異界、影に生きる   作:梵唄会

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戦闘中の口調を変更しました(2015/12/10)


1話・回想と日常

□主人公視点

 

 

 私は転生者である。

 死んだと思ったら、新しく産まれ変わっていたという意味で転生者だ。不幸なことに性別が女に変わってしまうおまけ付きで。

 名前は天日(テンピ)(カゲ)。残念ながら、病気か知らないが産まれ付き声を出す事が出来なかった。そんな事を気にせず両親は大切に私を育ててくれたけど。

 

 産まれた当初は随分田舎に転生したなと思ったが、四年後私が何処に産まれたのか判明した。

 四歳になって母親と散歩した時に、前世の記憶にあるものを見た。知っているものを見付けたのなら本来喜ぶべき事なのだろうが、その時の私は正直喜べなかった。

 何故なら私が見たものは、岩壁に掘られた三つの顔。その名も火影岩だ。そう、此処は死亡フラグ満載の漫画、NARUTOの世界だったのだ。

 まだ三つしかないと言うことは猿飛さんが火影という事で、これから、九尾が襲来するという事だ。幸か不幸か私は、忍者の家系では無い一般人だった。最悪でも、戦いに駆り出されることは無い。しかし、この世界に生きる以上、弱いままではいつ理不尽な死が訪れてもおかしくない。生き残る為には鍛えるしかった。

 チャクラとか言う訳の分からない不思議エネルギーを見様見真似で漫画と同じ方法で鍛えつつ、同時に身体も鍛えた。格闘技などはどうしようもないので、逃げ延びる事だけを考えて基礎を鍛えていった。

 

 この世界がナルトの世界だと気付いてから三年後。国同士の小競り合いが過激化し第三次忍界大戦に発展した。まだ、弱い私には、飛び火がこちらまで来ないように祈りつつ終結を待つしかなかった。

 

 そして、大戦を無事乗り切り更に三年後。ミナトさんが火影に就任した。そして原作の知識が正しければ来年には九尾が襲来する。私は両親に木の葉の里を出るようにいったが説得に失敗した。最後まで前世の記憶があり原作の知識を打ち明ける事は出来なかったのだ。私は後悔した。何処かに修行し力をつけた事に慢心が合ったのだろう。九尾襲来の時私は両親を亡くしてしまった。十一歳夏。多くの悲しみが木の葉の里を包んだ。

 

 独り身になった私に、ある変化が起きた。両親の死の影響か血継限界が覚醒した。いや、本当に血継限界かは分からないが。新しい能力は影の操作だが、奈良家の忍術とは違う異質なものだった。副次効果で十年経った今でさえ何故か外見が十一歳のままなのだ。明らかにヤバい能力だ。大蛇丸などに捕まってしまえば解剖されるだろう。

 両親のいない今木の葉の里なんぞになんの愛着もない。世紀の変態大蛇丸から一刻も早く離れなければならない。原作に関わるなんてもっての外だ。そうと決まれば荷物を纏め私は木の葉の里を出た。

 

 里抜けして九年後、今から一年前。ヤバい奴を見た。うちはイタチだ。いきなりのエンカウントの為つい反応してしまう。それにより、戦闘になってしまった。

 私は遠くに影により作った分身と本体を入れ換える。コレが本当の影分身、なんちゃって。私の分身と戦闘するイタチを残し逃走を開始した。

 何故か、分身の作成は写輪眼には感知されないようだった。忍術の影分身とは違い、影の分身は分身であり私だ。分身の情報は同時に知覚出来る。

 暫くして、私の影はイタチの天照により、文字通り影の様に消された。勿論普通の死に方ではない。それにより、私の逃走がバレてしまった。

 この接触以降、私は暁に狙われることになった。特に大蛇丸に。そうやって暁から逃げつつ各国を点々としているうちに今に至るわけだ。

 

 

 

「ふふ、お久しぶりね」

 

 げ、大蛇丸。合いたくない奴ランキング永遠の一位の座を独占する人間。何故、私の居場所がバレたのだろうか。やはり変態の力か。

 私はいつものように分身を作り逃走をこころみる。

 

「今日こそ貴方をいただくわ」

 

 いただいて私をどうするつもりだ。如何わしい事でもされるのか? 陵辱エンドなんてごめんだ。

 せいぜい時間を稼がせて貰おう。私は影を形成し文字をつくる。

 

『そろそろ、諦めたらどうだ?』

『何度やっても無駄』

『私はもう此処には居ない』

 

「ふふ、それはどうかしら?」

 

(それはどういう……!?)

