インフィニット・ストラトス  漆黒の要塞の復讐   作:双盾

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暴かれる偽りの金

「銀、貴方のクラスにシャルル・デュノアっていう子が来たでしょ?」

 

「それが?」

 

「その子はどうだった?」

 

「収集した情報で性別や本名あたりまでは割れた。やはり女だった」

 

俺は生徒会室にてデュノアについての情報を報告する。

ここにいるメンバーは俺と刀奈と虚さんの3人で、本音は一夏とデュノアについて行った。

刀奈は深刻そうな顔をする。

 

「目的はどうせ俺か一夏のデータだろう。一夏に警告はしておくべきだろう」

 

「そうしておいて。けど、最善は盗みを働く前にこちらで何とかすることよ」

 

「そうですね。ボーデヴィッヒさんの方は個人的な恨みというだけなので放っておいても大丈夫だとは思いますが」

 

虚さんはさらっと一夏を犠牲にしている。以外に酷いこと言うな。

 

「とにかく、何とかしてデュノアちゃんをこちらで食い止めるわよ!!」

 

「「了解」」

 

それぞれが己にできることから調べ、事件を食い止めるべく動き出した。

 

 

 

 

 

その日の午後、アリーナへと向かった。

本音からの情報では今はアリーナでデュノアと模擬戦を行っているらしい。

アリーナに着くと本音が「こっちだよ~」と大きく手を振って場所を知らせてくれる。

一夏とデュノアは休憩中に入ったばかりなようで、額には薄く汗が滲んでいる。

 

「お、銀。来たのか」

 

「いや、生徒会室で楯無の書類処理の手伝いをしてたんだ」

 

ここで区切るとデュノアの方を見る。

デュノアも視線に気付いたのか立ち上がって自己紹介をする。

 

「あ、更識君。僕はシャルル・デュノア、これからよろしく」

 

「ああ、短い間だがよろしく」

 

「ん?短い間?どういうこt」

 

「おりむ~、そろそろ休憩時間が終わるよ~」

 

「マジか!?よし、再開するぞ」

 

丁度いいダイミングで本音が休憩時間の終了を伝える。一夏はもうなのか!?という顔をしていたが、気合を入れたのかすぐに練習に戻っていく。

デュノアも質問の途中だったが、一夏についていく。

いかんなあ。どうも最近、口が軽くなっている。気を付けないと刀奈の名前を出しそうになるからな。気を引き締めないと。

 

「さっきの一夏の戦い方は技術は凄いけど動きとか視線ですぐにわかっちゃうから…………」

 

「そうか、そうすれば…………」

 

一夏はデュノアと戦い方の指導を受けている。

指導が終わると、もう一度手合せするようで、互いに距離を取る。

「はじめ~」と本音が言う。

2人はそれぞれ行動を取る。

一夏はデュノアに接近するが、デュノアは一夏から距離を取ってマシンガンで弾幕を張る。

一夏はクイックサイドステップや前方捻り回転回避で接近する速度を緩めない。

弾幕を抜けた一夏を待っていたのはグレネードだ。

気付いた一夏は後方瞬時加速で爆発を回避すると、爆炎で姿が捉えられないことを利用して爆炎に突っ込みそのまま瞬時加速でデュノアとの距離を詰める。

 

「バーン!!」

 

「うおっ!?」

 

爆炎を抜けて奇襲をしかけたはずの一夏だったがその先には、ショットガンを構えたデュノアがいた。

ショットガンの発射音を口で真似する。一夏は足元が不注意になり、よろけるが何とか堪えたが、この勝負はデュノアの勝利だろう。

 

「そこまで~」

 

本音が終了のコールをする。一夏もデュノアも武器を収納して和やかな雰囲気に戻ろうとしたが、そこに冷たく鋭い声が入る。

 

「おい」

 

「なんか用かよボーデヴィッヒ」

 

