59
「あー、えー…神様、素敵なロリロリきゅんかわな妹がほしいです、どうかこの願いを叶えて下さい」
「はーっ!はーっはっは!!その願い!叶えてやるぞー!ロリロリきゅんかわ♡豚共まとめて踏みつけ昇天!ご注文の通りの妹、ねめしすババンと新・登・場ッ!!」
ボフッ!と顔に生ぬるく柔らかい衝撃に挟まれる、視界が真っ暗闇に包まれる。
―――結城&モモカップルから別れた俺は、あまり人の居ない場所を探し、その中で一番暗い路地裏に入って思ってもいない言葉を呟いた。そうするとこのアホしすがぶつかるように飛びついてきたのだ。計画通りだった。―――顔を股に挟まれるのは違うが―――つまり今言った言葉とはネメシスを呼び出す為だけの
「ククク…こんな高ぶった男女が連れ添い集う淫靡なる場所…そんな場所にロリロリな妹である私、
―――繰り返すがただの住宅街の路地裏だ。どこにでもある狭い空間だ。断じてそんな淫らな場所ではない。
顎を上げた不遜な雰囲気、ニヤニヤと笑うような声、「激しく頼むぞ、おにいたん…フフフ、私もきつく締め付けておにいたんを満足させてやるからな…」と耳元で囁き頭を撫でるネメシス。滑った舌でちろりと舐め上げられる、やめろっての、それから「はあぁ…」とか甘ったるい声を出すんじゃないっての、いい加減苦しいんだっての!溺れるような水溜まりから顔を引き剥がす、
「…はうぅ…、おにいたん汁おいちぃですぅ♡…まっくらでねめしすこわいよぅ…おマタじんじんしてきちゃう……大洪水だよぅ」
ぽすんと尻餅をつき、もじもじ俯き呟くねめしす。相変わらずキャラめちゃくちゃだ、それにお前は最近いつも濡れてるだろ、しかし今はそんな事はどうでもいい!
「ネメシス、メアは何処に居る?」
「ん?メア…"褐色黒髪メア野外露出プレイ"がしたいのか?…こうか?」
ズズズ…と黒い霧を纏いネメシスがメアに変わる。…なんだよその"褐色黒髪メア野外露出プレイ"って
俯き上目遣いでペラリと制服のスカートをめくり裾を口に咥える褐色メア……PANTS HAITENAI
「しつこいっての!」
バシン!とネメシスの顔にヤミパンツ(ホワイト)をぶつける。パクっと食いつくネメシス。犬かよ
「とにかく会わせろ、ホンモノはどこだよ?」
「…ホンモノ、ふ……いいだろう、ついて来い」
いそいそとヤミパンツ(ホワイト)を履きながらネメシスは目を細めてそう返す。
アゲハ蝶を思わせるような羽を背に生やしふわりと空へ舞い上がる…おいクレーンゲームか、脚で俺を挟むのかよ扱い悪いすぎだろ、一の字になって腰をネメシスに挟まれ蝶が空を飛ぶように夜空を流れる。
「しかし、おにいたんはメアや金色、モモ姫など…多くのメスに手を出しているがどうするつもりなのだ?」
「手は出してないっての」
腰と頭をネメシスに支えられ浮かぶ俺。さっきから顔をネメシスに必要にぐにぐにさらさらと頬を撫でられ、あやされていた。
「…成程。そうか、分かったぞ…やはりこの私と同じくこの宇宙を
―――怖っ…お前恐ろしい事言うなよ…と睨む、が、腰を挟まれて運ばれてるせいで首を捻って後ろを見てもネメシスの漆黒の浴衣の腹くらいしか見えない。それにしても褐色肌はもちもちのすべすべだな…これは脚の感想だ、扱いが悪いからお返しに太ももを触ってやっていたのだ。ネメシスもさっきから愛でるように顔を撫でてくるからおあいこだろ。
「んっ…ふぁ…は…まぁなんとかしてみせろ。ふっ、なにせお前はこの私の"おにいたん"なんだからな。ククク…」
―――なぁ?