 

 逃走する私の影と入れ替わった私の前に人間が二人、現れる。アレはイタチさんと鬼鮫さんか。イタチさんのしつこさも大概だね。

 それと、もう一つ作った影の前にサソリが現れた。こんないたいけな少女に暁が四人でとか外聞的にどうなのだろう。早く滅びないかな、このロリコン集団。

 だが、何人来ようが無駄だ。この私を倒しても第二、第三の最大六百六十六の私がいる。私を殺したければ六百六十六全ての私を同時に殺すか、直〇の魔眼でも持ってくるんだな。最悪、各国に散らばせた私の影と入れ替わればいいから難しいぞ、フハハハハ! ……うん、私も思うよ。これなんてチート?

 

『イタチと鬼鮫か?』

 

「何故分かったのか興味深いけど……。それは後で調べればいいわ。今度ばかりは貴方も終わりね」

 

『今度もいつもと同じ事だ』

『私は影』

『何者も影を捕らえることは出来ない』

『貴方たちの光が強ければ私はただ消えるだけ』

 

 私は完全に相手の索敵範囲から離脱し、影の文字を残して、分身を消し去った。原作の知識で相手の能力は知っているのだ。戦うだけ時間の無駄だ。一人くらいには勝てるかも知れないが、一人殺せば相手は本気になる。

 

 今回も生き残った。本当に勘弁してほしい。大人しく尾獣でも集めていればいいのに。

 私は本体に意思の焦点を合わせると、古い小さな小屋に入った。

 

「おかえりなさい。影姉さん」

 

『ただいま』

 

 目を細めて微笑みながら出迎えるどう見ても美少女の少年。どう見ても白さんですね。

 今から七年ほど前、水の国をぶらついている時、血の中の男の死体と一緒に竚む子どもを見つけた。

 普段なら厄介事は見て見ぬ振りをしていただろう。しかし、この時の私は両親を無くし里を出たばかりで、ぽっかりと心に空いた虚無感がまだ胸の内に燻っていた。そのせいか、心に同じ穴を持つ子どもを拾ってしまったのだ。

 傷を舐め合い、そのおかげで大分気も楽になった。しかし、時が経ち白の成長が進むにつれて私は頭を抱えた。再不斬さんの嫁拾ってきちゃった、と。水の国で名前が白の時点で気付けば良かったのだが、三次元化している上にその時は頭も回らない状態だったので気付け無かった。今更無責任に、原作キャラと関わりたくないので「はい、さようなら」とはいかず、ズルズルと今に至る。まぁ原作とは違い忍びとして育たなかったので、今では家庭的な自然を愛する立派な乙女と成長している。そのうち、何処ぞの馬の骨の拐われないかお姉ちゃんは心配だ。

 

「いやぁ、白ちゃんもますます綺麗になったねぇ。いつ嫁にいっても大丈夫だ」

 

 にゅっ、と私の影から現れたこいつの名は波風ミナト。四代目火影じゃないですかヤダー。自業自得なんだけどね。

 私の謎の影の能力。謎とはいえ大まかな能力はなんとなくわかる。だが、大まかな事しか分からないのだ。そして、よくも知らぬままに能力の一つを大蛇丸への意趣返しに使ってしまったのだ。

 

 

 

 数ヶ月前、バレないように大蛇丸のアジトに潜入した。この頃からカブトさんはいらっしゃったらしい。という事はそろそろ原作開始か。胃がキリキリする。

 大蛇丸のアジトに潜入した私は、いつも迷惑をかけられている腹いせに色々と物色したのだ。高価そうなものをどんどん影の中にへと入れていく。私の影は物をその時のまま保存する事が出来るのだ。なんていうか、世紀の大泥棒になれそうな能力だ。ならないけども。

 その中で見つけた、ミナトさんの遺体が封じられた巻物。私は何も考えずに死体も影の中に放り込んでしまったのだ。

 

「ん? 此処はどこだい? あぁ、良いところにお嬢さん。此処がどこだか分かるかな?」

 

 そしたらなんと、影の中からにゅうっと魔人のように復活してしまったじゃないか。

 

(ファッキンジーザス)

 

 喰らった人間を私の影とする事が出来るらしい。生きている人間にも可能なのかはまだ分からないが。兎も角これなんてチート?