声をかけてきたのはボーデヴィッヒ。

声色はそのまま変えずに更に言葉を続ける。

 

「貴様も専用機持ちだそうだな。ならば話が早い。私と戦え」

 

「断る。戦う理由がない」

 

「貴様にはなくても私にはある」

 

ボーデヴィッヒの戦う理由、恐らく織斑千冬の大会二連覇の偉業を達成できなかったその根本的な原因である織斑一夏に戦いを挑み、勝つことでボーデヴィッヒの中の何かが変わるのだろうか。

いや、変わったとしてもそれは己の傲慢さが酷くなるだけだろう。

だが一夏は戦わないつもりなので「またいつかな」と言って立ち去る。

 

「ならば―――」

 

そんな一夏にボーデヴィッヒは戦闘態勢に入ると、

 

「戦わざるを得ないようにしてやる!」

 

肩に装備されている大型砲から実弾を発射する。一夏は気付いたが反応が遅かった。砲弾は一夏に――――当たることなく止められる。

 

ガン!!!

 

「貴様!!」

 

実弾は、俺の黒要塞が誇る重厚な鎧に阻まれ、一夏に当たる前に地面に落ちる。

そんな俺をボーデヴィッヒは睨みつける。

 

「俺には更識として一夏を警護する義務がある。一夏に危害を加えたければ俺に勝ってからにしろよ」

 

「いいだろう!!まずは貴様から!!」

 

「まあ、お前は一旦寝て、頭を冷やして来い」

 

「何!?」

 

黒要塞の代名詞である鎧を足以外を解除し、軽くなった身体で加速し、顔面を横薙ぎに蹴り飛ばす。

そのまま壁に頭から激突する。そして、気絶したのかISが解除される。

俺もISを解除するとボーデヴィッヒを肩に担ぐ。

 

「コイツを医務室に持ってくから、何事もなかったかのようにしててくれ」

 

「お、おう」

 

「じゃ」

 

そう言って、ボーデヴィッヒを医務室に送り届けた。

医務室の先生には注意を受けたが、理由を説明すると、少しは理解してくれたようだが、こう言われた。

 

「生徒会権限とかの方法は無かったの?」

 

と。

それに対して俺は、答える。

 

「俺は生徒会の人間ではないですし、未だに部活もやってないんですから権限もなにも無いんですよ」

 

先生は驚いたが、「早めに入部しなさあいよ」と言われた。

しかし、俺は入部方法を知らないのである。どうすればいいんだよ…………

 

 

 

 

 

 

「で、ボーデヴィッヒちゃんをボコボコにして、入部の催促をされた、と」

 

「ああ。まあいいだろう。あれ位やらなければ、ああいった輩は止まらないからな」

 

生徒会しつで俺は昨日の出来事を刀奈に話していた。

 

「まあ、銀の未入部に気付かなかった私も悪いから、今回は不問とします」

 

「ボーデヴィッヒさんも懲りてくれるといいんですけどね」

 

虚さんが言うがあの程度では懲りないだろうなと思っている、俺がいる。

 

「で、デュノアちゃんのネタは集まったんでしょ?」

 

刀奈が本題へと話を戻す。それに伴って場の空気を引き締まる。

 

「とりあえず身柄を拘束できるだけの情報は集まった」

 

「問題はいつ、それを実行に移すかですね」

 

「とりあえず早めに抑えたいんだけど、クラスのタッグマッチがねえ」

 

「ダッグマッチ?」

 

聞いたことのない単語が刀奈の口から出る。

刀奈は「あっ」と漏らすが、「まあ銀だしいっか」といって説明する。

 

「今月に開催される学年別トーナメントは2人での参加になってるの。前例のないことだから書類の量も去年の2、3倍に…………」

 

「なるほど。簡単に言うと仕事を増やしたくないから、その学年別のトーナメントの後にしたいと言うことか」

 

「そそそ」

 

