貴方にキスの花束を――   作:充電中/放電中

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Re.Beyond Darkness 11.『朱い夕暮れ~Battle of Darkness Ⅱ ~』

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「んっ…あっ…はっ…」

 

―――彩南高校屋上に二つの影が伸び落ちる、夕暮れの真赤な日差しを浴びた黒咲芽亜と結城リトの二人だ

 

「ふっ…ぁっ…ふふっ…♡センパイ犬みたい…んっ…」

 

背後から抱きつくリトは芽亜の躰に手を這わせしつこく胸を揉みしだく。芽亜は蕩けた甘い悲鳴をあげる

 

黒咲芽亜の制服が黒い霧に包まれ……本来の姿(モノ)へとうつろいゆく―――

 

メアは戦闘衣(バトルドレス)を捲り上げられ、白い肢体を露わにさせられていた。西日の当たる感覚と少しの羞恥にメアは頬を紅く染める。

 

「ふ…っ…んっ……――――」

 

誰もいない屋上で、淫靡(いんび)な行為に浸る男女の姿だけがあった。

 

 

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リトセンパイに躰をペロペロと舐めさせる(・・・・・)

 

―――センパイの興奮、動揺、えっちぃ気分が伝わり感じる(・・・)

 

ナナちゃんとせんぱいのキスに触発された私は、リトセンパイに同じ事をしてもらっていた。

 

―――最近、マスターはせんぱいと遊んでばかり、私にかまってくれない。

 

だから困ったせんぱいを観たくなってナナちゃんとせんぱいをキスさせた。

 

結果は上々。思惑通りに事は運ばれ、せんぱいとナナちゃんはキスをした。

 

そう仕向けたのは私だしナナちゃんの背を押したのも私。

 

どんな感じか知りたくて、せんぱいと精神(こころ)を繋ごうとも思っていたのに、なぜだか躰は動かなかった。

 

感じたものは―――――怒り、そして恐怖。

 

その矛先(アサルト・カノン)はおともだちのナナちゃんに向かっていた。

 

 

どうしてわたしのせんぱい(もの)にキスをしてるの―――――

 

 

と。

 

 

せんぱいをこっち側に呼び戻した時、皆のせんぱいへの想いが流れ込み、確かな光を感じた。

 

そして同じ光を持つせんぱいはこっち側にもどってくる。繋げる私はただただきもちよかった。

 

きもちいい快感。心地いい興奮。紅潮する頬。熱を帯びた躰―――――濡れた感触。

 

あの時と同じく夕暮れ時。

あの時と同じくけぶる情景。

あの時以上に淫らな行為。

あの時以上を期待した私。

 

―――なのに今はちっともきもちよくない、興奮も。動揺も。すべてがリトセンパイの感情(もの)だった

 

「あっ……はんっ…」

 

犬みたいにペロペロと舌を這わせ、私の躰を舐めるリトセンパイ。

 

嫌なんでしょ?感じるよ…同調(シンクロ)させてるからお見通し――――気持ちの悪さは二人分あった。

 

声を出して気分を上げても、躰も心も感じない。

 

――――感じる感覚こそ全て

 

余計な事をごちゃごちゃ頭で考えるよりずっと自然な事

 

そうすれば造られた自分の生まれも、この世界の意味も、なんにも考えなくていい

 

――――感じるままに生きればいい。ただそれだけ

 

ただそれだけだ。

 

なのに今は―――――

 

「流れてくる……メアの感情が、不安、孤独、失うことへの恐怖…ひとりになる、迷子みたいな感覚が…」

 

メアはかっと目を見開きリトを突き飛ばす。

 

「うわっ!」

 

激しく尻もちをついたリトはやっと自由になった口で言葉を続ける

 

