南の国に向かう列車に揺られながら、ユリとコウを含めた六人のうち五人は全員焦りを感じていた。
無論、真緒もその一人である。ただひたすら街を歩き回った彼女は、自分を探しに来たらしいレイヤに告げられた情報によってそれが時間の浪費にしかならなかった事を知った。
同時に、ヒスイの行方も。
掴んだのはユリらしい。彼女がどうやって情報を仕入れたのかは定かでないが、今は細かい事を気にしている暇は無かった。
(ほんっとに・・・馬鹿じゃないの、ヒスイ!)
モヤモヤとした苛立ちが胸中に広がっていくのを感じ、真緒は頭を軽く掻き毟る。その動作にルカが苦笑いした。
「めっちゃイライラしてるね」
「まあね。久しぶりだよ、こんなに気持ちの悪い苛立ちを覚えたのは」
「気持ちの悪い苛立ちってどんなんよ」
そう言うルカの表情にも、やはり焦りの色は抜けていない。
当然だ。寧ろこの緊迫した状況下にあるにも拘らず涼しい顔をしているカリンがおかしいーーー北の国の王子・ヒスイは既に南の国へ旅立ってしまったという事件が起こっている、この状況で。
「何?マオちゃん乗り物酔いしちゃった?」
「ごめん、ちょっと話ややこしくなるから黙っておいて?」
「ええ〜!私もお喋りしたいのに〜」
「ユリ、マオちゃん達に迷惑かけるな。遠足じゃなくて仕事でもあるんだぞ、今」
ルカの塩対応に頰を膨らますユリを、コウが冷静に諌める。普通の平穏な会話に見えるが、真緒には取り繕っているのが手に取るように分かった。
しかしどれだけ焦ったって、目的地に到着するのに一日はかかる。体力を温存しておくのが賢い。恐らく、ルカやユリにはそれが分かっているのだ。
少しでも安心する為に、いつもの調子で当たり障りの無い会話を展開しているのだ。
「それにしても、レイヤ君は大丈夫なのかい?顔色が悪いけど」
一番窓側の席でぐったりとしているレイヤは、確かにコウが指摘した通り顔色が悪い。彼はどうやら本当に乗り物には弱いようだ。
「大丈夫だ・・・気にしないでくれ」
明らかに大丈夫じゃない、細い声でレイヤは応答した。それでも心配そうにしているコウに向かって、主人の代わりにカリンが説明した。
「マスターはあまり乗り物に強くないんだよ。降りて少し時間が経てば回復する程度の三半規管の弱さだから、心配しなくても大丈夫」
「ああ、そうなのか。でも一応辛くなったら言いなよ?」
レイヤはもう声を出すのも辛いのか、左手を少し上げて了解の意志を示す。
そこまで見届けて、真緒は目を閉じた。
今は兎に角、頭の中をすっきりさせたかった。
中途半端な終わり方ですみません!ご閲覧ありがとうございました!