超虚弱体質の不幸少年も異世界から来るそうですよ?   作:ほにゃー

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第六話 凍死寸前と覚醒

「水平に廻る太陽……そうか、白夜と夜叉。あの水平廻る太陽やこの土地は、お前を表現しているってことか」

 

「如何にも。この白夜の湖畔と永遠に沈まぬ太陽。これこそ私がもつゲーム盤の一つだ」

 

こともなげにこたえる白夜叉さん。

 

この広大な土地がゲーム盤ってすごいなー…………

 

「こ、これが唯のゲーム盤!?そんなデタラメな…」

 

飛鳥ちゃんも驚く。

 

「……して、おんしらの返答は?挑戦なら手慰み程度に遊んでやろう。しかし、“決闘”を望むなら……魔王として命と誇りの限り戦おうではないか」

 

しばらく沈黙が続き、十六夜君が手を上げた。

 

「まいった。やられたよ、降参だ」

 

「ふむ?それは決闘ではなく試練を受けるということかの?」

 

「ああ、アンタの力はよくわかった。今回は試されてやるよ。魔王様」

 

プライドが高い十六夜君にとって一度言った言葉を撤回するのは悔しいみたいだ。

 

そんな十六夜君の「試されてやる」の言葉を、かわいい意地の張り方だといって白夜叉は笑う。

 

「他の童たちも同じか?」

 

「……ええ、私も試されてあげてもいいわ」

 

「同じく」

 

苦虫を噛み潰したような顔で二人とも返事をする。

 

「で、髪の長いおんしはどうする?」

 

今度は僕に聞いてきた。

 

「待て白夜叉。蓮花にはゲームをやらせねーぞ。いくら怪我が治るとはいえ、見過ごせねーからな」

 

そう言って僕の方を見る十六夜君は、口を開けて驚いていた。

 

何故かって?

 

今の僕は凍死しかけているからかな。

 

それにしてもここ寒い。

 

死ぬ……………

 

「蓮花ああああああああああああああ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「蓮花、大丈夫?」

 

「無理しちゃだめよ」

 

「ありがとう、耀ちゃん、飛鳥ちゃん」

 

十六夜君の学ランの上着を羽織り、耀ちゃんが背中を擦って、飛鳥ちゃんが両手を握って温めてくれてる。

 

人肌って温かい…………………

 

で、十六夜君と黒ウサギさんはと言うと―—―――

 

「白夜叉様!蓮花さんのお体のことを考えて行動して下さい!」

 

「おい白夜叉。行き成りの環境変化は止めろ。蓮花の体には負担がでかい」

 

「いや、あの…………すまん」

 

白夜叉さんを正座させ、お説教している。

 

「それに十六夜さんたちも相手を選んで下さい!!それに白夜叉様が魔王だったのはもう何千年も前のことじゃないですか!!」

 

「なに?じゃあ元魔王様ってことか?」

 

「はてさてどうだったかな?」

 

ケラケラと白夜叉さんが笑っていると遠くから甲高い声が聞こえた。

 

その声に耀ちゃんはいち早く反応した。

 

「なに、今の鳴き声?初めて聞いた」

 

「ふむ、あやつか。おんしら三人にはうってつけかもしれんの」

 

三人ってことはやっぱ僕は不参加なんだ。

 

がっかり。

 

「嘘っ・・・本物!?」

 

耀ちゃんが歓喜と驚愕に溢れた声を上げたので何事かと思い顔を上げると

 

「こりゃ、すげぇー」

 

そこには、鷲の翼と獅子の下半身を持った幻獣。

 

グリフォンがいた。

 

「如何にも。こやつこそ鳥の王にして獣の王――――グリフォンだ」

 

白夜叉さんがグリフォンを手招きするとグリフォンは白夜叉さんに近づき深く頭を下げた。

 

「さて、肝心のギフトゲームだがの、こんなゲームはどうじゃ?」

 

白夜叉さんが考えたギフトゲームはこれだった。

 

『ギフトゲーム名:“鷲獅子の手綱”

 プレイヤー一覧 逆廻 十六夜

          久遠 飛鳥

          春日部 耀

・クリア条件 グリフォンの背に跨り、湖畔を舞う。

・クリア方法 “力”“知恵”“勇気”の何れかでグリフォンに認められる。

・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、

ギフトゲームを開催します。

                            “サウザンドアイズ”印』

 

「それで、誰がこの試練に挑戦をする?」

 

「私がやる」

 

「自信があるようだがこれは結構な難物だぞ?失敗すれば大怪我ではすまんが」

 

