貴方にキスの花束を――   作:充電中/放電中

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Re.Beyond Darkness 3.『夜闇の幕開け~Spring morning~』

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「えぇーてんこうしぇいをしょうかいしま…「ネメシスだ。よろしく頼む」しゅ…」

 

きゅっ…!と骨川センセは首を締められ息絶えた。ピクリとも動かない。今しがた紹介した転校生の仕業だ。

 

「「「うおぉぉお!浴衣美少女だぁあ!たまんねー!!」」」

「「「なんで浴衣!?、男子がよかったのにー!!」」」

 

割れる二つの感想、男子と女子。

 

俺は―――――

 

「骨川センセェ――――――――ッッツ!!!」

 

叫んだ。3-Aの教室の中心でアイを叫ぶ。

 

瞳は潤み、涙が溢れそうになる。立ち上がった衝撃で倒れた椅子が批難の音を立てる――――――

 

骨川センセは好きだった。素晴らしいキャラクターだった。それがもうこんなところで死んでしまうなんてッ…!信じられるかっての……ッ!

 

「ムシャクシャしてやった。暇を持て余していたし、軽い気持ちだった。今は反省している」

 

ニヤニヤと邪気たっぷりに笑いながら淡々と動機の供述を始めるネメシス。黒の短い浴衣は褐色の肌によく栄えていた。

 

「お前な!んな事であっさり殺される骨川センセは貴重な男キャラなんだぞ!分かってんのかよ!!」

 

席を立ちネメシスへずんずん近づく、

 

「…暇だったから仕方ない。ああ、暇だー…退屈。ねむくてダルくて死にそうだ、もう寝よう、おやすみ、ぐー」

「お前の暇さ加減なんてどうでもいいんだってのッ!!」

 

ネメシスの肩を掴みブンブンと揺さぶる。あうあうあー、と謎の声をだすネメシス。でもどんなに揺らしたって、骨川センセはもう………帰ってこない。帰ってこないのだ……ううっ…!

 

「そう悲しむな、おにいたん。ネメシスはパンツを履き忘れてしまいました、ホラ」

 

ピラと浴衣を捲るネメシス。

 

「「「うおぉぉお!!よくみえねぇええ!どけあきとぉおお!!」」」

 

叫ぶ男子。3-Aの教室でエロスどもが叫ぶ

 

「んな事どうでも良いんだってのッ!骨川センセは…!骨川センセはな……!時々魂が抜けちゃったり、ひどい目にあったりするけど結局は………あ、そうか、そんな簡単に死んだりしないか。」

「そうだ。そう簡単に死んだりしないだろ、おら」

 

淡々とリピートするネメシス。ドガッ!と蹴飛ばされた骨川センセはゴロゴロと転がり、壁にぶつかり止まった。身体がビクンと撥ねた。…良かった、死んでなかった……

 

「それよりどうだ。おにいたん。ネメシスはパンツ履き忘れてしまいました。ほれほれ」

 

作った鼻にかかった声と共にピラピラと捲った浴衣の裾を揺らすネメシス。間近のネメシスは先ほどから裾を上げ続け秘部を露わにしている。

 

「…お前は何にも分かってねぇ…」

 

掴んだ肩に力を籠める。華奢な肩は握るのに心地良い、浴衣の肌触りも良い感じだ。が、今はそんな事はどうでもいい!

 

「なにがだ?ホラ、その他の男どももよく見ると良い」「「「うおぉぉお!!みえねぇええ!どけええ!!あきとぉおお!!」」」

 

押しのけようと俺とネメシスに群がるエロス集団。

 

「やかましいッ!恥じらいの無いパンモロなんかに何の意味があるッ!」

「いや、パンツ履いてない」

 

きょとんと言うネメシスに黙れ、と睨みつける。

 

「んなのどうでも良いんだっての!あと何?おにいたん?そんな事いう甘えたロリキャラが!こんなところでその他のモブキャラに!しかも男に!それを見せようとするか!」

 

3-Aの教室で真実を叫ぶ。

 

周りから「アホだコイツ」「何いってんの?いいからどけよ!見えないだろ!」「向こうで九条とイチャついてろよ」等々聞こえる気がしたがムシだ。

 

「そうなのか」

 

淡々と答えるネメシス

 

