ネタ切れ状態が続いておりました
申し訳ありません
ではどうぞ
― 視点 刀奈 ―
「うん…………んぁ」
頭の中を睡魔が支配している。
けれど睡魔は徐々に消え失せていく。
今、何時?ここはどこ?
自分の状況を把握しようとした刹那――――
走馬灯のように蘇る記憶。
血と硝煙の臭い。焼け焦げた肉。地層の如く重なり合った死体の山。
そしてその中心から銀を狙う篠ノ之束と銃口。
――――銀!!!
「っは!!はぁ、はぁ、はぁ…………」
呼吸を忘れてしまうほどの恐怖。ほんの数秒の間にかく量ではないほどの汗。
眠気は微塵も残っていない。
再び辺りを見回してここが更識の傘下にある病院であることがわかった。
窓から入ってくる光の強さから判断すると大体お昼ぐらいだと考えた。
ガララッ
病室の扉が開かれた。
「あ」
そこから入ってきたのは
「お嬢様!?起きたんですね!?せんせ――――」
「虚ちゃん!!」
担当医を呼ぼうとする虚ちゃんに飛び起きて抱き着く。
「お、お嬢さ――――」
「ねえ、銀はどこ?」
「っ!!!!」
虚ちゃんが激しく動揺するのが分かる。
けれど、それにしては落ち着いて私を見るだけの余裕がある。
「お嬢様、銀さんに会いますか?」
「今すぐに会わせて」
「…………分かりました。けど約束してください。絶対に落ち着いてください」
「……分かったわ」
「それでは、そこにある靴を履いてついてきてください」
そう言われて改めて自分が靴を履いていないことに気付いた。
すぐに靴を履いて先を歩く虚ちゃんについていく。
けれども進む先は他の病室から遠く離れた場所なのか迷路のような通路の先だった。
カシュッ
ピー
カードキーを使って開いた扉の先には、銀がいた。
「っ―――――――!!!!」
呼吸が止まるかと思った。実際とまっていたのだろう。
そこにいた銀は、変わり果てた姿だった。
痩せ細り、体中に点滴と包帯、ベッドの両サイドと銀の頭上には大きな機械。そこから延びるコードはジンの胸のISコアへとつながっている。
「篠ノ之束がISを奪って銀さんの仲間を攻撃したところは覚えていますか?」
「ええ、虚ろだったけど」
「あの後銀さんはお嬢様の盾となって攻撃を防ぎ切った後、残った99%のエネルギーを全て篠ノ之束に向けて解放。そしてあれから2日経った今も意識は戻っていません」
「2日!?2日も寝てたの!?」
自分の寝ていた時間に驚くがすぐに銀の容体を、大きな機械について説明を求めた。
「まず銀さんの被っている装置は『メディキュボイド試作2号』です」
メディキュボイド、それは聞いたことが有った。
世の中にまだISの存在が知れ渡る前に、VR技術を活用して作られたナーヴギア。それを医療方面に利用したとされる装置、それがメディキュボイドだ。
しかし何故それが銀に必要なのか、分からなかった。
「両横にあるのが最新技術で作られたISコア共鳴装置です」
そんな装置の存在は知らなかった。
「銀さんは人間以外の生物の遺伝子を組み合わされて作られました。よって人間に有効な治療薬でも、銀さんには聞かなかったり、悪化させたりしてしまうのです。よって、銀さんの治癒手段は銀さんに埋め込まれたISコアに限られてしまいます
しかし、銀さんのISコアには他のISコアとは違ってエネルギーの自動回復がありません。よって、体の治癒――修復に回すエネルギーは残っているエネルギーでしかできません。ですが篠ノ之束に向けてエネルギーをほぼすべて打ち放ってしまっているので残っているのは1%、それさえも体の維持に回さなければいけません
よって、最終手段として共鳴装置からエネルギーを送る方法を取ったんです。メディキュボイドは、脳とISコアの情報処理をできる限りスムーズにするための手段です」
虚ちゃんは淡々と話を進めていった。
でも、次の話を切り出そうとしたとき、一瞬だけ言葉に詰まったのを見逃さなかった。
「それで?」
「最も深刻な状況にあるのは銀さんの内面、ISコアにある銀さんの意識です。エネルギーの急減少によってISコアの内部情報が破損してしまっているのです。
最悪の場合、銀さんという人格そのものが無くなっている可能せ―――――お嬢様!?」
「え…………あ、ああ」
突然話をやめて私を見る虚ちゃん。何があったのかと思ったがすぐに答えはでた。
頬を涙が伝って落ちている。
止まることなく流れ出る涙を拭って、また流れて、また拭って…………
「お嬢様」
「あっ」
虚ちゃんが私を抱きしめる。
「こういう時くらいは弱気になっても、泣いてもいいんです」
「う、つほ…ちゃ………」
名前を呼びきらないうちに涙は更に流れを増して、私は、泣いた。
