インフィニット・ストラトス  漆黒の要塞の復讐   作:双盾

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反逆の時

旅館から少し離れた場所にある岬に、人影が2つ。

天災と恐れられる篠ノ之束と、人類最強の称号を持つ織斑千冬の2人だ。

2人はしばらくの間、無言であったが、篠ノ之束が織斑千冬に問うた。

 

「ねぇ、ちーちゃん。今の世界は楽しい?」

 

「まあそれなりにな」

 

2人の間には言葉にせずとも伝わる何かがあった。

ただ、そこに2人の物ではない声が入った。

 

「遺憾ながら同意せざるをえないですね」

 

「誰だ!?」

 

「…………」

 

俺は草むらを掻き分けて姿を現した。

少し、後ろを振り返って、また2人に向き直る。

 

「更識!!」

 

「どうしたんです?2人とも。ここは冷えるでしょう?」

 

「何の用だ?それが本当の理由ではないだろう?」

 

天災と最強の2人は俺を警戒する。

俺は笑った。

 

「何がおかしい?」

 

「いや、気付かないのはアンタだけかと思っただけだよ。そろそろ本名……というよりも旧名を教えてあげるとするか」

 

姿勢を崩して、楽しげに、狂気に歪んだ顔で、言った。

 

「久しぶりだなぁ、姉貴?」

 

「お前は、まさか!!」

 

織斑千冬が俺の昔の名を叫んだ。

 

「百春だというのか!?」

 

「そうだ。お前らに捨てられた哀れな、貴女の弟、織斑百春だ」

 

それを知った織斑千冬は、恐怖からか、驚きからか、顔色を変えて、数歩後ずさる。

 

「な、何故お前がここにいる!?」

 

「答えはそこの天災が知っているぞ」

 

「束、どういうことだ!?」

 

「…………ソイツを送った極秘研究所が、大爆発で吹っ飛んだって聞いたことがある」

 

「そう、俺はお前らに復讐するためにあそこを破壊して、機会を待っていたんだ!!」

 

天災は無表情だが、その下の濃厚な警戒の色を俺は知っている。

最強は驚愕しているが、警戒は解いていないことを知っている。

俺は愉しいと思いながら話を続ける。

 

「俺の事を一夏は知らない、そうだろう?記憶でも改竄したのか?」

 

「そうだ。一夏はお前の事も、お前の弟の事も知らない。写真もすべて燃やしたからな」

 

「だとさ、真実が知れてよかったじゃないか、一夏?」

 

「一夏!?」

 

「気付いてたのか」

 

木陰から出てきたのは、一夏だった。

一夏は俺を見て、次に警戒したまま織斑千冬と篠ノ之束を見た。

 

「今の話は本当なのか?千冬姉」

 

「そ、それは…………」

 

「そうだよ。私がいっくんの記憶を消したんだよ?」

 

「何故そんなことをしたんですか束さん!?」

 

一夏が見せた、珍しい憤怒を表情。しかしそれには悲しみを孕んでいるようにも見えた。

一夏の問いには篠ノ之束が答えた。

 

「それはちーちゃんがそう言ってきたからだよ?束さんはそれに従っただけ」

 

「何でだよ千冬姉」

 

「それは…………」

 

「俺と十秋(とうき)が計画に邪魔だったからだ」

 

「計画?それに十秋って誰だよ」

 

「そこから教えてやろうか」

 

 

 

 

