異界、影に生きる   作:梵唄会

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今回は自己解釈が多く含みます。間違っているかも知れませんがよろしくお願いします。

戦闘中の主人公の口調を変えました。(2015/12/10)


9話・木の葉の任務

□主人公視点

 

 

「師匠ぉ! 見てこれ、どう?」

 

『お似合いです』

『魅力が普段の三割増といったところでしょうか』

 

「へへっ」

 

 下忍となったナルト少年がさっそく木の葉のマークの入った額宛を見せびらかしにくる。

 

『それで、小隊の方はどうなんですか?』

 

「それが、聞いてくれよ師匠ぉー。サクラちゃんと一緒の班になったのはいいけどさ、いけすかねーサスケと一緒になったんだってばよ! それに担当の上忍も変な奴だしさぁ」

 

『それはそれは災難でしたね』

『それで担当の上忍は誰だったんですか?』

 

「えーっと、はたけカカシって人。師匠知ってる?」

 

 一般人の私に情報漏洩も甚だしいが、木の葉の里のそこらへんは結構オープンだ。流石に暗部や裏の情報には厳しい情報統制が敷かれているが、流石世界一の忍びの里と言えよう貫禄を見せている。

 因みに私の里では私の情報だけ極秘扱いだ。一度私に対する恐怖が植え付けられているため滅多に漏らす事は無いだろう。漏らされたら漏らされたで構わないけど。

 里内ではコードネームを使い顔を隠している。流石に大名の私は隠せないが、他の国にいる小娘の私が大名だとは思わないだろう。それ以上に雲の上の存在であるので、私の顔を知るものはそれこそ、他の国の大名か、クーデターに参加した者達だけだ。

 

 考えが逸れたが、はたけカカシの話だったか。

 はたけカカシは才能だけ見れば暁にも引けを取らないと私は思っている。

 オビトさんの死後(仮)、ステータスを写輪眼に全振りし、写輪眼に依存して基礎を伸ばす努力を怠っている気はするが、それだけ扱いに慣れるのに集中しなければならない程写輪眼は扱い辛いものなのだろう。

 

『はたけカカシさんですか』

『確か5歳でアカデミーを卒業し6歳で中忍になり、Sランク任務の達成回数は40近く、使える忍術の数は1000以上と言われ世界でもトップクラスを誇る天才忍者ですね』

 

 というか、Sランク任務の報酬は最低百万両だ。それだけで四千万両近く稼いでいる事になる。他の任務も加えたら二億は下らないだろう。

 そして一両は日本円にして約十円。単純計算で奴は二十億円近い資産を持っていることになる。ヤバい、ブルジョア過ぎて鼻水が出そうだ。

 因みに、うちの今の国庫資金は約十億両。はたけカカシ五人分とかふざけんな。

 

「……師匠、何でそんなこと知ってるんだってばよ?」

 

『おでん屋ですから』

 

「意味わからないってばよ。てかアイツってばそんなに凄い忍者だったのか? ぜんぜん見えねー。黒板消しトラップにも引っかかるようなヤツだぞ!」

 

『それはわざとですね』

『能ある鷹は爪を隠すものです』

『彼の場合は爪を出すリスクも高いのですけどね』

 

「ほぉん? よくわからねーけど、そついがよ。明日サバイバル演習やるっていうんだ」

 

『あー毎年恒例の』

『私のデータによると今までカカシさんが担当した下人は全てアカデミーに戻っていますね』

 

「まじかぁー。……うおぉー! アカデミーに戻りたくねーってばよ!」

 

『でも、ナルトくんたちならきっと大丈夫ですよ』

『仲間を信じ己を信じよ、です』

『さすればどんな試練も乗り越えていけるでしょう』

 

「師匠ってば、たまに師匠っぽいこと言うよな」

 

『ホッホッホ、そうじゃろう』

『あ、そうです』

『ナルトくん合格すると思って合格祝い買ってたんですよ』

 

 そう書いて、ポケットから装飾された包を渡す。ミナトさんと一緒に買っていたものだ。

 

「え! マジで! 何コレ?」

 

『必勝祈願の御守りです』

『明日の演習も頑張って下さいね』

 