 

「あれ? お嬢さん聞こえて無いのかな? もしかしてオレ、やっぱり幽霊になったとか?」

 

 私が無視していても、相変わらずにこやかに話しを進める波風ミナト。オートモードかよ。私の影なのに。消せないのかな。いや、消せる様だ。しかし、一度消すと既に死体も消滅しているから、もう一度やり直す事も出来ないし、穢土転生すら出来ないだろう。

 

『聞こえている』

『ここは大蛇丸のアジト』

『他に質問はありますか? 波風ミナトさん』

 

「……大蛇丸。それに君、オレを知っているって事は。そうだね、最初の質問だ。オレは死んだのかい?」

 

 真剣な表情になり直ぐに返事を返す。やはり、原作通り頭が良いらしい。少しの情報からすぐさま予測建てる。

 

『肯定です』

『貴方は九尾の封印時に亡くなりました』

『覚えていませんか?』

 

「……思い出したよ。ナルトに九尾を封印してオレは死んだんだ。死んだのなら、どうして僕は此処に居るのかな」

 

 記憶は残るのか。そうじゃなきゃ、赤ん坊に近くなる。大きな赤ん坊の面倒観るなんて絶対に嫌だ。

 

『私の能力です』

『死体を影に喰らわせる事でその人を私の影とする』

『生き返ったのかは定義による』

『生とは肉体に依存するとするならば貴方は死んでいる』

『精神にと考えるなら生き返ったと言っていい』

『でも残念ながらそれを証明する事は私には不可能』

『貴方が自身の意思を信じるかは貴方次第』

 

「うん。今は信じるよ。それでオレはコレからどうなるのかな?」

 

『自由にしていい』

『貴方を影にしてしまったのは偶然』

『私の意図があった事では無い』

『大蛇丸への嫌がらせをしていたところ隠されていた貴方の死体を影にしてしまった』

 

「あの大蛇丸に嫌がらせか。お嬢さん面白い子だね」

 

『私の名前は天日影』

『私は二十一歳だからお嬢さんではない』

 

「俺より歳上か! 十歳くらいかと思ったよ。じゃあ影ちゃんと呼ぶね」

 

(それでも、ちゃんか)

 

『この能力が目覚めてから成長する事は無くなった』

『貴方も影になったのだから成長する事は無くなるでしょう』

 

 完全に肉体が無くなったわけではない。私には本体というようなものが存在し鍛えれば筋力も上がる。だから少しずつでも成長はしているはずだ。きっと。

 

『話を続ける』

『私に害にならないのなら何をしてもいい』

『消えたいのなら消してあげる』

 

「それは勘弁。折角生き返ったんだからね。わざわざ消えたくは無いよ」

 

『そう』

『では貴方の息子の元に行くか?』

 

「……。オレは既に死んだ身だ。闇雲に戻っても混乱させるだけだ。それに君が死ねばオレも消えるのだろう。なんせ今のオレは君の影だから。なら、取り敢えず君の側に居るよ。良いかな、お姫様(かげちゃん)

 

『では宜しくお願いしますね四代目(ロリコン)

 

「ちょ! 君、二十一歳でしょ! それにオレにはほら、愛する妻が居るから!」

 

『では、あの世に行ったら貴方の愛する妻に報告しておきましょう』

『貴方の夫はロリコンに成ったと』

 

「ほんと、止めてよね!」

 

『そんな事よりも、こんな薄気味悪い場所から早く出ましょう』

 

「そんな事って! 大蛇丸のアジトから出るのは賛成だけどさ。オレにとってはそんなこ……」

 

 

 

 と、いうことがあったのだ。分かってます。完全に自業自得です。

 

「ふふ、僕なんてまだまだですよ。あ、そろそろご飯が出来るので座って待っていて下さい」

「そうかい? いつもすまないねぇ」

「いえいえ」

 

 勝手に和気藹々と始める二人。白は嫁発言をスルーするな!そして四代目火影。自由にしていいとは言ったが、お前は自由過ぎるだろ。罪状にホモも追加しておこう。あの世で嫁に半殺しにされればいい。

 日々、暁に追われ。プライベートはこのカオス空間。

 平穏ってなんだっけ?

 




~影の能力研究~
◆分身を作る
・影分身とは違い並行して思考する。
・影のある場所なら認識可能範囲内の空間で生成する事が出来る。
・分身と入れ替わる事が可能。
・基礎能力は本体と同じ。
・距離の限界値は現在測定不能。大陸の端から端までは可能だった為。
◆影の変形
・武器や盾、文字にまで変形可能。強度は不明。
・影のある場所なら発生させることができる(範囲は分身と同じ)。が、逆を言えば影が無ければ発生させることは出来ないので複数の光源を生成されれば作ることは出来ない。だが、夜とは地球の影という判定なので夜に相対したらほぼ無敵。
◆影ヘの収納
・影の中に物を収納できる。生物は不可。
・本体か分身ならどこでも取り出すことができる。
・状態は収納時と同じ状態になる。
◆死体の使役
・影に死体を喰らわす、正確には死体の影を喰らう事で、死体を影とし、自身の影にする。
・記憶は死亡時の時のもの。
・行動に制限はかけられないが、消滅は使役者に左右される。
◆成長の停止
・影は成長しない。

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