「そうだッ!」

 

力強く叫ぶ。大切な事なのだ。

 

「ではおにいたんはどういうのが好きなのだ」

 

小首を傾げる褐色浴衣少女。黒い長髪が揺れる

 

「そうだな…そういうパターンで言えば…」

 

ネメシスの耳元で囁く。ふむふむと頷きながらネメシスは黙って聞いていた。

 

「…なるほど、そうか。では…んんん!!」

 

声の調子を整えるネメシス。周囲のエロスどもはゴクリと息を飲んだ。

 

「おにいたん、ねめしすはぱんつをはきわすれちゃいました…はわわわ、どうしましょう…」

 

もじもじと膝をすり合わせ内股となり上目遣いでおずおずと恥じらいを口にするドジっ子妹、ねめしす(ロリ)

 

「うむ!それならオーケーだ!」

 

グッとドジっ子妹、ねめしす(ロリ)にサムズアップする。YESロリータNOタッチ。

 

「「「うおぉぉおい!!結局見えなかっただろうがアアアア!!お前はあほかぁああああああああああ!死ねあきとぉおお!」」」

 

「やかましい!!!これでいいんだよ!!!」

 

無知なる救えないエロスどもに叫ぶ。まったくもって分かってない連中めが。金色さん呼ぶぞ

 

「なるほど、こうか、おにいたんはこういうのが好きなのか」

 

ピラともう一度裾を捲るネメシス。やめなさい

 

「そういえば、お前は恥じらいのないキャラだったな、最近記憶が曖昧だから忘れてた」

「ダメなおにいたんだな。はわわ、ねめしすがなんとかしてあげましょう」

 

キャラごちゃごちゃじゃねぇか、と頭を小突く。褐色浴衣少女は「む、痛いぞおにいたん、」と甘えた素の声を出した。

 

「なかなかおにいたんを堕とすのは難しいようだな、ああ…コレはイイ暇つぶしになる」

 

ピラともう一度裾を捲るネメシス。やめなさいっての

 

「ではおにいたん。眠くなったので帰るぞ」

 

クイと手を引き教室を出ようとするロリっ子ネメシス。自由だなオイ。お前今転入してきたばっかだろ

 

「俺はいつお前の兄になったんだよ、でも帰るのはいいかもな、昨日は夜遅かったから眠いし。」

 

グイグイと手を引かれながら背を見やる。随分小さいな、ヤミと同じくらいか

 

「うむ。寝るのは最高だ。おにいたんを抱きまくらにしてやろう」

 

お前が枕だよな?いやおにいたんが枕になれ。私が敷いてやる。それじゃ敷布団じゃねぇか、と会話を続ける。背後に危険が迫っている事を俺は知らなかった。

 

「いい加減にしろ!馬鹿者!」

 

ゴンッ!と脳天に竹刀が振り落とされ、秋人の意識を刈り取った。周りのエロスどもは既に駆逐されており、最後に残っていたのが秋人だった。それは限界ギリギリまで我慢していた武士娘の優しさの発露であった。

 

はあ、アホですわね、天条院沙姫は一つ深々と疲労の息をつく。それは秋人に対してのものが大半と少し素直になれない武士娘に対してのものだった。

 

 

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「…ヤミですよろしくお願いします。」

 

パチパチパチ…と拍手で向かえられるヤミ、無表情。でもどこか柔らかな気配を皆に与えた。

 

それは姉である西連寺春菜に

 

「ヤミちゃんは笑顔がカワイイんだから、もっと笑ったら良いと思うよ?まったく、困った妹だなぁお姉ちゃん困ちゃう」

 

と言われ、少しづつ美柑にだけ向けるそれを周りの他人に向けるよう心がけていたから。

 

春菜は新しく妹となったヤミにあれやこれや世話を焼き、時折人付き合いの下手なヤミにおろおろとする。突然出来た妹が可愛くて仕方ないらしい。同性での親しい人付き合いは美柑くらいしかいなかったヤミは困惑したが、くすぐったい感覚を覚えてそれを受け入れていた。

 

「オー、ヤミもこのクラスなのか…ふぁぁあーねむ。」

 