「へへ。……師匠サンキュ」

 

 

 私が心配しなくともナルト少年は合格し、修行に任務とコレから忙しく成るだろう。そして、どんどん成長していくハズだ。

 対して私は、ぶっちゃけ中忍試験までコレと言ってやる事はない。いや、国営、政務や暁の雑務など細々とした事はあるけど、日常の範疇。当面は目新しい出来事は無いはずだ。

 ……政務や暁の仕事が日常って、私はいったい。いや気にしたら負けだ。

 

 

 

 ナルト少年が正式に下忍となって数日後、始めてのCランク任務をやるんだと報告しに来た。

 最近は雑用とかそういう任務でずっとブツクサと文句を言っていたから、その気合は計り知れないだろう。

 Dランク任務、割が良いと思うんだけどな。ペット探しや芋掘りで最低五千両。一日一つの任務だとしても日給最低五万円。二十日働けば月給百万円。どこの優良企業だ。さすが子ども達の憧れの職業ではある。

 因みに、Dランク任務の依頼料は報酬よりも遥かに低い。でなければ、依頼主は芋掘りなどに一日五万円以上も払えないだろう。そして、Cランク任務から仲介料として木の葉の里にお金が入っていくのだ。

 これが何を意味するか。そう、難易度の高い依頼から天引きされた報酬の一部がDランク任務の報酬として支払われて居るのだ。

 稼げるが難しい任務をこなす程、中間マージンが発生する。しかし割を食うシステムなのに対して誰も突っ込まないということは、それだけ下忍が大切にされているということなのだろう。

 ナルト少年の夢は火影だから、物足りない気持もわかる。そして、その純粋な気持ちが木の葉の忍びの子どもたちに宿るからこそ、このシステムが成り立つのだろう。

 私のは汚れきった大人の考えだ。政務に携わり心が汚れるのも加速した気がする。もう、あの頃には戻れない。

 

 さて、ナルト少年の初のCランク任務と言えば、ナルト大橋編だ。

 ここで大きな問題が発生する。再不斬さんの件だ。

 再不斬さんの嫁(今は私の嫁だけど)は私の元に居るのだ。つまり、原作通りに進めば、

 

 再不斬さんとカカシ小隊対決。

  ↓

 再不斬さんピンチ!

  ↓

 白たん居ない。

  ↓

 再不斬死亡。

 

 これだ。このまま進めばナルト大橋に着く前に再不斬さんが死んでしまう。

 そうすると、ナルト大橋での戦いが温くなり、サスケくんの写輪眼とナルトくんの人柱力の覚醒がずっと後になってしまうだろう。

 

『じゃあ、しばらく来れませんね』

 

「ま、余裕で任務達成してくるからよ! 師匠はお土産楽しみにしてな!」

 

 コレが親の心子知らずというものか。別に親でも何でも無いのだが。自分を慕ってくれるから構いたく成ってしまう。子ども欲しいなぁ。

 仕方が無い。ナルト少年の為に一肌脱ぎますか。元を言えば私のせいだし。

 

『気を付けて』

 

「おう!」

 

 親指を立てニッカリと笑うと、ナルト少年は黒いリュックサックを背負い門へ向かう。私は立ち去るナルト少年のリュックサックの中に自分の影をマーキングしておく。

 半年くらい前に使える様になった能力だ。マーキングをしておけばいつでもマーキング対象の周囲の音を察知し、そしてそこから分身を作ることが出来るのだ。

 弱点は強い光に当たるとマーキングが消えてしまうことと、マーキングは同時に3つが限界だ、ということだろう。さっきので最後だったので今はもう、マーキングをする事は出来ない。

 ナルト少年は無事小隊と合流を果たしたようだ。

 頑張れ。

 

 

 

「ケガはねーかよビビリ君」

 

 ぶふぉっ! シリアスな空気なのは分かるが、クッ……ププッ。

 門を出て直ぐに襲い掛かってくる忍びから、ナルト少年を守り飛び出た一言。

 何気ない言葉のはずなのに、サスケくんが言うとどうにもダメなのだ。ニヤけてしまう。天敵とは彼の事をいうのだろう。

 場面は見えないが絶対にドヤ顔しているはずだ。……駄目だ。想像するとまた。……くふっ。

 

