インフィニット・ストラトス  漆黒の要塞の復讐   作:双盾

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更識での日々

更識での保護が決定した次の日。衰えすぎた筋力を取り戻すべくリハビリを始めてから3時間後、休憩を入れた時、楯無が俺に疑問をぶつけた。

 

「ねえ、今更過ぎるけど貴方の名前を教えてもらえないかしら」

 

「名前だ?」

 

思い出してみた所…………名乗っていなかった。

だが本名を名乗るのはまずい。名乗りたくもない。

 

「好きに呼べ」

 

「ん~~じゃタマでどう?」

 

「却下」

 

「え~~~。ならクロ」

 

「俺のイメージと違うだろうが」

 

「じゃシロ」

 

「俺のイメージにピッタリだが却下だ」

 

「なら何て呼べばいいのよー!!!」

 

コイツはまともに考える気がないな…………

なら仕方ない。

 

「銀とでも呼んでおけ」

 

「何で銀?」

 

「俺のIS(相棒)に搭載されている双振りの対になっている刀の名前だよ」

 

俺のIS『黒要塞』の主武器(メインウェポン)の双刀、それぞれ名前があり、白銀の刃を持った方には「銀(シロガネ)」、漆黒の方は「鉄(クロガネ)」)と名がついている。

 

「そういえば貴方はISが動かせたわね。…………そうだ!!」

 

「今度は何だ」

 

「銀のISってあの真っ黒いのでしょ?ねぇ見せて見せて!!」

 

子供か!!

 

「子供か!!」

 

「誰が子供よ!!」

 

しまった。口に出てたか。

この後しばらく諦めろと説得を試みたが無邪気な子供のように諦める気配が一向に見せない。

…………クッ!!!俺の負けだ。

 

「わかったから離れてろ」

 

めんどくさいがコイツが折れることはなさそうだったのでやるほかなかった。

楯無が距離を置くと俺は『黒要塞』を纏う。

大抵の人間は呼び出すと言うが俺の場合はISコアに意識がないので道具として利用することとなる。よって表現としては纏うといった方が正しい。

胸元のコアが熱を帯び、仄かな光が強くなっていく。

全身に一瞬、重量感のある鎧の感触が感じられるがISのアシストによってその重量感も消失する。

目を開くと全身に重厚感のある漆黒の鎧が纏われていた。

 

「これが俺のIS『黒要塞』だ。IS達の間では『ブラットレス』とも呼ばれているがな」

 

「『ブラットレス』…………ああ、『ブラックフォートレス』の略称ね。というよりIS達ってどういうこと?」

 

次から次への質問してくる奴だな…………というか装甲の表面を撫でるな!!

少し距離を置いて説明しようとするが楯無がすかさず距離を詰めてきた。

諦めて説明をする。

 

「ISには意識があることを知っているだろう?そのISの意識の疎通方法としてIS独自のネットワークがあることも知っているだろう。そこで俺はISコア達と会話しているというだけだ」

 

「…………ねえ、それって結構凄いことよね?」

 

「そうなのか?」

 

一般人とはかけ離れすぎた生活を送ってきた為そういったことには疎い。ここでの生活の中で身につけていくしかない。

 

「そうよ!!ISと会話できる人なんていなかったんだから!!」

 

「まあできるから何だという話だがな」

 

実際に、会話の内容は

 

 

俺<今何時?

 

058<午前8時

 

俺<今なにしてる?

 

168<アタシはメンテ中

 

006<わ、わたしは模擬戦の途中です

 

俺<へぇ~模擬戦か。戦況はどう?

 

006<それが操縦者が全然ダメで…………

 

006<あのくらい避けろよ。っていうか今回の人はセンスなさすぎwwww

 

006<着地のときコケるし、攻撃の命中率低すぎるしwwww

 

俺(個人対話モード)<ちょ、本性出てる!!

 

006<ハッ!?わ、わたしは一体なにを…………

 

 

といった感じだ。

いつだかシリトリをやったところ全世界のありとあらゆる単語が飛び出し終わるまで1週間かかったりした。

思い出してみると懐かしい。

…………っと、話が逸れた。

何が言いたいかというと会話しても終始グダグダであるということだ。

 

「ねえどんな会話してるの?」

 

「断固拒否する」

 

こればかりは教えられんと、粘る楯無を無視してリハビリを始めた。

だって自分の性癖とかばれたら恥ずかしいじゃん。

 

 

 

 

リハビリを続けること2週間。肉体は人外な速度で回復していき今では楯無との模擬戦が日課の1つとなっていた。

今現在、俺は更識家の道場にて楯無と模擬戦の途中…………

 