頬杖をつき欠伸をするナナ。深夜のばっちり努力(・・・・・・)の為にここ最近はずっと寝不足だった。師匠の教えをしっかり守り実践しているからだ。しかし成果は上々、ナナは平らな胸を見下げフッフッフッと笑うのがクセになってきていた。

 

「よろしくお願いしますね♡ヤミさん」

 

愛想よく微笑むモモ。最近(ナナ)の様子が可笑しい。おかしいのではなく可笑しい。合いもしないのに大きなブラを選び、通販雑誌に赤マルをつけ「フッフッフッ!どーだ!モモより大っきいぞ!姉上レベルだ!」と、それに深夜のあの体操……プッとモモは素の笑いを零した。が、すぐに元の可憐な微笑みに戻す。

 

二人のプリンセスに視線を向けたヤミは…

 

「ヨロシクねーヤミさん♪」

 

ニコニコと笑顔のメアを最後に捉える。瑠璃色の瞳は瞼で閉じられ闇は伺えなかった。

 

「…ええ、よろしく、メア」

 

口元の引きつった不気味な笑みを浮かべる。それもそのはず、昨晩殺し合いを繰り広げた相手がこうして無防備に笑っていたら不気味に思うのは仕方ない。

 

「…。」

きょとんとしたメアの瑠璃色の瞳が現れ、ぱちぱちとしばたたかせる。

「…なんでしょうか」

「ヤミさんも笑うんだね!でもちょっとコワイかも♪」

 

クラスの一同が思っていた事を呆気無く言い放つメアの台詞に皆が戦慄した。それもそのはず、とあるクラスはほぼ毎日のように金色の小さい少女の襲撃に合っていて、後には血の赤と硝煙が広がっている……と彩南高校怪談の一つであった。

 

「…笑うと気分が楽しくなるものですね」

「うん♪そうだね♪」

 

ニコニコと無邪気なメアとニヤリと微笑うヤミ。その笑みはヤミの家族となった男のそれによく似ていた。

 

「ん?そういえばヤミさんはせんぱいと一緒に住んでるんだよね?」

ピクリと桃色の二人の肩が上がる。……その様子をじっと眼鏡の男が見つめていた。

「はい、そうですが…それがどうかしましたか?メア」

「素敵っ♡」

 

輝かせる瑠璃色の瞳をヤミは

 

「?そうですか?」

 

困惑の紅で見据える。

 

「それって禁断の愛♡でしょ♡」

「なっ…!」

 

なにが禁断なのだろうか、周りの一同は首を傾げたが紅く染まった転校生、ヤミの顔をみて――――納得した。

 

「違います!私はアキトのことなど何とも思ってません!」

柔らかい無表情を取り消し慌てて金の髪を揺らし目をぐるぐるにするヤミ

「うん?」

首を傾げるメアの朱い三つ編みが揺れる

「大切なんて思ってませんから!」

「うん?」

さらに横に傾いていくメアの椅子もぐらぐらと揺れる

「もっと仲良く一緒に居たいなどと!!」

「うんうん」

どんどん横に傾くメア、ほとんど床と水平となる。

「心地がいいなどとは決して…!」

「素敵♪せんぱいをそう思ってるんだね」

ぶんっと元の姿勢に戻るメア。ニコニコと浮かべた口元に朱い髪の毛が張り付いた。

 

「っ!」

両手で口を塞ぐヤミ。湯気を上げながら赤く染まった顔で1-Bの教室で胸のウチを叫ぶ。

 

「わたしは春菜せんぱいのコトを言ったんだけどねー女のコ同士の禁断の愛♪」

 

ニコニコと微笑うメアと赤く染まりぷるぷると震え固まるヤミ。

1-Bの教室に叫び声に似た悲鳴が響く。声の主の髪を眩しい日差しが金色に輪郭を宿した。

 

――――1-Bでのヤミの転入初日はこのように穏やかに終わった。夜の家族の団欒で一部始終をヤミから聞いた春菜は「うんうん。私のおかげだよね、うんうん」と満足そうに頷いた。春菜のアドバイスが大きく役立ったわけではなかったが、ヤミは黙って頷いた。チラと向かいに座る秋人を見るがパクパクはふはふ、とヤミ&春菜お手製のポトフを食べている。春野菜が沢山入ったそれを頬張る秋人……手羽元と新玉ねぎばかり選びとる様子を見つけたヤミは春菜と目が合う。こくりと頷く春菜にヤミは心得たように変身(トランス)させた髪で金色の腕を作り秋人の頭を固定した、藻掻く秋人にスプーンで赤いにんじんや緑のそら豆を食べさせる。どこかいまいましげに…捻じ込むように食べさせるヤミの手には無論、転入初日に恥をかかせた秋人への復讐が多分に含まれていた。