今年の生徒会長は仕事嫌いのくせに遊び好きな手癖の悪い人材が当たったのかと、刀奈の性格の面倒臭さを改めてしったが、そこが刀奈の良い所でもあるのだ。どうしようもない。

 

「では、先にこちらでデュノアさんに突撃して、情報公開の方はトーナメント後って言うのはどうでしょう?」

 

「んん!!良いわね、そうしましょう」

 

「じゃあ突撃する時間は昼食の後でいいだろう」

 

「それじゃあ、その時間に銀は一夏君とデュノアちゃんをここに連れてきて」

 

「了解した」

 

俺はその時間まで、生徒会室で紅茶飲んだり、書類処理したり、トランプしたりと、きっちり1、まったり2位の割合で過ごした。

 

 

 

 

 

 

「一夏、デュノア、生徒会長が呼んでるぞ」

 

「え、楯無さんが?」

 

「何だろう?」

 

食堂で食事する一夏とデュノアに声をかける。

2人はよくわからないと言った様子だった。俺はとりあえずそれなりな理由を付ける。

 

「どうせ、入部の催促だろうな」

 

「「ああ~」」

 

2人とも納得してくれたのか、素直についてきてくれた。

生徒会室の扉の前で3回ノックする。

 

「どうぞ」

 

刀奈の声が聞こえたので扉を開ける。

先に一夏とデュノアを入室させ、最後に俺が入り、扉を閉める。さりげなく鍵をかけて。

 

「さて、今回は主にデュノアちゃんに用があったんだけど、一夏君もいた方が都合がいいから来てもらいました」

 

「つ、都合がいいって…………」

 

一夏は苦笑いを浮かべるがデュノアは少し、おかしいと感じたのか雰囲気が変わる。

刀奈は単刀直入に言った。

 

「シャルル・デュノア、貴方本当は女でしょう?」

 

「は?」

 

「っ!!」

 

一夏は何言ってんだ?みたいな顔をしてデュノアは核心を突かれた所為か手を握り締める。

真っ先に声を上げたのはデュノアだった。

 

「違います!!僕は男です!!」

 

「…………」

 

しばしの沈黙を挟んで刀奈さんが言う。

 

「あまりにも早い否定は疑念を抱かせるわよ」

 

「っ!!!」

 

「それにもう既に貴方のことは調べてあるのよ?シャルロットちゃん」

 

「ど、どうして僕の名前を…………」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!!」

 

大きな声で口を出してきたのは一夏だ。

一夏は状況を理解できていないのか言葉が不安定だ。

 

「シャルルが女?そんなわけ」

 

「デュノアは女だ。こちらには証拠が揃っているんだ」

 

「証拠?」

 

一夏が俺の言った単語を繰り返す。

俺は空中ディスプレイを投影し、デュノアの情報を掲示していく。

 

「シャルロット・デュノア、社長とその愛人の間に生まれた子だってことも、かなり酷い扱いを受けていたことも、こちらはもう調べ上げているのよ」

 

「…………」

 

「シャルル?」

 

するとデュノアは不意に扉の向こうに行こうとするが鍵がかかっているので開くことはない。

 

「逃げるつもりか?」

 

「違うよ。この姿じゃなくて、本当の姿で話すから」

 

「仕方ない。楯無、ついていってやれ」

 

刀奈の同行付きでデュノアを扉の外へと出す。

しばらくしてデュノアが戻ってきた。

後ろで1つに結ってあった髪は解いてあり、コルセットも外したのか体のラインが出ている。

 

「シャルル、お前…………」

 

「うん、本当は女だったんだ。ウソ吐いててごめんね」

 

「さて、と。それじゃあ本当のこと、話してもらえるかしら?」

 

 

 

 

とりあえず全員に紅茶を配ると、話に戻る。

ぽつり、ぽつりとデュノアが話していく。

 

「僕が男として入学させられた理由から話すよ」

 