 原作通り、ナルト少年が血抜きをして任務は続行されるようだ。

 どうでもいいけど、血液は一秒間に二十センチの速さで体をめぐる。戦闘とカカシさんの解説で五分は経過している。最早、毒は拡散しているだろう。

 たとえ傷口を開いたとしても、出てくるのはその周辺と後から送られてくる新しい血だ。毒の入った血は流れていってしまっている。

 解毒するには、その毒の解毒薬を飲むしか無いはずだ。

 ならば何故助かったのか。可能性は二つ考えられる。

 一つは九尾の不思議パワーで毒を押し出したか、解毒したか。次に毒なんて塗ってはおらず、ナルト少年の覚悟を確認する為にカカシさんが嘘をついたかだ。

 私は、後者だと考える。

 理由は毒に侵されているのに、慌てることなく任務の解説を話し出したこと。

 トップレベルの上忍であるにもかかわらず、血を抜かなければ成らないという適当な治療法を示したこと。

 遅効性という可能性もあるがカカシさんに言われるまで毒に気付かなかった事だ。所謂プラシーボ効果というものだろう。

 カカシさんはナルト少年が動け無かったのを見ている。しかし、この恐怖を乗り越えなければ忍びとして生きていく事は絶対に無理だ。

 だから、サスケくんとの差をわざと見せ付ける様な言い方で、ナルト少年をわざと煽り発破をかけて、忍びとして成長するように誘導したのだろう。それなのにドヤ顔(予想)でビビリくんって。思い出しちゃ駄目だ。この記憶は封印しよう。

 まぁ、真実は闇の中。全て私の憶測に過ぎない。

 

 

 暫く歩くと、水辺に付いたようだ。音から察するに船に乗ったか。

 場が落ち着くと、タズナさんは依頼内容の話を切り出した。

 

「えっ!? ガトーって。あのガトーカンパニーの? 世界有数の大金持ちと言われる!?」

 

 いや、……あんた。資産二億両(推定)の男がそんなにビビる海運会社の大富豪ってなんだ? 国を乗っ取ろうというくらいの大金持ちなのだから相当なのだろうけど。

 ……襲うか? いや、駄目だ! 肩書きは悪に染まっても、心まで染めてしまってはいけない。真っ当にいきるんだ。欲望よ消え去れ!

 

 ガトーはどうやらその莫大な資金を使い島国である波の国の海上交通・運搬を全て牛耳り更なる金儲けをしている様だ。

 しかし、橋が出来てしまえば独占していたルートが別れ利益が薄れてしまう。そこで忍びまで雇って妨害しようとしているのだろう。

 嘘までついて依頼したのは、波の国が超貧しいらしく大名ですら金が無いようだ。

 確かBランク任務の依頼料は高くて二十四万両。最低は十万両だ。個人としては高いが、国から見ればそう多くない額のハズだ。たぶん、橋の工事だけでいっぱいいっぱいで余裕の欠片もないのだろう。

 何故だろう、親近感がわく。かなり遠いいけど波の国とは仲良くしよう。

 どんなに貧乏でも不可侵を貫き非武装であり続ける波の国の足下を見て食い物にするなんて許せんなガトー。

いい事を思い付いた。これぞまさに一石二鳥の策だ。

 

 

 

 ガトーに命じられたのだろう。再不斬さんがタズナさんの暗殺に来た。

 予定通りといえど再不斬さんにはもう少し頑張って欲しかった。上忍が怒りに翻弄され下忍にしてやられるなんて情けない。

 そろそろ、私の出番だな。再不斬さんとの戦いで投げ出されたナルト少年のリュックに仕込んでおいた影から私の分身を作る。

 私は白みたいに千本を使えないし、仮死状態にするなんて事も出来ない。だから、

 

 ――影遁・影津波(かげつなみ)の術。

 