銀への不安と心配、自分の無力さ、様々な重圧を、受け止めきれない重圧を流して軽くするように。
「落ち着きましたか?」
「うん、ありがと」
少し時間を置いてから、私は泣き止んだ。
「それで銀さんの人格についてですが」
「何?」
「まだ助かる可能性があるんです」
「あるの!?その方法は!!」
落ち着いてくださいと宥められて私は銀のベッドに座る。
コホンと咳払いをして虚ちゃんが話を再開する。
「協力してくれるとは思えませんが、篠ノ之束。彼女に協力を――――」
「っ!!まだ生きてたの!?」
「はい。搭乗していたISは修復不可能の状態で、篠ノ之束本人も重症でしたが、全身の火傷と両足の骨折で療養中です」
生きていたかと思った。銀を傷付けた、銀の過去を滅茶苦茶にした人間。否、人間と認めたくもない。
憎むべき、殺意すら沸く相手の協力が必要なほどになってしまっている。
「くっ」
拳を強く握る。爪の食い込む痛みも気にできないほど思考にのめりこんでしまっている。
そんな私を現実に引き戻させたのは、警報だった。
ビーッビーッ
「失礼しますお嬢様」
虚ちゃんがすぐにモニターを起動させて、この病室の前に設置されている隠しカメラで外の様子を見る。
そこには織斑千冬を筆頭に、一夏君と鈴ちゃん。そして彼に恋する代表候補生が押しかけていた。
すぐに虚ちゃんが一夏君に通信を入れる。
「この病室は関係者以外立ち入り禁止です。速やかに他の人達と引き返してください」
「虚さん!?えっと、うわっ――――」
「すぐにここを空けろ!!私の弟に会わせてくれ!!」
織斑千冬のその言葉に、私は怒りを抑えきれなかった。
虚ちゃんを押し出してマイクに向かって怒鳴った。
「何を今更家族面してるのよ!!銀を殺すのも同然の行いをしておいて!!」
「ちょ、お嬢様!!」
「更識!!私だって、好きでそんなことをしたわけじゃ―――」
「それども助けなかったじゃない!!貴女は家族よりも他人を優先して、家族を見捨てたのよ!!家族なら命を掛けてでも助けようとするものじゃないの!?どうなのよ!!」
「そうだ。確かにそうだ。それは列記とした事実だ。返す言葉もない。だから私はその償いをしに来たんだ!」
償い?何を?どうやって?何をして償おうと思うの!?
そう返そうとしたところを、虚ちゃんに静止される。
「お嬢様、少しでも話を聞いてあげましょう。もしかしたら、銀さんを助ける術を知っているかもしれないんですよ?」
「!!……分かったわ」
「ありがとうございます。では、今空けますので少し待ってください」
私は椅子に座って無言で通した。
入ってきた織斑千冬に鋭い眼光を当て続けて、一言も喋らない。かける言葉なんて必要ない。向けるのは殺意で十分だ。
私を見た一夏ガールズは「ひぃっ」と怯えるがさして気にするほどのものではない。
「で、償いって言ってたけど、一体なにするの?土下座でもするの?」
「楯無さん!!」
「一夏君ごめんなさい。でも私はこの人に殺意以外のなにも考えられないの」
一夏君は悲しそうに口を閉じた。
ここにいる皆事情を、織斑千冬が更識銀、織斑百春になにをしたかを知っているからこそ、誰も何も言わない。
「私は、百春に、更識銀に償いにきた。決して償いきれることではないことをしたと分かっている。しかし、言葉だけで何もしないことが許されるはずがない。だから、ここに来た」
深呼吸をして息を整えて織斑千冬が言った。
「私は、更識銀に埋め込まれているISコアを修復することで、償いの1つとしたい」
「貴女にできるの?篠ノ之束ほどの天災でもない貴女が?」
「確かに私はそこまで頭がいい訳では無い。だが、篠ノ之束の研究所にあるレポートを見れば、天災であろうとなかろうと、コアについては理解できるだろう」
そういうこと。私は納得した。
篠ノ之束の唯一の友人だからこそ分かることだ。篠ノ之束の拠点は、完全ステルス機能が装備されているからどうやっても発見できなかった。
そこから篠ノ之束だけが知り得る情報を持ち出してくると。
「それは貴方の信じた篠ノ之束を裏切ることになるのよ?それでもやると言えるの?」
「今私がすべきは家族を助けることだ。束は理解しないだろう。だが、何年かかろうとも理解させてみせる」
「そう、なら貴女を信じるわ」
「!!さらし―――」
「でも!!」
織斑千冬の言葉を遮る。
椅子から立ち上がって病室の扉へと向かいながら、振り返り、
「貴女を信じると言ったけど、貴女を許したわけじゃないわ。それだけ」
憎しみと憤怒、殺意を込めた視線と共に放って病室を出た。
銀が助かるなら、手段なんて択ばない。
例え、どれだけ自分を捨てようとも。
これからもこの作品は更新していきますが、超遅いので、期待はしないでください