インフィニット・ストラトス  漆黒の要塞の復讐   作:双盾

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転校してきたのは金色と銀色

「知らない天井だ」

 

よくわからないが何故か言わなければならないような気がして言ったが、本当に知らない天井なのだ。

周りを見ると横で刀奈が寝ていた。窓を見る限り大体深夜0時くらいだろうか。

とりあえず刀奈を揺すり起こす。

 

「んー?あ、起きた!!」

 

「おはよう刀奈」

 

「おはようじゃないわよ!!あんなに無茶して!!心配、したんだから…………」

 

「っ!?すまなかった」

 

俺の胸に顔を押し付け、涙を零した刀奈に底知れない罪悪感が沸いてしまう。

優しく抱き返して頭を撫でる。

 

「もう、ぜったいに、無茶しないで」

 

「保障はできない。が善処する」

 

この先、必ず無茶することになる。それは避けられないことだから。それでも刀奈をもう泣かせたくないから、善処はする。そんな回答になってしまった。

刀奈は答を返さなかった。けれど却下ではなさそうだ。

俺達はしばらく抱き合っていたがやがて刀奈が寝てしまった。よほど疲れていたのだろうか。明日誰かに聞いてみよう。

仕方ない、と零しながら刀奈を俺の横に寝かす。布団をかけると刀奈は俺に近づき、胸元に顔をうずめる。こうすると安心するのか、刀奈の顔は嬉しそうに笑っている。

机に置いてあるスタンドの明かりを消して、眠りについた。

この日はいつもより深く眠れた。

 

 

 

 

翌日の朝、先に起きたのは俺だった。体を起こしてベットから降りようとしたのだが服の裾を刀奈が掴んで離さないのだ。

可愛い奴めと額にキスを落とす。

しかし改めて現状を確認する。

昨日から、密室で、恋人と2人きり。…………確実に誤解されるな。

そして、運悪く誰かが保健室の扉を開けた。

 

「は~。今日も今日とで怠い一日が始まるの……か…………」

 

沈黙。

 

「あ、すみません。どうも部屋を間違えたようで」

 

「貴女は大きな誤解をしている。だから戻って!!」

 

入ってきてしまった保健担当の東 京香(あずま けいか)先生に弁解し、理解してもらえたのはそれから10分後のことだった。

 

 

 

 

「え~、今日は皆さんに転校生を紹介します」

 

この学園は一体どうなっているんだ。こんな短期間に2回、3人も転校させてくるとは。

まあ転校生が来るというのは悪いことではないので普段は気にしない。

しかし今回は別だ。

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。皆さん、どうぞよろしくお願いします」

 

転校生の片割れが男性だったからだ。

しかし彼の正体は2秒前に知った。

シャルロット・デュノア。デュノア社社長の愛人の子。そして女性。

ISのネットワークでデュノアに関する情報を集めてもらったのでここまでは知っている。

このタイミングで転校してきたのも、恐らく俺達男性操縦者の情報の奪取と、デュノア社の経営状態が理由だろう。

デュノアの方が厄介だが、もう片方の転校生もそれなりに曲者だった。

白銀の髪に赤の瞳、そして眼帯。威圧感をだだ漏らしにして無言を貫く彼女は圧倒的めんどくささを放っていた。

 

「自己紹介くらいしろ、ボーデヴィッヒ」

 

「はい、教官」

 

「私はもう教官ではない。ここでは織斑先生と呼べ」

 

織斑千冬を教官と呼んだ。織斑千冬が教官と呼ばれるような場所、それは織斑千冬のドイツでの教官生活が思い浮かぶ。

彼女はおそらく織斑千冬の元で鍛えられた軍人なのだろう。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

短すぎる自己紹介、そこは一夏と同じような感じだなと思っているとボーデヴィッヒがこちらへと進んできて、振りかぶった。

 

「…………」

 

「…………」

 

ボーデヴィッヒの平手打ちは寸で止まった。そして、俺の目潰しも彼女の瞳の寸で止まる。

先に口を開いたのはボーデヴィッヒだった。

 

「違うのか」

 

「俺は更識だ」

 

俺の返答を聞くと今度は一夏の方へと歩いていく。

人違いだったようだが、このままでは一夏に平手が飛んでくる。友人が痛い目を見るのは別にいいが、後から文句が煩そうなの、でボーデヴィッヒを止める。

 