ISが知られる前、織斑家は7人家族だった。

だがある日両親と次女マドカが逃げた。残されたのは年齢が高い順に、織斑千冬と俺、十秋と一夏だった。

そして家が近いなどの関係もあって、織斑千冬は篠ノ之束と友人関係にあった。言わば親近感でも感じたんだろう。

しばらくしてから2人が何か動いているのを俺は知った。

俺はある日、こっそりとその作業内容を見に行ったが2人ともいなかった。

篠ノ之束の部屋に行って、計画書をみるまでは、何かやってるな程度だった。けれど、計画書を見た俺は恐怖した。

計画書とはいっても、日記形式で書いてあったが。

ISについての論文が相手にされなかったから、別の手で世界に広めようとしたことが、その日程が、その内容が、事細かに記載されていた。

そして計画書を読んでいるところを、篠ノ之束に見られた。

俺は気絶させられ、その間に織斑千冬と、俺の扱いの話でもしたんだろう。

起きたら運送車の中で、十秋と一緒に、拘束されてたんだからな。

十秋が売られたのは恐らく、情報が渡っている可能性から、売られたんだろうなと憶測した。

血の繋がっていない俺達に対しては一夏程の愛情なんて無かったんだろうな。

十秋はISコアとの一体化実験最後の死者として、この世から消えていった。

これが事の顛末で、真実だ。

 

 

 

 

「そ、んな…………」

 

「一夏も疑問に思ったことはいくつかあっただろう?」

 

「何が?」

 

「2人しかいないのに家はかなり大きいだとか、押し入れの道具で見覚えのない物があったり、記憶と状況の食い違いだって本当は気付いていたんだろ?」

 

一夏は黙り込んだ。

思い当たることが有り過ぎるほどあったんだろう。

 

「ISコアに関する極秘実験で、あの研究所だけで何人死んだと思ってるんだ?万単位で死者が出たんだぞ!!それなのにあいつらはのうのうと、今を、今までを楽しく生きていやがったんだ!!!」

 

涙が止まらない。

 

「俺はこの時を、待つまでに失くしたくない者だってできた。けど!!それが復讐を止める理由にはならない!!」

 

怒りが止まらない。

 

「俺はこの決戦に勝って、幸せをつかむ!!」

 

2人を睨んで

 

「俺は、生きて、勝つ!!!」

 

言った。

一夏は悲しそうに、俺を見る。

ただ、声を先にかけたのは篠ノ之束だった。

 

「ふ~ん、その程度で勝てると思ってるんだ。馬鹿だね」

 

「その余裕、いつまで続くかな!!」

 

俺は先制を取り、2振りの刀、鉄と銀を展開し、切りかかるが、

 

ガキィン!!

 

「何故邪魔をした?」

 

「いっくん?」

 

「…………」

 

無言だったが、その目はまっすぐに、俺を見ていた。

 

「確かに、2人は許されないことをしたのかもしれない。けど、だからって殺すのはダメだ」

 

「で、どうすると?国はあの2人には罰を与えられない。恐れているからな」

 

「千冬姉、束さんも、ちゃんと罰を受けて、罪を償ってください」

 

笑いながら2人に言う一夏。どこまでもまっすぐで、愚直なその正義心は綺麗だと思うが、そんなことではこの汚れて、歪んだ世界には意味を成さない。力を持たない。

 

「いっくんのお願いだけど、それは聞けないかな」

 

「束さん!!そんな人を殺してまでして、何がしたいんですか!?」

 

「いっくんには分からないと思う。けど、その内にこれで良かったと思える日が来る」

 

「一夏、お前はあの2人を止めることはできない。正義では、悪を潰せないんだ。だから、そこをどいてくれ!!一夏!!!」

 

俺の悲痛な叫びは一夏に届いたが、

 

「それでも、俺はどかない!誰も死なせたくないから」

 

「一夏の言う通りよ!!」

 

そこに次々と人影が現れて来た。

総勢5人。

篠ノ之箒、オルコット、鈴、デュノア、ボーデヴィッヒだ。

 

「姉さん!!何でそんなことを!!」

 

「織斑先生、何故このようなことを」

 

「千冬さん、何で」

 

「一夏、一旦離れて」

 

「教官、何故ですか!?」

 

「箒ちゃん…………」

 

「お前達…………」

 

篠ノ之は、自分の姉に真相を問い、それ以外の3人は織斑千冬に理由を問う。

デュノアは一夏との戦闘を止めさせようとするが、一夏は離れない。

篠ノ之束が篠ノ之箒を宥めるように言う。

 

「きっと今の箒ちゃんには分からないと思う。けど、いつかきっとこれが最ぜ―――」

 

「その為に人を殺していいはずがない!!!」

 

織斑千冬は、3人からの視線に、後ずさる。

 

「わ、私は…………一夏の為に―――」

 