「大丈夫、問題無い」

 

耀ちゃんの目にはグリフォンへの恐れもないし、ましてや勝利を確信している目でもなかった。

 

まるで、長年探していた宝物を見つけた子供のようにキラキラと輝いている。

 

「OK。先手は譲ってやる。失敗するなよ」

 

「気を付けてね、春日部さん」

 

「耀ちゃん頑張ってね」

 

「うん、頑張る」

 

耀ちゃんは笑顔で言い、グリフォンに近づく。

 

「えっと初めまして、春日部耀です。私と誇りを賭けて勝負しませんか?」

 

耀ちゃんがそういうと、グリフォンが少し驚きの表情をした。

 

「この地平を大きく一周する間に背に乗った私を振るい落せば貴方の勝ち、落とせなければ私の勝ち……どうかな?」

 

グリフォンは如何わしげに大きく鼻を鳴らして、何かを言うようにうなる。

 

「命を賭けます」

 

耀ちゃんが急にそう言った。

 

おそらく、グリフォンに負けたら何を賭けるかって聞かれたんだろう。

 

耀ちゃんの突拍子もない返答に黒ウサギさんと飛鳥ちゃんから驚きの声が上がる。

 

「か、春日部さん、本気なの!?」

 

「だ、駄目です!!」

 

「貴方は誇りを賭ける。私は命を賭ける。もし、転落して生きていても私は貴方の晩御飯になります。それじゃ駄目かな?」

 

耀ちゃんの提案に黒ウサギさんと飛鳥ちゃんはますます驚く。

 

「双方、下がらんか。これはあの娘から切り出した試練だぞ」

 

「ああ。無粋なことはやめとけ」

 

白夜叉さんと十六夜君が二人を制する。

 

「そういう問題ではありません!同士にこんな分の悪いゲームをさせるわけには」

 

「黒ウサギさん」

 

大声で慌てる黒ウサギさんの肩を叩き、笑いながら言う。

 

「耀ちゃんを信じてあげよう。ね?」

 

そう言うと黒ウサギさんは驚いたような表情し、そして、落ち着き始めた。

 

「そうですね。同士ならば………最後まで信じて待つのが当たり前ですね」

 

そう言い黒ウサギさんは耀ちゃんの方を見る。

 

「耀さん!頑張ってください!」

 

耀ちゃんは親指を立てて笑い、グリフォンの背中に跨った。

 

「始める前に一言だけ………私、貴方の背中に跨るのが夢の一つだったんだ」

 

そして、ゲームが始まった。

 

耀ちゃんを乗せたグリフォンは、もの凄いスピードで山へと向かった。

 

そして、グリフォンが山を迂回し、戻ってきた。

 

「戻ってきました!」

 

「後、もう少し……」

 

そして、グリフォンはゴールをした。

 

耀ちゃんを乗せて。

 

「ゴールです!」

 

「春日部さんの勝ちだわ!」

 

だが、ゴールした瞬間、手綱を離してしまい、耀ちゃんはそのまま落ちていった。

 

「春日部さん!?」

 

「耀さん!?」

 

助けに行こうとした黒ウサギさんを十六夜君が掴む。

 

「は、離し――」

 

「待て!まだ終わってない!」

 

十六夜君の言う通りまだ終わっていなかった。

 

耀ちゃんの体は次第にゆっくりと落ち始め、最後は空から見えない階段を使って降りて来る感じだった。

 

降りて来た耀ちゃんはVサインを僕たちに見せて笑った。

 

「やっぱりな。お前のギフトって、他の生き物の特性を手に入れる類だったんだな」

 

十六夜君が笑みを浮かべながら耀ちゃんに言う。

 

十六夜君の軽薄な笑みに、むっとしたような声音で耀ちゃんが返す。

 

「……違う。これは友達になった証。けど、いつから知ってたの?」

 

「ただの推測。お前、黒ウサギと出会った時に“風上に立たれたら分かる”とか言ってたろ。そんな芸当は人間にはできない。だから春日部のギフトは他種とコミュニケーションをとるわけじゃなく、他種のギフトを何らかの形で手に入れたんじゃないか……と推察したんだが、それだけじゃなさそうだな。あの速度で耐えられる生物は地球上にいないだろうし?」

 

「いやはや大したものだ。このゲームはおんしの勝利だの。……ところで、おんしの持つギフトだが。それは先天性か?」

 

「違う。父さんに貰った木彫りのおかげで話せるようになった。父さん彫刻家だったから」

 