 

―――ちょっと、ヤミちゃんやり過ぎだよ!そこまでしなくてもいいんだよ!?お姉ちゃん困っちゃう!むぐぐぐぐぐ!!!!しっかり野菜も食べて下さいアキト、悪いことをしたらバツを与える…美柑も春菜も言っていますし―――

 

この日も西連寺家は暖かい人工光に照らされ暗闇など一つも無かった。

 

 

13

 

 

「センパイ、眠ってるの?」

 

暗闇の瞳で見下ろすおさげの少女はゆっくりと体重を預けないようにリトに覆いかぶさる。

自室のベッドでうたた寝をするリトは答えるように「むにゃ…」と零した。

 

「どんな夢、見てるのか…教えてね、センパイ♪」

朱いおさげが生き物のようにリトの身体を這っていく、額で止まると音も立てずにリトと朱い少女は繋がった(・・・・)――――

 

『気持ちいいですか?リトさん…♡』

『うぅ…モモ…』

苦しげだがどこか心地よさ気な声をだすリト

『あぅう……もういい加減に……』

『まだまだこれからですよ♡リトさん♡』

『頼むからイかせてくれ……』

 

 

湯船に浸かるリトはのぼせて茹でダコになっている。対してモモは躰にバスタオルを巻きリトに向き立っている。

時折谷間がちらちらとリトの目に入り、その柔らかい膨らみの感触を知っている故に、思い出し、リトは動けなかった。

 

『お風呂に浸かり癒されながら"ハーレム計画"の全貌を簡潔に(・・・)説明される……なんてキモチイイコトなんでしょう♪ね、リトさん♡』

 

胸元のタオルをたくし上げ微笑むモモはしっとりと色っぽい。白い躰は湯気に当てられ、ほんのり桜色…それがますますリトを動けなく固まらせる。

 

『モモ…まだ終らないのか…よ…』

 

絞りだす声はよく響き反響した……が

 

『あとセッションは30くらいありますからね♡』

 

髪型を変え、以前よりグッと大人っぽくなったモモには届かなかった。

狭いバスルームに鎮座するホワイトボードには"Session.65『正しい愛撫の仕方~感じる女性編~』"と書かれており、時折赤い蛍光色で波線が引かれている。その重要ポイント『くすぐったい箇所は性感帯』をぼんやり眺めながらリトは意識を繋ぐ(・・)のに精一杯だった――――

 

「ふぅ~ん…モモちゃんの楽園計画…そうなんだ♪」

 

弾んだ声を零した朱い髪の少女は嬉々とした笑みを浮かべる。リトの額から髪の線を引き抜くと、その場所をまるで消毒するかのように舐め、口づけた。夜空に浮かぶ下弦の月がその姿を浮かび上がらせる。漆黒の戦闘衣(バトルドレス)に絡みつく赤い髪は蜘蛛の脚のように伸び、リトを捕らえていた。ニヤリと微笑うその微笑みは昼の転校生によく似たものだった。

 

 

14

 

 

――――どうすれば今夜わたしの願いが叶うのでしょうか

 

終わらない春の夜を歩く。胸の鼓動はとくんとくん、と期待に高まっていく。触れたい躰、髪、背中、唇……

 

――――想いは、伝えられない。

 

伝えられない言葉と想いは渦を巻き、私のなかをぐるぐると流れていく。愛おしい気持ちは激しい痛みを伴い私の仮面を剥がそうとする……――――でも負けない。自らの未来は自らの手で掴む…お父様とお母様のように――――

 

「あらお兄様。こんばんわ♪」

 

今夜も、わたしのたった一人の戰いがはじまった。

 

 




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【 Subtitle 】

11.相乗し合う頭痛の種

12.クラスの中心でアイを叫んだあばけ者

13.月夜に沈む朱き影

14.憂悶の二律背反

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