インフィニット・ストラトス  漆黒の要塞の復讐   作:双盾

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亡霊消滅

「作戦第2段階、幹部撃滅へと移行する。よく堪えてくれたゾア」

 

返答は無い。聞こえるのは荒々しい呼吸だけ。

体力の消耗の大きさが伝わってくる。

しかしそのおかげでこの作戦は本題にはいることができたのだ。

投影されていた俺達の姿は消滅し、本当の俺達の姿を現す。

 

「さぁ!!悪夢を終わらせようか!!」

 

「お、お前は―――――」

 

そんな呑気に、ご丁寧にセリフを残そうとするからあっさり死んじまうんだよ。

前方に腕を交差させ防御の構えを取るが、そんなもので俺の攻撃が止まるはずも無く、重力刀の刃が肉を裂き、骨を粉砕し即死。

一薙ぎでその周囲の逃げ遅れた幹部共を一掃し、他の幹部の元へと機動する。

やがて視界に高速艇で逃亡を図る幹部達を肉眼に納め――――その中にスコールと名乗った武闘派幹部の姿を見た。

相手もまた俺の姿を確認するとISを起動し迎撃態勢に入る。

 

「貴方から来てくれるなんて。こちらから会いに行く手間が省けてよかったわ」

 

「織斑千冬にボコボコにされたって聞いてたんだが、しぶとい女だな」

 

最も、サイボーグに性別をつけることができるのかは疑問ではあるが。

一先ずカルマとゾアに連絡を入れ、逃亡した幹部の始末を任せると伝え、敵と向き直る。

 

「圧倒的不利は理解しているだろう。今なら逃げられるぞ?」

 

「逃げ切れないことは分かりきってるわ。なら、今ここで貴方達を殺すほうを選ぶわ!!」

 

全方位から同時に火球を展開し攻撃を開始する敵に果敢に飛び込む。

相性としては圧倒的に俺が不利。

万全でない身体。万全でない故に負荷の大きい重力操作による遠隔攻撃が封じられ、いわば近接に特化どころか限定されてしまっている。

しかし相手は遠距離を得意としている。

だが俺は引くに引けない。引く訳にはいかない。

 

「あら、篠ノ之博士を完封にしたアレは使わないのね」

 

「使えないんだっての」

 

まあ

 

「テメェ如きに使うモンでもねぇがな!!」

 

急降下して火撃を回避すると海面スレスレを飛行する。

火球が海面に降り注ぎ、巨大な水柱を何本も立てては消滅していく。

狙われるだけが俺ではない。

無論時間を稼ぎ、カルマとゾアが逃亡した幹部を討伐してこちらに加勢してくれるのを待ってもいいんだが、そこまで持ちこたえる自信は無い。

いや、これでは防戦一方に聞こえてしまう。

俺は勝ちに来たんであって負けに来た訳じゃない。

 

「突撃!!」

 

「フフ、特攻なんて。死にたがりね」

 

「誰も死ぬために戦ってんじゃねぇよ!!」

 

前方から迫る火球を回避すればその先にはまた火球。

まるでタマネギの皮のように幾重にも連なり行く手を拒む。

けれど俺の武装は重力刀だけではない。

 

「ぜらぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

復元された巨黒剣を展開し、盾のように構えて特攻する。

想定外の武装展開に驚いたのか一瞬だけ攻撃の手が止まった。

その隙を逃さず更に加速し次の攻撃までに少しでも速度を上げ、距離を詰める。

 

「っ!調子に乗るんじゃないわよ!!」

 

先程よりも威力の高い火球が俺を弾こうとするが、刹那の中で加速した俺は、衝撃を堪え、前進を続けた。

しかし、あと1mというところで敵は攻撃をやめ、回避へと移行する。

が、それは予想されていたことだ。

 

「逃がさねぇ!!」

 

逆の手に持った重力刀、刃の幅を縮小し、刀身をより長くし、回避するスコールへ斬撃を放つ。

緊急で炎熱バリアを張り防御するもその程度では重力を防ぐことはできず、右腰から左肩までを切り裂いた。

だが表面の被膜と回線の一部を断ち切ったものの致命傷を負わせられず、緊急停止を行い追撃を行う。

 

「くっ、接近されるの厄介なのね!」

 

「喰らい付いたら離さない。人造人間なんでな、動物の血が騒ぐんだよ!!」

 

血の臭いに興奮したり、傷だらけの敵を見ると追い打ちを狙ったりと、様々の影響を及ぼすが、上手く使えば最強の支援システムとなる。

火球を大剣で切り払い、視覚で姿を捉えるより先に重力刀での鮮烈な突きを放つ。

自らの攻撃によって敵の姿を捉えられなくなるという不測の事態に陥り状況の傾きは平衡に戻りつつある。

 

「そこだぁぁぁぁ!!」

 

「ぐぅっ!」

 

火球越しの重力刀が、敵の左肩を穿った。

バチチッと紫電が迸り、俺はやはりと零した。

 

「情報通りか。まあ機械であれなんであれ、目的に大差は無い。殺すが壊すに変わっただけだ」

 

「私を壊す?冗談じゃないわ。私だってまだやりたいことをやれてないの。まだ終われないわ」

 

なるほど。目的があってその身を機械化したのか。

新たな情報だが…………これからスクラップになる相手なんだ。知ったことじゃないな。

 

「そうかい。だが死ね」

 

大剣を振るが回避され、火球の反撃を返されるが攻撃の手段はこれだけではないはず。

別のアクションを取り検証する必要がある。

 

「ふん!!」

 

