『不完全』の『幽波紋』   作:数取団乱闘生

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本編
第1箱「消えた男の詳細」


黒神めだかを送り出す《百輪走》が行われて10年。

かつての箱庭学園生徒が集結する中、一人だけ行方をくらましていた男がいた。

名を球磨川禊。言わずと知れた世界一のマイナス。

箱庭学園卒業後、キヲテラエのライブに姿を見せてから一切の消息が途絶えていた。

自ら断ち切ったのだが、現在球磨川禊はとある世界に迷い込んでいた。

ある日突然目覚めたら見知らぬ山に来ていたのだ。

『やれやれ…ここは何処なのかな?』

迷い込んだ世界では一切スキルを使うことは出来なかった。大嘘憑き(オールフィクション)も却本作り(ブックメーカー)も使えない。

『困ったな、スキルが無かったら僕なんてただの善良な人間なのに』

とりあえず情報収集する為に歩き回っていると、ここに迷い込んで丸2日。初めて人影を見つけた。

『誰でも良いから…何か食べさせてくれないかい……』

最初こそ冗談を言う余裕があった球磨川だが、さすがに丸2日山を何も飲まず食わずで彷徨っていたので限界が来ていた。

「あれ?誰かと思えば球磨川の旦那じゃねーか」

『えっ?』

「み、禊ちゃん⁉︎ 何でここに?」

そこにいた女二人は球磨川には見覚えがあった。

『くじらちゃんにもがなちゃんかい?久しぶりだね……』

黒神くじらに喜界島もがな。球磨川と同じく箱庭学園出身者である。

「まさか10年行方をくらましていたアンタとこんなところで出会うとはな。ところで顔色が悪いぞ、どうした?」

『君たちはその様子だと、ここにはついこの間来させられたみたいだね…あいにく僕は2日前からここにいてね……』

「大丈夫禊ちゃん?もしかしてその間何も飲み食いしていないの⁉︎」

『連れて来られた時に何も持っていなくてね』

「大変!これ食べて!」

もがなは持っていたカバンからコンビニで買えるパンを取り出し球磨川に食べさせた。

『ありがとうもがなちゃん、でも用意が良いね』

「たまたま連れて来られた時が買い物帰りだったから」

『じゃあくじらちゃんは?』

「あぁ普通に家でテレビ見てる時だったな」

何で自分だけ一番無防備な寝てる時だったんだろうと思った球磨川だった。

 

腹を満たして回復した球磨川はくじらともがなと共に山をさらに詮索。

すると少し拓けたところに洞窟が5つ並んで空いている奇妙な場所に辿り着いた。

「いかにも怪しい場所だな…何かある感じだここは」

『エロ本でも落ちてないの?』

「相変わらずだね禊ちゃん…」

そのうちの一つの洞窟に入ると、奥は浅くすぐ行き止まりになった。

しかし1本の金色に輝く矢が落ちていた。

「何だこの矢?ただの矢なのにかなり光ってるな…」

「くじらさん、大丈夫なんですか?」

「いや、こういうのにはむやみに触らない方が……」

くじらがそう言っている横で球磨川がひょいっと矢を持っていた。

「ちょっ球磨川の旦那!」

『えっ?こういうものを見たら触るのが鉄則だろう?』

「おいおい……」

するとさらに矢は金色に輝き、一瞬視界が光に包まれたほどだった。

「何だったんだ?今のは……ってえっ?」

「み、禊ちゃん…どうしたの?」

『どうしたの…って君たちがどうしたの?そんな顔して』

「禊ちゃんの後ろに…」

『後ろ?』

振り返るとそこにはツギハギだらけの人間の両手が螺子になっているという不気味な物体がいた。

『ありゃりゃ…何なにコレは?』

「まさか…その矢に触れたからか?……研究者としては実験せずにはいられないな」

今度はくじらは矢を持った。すると先程と同じように輝き出す。

「やっぱりこの矢が原因か…」

光がやむと球磨川と同じようにくじらの背後にもシャチのような見た目で両手がメスになっている不気味な物体がいた。

「でも何でシャチなんだよ、どうせならくじらにしてくれたら良いのに」

そして球磨川とくじらはジッともがなを見ていた。

「えっ⁉︎ もしかして私もやる感じ…?」

「この流れでやらないってのは無しだぜもがなちゃんよぉ」

「く、くじらさん…昔みたいな危ない目になってるよ⁉︎」

『さぁさぁもがなちゃん』

球磨川とくじらのしつこい押しに折れたもがなは恐る恐る矢に触れた。すると案の定光り輝いた。

そしてもがなの背後にも不気味な物体が現れた。それは水で出来た龍のようなものだった。

「おーカッコイイじゃないの、シャチより全然良いな」

「そ、そうかなぁ…」

『自信もちなよ』

「うん……」

突然三人の背後に不気味な物体が現れることに盛り上がっていた一同だったが、ようやく何故こんなことになるのかを考え始めた。

「原因がこの矢だってことは分かるんだが、この矢が何なのかがさっぱりだな。そして矢の力で変な物体が背後に現れるみたいだしよ」

「私たちの身体は大丈夫なのかな?」

「さぁな」

『でもこの物体僕の意思で動くよ?まるで手足みたいに』

直接手で触れていないのに球磨川の背後にいるツギハギ人形のようなものは動いていた。球磨川の意思通りに。

「へぇーやっと分かったみたいだな球磨川の旦那、スタンドの動かし方が」

『どうしたのくじらちゃん?スタンド?』

「てめぇの背後にあるものの事だぜ」

突然そう言ったくじらの目つきは変わっていた。

『あれぇ…どうしたのかな?』

 

第1話完。

 

 

またお会いしましょう

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