Fecit-puella フィ-シトゥプエッラ   作:nasari

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大変長らくお待たせしました!かなり時間を開けてしまいました!すみません!(´;ω;`)なかなか内容がまとまりませんでした!!

では!今回もお楽しみいただけたら幸いです!


第8心 僕の問題

 

だいぶ日が傾いてきた。真上にあった太陽はいつの間にか地平線に向けて傾くも、まだ暑さは緩みそうに無い。

あの後、オネストの買い物により時間はかなり経った。また誰かがいなくなってはいけないと、離れずに行動した。いっそ縄でもつけた方がいいのではないかとも思ったが口に出さないでおいた。

 

重く疲れ切った足を歩ませ、ゆっくり進む。紙袋を持ったオネストとセクトもだいぶ疲れているようだ。

だが、そんな僕達の前を、『母さんの模造』を背負いながら歩くナイトの体力がこんな時だけ羨ましく思えてくる。時折背負い直しながら歩くナイトだが、息切れ1つしない。

チラッとナイトが背負っている『模造』に目をやる。そもそもこんなに疲れたのはコイツのせいだ、コイツがいなければこんな目に遭わなかった。

 

(……だから嫌だったんだ)

 

頭の中でそう毒づきながら、『模造』を睨みつけた。

 

 

背中に人をおぶっているのに全然疲れない。でもマキナが軽すぎるせいもある、こんなに軽くて最初は驚いた。歩いているうちにズレてきてしまうから時々背負い直す、そんなとき、俺の頭の中は色んなことを考えていた。全部マキナのことだ。

マキナは何が好きなんだろう、何が嫌いなんだろう。マキナの事、何一つ知らない。

 

(俺、何にも知らないんだな)

 

何も知らないから、知りたい。好きな食べ物嫌いな食べ物、何でもいい、マキナのことを知りたい。それは、母さんの遺してくれたからだけじゃなく、家族として、一緒にいたいから、俺は知りたい。

マギが嫌っているから、仲良くして欲しいとも思う。マギもきっと、マキナの事をたくさん知れば仲良くなってくれるはずだ。

これからの新しい生活を思い浮かべながら、また俺はマキナを背負い直した。

 

 

歩いて数分、やっと屋敷の門の前に到着し、僕は無意識のうちに湿っぽいため息をついた。

オネストが呼び鈴を鳴らし、クラルスの声が聞こえたかと思うと、門が自動的に開いた。そこから屋敷の玄関に向かって真っ直ぐ歩き、玄関扉を開けると、クラルスが出迎えた。

 

「お帰りなさいませ」

「ただいま!」

 

元気が有り余っているナイトがニッと笑いながらクラルスに言う。オネストがクラルスと何かを話し、頷くと、僕達の方を向いた。

 

「坊ちゃま方、お部屋の方で少しお休みになられたらいかがでしょう?」

「あぁ、そうする」

 

さっきからずっとそう思っており、さっさと部屋へ向かう僕と対照的に、『模造』を背中から下ろしたナイトは2階へと駆けて行った。

廊下を通り、自分の部屋に戻るとそこは朝から変わっておらず、カーテンが開けたままになっている。

机に本と帽子を置き、ベットに向かい糸が切れた人形のようにベットに倒れ込むと、フゥ……とため息をつく。

 

「疲れた……」

 

 

 

ガタガタッバササッ

 

「あ〜やっちまった!」

 

2階のしょさい?だったか、そこで本を漁っていた。茶色い本棚の2段目を探していた時、うっかり3冊ほど落としてしまったのだ。

よく見るとその落ちた本の中に、探していた本を見つけた。植物図鑑だ。

 

「見っけ!さてと、下に行かないとな。ん?」

 

本を抱え、残りの落ちた2冊を棚に戻そうとしたら、その奥に何やらくぼみを見つけた。そこの部分だけ色が明るくなっていて、少し気になってさわろうするが……。

 

「ナイト坊ちゃま〜!マキナお嬢様がお待ちですよ〜!」

 