60
ぐすっ…と鼻を啜る。ちょっとだけ肌寒い。
でも暖かいウチへは帰らない。今はとにかく独りになりたかった。
―――友達……だから
『ナナちゃん、私、家族になりたい人がいるんだ♪』
『へー…宇宙人なのか?』
『うーん…似たようなもの、かな?うん♪それより素敵♪かも』
『あたしにも居るんだ!』
―――友達だから教えた。まさかそれが兄上だったとは知らなかった。ヤミだとばっかり思ってた。
「ハァー……」
深く深く息をつく。抱えた膝をもう一度抱え直し鼻を埋めた。
―――メアはあたしに"友達ごっこはもうおしまい"って言った。あたしはメアとは
「隠してたのはあたしも同じか…」
―――恋なんてよく分からないし。どんなものかも知らなかった。
姉上が言う「お兄ちゃんが"好き"」と「リトの事が"好き"」の違いは流石に分かる…けどハルナの「お兄ちゃんが"好き"」の方は分からない。私はその三つのどれでもなくて、
でもそれも違って…―――――
甘酸っぱい味で"好き"になった。いつの間にかその味に恋をした。
メアもその味を知ったんだろうと思う。
「メア…兄上…あーあああああ!もうらしくない!あたしらしくない!」
「まったくだな、らしくない。ナナらしくない」
「そうだよナ!…って兄上!?ななな、なんでココに!?」
目を丸くして驚き叫ぶ。
河原の土手で大の字になってジタバタと叫んでたら…兄上がきた。もう今日から兄上(仮)じゃない…許可なら母上に"とっとと"貰ったし
「ん、ああ…丁度ナナたちを探しててな…何やら悩んでるらしいからすっ飛んで来た」
「あ、あにうえ……」
大きな瞳をうるうる潤ませ感動に震えるナナ。立ち上がるとガバァッ!と秋人の胸へ飛びついた。秋人はそんなナナを抱きしめるようにキャッチした。
「何をウジウジと悩んでるんだお前は、この!この!この!」
わ!う!お!ななな何をするんだ兄上こら!イタッ!キャハハッ!ヤメロ!ハハハッ!と抱きしめた秋人はナナのツインテールを撫で回したり、硬さの中に柔らかさを含む幼い身体をこねくり回したりする。
「ナナらしく正直にメアにぶつかっていけよ、「あたしは友達なんだぞ!メアの気持ちなんかカンケーないっ!」ってさ、」
「…、でも"友達ごっこはもうおしまい"って言われたんだ…――――
抱きしめられ続けているナナは秋人の胸に鼻先を埋め弱々しく呟く、吐き出した言葉はナナの胸に溜まっていた、冷たく締め付けるような痛みをよりいっそう強く認識させ、涙がナナの大きな瞳からボロボロとこぼれ落ちる。
「メアはあたしのことなんて何とも思ってなかったんだ…だから…もうどーだって「…繋いだ絆が途切れたらまた繋ぎ直せばいいだけだ」
「あ……」
―――そう言えば兄上もそうやって今こうしてココに居るんだった。
やっと見上げたナナの紫の瞳には似た紫…優しい紫があった。
「おにいたんはいつだってピンチなナナの傍に居るのだよ」
ポンと頭を撫でる秋人。ぽんっと頬を赤らめるナナ。
―――またキモチワルイ声で言いやがって…でも、それでも、それがイイかもだ。
顔全身を真っ赤に染め上げたナナはおとなしく秋人の腕の中に収まっていたが、はっとタイヘンなコトに気づくと、逃げるように飛び出した
「あ…あああそうか!あああありがとな!兄上ッ!でもせっかく兄上になったのにそれもあとちょっとの間だけだな!残念だったな!またなっ!」
ダダッ!と土埃を上げながら猛然と去っていくツインテール。
「ん?何か様子がおかしかったがまぁいいか、ナナだし。さて…次はメアだな、」と独りごちる秋人だけが白んだ朝焼けの中に残されているのだった。
―――ま、マズイ…もうキスも済ませたし…もしもあのままくっついてたら赤ちゃんできるとこだった…危なかったぞ!…よく離れたな!あたし!まだ結婚式挙げてないし、式まではお腹が膨らんでないほうがいいからな…はぁ…危なかった…
下腹部を抑えながら懸命に走るナナの口と目元に惚けた緩みが残されていた。
61
次の日、夕暮れ。
同じく河原にメアは呼び出されていた。
―――"決闘"といえば河原。そんな安直なイメージがナナにはあったからである。
「いいか!メア!聞けよ!」
「…何?ナナちゃん」
真赤な夕日を背負い込む目の前のナナは、確かに今、闘志にその身を燃やしているようにメアには見えた。
「あたしは兄上が好きだ!結婚したい!いや、ゼッタイ結婚してやるんだ!だからメアの言ったとおり友達ごっこはもうおしまいだ!これからはもうどうやったってメアとは友達にはなれっこない!」
まさかそんな言葉をぶつけられるとは思わなかったメアは目を丸くして目の前で怒鳴る、揺れる――おともだちを見つめる
「だから今日からあたしたちはライバルだ!兄上がそんなに欲しかったら…このあたしから兄上奪いとってみろッ!誰にもやらないけどなッ!」
きょとんとしたメアの顔に小さな牙を見せ咆えるナナの唾が吹きつけられる。
―――あの後、
薄ぼんやりとした疑惑がくっきりと輪郭を帯び…ナナは自身の予想が正しかったことを知る。そうして得た結論を、目の前のメアに叩きつけるように叫んでいた
「いいか!ゼッタイ逃げるなよ!あたしは逃げない!」
