インフィニット・ストラトス  漆黒の要塞の復讐   作:双盾

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それぞれが進む未来への一歩

あれから私は、決戦の舞台となった元IS学園や、林間学校の旅館付近、そして、篠ノ之束に倒された場所を巡った。

そこは、黄と黒のテープで封鎖されていたけれど、構うことなく侵入した。

どこも修理修復整地などはされておらず、未だ手つかずのままだった。

大きく抉れた元IS学園は、穴の部分に海水が入り込み、水溜りのようになっている。

 

「………………」

 

グラウンドには石灰で引かれた線がまだ残っている。けれど銃弾榴弾光学兵器で地面はまるで月面のようになっている。

校舎の中にも被害の少ない教室はあった。

その1つである教室に、足を踏み入れた。

入口には、『1-1』と書かれている。

 

パキッ

 

ジャリッ

 

ザッ

 

「………………」

 

砕け散った窓硝子が割れる音。衝撃と共に教室に入った砂利の擦れる音。

窓付近の机は横倒しになっていたりひっくり返っていたりしており、衝撃の強さが見て取れる。

更に吹き飛ばされた机には熱で溶かされたような丸い穴や、貫通せずに埋まったままの銃弾が見える。

生徒会室は跡形もなく消え去り、言葉なんて浮かぶことは無い。

学園を出て、旅館を見る。

ここは戦場にはならなかったが、あれから手つかずのまま放置された旅館は、時が止まったように変わらなかった。

片付けられていない食器が3分の1ほど残っている食堂。

それぞれの部屋には着替えや教科書、参考書にゲーム機が入ったままのスーツケースやバッグが置きっぱなし。

緊急治療室には表れていないメスや注射器があり、携帯できるような医療道具は持ち出されていてもう無い。

 

「………………」

 

そして最後の場所。自分の意識の最後の場所。

名もない砂浜の一角。

今、私は、あの時と同じ場所に立っている。

自分の立っている場所の周辺には、ISの装甲の破片や、折れた武装、そして操縦者達の夥しい量の血液が、茶色く酸化して残っている。

 

「………………っ!!」

 

ギリリリリ

 

歯を食いしばった。

あの時、自分がもっと強ければ、もっと時間を稼げていたら、自分が負けていなければ、銀は今頃………………

そう考えると、悔しくて悲しくて、けれど言葉にならずただ歯を食いしばるしかなかった。

 

「……あ…………ああああ!!!」

 

やがて、泣き崩れた。

誰一人として人のいない砂浜に、ただ泣き声が響いた。

 

 

 

 

― 視点 千冬 ―

 

私は、翌日の朝に更識と共に篠ノ之束の実家へと足を向けていた。

背後から殺気の視線を感じる。

これも当然のことだ。

自分の恋人を捨てた相手なんて、ましてやその人間を殺すことに、間接的にとはいえ関わっている私を、彼女は生涯許すことはないだろう。

これが、私達の生涯負うべき罪なんだな…………

終わりを知らない罪の意識と非難の嵐に晒される自分の未来を想像して、怖くもあり、悲しくもあった。

 

「何を泣いてるの?」

 

「あ―――」

 

私は頬を触ってみる。

そこには人肌程度に暖かい雫が、縦に流れ落ちていた。

そこへ辛辣な言葉が襲う。

 

「今更になって自分達の罪を理解したの?」

 

「ああ」

 

「怖くなったの?銀に何を言われるか。これからの自分達の未来が」

 

「その通りだ」

 

私は、怖いのだ。

過去の私は、皆から持て囃され、畏怖畏敬の対象として崇められてきた。

そんな私が今はどうだ。

成人すらしていない少女1人に自身の罪を知らされ、来てもいない未来に恐怖し、涙を流している。

惨めで、愚かで、哀れだろう。

だが、どれだけ不格好だったとしても、どれだけの時がかかろうと――――

 

「私は、前へ進む」

 

「ふぅん」

 

「守るために、償うために、変わるために。私は進み続ける」

 

 

 

 

ピンポーン

 

鈴がイラストされた茶色の小さなボタンを押す。

中から電子音が聞こえ、続いて懐かしい声が聞こえた。

足音が近づいてくる。

その音にすら今までにない恐怖を感じ、後ずさってしまっている。

 

――――情けないな。今の私は。

 

そして扉が開かれ、そこにはしわが増えてはいるが、昔とほとんど変わらない、束の母がいた。

 

「お久しぶりです」

 

「千冬ちゃんね。久しぶり」

 

昔と変わらない笑顔で、彼女は言った。

事件から随分時間が経った。きっと、いやほぼ確実に情報は回ってきている筈だ。

それなのに変わらずに私に向けられる声も表情も、事件の前となんら変わっていない。

昔からこの人は、優しかったな。

 

「少し上がっていきなさい。そちらの御嬢さんも」

 

やはり暖かい笑顔で笑いかけてくれるこの人に、私はらしくもなく、涙してしまった。

 

 

 

 

「話しは分かっているわ。束の実験室でしょう?」

 

「何故それを?」

 

部屋の座布団の上で、緑茶をすすりながら彼女の放った言葉に、心臓が止まるかと思った。

しかしそれと同時に疑問もあった。

政府が篠ノ之の家に最優先で連絡をいれることは目に見えていたが、政府が私達のために態々連絡を入れるはずはない。更にいうならば政府は銀の容体と治療法を知らないはずだ。

そんな私の考えを読み取ったのか彼女は話し始めた。

 

「束がね、教えてくれたわ」

 

「束が!?」

 

ありえない。そう叫んでしまいそうになった。

束なら銀の容体を知れるかもしれない。けれど束が敵に塩を送るような真似をするとも思えなかった。

 

「あの子、『ちーちゃんに迷惑が掛からないようにしたい』何て言ってね。鍵を渡してきたのよ」

 

「束……」

 

きっとそれは束なりの気遣いだったのだろう。敵に塩を送ることを覚悟で、それでも私を優先して考えてくれたことに、私は今日何度目か分からない涙を流す。

それを見て彼女はあらあらと笑う。

 

「千冬ちゃんは少し見ないうちに泣き虫になったのね」

 

「すみませ」

 

「いいのよ。きっとそれは貴女にとっていい変化だから。もっと泣きなさい」

 

私は、彼女の前で、大声で泣いてしまった。

そんな私に彼女は、優しく抱きしめてくれた。

 

 

 

 

― 視点 刀奈 ―

 

私は織斑千冬の本当の姿を初めて目にしている。

 

「ご、めんな、さい…ごめ、んな……さい…………」

 

何度も何度も、謝罪の言葉を口にしながら嗚咽を漏らす。

かつての勇ましく凛々しい姿などどこにもなく、目の前にいるのは、ただ後悔と謝罪に洗われた一人の女性でしかなかった。

私は本当は、銀と共にいたかった。

今は織斑千冬のその言葉を信じる事が出来る。

彼女に向いた怒りは収まることは無いだろう。

しかしそれでも私は、織斑千冬と言う女性を、認めることができるようなきがした。




いよいよ完結に近づいてきました

そしてここでアンケートを取りたいと思います
現在完全非公開に設定してあるこの作品の元を、復活させようか悩んでおります
大した違いはありません。違いは2つ
元の方は話数が多いですが1話あたりの文字数が少ないです。
ご意見ご感想は活動報告にて承りますので、コメント待ってます
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