこのガキは微動だにもしない。
「死ねぇ!」
ナイフを突き刺す。が、脇に逸れ、簡単に避けられた。避けた瞬間にナイフを持った手を蹴飛ばされ、ナイフが宙を舞った。
カランッ!と甲高い音が路地裏に響く。手を抑え地面に崩れた私の仲間をガキは一瞥すると、こちらを向いた。
「ひっ」
「ちくしょー!」
小さいガキの手を離し、ナイフを拾い上げてガキに襲いかかった、私の仲間、だが、また足で蹴りあげられ、ナイフが舞い、回し蹴りを頭に食らわせられた。
鈍い音と共に崩れ、嗚咽する。
ガキはゆっくりとこちらに近づいて来た。そのゆっくりとした足取りですら恐怖を感じた。
「こっこないで!コイツがどうなってもいいの?!」
ナイフを小さいガキの首に押さえつけた。ガキは一瞬止まったが、ダッと走り出し、飛んだ。
私のすぐ後ろでトンッと音が聞こえ、その直後、視界が傾いて地面が近づいた。
「キャッ!」
足払いをされて、無様にも地べたに這う。見上げると、ガキはナイフを手にしていた。その見下ろす表情は憤怒に満ちていて、僅かな光を映す目の眼光は鋭く、酷く恐ろしい。
ナイフが握られた手が振り上げらた瞬間、心臓が跳ね上がった。
「ひっ、いやっやめて!」
ガキンッ
ナイフは、目の前に振り下ろされる。石畳の隙間に深々と突き刺さっていた。フッと何かが切れてしまったように、私はその場で呆然とした。
*
「あれ?俺、何してたんだっけ?」
薄暗い路地裏、通路の先では男の人が2人、何だかうずくまっている。目の前にへたり込んでる女の人なんか、目を見開いたまま動かない。
確か俺は、怒って、屋根から飛び降りて、それから……。
あれ?俺が怒ったのって何でだっけ?上から見てて、マキナが殴られて……マキナ?
「っマキナ!」
ハッとして、目の前に立ちすくむマキナに駆け寄り、片膝をついた。
マキナは特に怪我が無く、朝会ったときからの無表情も全く変わってない。だが、さっき殴られてしまったところが赤くなっている。
「マキナ、大丈夫?」
「だいじょうぶ」
頷いたマキナを見て、ホッと安心した。俺はマキナの頭を撫でて落とした帽子を被せてやる。マキナはキョトンと首を傾げる。
「よし、帰ろうか、マキナ。皆探してるんだ」
俺は立ち上がり、路地裏の出口に向かおうとすると、服の背中を掴まれた。振り返るとマキナがペタンと地面に座り込んだ。
「どうした?どこか痛い?」
「足、うごかない」
よく見ると手や体が少し震えている。これは抱っこして連れていった方がいいか?と、考えていたときだった、後ろから物音がして、バッと振り返ると腕を抑えた俺より身長が高いガタイのいい男の人が立ち上がっていた。
「このガキ……舐めやがってぇぇ!!」
殴りかかって来た!俺何かしたか!?
とっさに俺はマキナを横にして抱き上げて逃げる。これ以上マキナが怪我をしたら嫌だ。目の前は行き止まり、入れるような扉もなく、窓が4箇所あるだけ。
でも、俺には充分だ。
「マキナ!ちゃんと捕まってろよ!」
助走をつけてジャンプする。タンッタンッと窓を足がかりにして一気に屋根まで飛び上がった。
眼下では驚いた表情で口を開けている男の人が見え、その直後にバタバタと慌ただしい足音が聞こえる。「警察だ!大人しく投降しなさい!」と声が響くと、抵抗する声や音が入り混じった。
その奥、出口付近にマギの姿が見えた。マキナを抱え直し、もう慣れた屋根の間のジャンプを軽快にして回り込んだ。
*
「マギ〜!」
上から声が聞こえ、見上げると、アイツを前に抱えたナイトが片手を振っていた。
「さっさと降りてこい」と言うと、ナイトは躊躇無くアイツを抱えたまま飛び降りた。その様子にセクトは驚愕の表情を浮かべる。
「ナイト坊ちゃま!危ないですわ!」
「大丈夫だ、アイツの運動神経と体の丈夫さはセクトも知ってるだろ?」
「しかし……」
「おーい!マキナ見つけた!」
セクトの言葉はナイトによって遮られ、はぁ、と少し呆れの入ったため息をつく。
「なぁ、よくここ分かったな!警察ってやっぱすげーな!」
「目印があったからな」
「目印?」
「それほどハッキリしたものじゃない。お前の声、でかすぎるんだよ」
「あ〜そういえば、叫んだような、叫んでないような」
ここに来る途中、警察の方とオネストに合流し、一緒に探していたのだが、突如としてナイトの叫び声が響き、それを手がかりにこの路地裏まで来れたのだ。
あのとき、ナイトに見つけたら合図を出せと言ったとき、おそらくナイトは大声を出すだろうと事前に予測していた。普通にナイトが叫ぶときよりも声のトーンが上がっていたため、ナイトが発見したのだと思った。
「後は警察に処理を任せよう、僕達はもう帰るぞ」
「おう!」
「坊ちゃま、昼食をこのまま取らないのは辛いのでは?」
オネストに言われ、今まで忘れていた空腹感が急に襲ってきた。後ろでナイトがグゥ〜と大きく腹を鳴らす。
「サンドイッチを買っておりますので、どこか座れるところで少し食事をしましょう」
「そうだな」
現場から去ろうとしたとき、犯人の罵倒などの叫び声が聞こえてきた、だが、その内容に足を止めた。
「ちょっと!離してよ!私達は雇われてあのガキを攫っただけなんだから!!」
その叫びも、警察は「はいはい」と流して大通りに向けて歩いて行った。
「雇われた」?それも、アイツだけを狙うためになのか?誰があの誘拐犯に依頼を?
と、連れて行かれる犯人と警察の後ろ姿をじっと見ながら頭の中で考えを展開していると、ポンッと肩に手を置かれた。セクトだ。
「さぁ、坊ちゃま、行きましょう?」
今はべつに考えなくてもいいか、と僕もオネスト達の後を追った。
ベンチを見つけて食事するまで、あと5分。
いかがでした?今回でナイトの「天才的身体能力」がでてこれた?かと思います。
誘拐、ダメ、絶対です(`・ω・´)キリッ
それでは、次回でまたお会いしましょう