「そうやって言い訳して、何になるんですか!?」

 

天災と最強は後ずさるが、計画を止めると言った発言はしてこない。

これはもう諦めた方がいい。彼女達でも止められない。

 

「平行線だ」

 

「何?」

 

織斑千冬にもう一度言う。

 

「平行線だ。どれだけの時間をかけても互いに変わらない変えられないのならば、どちらかが折れる他ない。だがどちらも折れぬというのならば、どちらが折られるかしかない」

 

「強い者が残る弱肉強食のルールに則ってそれが一番わかりやすい。私たちに勝とうだなんてほざいてる馬鹿にはこれが丁度いいよ」

 

一夏の雪片を弾き、人を避け、篠ノ之束に切りかかる。

その一撃が篠ノ之束の腕を飛ばすはずだった。

しかし、実際に飛んだのは、俺の右腕だった。

 

俺の腕が宙を舞う光景を、一夏達は見ていた。

そして、次に響いたのは悲鳴。

 

「キャァァァァァァ!!!」

 

「ひっ!!う、ウソ…………」

 

「大丈夫か銀!?」

 

それぞれ、怯えたり、叫んだりと、違った反応をするが、一夏は真っ先に俺の身を案じて近づいてくる。

しかし、心配には及ばない。

 

<損傷部確認、再構築開始>

 

腕があった場所に光が集まり、やがて元通りの腕が現れる。

 

<再構築完了>

 

「どうやら生身でも人外なようだな」

 

「お前如きに負ける訳ない!!死ね!!!」

 

篠ノ之束が真剣を振り下ろすが、それよりも早く、俺は黒い鎧を纏う。

 

ガキィン!!

 

「っち!!そんな鎧なんて!!!」

 

篠ノ之束が投影キーボードに指をかけ、高速で叩く。

しかし、俺には何ら影響はない。

 

「何で!?」

 

「お前はISコアに侵入して武装解除してくることは予測できた。だから俺はネットワークを遮断しているんだ」

 

「これだから中途半端に頭のまわる奴は!!!」

 

篠ノ之束は後退し、ISを纏った。

その姿は、白騎士に近いが、主色は白と赤の2種類だ。

 

「紅式、これが今開発中の第4世代最終型だ!!」

 

「世代は違うが勝てない道理は無い!!この2世代機は、どこまでも進化する!!」

 

重力操作を利用し、急加速で接近し、2振りの刀で切りつける。

篠ノ之束は展開したビームの刃で弾こうとするが、

 

ジャキン!!

 

「何!?」

 

白銀の刃はエネルギーの刃を擦り抜けて、紅式の装甲を切り裂いた。そして立て続けに黒の刃が装甲に迫る。

 

サクリ

 

篠ノ之束が退避したので、致命傷とまでは行かなかったが、黒の刃は、スカートアーマーの端を、髪を切るかのように切り取った。

 

「何なんだよその刃は!!!」

 

「俺の相刃だよ」

 

黒い刃を持つ鉄は物理を無視した切れ味を誇り、白銀の刃を持つ銀はエネルギーに影響されない能力を持っていた。

それを知らずにただの刀と侮った篠ノ之束の落ち度だ。

憤怒に狂った篠ノ之束は本気になったのか、白い刀を展開し、誰もがそれに驚愕した。

 

「雪片!?」

 

「それも2本、これを凌げる人間はいないよ!!!」

 

「俺はもう人間を止めてるんだ!!関係ない!!」

 

俺は隙間を狙い、連続して繰り出される、研ぎ澄まされた剣戟を刀で受け流し、鎧で弾き、避ける。

だがこれで俺は防戦一方になってしまった。

外野が騒ぎ出す。

 

「助けないと!」

 

「行っても巻きもまれるだけよ一夏!!」

 

「でも!!」

 

来た所で何もできない彼らが喚くが、俺にはまだ、奇襲の準備がある。

 

「しぶとい!!死ね!!」

 

「逆転の一手はまだある」

 

俺は迫りくる刃を一際力強く弾いた。

そして篠ノ之束の腹に刃が生えた。

 

「がっは、ぁ、何、でだよ!!!」

 