「そんなに嫌ならさせなきゃいいだろ、そんなに好きなら伝えればいいじゃないか」

「"好き"?それは違うよ、リトセンパイ……ちなみに"好き"ってどんな感じ?」

「それは……目が合うとドキドキして落ち着かなかったり、逆に気持ちが落ち着いたり、話しかけられれば嬉しくなったりする…そんな暖かい(・・・)感じ、だよ」

「…暖かい感じ…それじゃあこの感じは"好き"とは違うね」

 

自分の中にある荒れ狂う灼熱の、真赤なマグマのような"熱"の感覚はそんな優しいものじゃない。

 

―――あきとせんぱいを力の限り壊れるくらいに抱きしめ、貪るようなキスをして奪い合うように交わって、繋がって、一つになって、奪うものを奪ってほしい。

 

そうして一生消えぬ印を刻みつけられたら、今度は私がせんぱいに牙を立て引き裂いて咬み付きながら飢えと乾きを満たしたら、心の中身を全部が全部叫ぶように叩きつけてやりたい。躰の中身も全てを渡してそれでもなお足りないなら魂さえも溶け合い一つになりたい。

 

そして心も躰も一つになって、私自身が光になりたい。その光を独占したい―――

 

こんな恐ろしい程に強い欲求は、そんな生暖かいものじゃない。そんな心細いものであるはずがない。

 

―――そんな(やさ)しいものであるはずがない。

 

 

 

「見つけたゼぇ……"赤毛のメア"」

 

ふつふつとまた湧き上がってくる苛々を、ぶつけるべき相手がどうやら来たようだ

 

 

***

 

 

いきなり襲い掛かってくる男たち。

 

見慣れぬ風貌は地球人ではなく、ララやヤミと同じく異星人、ただその肩書は様々なようだった。

 

宇宙海賊

サイボーグ

剣士

 

三人の刺客はそれぞれ得意な武器でメアに攻撃を仕掛けていた。

メアはそれらを一瞥もせず踊るように黒いマントを靡かせ躱すと、一度敵から距離を取るべくオレを朱い三つ編みで巻き取る…驚くオレを横目にトンッと二人分にしてはやけに軽快な音を響かせ校舎屋上から飛び立った。

 

―――地球に来る前は賞金稼ぎやってたからワリとアチコチで恨みかっちゃってるんだよね、

 

あっけらかんと紡ぐ形の良い唇。

先ほど切なげな声をあげていたソレに少しだけドキリとし、オレは目を逸らした。

 

揺れ惑う意識に喝を入れるように「なに暢気に言ってんだ!」とメアに叫んだけど、メアの注意は追撃をしかけるサイボーグと"ネメシスからオマエの居場所を聞いた"の機械音声に向けられていて、届いたかどうか、分からない。

 

――――ただ分かったのは、今オレに巻かれている朱い髪が少しだけ強く締め付けてきた事。メアの心の(うち)に触れた瞬間に垣間見た、消えいりそうな儚げな表情(カオ)が、嬉々とした表情に変わった事。

 

―――それだけだった。

 

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「ぐあっ!」

目の前まで迫ったワイヤーフック型の剣を躱し伝い、おじさん1の顔に膝蹴りを入れる。…脆い

 

「こいつッ!!」

死角から散弾銃を放つ機械みたいなおじさん2、避けるのが面倒だから剣で弾く。…弱い

 

おかえし♪と閃光、光弾を放つ。

光に包まれ消えていくおじさん2―――背後から斬りかかるおじさん3の気配―――ちょっとリトセンパイが邪魔。股に挟んで後ろへ下げる…あ、今ちょっと嬉しそうな顔したでしょ、センパイってやっぱりえっちぃ―――センパイを踏んで足場に変える…あ、今のはちょっと痛かった?ゴメンね、さっき躰を触らせてあげたんだから許してよね―――パキッとガラス細工が砕けた音。自慢の朱い三つ編みがぱらぱらとストレートヘアに変わる。おじさん3に斬られたみたい、油断しすぎた…おじさん3はちょっと得意げ…ムカつく

 

こんな雑魚(ザコ)を送り込んできたマスターの気持ちが分かる。

コレは復習。これまでの私の生き方のおさらいだ。

兵器として、目の前の、どんな食事(てき)でも平らげる。どんな時も。

 

―――惑わされるな、と。伝えるように

 

(…それと私に対しての牽制でしょ?マスター)

 

 ククク…バレたか

 

―――耳元で楽しげに嗤う声が聞こえた。

 

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「クソっ!化け物が!」

そんな分かりきってる捨て台詞を吐くおじさん…なんだっけ?3?2?

