〈ねぇ、まだ思い出さない?此処まで、沢山色んな事があったのに。まだ君は、思い出せないの?〉
〈・・・そうか。君は、目覚めるのが嫌なんだね。・・・・・まぁ、当然と言えば当然だけど、でもそれは許されない。
早く現実へ戻って来なよ。こんな悪夢、続ける意味は無いでしょう?〉
〈ハァ。ほんっとに君は昔から頑固だね。分かったよ。もう少しだけ時間をあげる。
ただし、これは本来ならルール違反だ。君はもう何年も眠っている。そろそろ永眠扱いされる頃だろう。
だから、あげられる猶予は本当に少しだ。君の世界の中で一ヶ月が経ったら、その時点で終わり。目覚めてもらう。〉
〈ああ、拒否権は無いよ?これ以上の猶予はあげられない。
君の為にも、君の世界の為にも、ね。〉
〈それじゃあ、おやすみなさい。〉
ゆっくりと目を開くと、飛び込んできたのはルカの心配そうな表情だった。
しかし真緒は別段驚く事もなく、冷静な口調で「何?」と聞く。
「いや、大分魘されていたからさ。大丈夫かなって思って」
「魘されていた?・・・私が?」
ルカが頷いたのを見て、真緒は驚きを隠さずにはいられなかった。
確かにヒスイの事や戦争の事、最近あった出来事から得られた情報と発生した問題で頭が埋め尽くされ、ひどく疲れてはいたが、仕事をしていた時と大して変わらない疲れだった筈だ。それでも今まで魘されていた事など一度も無いらしいのに、何故。
真緒の驚きぶりから何かを悟ったのか、ルカは努めて明るい声で話題を転換した。
「もう夜だよ。だからみんな寝てる。南の国には明日の昼頃に着くってさ。全く、びっくりだよね。王子様が敵国にたった一人で行っちゃうんだから。そりゃあ王様のお膝元が騒がしくなるよね」
やれやれ、と両手を広げて、ルカは呆れの意志を示す。しかし真緒には同意も反論も出来なかった。
少し眠ってごちゃごちゃと混乱していた情報を整理する事が出来たからか、真緒は大人しく、他人に迷惑や心配をかける事を嫌うヒスイが何故突然姿を消したのかを説明付ける仮説を導き出していた。だがその仮説には何の根拠も無い。あり得なくはないが、根拠の無い仮説を話されたところで、ルカからすればとてもではないが納得し難いだろう。今更他人に気を遣うなど自分らしくもないのは真緒自身が一番分かっているが、今はわざわざこの空気を壊そうとは思えなかった。
代わりに真緒はルカにずっと聞いてみたかったことを聞いてみる事にした。
「ねぇ、ルカ」
「ん?」
「私、革命組織の基地がトリム教団に襲われた時に、「ルカ」って名乗る男に会ったんだけど」
「まぁ、おかしくはないよね。同名異人ってやつかな?」
「ルカ、確か前に私に言ってたよね。君の知り合いのこと。
その知り合いって、私に「ルカ」と偽名を名乗った男のこと?そいつ曰く、名前を勝手に借りたらしいけど」
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