 横取りする事にした。

 カカシさんの水遁に吹き飛ばされた再不斬さんを影が呑み込む。影の中の謎空間に収納する事は出来ないが、変形した影で包む事は出来る、そしてチャクラを流して固めた。ミナトさんの螺旋丸を一発耐えられる程度の強度を持つから、おいそれと抜け出す事は出来ないだろう。

 分身をもう一つ作りその場に登場する。ひとつは戦況を見渡す為だ。死角が無ければそれだけアドバンテージを取れる。相手は写輪眼を持っているのだからこれくらいは許されるだろう。

 再不斬さんは、影の中にいる時は息をする事が出来ないが、……忍者なら大丈夫だ(偏見)。

 

「なんだってばよ! お前は!」

 

『黒兎と言えば分かるか?』

 

「知るか!」

 

 黒兎というのは私の二つ名だ。脱兎の如く逃げ出す事から鬼鮫さんが“兎ちゃん”と呼び出して何故か兎というのが広まり、私の攻撃が黒色主体なのも合わさって黒兎となった。

 可愛ので仕事の時は使わせてもらっている。お気に入りだ。初対面で名乗る時は基本ウサギちゃんのお面もセットだ。

 

「何ッ!? 黒兎だと!」

 

「知っているの? カカシ先生」

 

「ああ。世界各地で目撃されている何でも屋だ。神出鬼没でフラッと現れ依頼をこなしいつの間に消えている事から、別名幻の何でも屋とも呼ばれている。受けた依頼の中にはAランクレベルの任務も含まれると言われるのに、失敗例は無く、達成率は100%と言われている。屈強な大男だとか、長身の優男、女性、老兵、複数人居るなど正確な情報は殆ど無いが、共通して言われているのが謎の影の能力。そう、今のような術だ。写輪眼で解析出来ないところをみると忍術では無い、もっと異質な……血継限界か?」

 

『ご名答』

 

「まさか、子どもだったとはな。噂の時期から考えるに複数人というのは本当か? ま、そんな事はいい。そのお前が何故再不斬を殺した?」

 

『そこに居る老人を殺せば大金が手に入る』

『だから再不斬の代わりに頂こうと思いまして』

 

 瞬身の術で一気に接近する。最初に飛んで距離を取ろうとしたサスケくんの足を掴み地面に叩きつけた。

 

「がっ!」

 

「「サスケェ(くん)」」

 

 オリジナルの○○ェ頂きました。

 でもナルトくん、叫んでる場合じゃないよ。たまには師匠らしく、厳しさを教えてあげよう。

 

「サクラはタズナさんを守りながら退避しろ! クッ……!」

 

 兵仗那由他の刃を受け止めながらカカシさんは、指示を飛ばす。サクラちゃんには今回は用は無いから、逃げて貰って大丈夫。

 カカシさん達には悪いが、頑張って足止めをしてもらう。ナルト少年とサスケくんの成長の為にね。私も鬼になるよ。

 

 復活したサスケくんが手裏剣を囮に、背後から蹴りを繰り出す。

 が、遅すぎだ。そう言えばまだ木登りの修行もやっていないんだったな。体術はズブの素人と言えど私はこの世界で十年間戦い、生き延びてきた。まだ殺し合いも経験していない子どもの蹴りを受けてやるわけにはいかない。

 飛び込んできた、サスケくんにカウンターを合わせると影で数十メートル先の樹木まで殴り飛ばした。普段なら打撃では無く突き刺すのだが、殺すのが目的では無い。

 折角作ったダミーの印は使わない。カカシさんがいるから直ぐにダミーだとバレてしまう。無駄な労力だ。

 

 ナルト少年は無駄に分身を作り愚直に突っ込む。ただ手数を増やすだけでも有効ではあるのだが、それだけの為に使うにはチャクラの無駄が大き過ぎる。それに、基礎能力は変わらないから、ミズキさんと違って手数が増えただけでは私には届かない。

 私の影は全方位対応だ!