「何の用だ」

 

「一夏に何をしに行くつもりだ?」

 

「貴様には関係無い」

 

「一夏に同じことをするのであれば、俺は友人として、君を止める義務がある」

 

「もう戻れボーデヴィッヒ」

 

「はい教官」

 

「織斑先生だ」

 

ボーデヴィッヒは黒板の前に戻っていく。その途中、一夏を見て、

 

「チッ……認めん、貴様のような出来損ないが教官の弟だなどと、私は絶対に認めん!!」

 

そう言い放った。

一夏は知らぬところでも誰かの恨みを買っているらしい。哀れ一夏。

 

「それでは、1時限目は2組と合同でISの実習だ。着替えてグラウンドに集合しろ」

 

まためんどうな授業が来たがまあ仕方ない。そんなことを考えながら俺はSHRが終わるのを待った。

 

 

 

 

 

グラウンドには1組と2組の全生徒(体調不良による欠席を除く)が集まっていた。ISスーツで。

ISスーツは水着のように体にぴったりと張り付いているため、体のラインがくっきりと表れる。もちろん俺には刀奈さんがいるため、他の女子生徒に目移りすることはないが一夏は目のやり場に困っている。

まあ仕方ないと思う、男だから。まあ昔から刀奈さん以外の人に目移りすることが無かったからわからんけど。

 

「では、最初に実際にIS同士の模擬戦闘を見てもらう。オルコット、凰、前に出ろ」

 

「わたくしと鈴さんが、ですの?」

 

「え~、メンドー」

 

機体の相性的にはいいのだが、搭乗者の相性は最悪な2人が前に出る。

やる気が生徒と戦わせても「やる気がないから負けた」と思われてしまう。だから織斑千冬は2人に発破をかける。

 

「そうだな…………では勝てたら聞かせてほしいことを何でも教えてやろう。例えば美容方法や給料、好みの男性のタイプとかな」

 

人外なほどに優れた耳が織斑千冬の言葉を拾う。

すると2人のやる気に火が付いたのか、模擬戦への意欲を示した。

オルコットは問う。

 

「対戦相手は鈴さんですか?」

 

「いや、対戦してもらうのは…………」

 

「一夏、そっちになんか飛んでくるぞ!!」

 

「へ?うわぁ!!」

 

間一髪のところで一夏は飛行物体に気付いた。までは良かったのだが、そこから反射的に背負い投げを使って飛んできた山田先生を叩きつけてしまった。

 

「イタタ…………」

 

「うわぁ!?先生!?すみません!!体が反射的に…………」

 

「いいんですよ、先生がドジしちゃっただけですから…………」

 

タハハと乾いた笑いで立ち上がる山田先生。

オルコットはまさかと織斑千冬に再度問う。

 

「まさか山田先生と2対1ですか?」

 

「安心しろ。今のお前達ならすぐ負ける」

 

「「なっ!?」」

 

そう言われたことに腹が立ったのか更にやる気を滾らせる2人。

3人が定位置についた。

 

「では、始め」

 

号令と共に1人と2人が激突した。

その間、織斑千冬はデュノアに対して、山田先生の駆るIS「ラファール・リヴァイヴ」の説明を始める。

俺はその前に凰 鈴音にプライベートチャンネルで警告する。

 

「(凰 鈴音、今のままでは確実に負ける。お前が合わせてやれ)」

 

「(はぁ~?何であたしが合わせなきゃいけないのよ)」

 

「(一夏の前で赤っ恥をかきたいのであればそう言っているといい)」

 

そういって一方的に通信を終えた。

一方でこちらはデュノアが説明を始めている。

 

「山田先生が乗っている機体は、デュノア社の量産型IS『ラファール・リヴァイヴ』で、第二世代最後の機体です。しかしその汎用性の高さから、第二世代でも第三世代に劣らないスペックを持っています。

 

現在配備されてる量産型ISの中でも世界第三位で、誰でも簡単に動かることができて、各種戦闘スタイルに合わせて装備の換装が可能です」

事細かに説明するデュノアだが、簡単に言ってしまえば「高機動かつ豊富な装備で簡単に動かせるISです」と言うことだ。

説明をおえたデュノアだが、未だ山田先生と凰 鈴音&オルコットペアの戦闘は終わっていない。どうやら俺の警告に従って、オルコットの動きに合わせて戦っているようだ。

いくら射撃がうまい山田先生でも協力した攻撃にはかなり苦戦しているようで、中々攻撃に転じれていない。

しかしそこに無粋な中断の笛の音が響く。

3人は地に降り武器を収納する。

 