「ぷっ、あははっ…それはせんぱいに言ったほうがいいんじゃない?」
首を傾げ無邪気に笑うメア、そのせいで何本かの朱い髪が口元に張り付く、ウルサイ!あたしは逃がさないんギャ!!とムキになってもう一度咆えるナナ、勢い余って舌をガチン!と噛んでしまう。あまりの痛みにのたうち回るナナとだ、大丈夫?ナナちゃん…痛そうでちょっと素敵、かも♪と心配しているのかいないのかわからないメア………ややあって弾けたように二人は笑った。
…そんな"新しい関係"を結んだ二人を見守る大小二つの影…
「…メアには困ったものですね、」
メアを襲った刺客三人をサクッと始末した金色の闇。
「何を困ってるってんだよ、お前は…いつも好き放題やってるじゃねぇか」
「それは勿論、アキト争奪戦…いえ、私に襲い掛かってくる程に嫉妬に狂う妹にですよ」
―――ヤミはこれまでの攻防でメアの心をしっかりと見抜いていた。多少相容れないものもあったが……
(まぁ姉とはどっしり構えているものです)
ふっと隣の秋人を見上げ溜息とともに呟くヤミ。木の影からひょこっと顔を覗かせたふたりはメアとナナを見守っていた。
「…ところで、本当に結婚するんですか?」
「え?、何?何も聞こえなかったぞ」
ふたりの視線はナナとメアに注がれたまま会話を続ける
「美柑と春菜に加え、古手川唯といい…今度はプリンセス・ナナ…最近はよくモテるのですね、春菜お姉ちゃんが知ったら大変ですね、アキト」
「え?何?また何か言った?何も聞こえなかったぞ」
「…まあ、私には何の関係もありませんが…そういえば今夜は焼き肉にすると春菜お姉ちゃんが言っていました、黒毛和牛だそうです」
「マジか!やっほう!」
「……都合のいい耳ですね」
メア達に固定された視線をジロリと傍らに立つ秋人を向け、見上げるヤミ……大きなサファイヤの宝石のような瞳は秋人の横頬あたりを見据える。
「ま、何はともあれナナとメアが上手くいって良かったよ」
柔らかく緩むアキトの頬、視線は笑い合うふたりに優しく注がれたまま
―――触れればまたあの幸福感。しあわせを味わえる
…固そうな印象を受ける引き締まっているアキトの頬だが意外にも柔らかいことをヤミは知っている。最近知ったのだ。
「あのメアをどうやって説得したのですか?」
「ん?ああそれはな…」
―――こっちを見てほしい、でも今は見ないで欲しい。でも。でも。でも。後もう少しだけ
「……という約束をしたワケで、ってなんだよ?」
「…ッ!?」
―――気づいたらアキトの頬にくちづけるように顔を、唇を近づけていた。図らずも此方を振り向いた秋人の唇とヤミの唇が微かにだが触れ合う。
ぱちくりと大きな目と目を合わせ固まるふたり。
―――なんでこんなコトに?
同じことを思ったがそれぞれ意味は異なっていた。
ヤミの場合は頬の感触をたしかめようとしただけ、くちづけるように顔を近づけたのは無意識の…興味本位だった。秋人の場合は病室でヤミの本心を知っていた為、まさかそのような事をヤミがするとは思っていなかったからだ。
夕焼け空が伝染したかのように朱に染まる小さな少女…キラキラの輝く金の前髪が秋人の鼻を擽った。
―――ええい!ままよ!
『ぎゅっ!と大きな瞳を閉じて自身の勇気の炎を焚き付けたイヴは、愛しい青年にその小さな花びらのような唇を近づけます。
そしてふたりの間は正しくなくなり―――イヴはかわいい仔犬にするみたいに、ちゅっと微かに唇を触れ合わせました。
たったそれだけ
たったそれだけの筈なのにイヴは、今までの短くない生涯を振り返っても受けたことのない衝撃をその身に感じました。
こんな感触、こんな衝撃、こんな味、こんな感覚。
唇は鋭敏すぎて―――心はもっと敏感でした。
これではこの小さな身は、ヒトより頑丈に作られた身でさえあっても。
これでは…
これではとても―――
』
「…もち、ま、せん…」
「…………は?」
今だに目の前にあるヤミの顔を見つめる秋人は
シュッ!と空気を切って秋人から離れるヤミ……見ればいつもと変わらず……どこか柔らかい印象を受ける無表情。
「早く帰ってきてくださいね、アキト。昨日も中途半端で抜けだしてお姉ちゃんも怒ってましたよ髪をきちんと乾かしてから行って下さい後から大変でした散らかさないでいって下さい苦労するのは私ですあと今日の焼肉用のお肉は既に買ってきてありますから買わないで下さい野菜もちゃんと食べて下さい」
「…ハイハイ」
はい、は一回にして下さいとさらに
秋人はその背に微笑む。くるりと此方に背を向けた時、確かに見えたのだ、しあわせそうに微笑むイヴの顔が。……多少だらしなく口元が緩みすぎていた気もするが。
「さてさて…どうしたもんかね…お兄ちゃん困っちまったぞ、春菜、」
ボリボリと髪を掻く秋人だけがひっそりとその場に残された。
皆の計画はそれぞれ、ゆっくりだが、確実に進んでいた。
感想・評価をお願い致します。
2016/01/24 台詞改訂
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【 Subtitle 】
59.ロリしすネメたんの献身
60.兄上といっしょ
61.強敵への宣戦布告、切なさブラックアウト