貴方にキスの花束を――   作:充電中/放電中

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R.B.D閑話『俺がリト』

1

 

「ああ…ったく、面倒な事になったっての」

 

リト(・・)は一人街をゆく

 

「なんで俺が主人公に…」

 

――――秋人はリトになっていた。勿論ララの発明品のしわざである。

 

「まったくもって面倒な…うおあっ!」

 

ドテッ!きゃぁあああ!さっさきさま!おのれ結城リト…君という男は…!

 

こんなラッキースケベがもう数えきれない程、被害にあってないのは対策を知る春菜、モモ、美柑だけだ。

 

「結城くん、今帰り?」

「ん?」

 

振り返ると穏やかな口調、そのあとに微笑みを浮かべる春菜がいた。胸に抱きかかえる日誌を見るにどうやら居残って作業していたらしい。

 

「はる…西蓮寺も今帰りか?」

「?…うん」

 

危ない危ない、ついうっかり春菜と呼んでしまいそうだった。ラッキースケベで凛やヤミ追い回されたり唯に説教くらったりするのは面倒だったが、春菜を(からか)えるならララの発明品もたまにはいいかもしれないな、んふふ

 

「なぁ、西蓮寺…西蓮寺のお兄さんていい人だよな、凄い漢だよな?はる…西蓮寺はお兄さん大好きなんだよな?」

 

(さあ、赤くなって慌てふためきながら普段本人には言えないお兄ちゃんへの愛を語るがいい!春菜!)

 

「う~ん…そうかな?お兄ちゃんはだらしないし、お野菜食べないし…ワガママし放題の子どもみたいだから…正直、ちょっと迷惑」

 

ガーン!

 

「そ、そんな事ないだろ…はる…西蓮寺のお兄さんは優しいし…」

「んー…優しい…かな?家族の私達にはちっとも優しくないよ?文句ばっかり言って…お野菜たべないし、正直、私とヤミちゃんのおウチには…お兄ちゃんいらないかも」

 

ガガーン!

 

「い、いらないって…お兄ちゃんいらないって…は、はる…た、食べなくてもいいだろ…別に野菜くらい、いいじゃないか…きのうの夜、ヤミのサラダにこっそりトマトを盛りつけたのも見てたのか…しってたのかよ…春菜」

「うん、もちろん。ヤミちゃんは最近お兄ちゃんに甘い顔をするようになったから…代わりに私は厳しくいくからね、お兄ちゃん(・・・・・)

 

――…一方その頃、秋人になったリトは…

 

「…アキト、今日はこの本をお願いします」

「え!?絵本?!お、オレが読むのか!?」

「?そうですが…なんだか雰囲気が違いますね…まぁいいでしょう、ではお願いします」

 

 

「…今日は調子が悪かったようですね、明日。また期待しています」

「あ、ああ…」

 

絵本をリトなりに一生懸命読んだがヤミの眉が不機嫌に釣り上がって行くだけだった。いつもの様にトランスで攻撃されないか心配だったリトであったが、最後に観たヤミは…心配といった表情。

 

(お兄さんも苦労してるんだな…)

 

ちらちらと振り返りながら立ち去るヤミの背を見ながらリトは秋人に共感を覚えるのであった。

 

「お兄様(ウザ)。」

「ひっ!」

「…?なんですか?その情けない声は…これくらいいつも普通でしょう?」

 

振り返れば静かな微笑み-愛想笑い-を浮かべるモモ。…とてもさっきのような恐ろしい低い声をだした人物とは思えない

 

「いいですか?まず初めに言っておきますよ?お兄様(ウザ)…私はリトさんが好きなんです、大好きなんです。そこを誤解しないでくださいね」

「えっ!?…ほ、ホントにそうだったのか」

「…何を今更…?あなた、ホントに私のお兄様?」

「へっ!?いや、あ、ああそうだぞ」

「…あやしい…はっ!?まさか今日はそういうシチュエーションプレイ!?」

「ぷ、プレイ!?」

「ええ、ん?違うんですか?…では始めましょうか、お兄様♡」

 

 

「今日は…いつものように激しいオシオキはなかったですね…ざんね…いえ、お兄様、その…お体に気をつけて、では」

「あ、うん…」

 

シチュエーションプレイをリトなりに頑張り、モモの言うオシオキを恥ずかしながら行ったがモモは喘ぎもせず不満気に尻尾を揺らすだけだった。

 

(お兄さんって…モモに何をしたのかな…というよりモモは俺を…)

 

普段アンチ・ヘイト秋人なモモが最後に口にした、秋人の身を案じる言葉を口にするのに万感の思いであったことをリトはしらない。

 

(お兄さんも苦労してるんだなぁ…そうか、俺の事をモモが…)

 

――…再びもどってリト(中身は秋人)

 

「ひどい…お兄ちゃんのことをそんな風に思ってたのかよ…春菜…」

「うん…実はそうなの、結城くん」

 

散々「お兄ちゃんってばHな事ばかりするから迷惑でいらない」だとか「他の女の子と仲良くして迷惑だから嫌い」だとか「お兄ちゃんの匂い臭いから迷惑で洗濯したくない」とか普段の愚痴を聞かされた秋人はがっくりとうなだれた。

 

ふふふっと口元を日誌で隠し春菜はとても楽しげに笑った

「…何がおかしいんだっての…春菜」

「ふふっ…だって…あははっお兄ちゃん(・・・・・)、カワイイんだもん」

 

(なんだその擽ったいような笑顔は…ん?)

 

「…しってたのかよ、春菜…」

「うん、ララさんに聞いてたから…もう、さっきからずっと"お兄ちゃん"って呼んでるのに…お兄ちゃんって意外と抜けたとこあるよね」

「大きなお世話だっての」

「もう。また拗ねて…ふふっ…カワイイんだから…お兄ちゃんは…――大好きだよ、」

 

幸せそうに微笑む春菜。

ん、と目をつぶり…ゆっくり近づき…はたと気づく

 

「あ、今は結城くんの身体だったね、間違えちゃった」

「…人のこと言えないだろ…春菜」

 

あはは、と苦笑いをする春菜…その姿をモモが密かにチェックし、ハーレム王対決リストのリト側に春菜を加えたのだった。

 

 

元に戻った秋人の胸に涙目で「大丈夫ですか?!秋人さん!ヤミさんから聞いて、私…もう、心配で…」と飛び込んでくる美柑。

銀河に名を轟かす名医ミカドの前で「アキトを元気な姿に戻してください」と同じく涙で瞳をうるませで必死に懇願するヤミ、普段見ることのないヤミの姿に困惑のミカド。

 

「そうか…モモはオレが…オレのことを…はぁ…どうすれば…」と溜息をつき物思いにひたるリト、「んー?リトー?あれ~?どうしちゃんだろー」と騒ぎの原因はノーテンキにそんな…注がれすぎて湯のみからお茶を溢れさせるリトを眺めていた。

 

…秋人の元へ多数の…部屋を埋め尽くす程の"元気になる"花がピーチ姫から届いたのは余談である。

 




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