 

「手加減してあげてるんだから少しは楽しませてよ、おじさん達…」

 

戦闘で愉しんでもちっとも気が晴れない。欲求不満は高まるばかり―――なんとかしてよ、せんぱい

 

逃げるおじさんたちの背に舌打ちをする私。

 

メア…?と聞こえてくるおともだちの声。

 

まとめておじさんズを消し飛ばそうとした、変身(トランス)させた銃口の、その射線上に…呆然と立ち尽くして私を見上げるナナちゃんが居た。

 

見開いた目と目を合わせる私達。

 

夕日は既に堕ちていた。

 

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――――明日会えたら、メアはまた笑ってくれるだろうか

 

そんな事を思いながら、ナナは一人、夜道をとぼとぼと歩いていた。手に持っているのは今日メアと共に食べるはずだった駅前のケーキ。メアの好きなモンブラン

 

婚約祝い。ハジメテの記念日。

 

メアと二人でお祝いする予定だった。私の相談に乗ってくれたのは友達のメアだったから

 

『ゴメンねナナちゃん、やっぱヤメとく』

 

…初めてみたその表情は、誤魔化した笑顔でいて、残念がってるようにも見えたし、悲しんでるようにも見えたし、怒ってるようにも勿論見えた。そして、今も…

 

「メア…?」

 

もう一度呟いた。

 

メアは複雑すぎる苦悶の色を瞳に浮かばせ、一言ナナへ呟くとそのまま飛び去っていった。

 

後には呆然と立ち尽くし見上げたままで固まるナナ、それを哀しげに見やるリトの二人だけが残される

 

 《 友達ごっこはもうおしまい 》

 

ナナの頭の中では先ほどのメアの言葉だけが、リフレインしていた。

 

リトは心の裡で、一人ではこの二人を救い上げる事はできない、と。

 

そう、一人では。

 

 

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 これはどういうコトですか―――オニイサマ

 

そう囁くように可憐な唇を動かし迫力満点の低い声を響かせ、鋭利なナイフのように睨みつけるモモ。一触即発、触れれば身を斬られるような、そんな錯覚に陥らせるような殺気を撒き散らしていた。

 

(…実はナナみたいな牙があるんだな、へー…ララの口にもあるんだろうか…って暢気に構えてるバアイじゃないな)

 

「何怒ってんだよ?」

「怒ってなどいません……ムカついてるんです」

 

同じだろ、と呆れながらも頭を撫でてやろうとした手をバチンッ!と弾くモモ。あうち。…相変わらず気安く触らせてはもらえないらしい。

 

「んで?何?今日は報告の日でもないだろ?なのに呼び出しやがって…最近の放課後は忙しいんだぞ、補習だったりヤミと夕飯の買い出し行ったり、美柑からも会って相談したいことがあるって言われてるし、里紗へ借金返さないといけないし…ああ、それまだ春菜に言ってないんだった…なんて言ったらいいんだ?…あ、そうだ!相談に乗ってくれよ、モモ」

 

いつもの待ち合わせ場所。その2、暗い電柱の下…に秋人は呼び出されていた。

丁度その時の秋人は古手川唯の髪を乾かしてやっていた。熱風に揺れる黒髪は、なんだか水面に揺れる海藻を思わせる。

 