 一瞬にして影がすべてのナルト少年を殴り飛ばす。ナルト少年の分身が消え、ナルト少年本体がサスケくんと同じ様に殴り飛ばされ木に当たった。

 

『連携って知ってるか?』

『何の為の小隊だ?』

『君たちは今まで何を学んで来たのだ?』

 

「クッ!」

「うっ!」

 

 悔しそうにうめく二人に追い打ちをかけるように殴り飛ばす。

 

 カカシさんもそうだ。写輪眼に頼り過ぎ。さっきの戦いでも水遁に水遁をぶつけてどうするんだ。これでは千以上も術を覚えているメリットがまるでない。そして、忍術・体術・幻術を全て見切ると言っても目視しなければ意味がない。

 

『右側が、お留守だ』

 

 このように写輪眼の無い右側を集中的に責められれば写輪眼を十分に活かす事は出来ない。

 

 カカシさんが私の兵仗と遊んでいるうちにナルト少年が目覚めた。流石九尾の人柱力だけあって回復が早い。

 私はナルト少年を縛り付け拘束する。

 

「何するんだってばよ!」

 

『君は大人しく友達が殺られているのを見ていると良いでしょう』

『後で殺してあげます』

 

 そう、縛られたナルト少年に言葉を送ると同時に殺気も送り黙らせる。そういうのは得意では無いのだけど私程度の殺気でも十分だ。

 

 寝ている、サスケくんをダメージを与えないように蹴り飛ばし起こす。

 

「ぐぅ……ぁ」

 

『寝ている場合じゃないぞ』

『そう言えば君の名前うちはというのか?』

『以前うちはイタチという方と戦ったのだが、気のせいか』

『似ているのは顔だけで、彼の親戚にしては弱過ぎる』

『彼は強かった』

 

「てめぇ!」

 

 怒りに呼応してサスケくんの写輪眼が目覚める。予想通りだ。サイ○人と同じで怒りによって新たなる力が目覚めるというそういうアレだ。

 サスケくんは地面を蹴ると、よほど背後が好きなのか瞬時に私の後に躍り出る。

 先程より早くなっているが、瞳力が覚醒して身体能力が上がるのはどういう理屈だろうか? 動きやチャクラが解析出来るから、無駄を省き効率よく動かせるように成ったのだろうか。そうすると、元あったスペック以上の力は引き出せないということだな。

 

「おせぇ!」

 

 確かに私は周りと比べると遅いかも知れないが、たぶんそれはミナトさんたちが人外過ぎる程速いだけだ。

 そして、サスケくんはまだ私を遅いと言えるほど早くはなっていない。

 私の首を狙うカカト落としを、肩から伸びる影で掴み、棒状の影でサスケくんの首を刈り上げる。名付けて、逆さギロチン。……没だな。

 

 意識まで刈り取り地面に転がるサスケくんを傷めないように、しかし派手に蹴り飛ばす。

 

「止めろぉ!」

 

『五月蝿いですよ』

『何も出来ないのだから大人しくこの子が死ぬのを見ていろ』

 

「ふざけんな、クソぉ! クソおぉ!!」

 

「まずい!」

 

 紅いチャクラがナルト少年から吹き出す。やっと解けるか。これでノルマは達成だ。

 カカシさんは焦るが、影の本数を増やし足止めする。印を組ませる隙を与えるつもりも無い。

 

 覚醒したナルト少年が影の拘束を引きちぎる。完全に封印が解けたわけでは無いから、九尾の力と言ってもこの程度か。

 直線で突っ込んで来るナルト少年を、今度は包み込む様に影を置く。簡単に突破されるが、壁で置いた訳では無い。ナルト少年にまとわりついた影にチャクラを通し固める。流石に腕力だけでは、今のナルト少年では無理だ。

 私は完全に動きを封じたナルト少年の頚動脈を締め意識を奪った。

 

 もう、これ以上。戦闘する意味も無い。カカシさんに応戦していた影を収める。

 好きな人を傷付けるのは、思った以上に精神が堪える。

 イタチさんは凄いな。フリだけでもこんなに辛いのに、愛する人を殺すのはどれだけ辛いのだろうか? それも、人一倍愛情の濃い、うちは一族なのに。

 

「何のつもりだ?」

 

『戦闘に時間を掛け過ぎた』

『先に逃げた女の子も追うのにも手間がかかる』

『元々受けていた依頼ではないしこれ以上は割に合わない』

『無駄に命を奪うのは本意ではないが、この二人を守りながら戦うか?』

 