下からクラルスの声が響き、パッと本を元に戻した。またあとで来てもいいだろう。

螺旋階段を降りると、マキナが立ったまま待っていた。俺はニッと笑いながら本をマキナに見せ、玄関から離れたリビングにマキナを連れて入っていった。

リビングは2つあり、玄関に近い方はオネスト達が使っていて入れない。だから、2つ目のあまり使っていないところに入った。テーブルと椅子があり、窓側にマキナを座らせ、俺はマキナの正面に座った。

 

「よし、マキナ!これなんだ?」

「しょくぶつ、ずかん?」

「そ!マキナが好きな食べ物とか嫌いな食べ物、まず野菜から知りたいなって思ってさ!今からページめくって聞くから、好きか嫌いか言うんだぞ?」

マキナが頷いたのを見て、まず1ページめくり、アスパラが出てきた。

 

「これは?アスパラ」

「あすぱら、たべる」

「おっ、じゃあこれは?アボカド」

「あぼかど?」

「あ〜まだ食べたことないか。今度食べてみような?」

 

ニッと笑い、マキナはコクッと頷いた。またページをめくろうとすると、部屋のドアが開く音がする。そっちを向くとそこにはマギがドアノブに手をかけて立っていた。

 

「何してるんだ」

「あ、マギ。今さ、マキナにこれ見せてたんだ!」

「植物図鑑?」

「そ!マキナの好きな野菜とか嫌いな野菜とかあるのかな〜って思って聞いてたんだ!」

「ふーん……」

 

あんまり興味なさそうに答えるマギは椅子を1つ挟んで離れて座った。マギを気にせずまたページをめくってマキナに見せようとした。

 

「……そんなのに意味があるのか?」

 

だが、頬杖をつきながら言うマギに遮られそちらを向く。

 

「意味っていうか、知りたいから聞いてるだけだよ。マギだってマキナのこと知りたくないか?」

「興味無い」

「えぇ〜、でもほら、ちゃんと知った方が仲良くなれるだろ?」

「興味無いって」

「そんなこと言わずにさ!マギだって知った方がいいって!母さんだってきっと仲良くしてほしいって思ってると思うぞ?」

 

「興味無いって言ってるだろ!!」

 

突然声を大きくしたマギは顔をそらした。

 

「マギ、なんでそんなにイライラしてるんだよ?」

 

何だかマギはマキナを見る度にイライラしているようだ。顔もずっとしかめているし、一体どうしたのだろう。

 

「まぎ」

 

と、マキナがスッと落ち着いたような声で、マギを見つめて言う。

 

「まぎ、おこってる、あもる、いない、さみしい」

 

何とか言葉にしているんだろう。一呼吸置いて、言う。

 

 

「まきな、わかる」

 

 

その瞬間、テーブルを叩きつけ、バンッ!と音が響いた。

 

 

「何が分かるんだよ!!オマエ何かに、ただの模造に何が分かるんだよ!!!」

 

 

声が裏返る寸前まで張り上げ、マキナに向かって叫んだ。マギが叫んだのが隣まで聞こえたのだろう、オネストとクラルスがドアを開けた。

 

「分かるわけがない、オマエはただの人形だ、母さんに似せて作られた偽物だ」

 

自分のなかで、何がキレるような感覚がした。自分の中心が熱くなり、ギュッと拳を握りしめた。

 

「何言ってんだよマギ!マキナはただの人形なんかじゃないだろ?!母さんが遺してくれたのに!」

「だから?母さんが遺したからって、ソイツが感情の無いヤツに変わりはない。だったらそんなの人形も一緒だろ」

 

その言葉を聞いて握りしめた拳をマギに向かって振りかぶろうとしたが、オネストに掴まれて動けなくなる。

マギはマキナを睨みつけるように見て、部屋を出ていった。オネストに抑えられていた俺はマギを殴ろうとした衝動が収まり、追いかけようとしなかった。

 

「何があったのですか?坊ちゃま」

 

オネストに椅子に座るように促され、座ると、さっきあったことを話した。

 

 

話し終わるまで、オネストは頷きながら聞いていた。クラルスも、複雑そうな表情をしている。

 