――春菜の髪を乾かしてやった時もそうだったが、なんだろうか、ずっと嗅いでいたいようなそんな甘い花のような香り。おんなじシャンプーなんだよな?不思議。今日ウチに唯が泊まりに来ているのも不思議だったが…あの超真面目な堅物の唯が友達のウチへお泊まりに…友達ができてよかったな、唯。クラスでハブられそうになってたもんな、良かったなァ、唯!お兄ちゃん涙でてきちった。内なる唯が「アンタ泣き過ぎでしょ?噴水?噴水なの?」とはんっと鼻を鳴らしバカにしてくる。そんなところも愛らしいぞ、唯…

 

「んー…誰かに髪を乾かして貰うのって気持ちいいのね…」

「…お兄ちゃん噴水でもいいかもしれないぞ、唯たん…つんつんゆいたん」

「はあ?何言ってるのよ?」

 

なんでもない!と長い黒髪をボサボサにしてやる。な、何するのよ!お兄ちゃん!と春菜と同じような悲鳴を上げる唯。台風が直撃したようなめちゃくちゃな髪。これでパジャマのシャツが乱れてたら…おお、色っぽくてイイな!イイカンジだぞ!唯!

 

「そ、そう?ちょっとハレンチじゃない?」

「イヤイヤ、ハレンチなのがいいんだろ…うん」

 

なにやってんだか、と呆れ顔のヤミ。「私もアレされたなぁ…」と呟き、頬を赤らめる春菜。「えっとその後…きゃっ、」と呟いたと思ったらジロリと睨んで頬を膨らませている。こら、春菜、そんなにお兄ちゃんを睨むなっての。妹の髪をちゃんとタオルで拭ってあげて待ってなさい。コラ、ヤミの髪をそんなに何度もグイグイ引っ張るんじゃない、八つ当たりするんじゃありません、ヤミも春菜を睨むんじゃない!お前らが喧嘩したら大変なことになるだろ!怪獣大戦争か!…ったく、ドライヤーは俺が持ってる一つだけだし、唯の次にヤミ、最後に春菜だ、どこのサロン、いつから俺は美容師になったのだ。…ちなみに乾かす順番はジャンケンでなく、クジで決めた(ジャンケンだとリアルファイトになりそうだったから)自身のクジ運のなさに愕然としている春菜はカワイイ。ヤミは春菜の先だったことに満足だったのか、ちょっとだけ得意気になってフッと口端を上げたのを俺は見てたぞ

 

 

「…聞いているんですか?お兄様(偽)」

 

はっとして目の前を見ると、薄ぼんやりとした街灯がモモの鋭い視線を更に尖らせ、今だ突き刺すように睨んでいた。まだ成長途中の…どこか幼さの残る可憐な美貌を精一杯歪ませ、威嚇している。

 

「…で?ナナのハジメテを奪ったとはどういうコトですか……?お兄様(偽)…」

 

チャキッ!とまるで拳銃のようにデダイヤルを開くモモ。おい、何する気だってのお前は。

 

「ハジメテ?キスの事か?」

「ナナのを先に奪うとはズルいです…お兄様…どうして私の…は?キス?」

 

目を伏せてごにょごにょと呟いたと思ったら、殺気を霧散させ目を点のようにするモモ。

ガチャンと乾いた音がしてデダイヤルがその白い手から滑り落ちる。慌てて拾い上げこほんっと一つ咳をした。

 

「な、なんだ、キスでしたか、そうでしたか…てっきりその先へいったのかと…」

「なんだ?ムカついてるんじゃないのか?これで俺側にナナが入ったワケだし、リト(・・)を勝たせたいんだろ?」

「ムカついてるんじゃありません、怒ってるんです……それにリトさんを勝たせたいに決まってるじゃないですか。何言ってるんですか?誰がお兄様(ウザ)を家族に、しかもデビルーク王になど…あいたっ!ちょっと!叩かないで下さいっ!」

 

どっちなんだよ、と頭をはたく。生意気言うなと髪をぐちゃぐちゃにしてやる。ななな!なにするんですかぁあぁん…!と力ない、どこか甘い声を上げるモモ。

 

「ああっ!髪まで…!もう!」

 

ぐちゃぐちゃにされた髪を必死に整えるモモ。

ニヤリと笑い、桃色の髪に咲く二つの花飾りをとり、春菜みたいにしてやる。【モモ・ベリア・デビルーク(西連寺春菜コスVer.)】だな。ちょっと似てるか?春菜と同じくらいの髪の長さ(・・・・・・・・・・・・・)だし。ん?なんで抱きついてくるんだ?