「いや、遠慮しておく」

 

「……」

 

『そうか』

『では、帰らせて貰おう』

 

 そう言い残し私はその場から立ち去った。

 

 

 

 ……やば。再不斬さん白目向いてる。眉毛が無いから一層不気味だ。

 呼吸が止まっているので胸を強く叩いてみる。死んでいませんように。

 

「ブハッ! ……てめぇ。ここはどこだ」

 

『いきなりですね』

『ここは、貴方がはたけカカシと戦闘した場所から南方に一理ほど離れたお寺ですよ』

 

「カカシッ! てめぇが俺をここに連れてきたのか。何が目的だ?」

 

『理由は特に有りませんが、気まぐれというのが近いと思います』

 

「そうか、じゃあな」

 

『ちょっと待って下さい』

 

 そう言って、立ち去ろうする再不斬さんを影で引き止める。お礼も言わずに何処に行くんだ。

 

「チッ、なんだ? 早く言え、殺すぞ」

 

『私はこう見えても石の国の隠れ里で里長をやっているんです』

『最近優秀人材を集めて入るんですがうちに来ませんか?』

 

「てめぇみてぇな餓鬼が里長ぁ! 断る。冗談は死んでからにしなぁ!」

 

 叫びながら首斬り包丁で私の首を斬り飛ばす。短気過ぎだ。

 

「……チッ、カスが」

 

『では、一回死にましたので話を続けますね』

 

「ッ!?」

 

 再不斬さんは私の死体を確認せずに踵を返す。しかしそれは勿論分身だ。私は分身を作り直し再不斬さんを引き止める。

 

「……何をした?」

 

『タネは秘密です』

『忍びなんですから人を見かけで判断してはいけませんよ』

『さて、先程は直ぐに断られてしまいましたがそんなに悪い話では無いと思いますよ』

 

「何ぃ?」

 

『例えばです』

『もし、ガトーが裏切ったらどうしますか?』

 

「殺す」

 

『それも良いでしょう』

『貴方は気に入らない者は殺していきます』

『しかし、その行動の結果更なる敵を作るでしょう』

 

「ふん。俺の目的を阻むのなら誰であろうと殺すまでだ」

 

『はい』

『ですが、その連鎖は続いていきます』

『これではいつに成るか分かりませんね』

『“国取り”』

 

「てめぇ!」

 

『落ち着いて下さい』

『霧隠れのクーデターは有名な話ですよ』

『少し考えれば誰にでも分かる話です』

『ガトーの下で働くのは金が目的でしょう』

『何事にもお金が必要ですから』

『違いますか?』

 

「……」

 

 抜け忍が仕事を取るのは大変な事だ。それこそ非合法な仕事や、足下を見られ今回のような何も保証のない仕事しか受けることは出来ない。

 

『私の下に来れば、安定して力を蓄える事が出来ますよ』

『反旗を翻す、ね』

『私は優秀な働き手が欲しい』

『そして、貴方は里を手に入れる力が欲しい』

『貴方に断る理由は無いはずですが?』

 

「……」

 

『今までと同じです』

『利用し利用される』

『小娘程度、利用出来なくては国取りなど夢のまた夢ですよ』

 

「……ふん。良いだろう。今はてめぇの提案に乗ってやる」

 

『ありがとうございます』

『しばらくは、一緒に頑張りましょう』

 

「チッ、小賢しい糞ガキが」

 

 握手を求めたが、舌打ちが帰ってきた。ツンデレめ。

 コレでガトーの戦力はガタ落ちだ。カカシさんたちの相手に成らないだろう。極貧大名の苦しみを知るがいい。

 

『しばらく、二人旅になりますね』

『しっかりと護衛して下さい』

 

「……てめぇには要らねぇだろ」




~新能力~
◆マーキング
・自分の影を対象に仕込み、その周囲の音を収集する。
・その影から分身を作ることが出来る。
・マーキングに強い光を当てると消滅する。

~新技~
◆遁・影津波の術
・影を波のように変形させ対象を呑み込む技。呑み込んだ後、固形化し閉じ込める事ができる。

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