「俺、何かマギが怒るようなこと言ったかな?」

 

落ち着くと、さっきの事に自分も悪いところがあったかもしれないと思えてきて、顔をしかめた。でもオネストはそんな俺の肩に手を置いてポンポンと軽く叩いた。

 

「マギ坊ちゃまはきっと、少し苛立ってしまっただけなのでしょう、なので、ナイト坊ちゃまに直接悪いところがあったというわけでは無いですよ。でも、殴るのはよろしくありませんよ?」

「……うん」

 

殴ろうとしてしまったのは確かに良くない。人を簡単に殴るのは良くないとオネストに言われてきたのに。

ふと、マギが出ていったドアを見る。

 

「マギ、何であんなに怒ったんだろう?」

「……おそらくですが、マギ坊ちゃまはマキナお嬢様のことで苛立っているのかも知れませんね」

 

オネストの目線がマキナに移り、俺もマキナを見る。相変わらず無表情。

何が気に入らない?無表情だから?ちゃんと喋れないから?それとも……。

 

「ん〜何が嫌なんだろう?」

「マギ坊ちゃまの問題ですからね、私達には理解出来ないかもしれませんね。」

 

人の心なんて読めないことは知ってる。マギが考えてることなんていっつも分からない。難しい事ばかりでついていけないし、頭がいいから、きっと今も難しいことなんだろう。俺はそう思うことにした。

でも、やっぱり納得がいかない。俺はすぐに部屋を出た。マギは多分自分の部屋に向かったかもしれない、だから真っ直ぐ俺とマギの部屋に行く。足早に歩く俺の後ろをマキナもついてきている。

部屋の前に立ち、ドアノブに手をかけるが、ガチッと音がして開かない、鍵が掛かっているみたいだ。

「マギ!いるんだろ?」

 

ドアに向かって話しかけても返ってこない。コンコンッとノックしても反応無し、それならと何度もドアを叩いた。

 

ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン

 

「なぁって!」

 

しつこくノックしたせいか、「何?」と酷く不機嫌そうなマギの声がやっと返ってきた。

 

「マギ、さっきは悪かった。しつこすぎたよな?俺、早くマキナとマギが仲良くしてほしくて、つい……」

 

マギが嫌な顔をしていたのに、押しつけようとしてしまったことに申し訳なくなってしまい、その場で顔を俯かせる。

空気を変えようと、マギのいる部屋のドアに話しかけた。

 

「あのさ、マギ!今日は俺達の誕生日だろ?皆今日祝ってくれるんだ!」

「……。」

「せっかくの日なんだ、笑顔がいいよ!笑ってる方が、きっと……母さんだって見たら喜ぶとおも……」

 

ドン!

 

「母さんはもういない!!」

 

ドアが荒々しく叩かれ、ドアが壊れることは無いが音が大きく響いた。

俺はそれ以上何も言えなくなってしまい、トボトボとリビングに戻った。

 

マキナが後ろについてきていると何となく思いながら。

 

 

「バカナイト……」

 

自分以外誰もいない部屋でドアに背をもたれながらボソッと呟いた。いっそ何もしなければいいものをアイツは、いちいち踏み込んでくる。それが鬱陶しいというのに。

これは僕自身の問題なんだ。放っておいて欲しいのに、そういう時ほど近寄って来る。『あの時』も離しても寄って来て、何故だと聞けばこう言う、「家族だから」と。

だが、今回ばかりは本当に誰にだって解決出来ない、僕の問題なのだから当たり前のことだ。自分で解決しなければ意味が無い、試しにルードスに聞いたが、そう返されてしまった。

「くそっ、どうすればいいのさ……」

 

前髪を搔き上げ、毒づく。と、背中に小さい振動が伝わってきた、ドアがノックされたのだろう。その直後、ナイトとは打って変わった小さい声が聞こえる。

 

「まぎ」

「……何だ?ナイトと行ったんじゃないのか?」

 

僕が不機嫌な声で返すも、それに構わずアイツは続けた。

「まぎ、さみしい?」

 