「ほほう………彫刻家の父か。よかったらその木彫りというのを見せてくれんか?」

 

頷いた耀ちゃんは、ペンダントにしていた丸い木彫り細工を取り出し、白夜叉さんに差し出す。

 

白夜叉さんは渡された手の平大の木彫りを見つめて、急に顔を顰めた。

 

十六夜君、飛鳥ちゃん、そして僕もその隣から木彫りを覗き込む。

 

「複雑な模様ね。何か意味があるの?」

 

「意味はあるけど知らない。昔教えてもらったけど忘れた」

 

「………これは」

 

木彫りは中心の空白を目指して幾何学線が延びるというもの。

 

白夜叉さんだけでなく、十六夜君、黒ウサギさんも鑑定に参加する。

 

黒ウサギさんは首を傾げて耀ちゃんに問う。

 

「材質は楠の神木……? 神格は残っていないようですが……この中心を目指す幾何学線……そして中心に円状の空白……もしかしてお父様の知り合いには生物学者がおられるのでは?」

何学線……そして中心に円状の空白……もしかしてお父様の知り合いには生物学者

がおられるのでは?」

 

「うん。私の母さんがそうだった」

 

「生物学者ってことは、やっぱりこの図形は系統樹を表しているのか白夜叉?」

 

「おそらくの……ならこの図形はこうで……この円形が収束するのは……いや、これは……これは、凄い! 本当に凄いぞ娘!! 本当に人造ならばおんしの父は神代の大天才だ! まさか人の手で独自の系統樹を完成させ、しかもギフトとして確立させてしまうとは! これは正真正銘“生命の目録”と称して過言ない名品だ!」

 

「系統樹って、生物の発祥と進化の系譜とかを示すアレ?でも母さんが作った系統樹の図は、もっと樹の形をしていたと思うけど」

 

「うむ、それはおんしの父が表現したいモノのセンスが成す業よ。この木彫りをわざわざ円形にしたのは生命の流転、輪廻を表現したもの。再生と滅び、輪廻を繰り返す生命の系譜が進化を遂げて進む円の中心、すなわち世界の中心を目指して進む様を表現している。中心が空白なのは、流転する世界の中心だからか、世界の完成が未だに視えぬからか、それともこの作品そのものが未完成の作品だからか」

 

白夜叉さんの興奮具合が半端ないな。

 

そんなに凄いんだ。

 

「うぬぬ、凄い。凄いぞ。久しく想像力が刺激されとるぞ! 実にアーティスティックだ!おんしさえよければ私が買い取りたいぐらいだの!」

 

「ダメ」

 

耀ちゃんはそういい、ペンダントを取る。

 

「残念じゃ…………さて、では最後に蓮花よ。おぬしとやるぞ」

 

白夜叉さんの言葉に全員が驚く。

 

「白夜叉様!何を仰るんですか!」

 

「そうよ!いくら治るからと言っても危険だわ!」

 

「血も涙もない」

 

皆が騒ぐ中十六夜君は、驚きながらも冷静に黙っていた。

 

僕は十六夜君に上着を返しながら、僕は白夜叉さんに近づく。

 

「いいよ、白夜叉さん。やろうよ」

 

「蓮花さん!?」「蓮花君!?」「蓮花!?」

 

三人が驚き、僕を見る。

 

「僕だけ参加してないのは嫌だし、僕も挑戦とは言え白夜叉さんと戦いたいんだ」

 

そう言い、白夜叉さんに言うと白夜叉さんは笑って契約書類(ギアスロール)を取り出した。

 

 

『ギフトゲーム名:起死回生の一手

プレイヤー一覧:神代蓮花

・クリア条件 白夜叉に一撃を与える

・クリア方法 ギフトを使用し、ホストに一撃与える。

・敗北条件  降参かプレイヤーが上記の勝利条件を満たせなかった場合

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、

ギフトゲームを開催します。

                            “サウザンドアイズ”印』

 

「じゃ、行くよ。白夜叉さん」

 

すると、手の平から何かが現れる。

 

それは刀の柄。

 

手の平から現れた刀はそのまま手の中に納まる。

 

腰に刀を添え、握る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くぜ。白夜叉――――死ぬなよ」

 

勢いよく刀を抜刀する。

 

すると白夜叉さんは咄嗟に横に転がる。

 

そしてさっきまで、白夜叉がいた所に大きな亀裂が入る。

 

「死なない程度に頑張れよ、白夜叉。()の斬撃は危険だぞ」




次回で主人公の性格が変わった理由がわかる予定です。
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