「だ~もう!!貴方は一体なんなの!?どんな技を仕掛けても勝てないじゃない!!」

 

「何なのと言われてもな…………」

 

勝敗の数は最初の内は楯無の方が勝率が高かったが、ここ4、5日の間は楯無は1度も俺に勝てていない。

楯無が弱いというわけではない。

世界中のありとあらゆる格闘術を駆使して俺を攻めたててくる。俺以外であれば恐らく楯無が負けることはないだろう。

では何故楯無が勝てないのか。

答は俺にある。

 

「俺には世界中の全ての戦闘術が情報として記録されていると教えただろう。だからお前の技に有効な技を出しているだけなんだが…………」

 

世界中のIS達から常に情報が送られてくる。つまり世界のどこかで新しい技が生まれればそれを記録し俺に情報として蓄積されていくのだ。

何度も繰り返されたやりとりだ。そしていつも

 

「イジワル!!」

 

こう返ってくる。

その度俺は

 

「子供か!!」

 

と返す。

 

「それ!」

 

「キャッ!?」

隙を見せた楯無を足払いで転ばせた。

勢いよく尻餅をついたのかイタタ……と尻をさすっている。

手を差し出すと掴み引き、立ち上がる。

 

「まあ、何だ。なかなか成長してるじゃないか」

 

「でも全然勝てないじゃない!!」

 

ぷぅ~とフグやハリセンボンのようにむくれる楯無の頭に手を置き宥める。

 

「前回よりいい線いってたぞ?正直俺も少し危ないと思った所があったからな」

 

「む~、まあいいわ。それより疲れたわ。部屋まで連れてって」

 

唐突過ぎる…………さっきまで元気だっただろと思いながらも俺の恩人である。

仕方ないと呟きながら楯無を横抱き――――俗にいう『お姫様だっこ(姫抱きともいう)』――――にして持ち上げる。

 

「きゃあ!?いきなり何するのよ!!」

 

「お前が連れてけと言ったんだろうが」

 

「それはそうだけど…………うぅ~」

 

顔を真っ赤にして、そっぽを向き唸っている。

どうしたんだと聞いても答えてくれなかった。…………俺が何をしたというんだ。横抱きにしただけだろう…………

 

「お、お姉ちゃん!?」

 

曲がり角を曲がると少女の驚きの声が聞こえた。

楯無をお姉ちゃんと呼ぶ人間は記憶しているかぎりでは1人しか出てこなかった。

 

「簪か。どうした?」

 

「え、あ、銀さん」

 

こんにちは、と頭を下げる簪。この真面目さ、楯無も見習ってほしいものだ…………

 

「そ、それでお姉ちゃんは何で」

 

「ん?ああ。こいつが部屋まで連れてけと言うもんだから抱えて移動している途中だが、簪はどうした?」

 

「わ、私はもうすぐお昼だからと思って呼びに行こうかと……」

 

「そうか。ありがとな簪」

 

もう昼なのか…………と俺は時の過ぎ去るその速さに改めて驚愕した。

 

「それじゃあ私は先に行ってます」

 

「おう、俺達も後からいくで」

 

俺達は簪と別れて部屋へと急いだ。

そういえば、

 

「ずっと黙ったままだがどうしたんだ?楯無」

 

「どうしたんだ?じゃないわよ!!」

 

顔を先ほどよりも赤くしながら叫んだ。

 

「簪ちゃんに見られちゃったじゃない!!」

 

ああ、そうか。

楯無が楯無になったときから、楯無が更識の長となった時から簪と楯無との間には少し溝ができてしまっている。

これは楯無から聞いた話なのでこれが本当のことかはわからないが2人の様子からして本当なのだろう。

楯無曰く

 

「あの時は更識を纏める者としてしっかりしなきゃって焦ってたのよ。その所為で簪ちゃんの扱いが悪くなっていくことに気付けなかったのに。ホント、姉失格よね…………」

 

とのこと。

この話をした時、楯無は本当に辛そうだった。だから俺は言ってやった。

 

「じゃあ簪はお前にその程度の感情しか持っていなかったと?んなわけあるか。確かに簪から歩み寄ってくれると期待はできない。だったらお前から近づいて行けよ」

 

続けて

 

「その程度で姉失格なんて言っているんだったら」

 

言ってしまった。

 

「俺の姉はもはや人間失格だな」

 

「え、姉?貴方、姉がいるの?」

 

「っ!!!」

 

俺はその話を有耶無耶にした。そして今に至る。

依然、楯無は未だ歩み寄れておらず、簪も近づく素振りを見せていない。

なら、俺が歩み寄るきっかけを作ろうか。

そう決心して俺達は部屋へと急いだ。

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