寂しい、だって?コイツは何を言っている?今この状況で、僕は怒っているということぐらい分かるんじゃないか?寂しいなんて思う暇もあるわけが無い、はずなのに。

でも何故こんなに、落ち着かないんだ?ざわざわとするような感じ、行き場の無い感情、これが苛立ちの原因にもなっている。これがいつから続いているのか、改めて頭の中で整理する。

この感情が出始めたのは何も今日じゃない、4日前、母さんが死んだと聞かされた時からこれはあった。その感情について考えたり、整理したり、そうしているうちに口数が少なくなった。そして何より『重かった』。

だが、コイツが来た途端、自分のなかで何かが揺れ動くのを感じた。それから、表情にそれが表れるようになり、こんなふうにイライラと態度にだって表れる、コイツが来てから……。

……ちょっと待て、何かおかしくないか?知らせを聞いて4日間、ただただ頭の中で整理してて、自己完結していたのに、コイツが来た途端外に出ている?そして何より、アイツに嫌悪を抱いている時、少しではあるが『軽くなった』のだ。

 

その瞬間、僕の中で何かが合わさるのを感じた。僕は、おそらくアイツに……。

 

「八つ当たり……?」

 

声に出し、僕は気が抜けたようにズルズルとドアをつたって座り込んだ。

母さんがいなくなってしまった、寂しくて、でもそれに喪失感が混ざってしまって、混乱したのだ。そんな時にアイツが来て、母さんが帰ってきたのに母さんじゃない、一瞬の期待が一瞬にして無くなり、深くなった寂しさを紛らわせる為に、アイツに八つ当たりをしてしまったのか。

 

「ははっ、何だよ、それ」

 

やっと分かったのに、解けない問題が解けたのに、こんな答えでは呆れてしまう。片手で顔を覆い、俯いた。アイツに対するあの苛立ちは、ただの八つ当たりだったんだ。しかも、それで自分を軽くしようともしていたなんて、なんて馬鹿馬鹿しい。

 

僕は立ち上がり、ドアノブの鍵を回した。カチャッと音がし、ドアを開けるとすぐ前にアイツが立っていた。

 

「まぎ?」

「あぁ、その……」

 

言おうと、今決めた言葉が上手く出てこない。喉につっかえているようで、通りを良くするために息を吸い込む。

 

「……ごめん」

 

朝から続いていたコイツに対する悪い態度、暴言、目も当てられないようなものだったろう。僕自身呆れた程だ、謝らなければ気が済まない。

 

「……ごめん、本当に、その、僕は……」

「だいじょうぶ?まぎ?」

 

文句を云われても仕方無いと思っていたのに、予想と反してコイツは心配気な声と表情で僕を見つめてきた。戸惑うなかで、さっき言った言葉を思い出す。「だったらそんなの人形も一緒だろ?」それは今となっては大いに違うと思った。人形じゃない、感情が本当に0なんじゃない、わずかでもあるんだ。それはきっと母さんが遺したもの。

僕は頭に手を置いてやる。

 

「僕は大丈夫、そんな時はな?文句の1つくらい言うものなんだ」

 

ポンポンと頭を軽く撫で、手を下ろす。あぁ、ナイトにも謝らないとな、と僕はリビングに行こうとするが、コイツが何やらモソモソとして、そわそわしているようだ?どうしたのかと思いしゃがみ込む。

 

「まぎ、まきな、の、なまえ、よぶ、よんで?」

 

僕はキョトンとしてしまい、ジッと見つめられハッとした。コイツの名前、僕がつけておいて、最初の2回しか言っていない。フッと笑みが漏れてしまった、これは僕の中が軽くなったからだろうか。

 

「じゃあ行こうか、マキナ」

 

僕は立ち上がり、リビングに足を向けた。後ろにマキナがついて来る足音を聞きながら、ナイトは文句を言ってくるだろうと僕は考えた。

 

 





いかがでしたか?今回でマギの複雑だった心情がマキナで浄化出来たと思います!←

あ、マギが第2リビングに行ったのは、なんとな〜く気になったから行ってみた、ようです!

では、次回でまたお会いしましょう( ・∇・)ノシ♪
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