「重力操作は自分だけが効果範囲じゃない。範囲が3km以内で、発動許可認識がされている特定の武器ならどんなものでも操作可能だ!!」

 

効果範囲ぎりぎりまで離れた場所に、あらかじめ隠しておいた2本目の銀を篠ノ之束の背後に持っていき、急加速させ、背後からシールドエネルギーを無視して貫いたのだ。

銀を抜き取り、後退する篠ノ之束。手負いになった状態なので動きが鈍っている。

 

「なら、避けられないようにしてやる!!」

 

俺の背後に回ると、俺から距離を取り、大空へと舞い上がる。俺はそれを追う。

 

「これで、お前は死ね!!!」

 

展開されていたのは超大型砲、あのクラス対抗戦で、シールドを貫通してきた無人機の持っていた砲に酷似しているが、あれよりも威力はずっと高いだろう。

そして銃口の向かう先を予測した時、俺はとっさに銃口の先に踊り出て、

光の束が俺に迫りくる。

 

「銀!!避けろ!!」

 

避けられるのならばそうしたいが、これは避けられないのだ。

最強で、最悪の弱点が、俺にはある。

刀奈だ。

銃口の先には、IS学園がある。

俺はそれを避けることができないのだ。

大剣を展開し、盾として使い、光の束を防ぐ。

 

シュゥゥゥ

 

ジジジジジ

 

光は、大剣に襲い掛かり、表面を熱していく。

 

<現在主武器、破損警戒レベル1>

 

こんな警告が出るのは初めてのことだ。

大剣が壊れるまで、俺はここで耐えなければならない。

 

「いや、そんなことはない!!」

 

銃口に向かって大剣を構えたまま突き進んだ。

 

<警戒レベル3>

 

<警戒レベル4>

 

<警戒レベル5>

 

段々と限界が近付く大剣に、耐えろと喝を入れ、加速し、砲弾と化して突き進む。

 

<警戒レベル最高>

 

「ぜらぁぁぁぁ!!」

 

ガン!!

 

銃口に衝突し、超高エネルギー爆発が起きた。それと同時に、大剣に亀裂が走った。

 

<使用不可状態>

 

役目を終えた大剣を海底に向かって落とし、白銀と漆黒の刀を展開して、追撃に入る。

 

「楯無に危害を加えようとしたこと、後悔スるがイイ!!!」

 

刃に紫電が一瞬走った気がした。

篠ノ之束は回避していくが攻撃には転じてこない。

しかし、そこへ

 

「やめろ!!!」

 

急接近してきた何かが俺を弾き飛ばした。

 

「束にはこれ以上、手を出させない!!」

 

「ちーちゃん」

 

打鉄を纏って加勢してきた織斑千冬。

だが俺は、そんな言葉を吐いて捨てる。

 

「俺を見捨てた人間が、そんなことを言うのか!!俺達が味わった痛みも苦しみも、こんなものじゃなかった!!絶対に俺はお前達を許さない!!!」

 

「2対1では貴様の負けは決まっている!!!」

 

「誰が2対1っつったよ?え?世界最強さんよぉ」

 

「しまっ、ぐわぁ!?」

 

織斑千冬が背部装甲を切りつけられて落下していく。

俺はそいつの正体を知っていた。

 

「遅かったじゃないかカルマ」

 

「俺は桂馬(かずま)だっての」

 

空間が歪んだかと思うと、そこから紫色のISを纏った男性が現れた。

 

「男性操縦者!?」

 

「ん?おお、一夏とかいうやつはアイツか~。それであちらさんがその恋人と。羨ましいな~お前は」

 

「こいつは俺とはまた違う研究所で作られた人口男性操縦者だ」

 

「桂馬ってんだ。よろしく~」

 

「くっ、次から次へと!!!」

 

織斑千冬が切りかかってくるがひらりと避けるカルマ。

カルマに指示を出す。

 

「お前は織斑千冬だ」

 

「了解っと」

 

2対2となったこの状況、不利なのは相手だった。

 

「さあ、本戦と行きますか!!!」

 

「決着をつけようか!!!」

 

それぞれが激突し、空に煌めきが生まれた。

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