大剣を構え、大剣を大振りに振り払う。

わざと隙を作ったのだ。

ここで相手のアクションを見る。

表情を変化させるのは以前から得意で、しまったと言うような表情を意図的に作り出す。

すると敵はしめたとばかりに隠し持っていた武器を展開し、瞬時加速で距離を詰めてきた。

刀身1.5m、コ字型の2対1刀は刃と刃の間で猛々しく燃え盛る獄炎が、まるで武器そのものが黄金に光り輝いているかのようにも見える。

まだ1mも距離があるにもかかわらずジリジリと肌を削る光熱。

 

「とどめよ!!」

 

「わざと見せた隙にさえ気づけない愚か者に俺が倒せるものか!!」

 

大剣から片手を離し、自由となった左手に漆黒の刀剣を展開する。

敵は最初こそ驚きを見せたが、やがて勝利を確信した表情に戻る。

 

「そんなもので、この輝焔は止められないわ!!」

 

敵の自信は最もだ。

あれほどの熱量に対して、例え耐熱に優れた金属であったとしても耐えきることなく融解するだろう。

だが、こちらが使っているのはただの金属ではない。

篠ノ之束のエネルギー砲の炎熱さえも切り裂いた漆黒。

この程度では刀身を炙るだけだ。

 

「っらぁ!!!」

 

金属音を立てて輝きの剣は弾かれた。

攻撃が弾かれたことに最大級の驚きを表情を見せた。

そしてワンテンポ遅れて極めて厚い刃が敵を掠めるがそれで終わってしまう。

 

「城っていうのは幾重にも重ねられた防御の先に本城があるんだ。てめぇはまだ最初の堀を超えただけだ。その先にそびえたつ石垣に火矢は通じない!!」

 

そして

 

「その程度の隙があれば、止めを刺すには十分だ!!」

 

自信の背後に重力障壁を展開し

 

「いくぜ。黒要塞式、二流奥義<破壁刺剣>!!」

 

最大の力で障壁を蹴り飛ばし、加速する。その勢いは砲弾の如く、その威力は天翔ける流星の如く。

守りの壁を破砕し、その勢いに乗って敵を穿つ。

型破りならぬ、殻破りな一撃。

この速度に対応しきれなかったスコールだったが、瞳孔はその切先の狙いを認識しており、できる限りの防御をする。

最後のあがきに俺の一撃は止めを刺すことなく止まった。

 

「つっ!!けど、これだけ接近してきたのなら、私の一撃からも逃げられないわよ!!」

 

敵も剣を構えた。

それとほぼ同時のタイミングで俺も次の構えを完了する。

刹那―――――

 

 

 

 

 

「くらいなさい!!『全を滅す焔の剣(レーヴァテイン)』!!!」

 

「穿て!!黒要塞式、黒王技<壁穿刺突>!!!」

 

 

 

 

 

決着はついた。

 

 

 

「フフ、不覚を取ったわね」

 

「こっちだって無傷ってわけじゃないがな、っつ」

 

互いに、渾身の一撃を放ち、それは互いに身を削った。

敵の攻撃は俺の左腕を焼き尽くした。

俺の一撃は敵の心臓、核を貫いた。

俺の刀と敵の剣は交差するように、かみ合った歯車のように。

黒い刀身は対刃の間の焔を貫き、その鍔が敵の刃を受け止めていた。

 

「私………いえ、亡国企業の完全敗北ね」

 

「万全だったなら俺の完全勝利だったが……いや、万全であってもテメェは俺を手古摺らせただろうな」

 

「ええ、そうね………ふふっ」

 

「………じゃ、さらばだ」

 

敵から刀身を抜く。スコールは核を破壊され、その体の機能も停止していく。

やがて展開されていたISさえも消滅し、穏やかな海原に落ちていった。

 

「っく」

 

左の腕から肩までを丸焼きにされたのだ。

ものを掴み続けるなど出来るはずも無く、黒い刀身の刀はスコールの後を追うようにして落下していく。

残量の少ないエネルギーを更に少し削り、麻酔を作成し、左腕に打ち込み、痛みを堪える。

やがて遠くの水平線から2つの影がこちらに近付いてくる。

手を振ると向こうもこちらに手を振った。

 

「遅かったな。そこまで逃げ足が速かったか?」

 

「そっちが終わってるのが意外だよ……ったく。逃げ足は速くなかったが」

 

「ああ、だがあの高速艇には対IS用防御システムが搭載されていたんだ」

 

そうか。相手はそんなものまで手に入れていたか。

まあ戻ってきたってことは無事に撃滅できたんだろうけど。

 

「そっちは無事でなによりだ」

 

「その言い方からするに、どっか負傷したか?」

 

「俺は……こんな感じだ。今は麻酔を打ってあるが」

 

「おいおい、重症じゃないか。ゾア、銀を抱えて全速力で病院に持ってけ」

 

「了解した」

 

羽織で隠していた左腕を見せると大袈裟に驚くカルマ。

カルマはゾアに指示を出す。その指示にゾアは従った。

けれど重症と言う点についてはなにも言えないので、おとなしく従った。

実際、帰りの分のエネルギーは無く、残りのエネルギーでは途中でガス欠になることは目に見えていた訳だが。

普段なら、怪我=病院と言う考えは俺には通じないのだが、今はエネルギーが足りず、腕の修復ができない。

まあ地上に着いたらエネルギーを送ってもらって修復すればいいかと楽観視していたが、地上でエネルギーを送ってもらう前に刀奈の手配した(と思われる)捜索班に怪我を見られ、刀奈に怒られてしまった。

反省はしたが後悔はしていないと、俺が断言すると更に怒りを露わにして、怒りを鎮めるのに苦労したのは忘れることのない思い出となった。




連続投稿もここまでです。
やる気が尽きました。
サボローちゃんの誘惑に勝てませんでした。
次辺りで終わると思いますので、応援よろしくお願いします。

追記

23時からの連続投稿した話の題名は今後変更する可能性があります
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