少しの間を置いて、続ける。

 

「世界シェア3位として有名なデュノア社と言っても、結局は2世代で止まってる。時間も、データも、予算もない。けれど次のトライアルで選ばれなかったらISの開発すら禁止される。

 

でもまともなデータも無い上に予算も削減されたんだから開発すら満足にできなくなったんだ」

 

「だから男性操縦者のデータを取ってこいって言う訳か」

 

「更識君の言った通り、それを目的でここに送られたんだ」

 

ここで一夏が納得していないようで質問する。

 

「だったら男装なんてしなくても良かったんじゃないか?」

 

「男性として入学すれば男性操縦者に接触しやすくなるから、男装する必要があったんだ」

 

デュノアは本妻の子ではない。だからこそデュノアに拒否権は無く、捨て駒としても有用だった。

情報では酷い扱いを受けていたことが明らかになっている。もはや反抗する気力も、行動を起こすだけの体力も残ってなかったのだろう。

 

「最初は一夏のデータを優先してとって来いって言われてたんだ」

 

「織斑に血縁者だからか?」

 

「そう。だけど少しすると今度は更識君のデータを優先しろって言われたんだ。だから行動を起こすのが遅れたんだ」

 

「俺を狙った理由はあの鎧が理由だろうな」

 

俺の専用機の代名詞である全身を覆っている鎧。物理に対して無敵とも言える硬度を持っている。それが魅力的だったのだろう。

 

「どうしても実現不可能に近い状況になったら僕の身体を使ってでも奪ってこいって」

 

捨て駒だからと言ってここまで強要するのか。それだけ切羽詰っているのだろう。

しかしそんなことする必要はなかったんだがな。

 

「デュノア、校則の特記事項第二十一を覚えているか?」

 

「え?」

 

「銀、俺は覚えてないんだけど、どんな内容だ?」

 

一夏、それは言わなくていいんだけれどな。とりあえず今度じっくりみっちり教えてやろう。

 

「第21項 本学園における生徒はその在学中においてありとあらゆる国家・組織・団体に帰属しない。本人の同意がない場合、それらの外的介入は原則として許可されないものとする」

 

「あっ」

 

デュノアは理解したようだが一夏はよくわかっていないらしい。こいつは本当に馬鹿なんだな。

 

「つまりIS学園にいれば3年間は身柄を拘束される必要はない」

 

「でもそれだとデュノア社はどうなるんだ?」

 

一夏が疑問する。

無論、そちらも抜かりはない。

 

「デュノア社には俺のデータを送ってやろう。もちろん条件付きでだ」

 

「そうよシャルロットちゃん。後始末はこっちでしとくから貴女は安心して休んでて」

 

「はいっ!…………あり、がとう」

 

デュノアの瞳から涙が零れる。次第にその量は増えていく。そんなデュノアの背中を「大丈夫よ」と言って刀奈がさする。

デュノアが泣き止むまで刀奈はさすっていた。

 

 

 

 

「でまあ一夏がいた方が都合がいいという理由についてなんだが」

 

デュノアが落ち着いてきたのを見計らって一夏を呼んだ理由について説明する。

 

「今月開催の学年別トーナメントで、デュノアとタッグを組んでほしいからだ」

 

「何で…………ってシャル…ロットのことか」

 

手遅れなほどの馬鹿である一夏でもそこは察してくれたのかデュノアを見る。

 

「他の女子と組んで正体がばれるのだけは避けなければならない」

 

「わかった、シャル、ロットもいいよな」

 

「うん」

 

「助かる。話はここまでだ」

 

一夏はデュノアと共に生徒会室を出ようとしたが、虚さんが慌てて止める。

 

「待ってください!デュノアさんを着替えさせなければ!!」

 

「「「「そうだった!!」」」」

 

どう頑張ってもしっかり引き締まったまま終わるのは無理らしい。

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