「今の戦いをみてわかったように、1人で代表候補生2人を相手にできるほどの実力を持っている。これからは敬意を持って接するように!!」

 

『はい!!』

 

だが俺は思った。

いい返事を返すが織斑千冬がいなくなるとまたいつも通りのあだ名呼びになるんだろうな、と。

とりあえず漸く授業に入る。

今回はISの装着と歩行訓練だが人が特定の場所に集まる集まる。

一夏と俺、そしてデュノアの3ヵ所に集中していたが織斑千冬の怒号が飛ぶと、皆バラバラの場所に移動する。

もはや教団とか心理教だな。

そんなこんなで授業は穏やか…………ではない箇所というかグループが1つあったが、そこ以外は順調に進んだ。とりあえず可哀そうだったのでついでにそこもフォローしておいた。

そこのグループのリーダーはボーデヴィッヒ、最低限の言葉だけで会話を終わらせ、無言の圧力を放っていた。

こんな調子でこのクラスは大丈夫なのだろうか?

 

 

 

 

時、所共に変わって昼休みの相談室。

今回も前回と同じように凰 鈴音と、刀奈、俺の3人が集まっていた。無論、扉の鍵もしまっている。

前回と違うのは机の上に紅茶の入ったティーカップがあることくらいだろう。

 

「で、情報は集まった?」

 

刀奈は俺に成果を聞く。

 

「一夏は気になる相手どころか、好みのタイプすら無いらしい。恋愛を他人事として捉えているようにも見えるがな」

 

「なるほど。これはチャンスよ鈴ちゃん!!」

 

「はい?」

 

紅茶に口を付けるがアチチ……と言ってまたティーカップを置く凰 鈴音に刀奈はチャンスだと言う。

理解できていない凰 鈴音はとりあえず「何が?」と返した。

刀奈は力を込めて言った。

 

「いい?一夏君には気になる人がいないの。精々織斑先生くらいでしょう。ここで鈴ちゃんが強めにでてインパクトを与えておくのよ」

 

「つまり?」

 

「デートに誘うのよ!!」

 

「デデデ、デート!?むむむ無理無理無理!!」

 

と、顔を真っ赤にして手を振り回し無理を連発する凰 鈴音に刀奈は「なんで?」と聞く。

だ、だって…………と凰 鈴音が言う。

 

「もしそれで変に勘ぐられるとイヤだし…………」

 

「大丈夫よ。一夏君のことだから気付かないって」

 

「で、でも…………」

 

「だったらデートって言わなくても、買い物に付き合えでもいいわけだし、それで失敗したらちゃんと銀がフォロー入れるだろうから次回のチャンスだって無いわけじゃないのよ?」

 

「うぅ~…………」

 

しばしの間、茹蛸になって蹲っていたが、やがて唸るのをやめて小さく言った。

 

「かったわよ…………」

 

「「へ?」」

 

「分かったわよ!今度一夏をで、デートに誘ってやるわよ!」

 

「おおー鈴ちゃんやる気出た感じね」

 

俺は、彼女のデートが成功するように祈っている。成功させるためにできる限りの手回しはするつもりである。もちろん今も、手回しの準備の最中だが。

刀奈は紅茶を飲みほして立ち上がる。

 

「とりあえず日程が決まったら教えてね」

 

そういって立ち去って行った。

残った俺と凰 鈴音は沈黙に呑まれる。

俺は紅茶の無くなったティーカップを持つと部屋を出ようとするが凰 鈴音に呼び止められた。

 

「何だ」

 

「山田先生との対決の時アンタ、私のことをフルネームで呼んでたわよね」

 

「それがどうした」

 

「鈴でいいわ」

 

「そうか。それじゃあそうさせてもらうぞ鈴」

 

「ん、それじゃ。期待しててよね!」

 

凰 鈴音改め鈴も部屋を出て行った。

後に残った俺は紅茶を盆に乗せると、隠しておいた小型録音機を回収してその部屋を出た。

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