 

「それで?戦況報告でもしてくれよ」

「お兄様ぁ…♡へ?まだ帰らないのですか?」

「は?帰ったほうがいいのか?せっかくこうして会いに来たワケだし。もうちょっとくらい良いぞ」

 

そ、そうですか!いつもスグ帰ってしまわれるので…と何だか嬉しげなモモ…抱きついたまま見上げ、ふりふり揺れている。そんなにニヤけてどうしたんだ?どこかにリトでも見つけたのか?

 

「オホン、ではお兄様、その前に紅茶でも「西連寺のお兄さん!はぁッはぁッ!…やっと見つけた!」」

「結城…久しぶりだな、どうした?そんな慌てて」

 

ナナとメアが!…と激しく捲しててるように説明を始める結城。

真剣な表情の結城が説明を終えると、戸惑ったような視線を俺とモモに交互に投げかける。―――あ、そうか、コレはマズイな

 

「モモは俺の妹だからな、ちょっとばかり恋の相談に乗ってやってただけだぞ?ちょっと歪んだ恋心だが、まぁカワイイもんだ、結城のことが大好きだしな」

 

ニヤリと笑い、モモの背を押し結城に抱きつくようにぶつけてやる。わ!と声を上げ桃色の髪が跳ね、たたらを踏んだモモは結城の胸に収まった。

 

「結城はナナのところへ行ってやれ、俺は…メアを探す。」

 

たしか、ナナはリトに慰められ、背を押される筈だ。そうやって二人は友情を繋ぎ直す筈……だ…だったと思う…メアの方は…分からない。識らない。

 

だいぶ変わってしまっている出会いや出来事、虫食いのようになってしまっている俺の記憶。

 

 

『…おお、スゲー本物か』

『…ちがう、よ、わたしは、きっと、ニセモノ…だ、よ…うっ、ひっく…』

 

何故か浮かぶ、春菜の言葉。

 

…凛にでも、話してみるかな、

 

メアが何処に住んでいるのか識らない。

だけど今の俺はメアへの会い方を知っている。

あのヘンタイで自由なヒマ人にかまってやれば会えるはずだ。

 

「じゃあな!ナナを任せたぞ!」

「はい!」

 

とにかく、今は余計な事を考えず頭ではなく心で動く。妹の力になってやらないとな、俺はナナにお兄ちゃん面してたわけだし。

 

走りだす俺の耳にはもう何も聞こえなかった。

 

 

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タイミング…悪い。

 

いつもみたいに、タイミング悪くコケて私を押し倒しただけならまだいいですけど……ちょっとコレはあんまりですよ…リトさん…

 

知らずに零した深い溜息は、汗だくのリトさんの胸を更に濕らせる。

 

泣くなよ、モモ…そんな言葉が聞こえる……リトさん、私、泣いてなんて…

 

瞳から零れた雫は確かに溜息よりもリトさんの胸を濡らしていた。

 

 

リトは静かに優しくモモの頭を撫でる。普段は自分から身体を寄せても気安く髪や躰を触れさせないモモだったが、この日は嫌がらなかった。

 




感想・評価をお願い致します。

2016/01/09 情景描写・台詞改訂

2016/01/19 心理描写・台詞改訂

2017/08/22 一部修正

2017/08/24 一部修正

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【 Subtitle 】

53.情炎に染まる夢境

54.制御不能なこの気持ち

55.朝飯前な悪食ルーティーン

56.夕闇に溶け出した楔

57.ひとりじゃない

58.オシオキしたい

59.置き去りのシスタープリンセス


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