□主人公視点
『無駄足だった』
アジトに戻るとイタチさんと鬼鮫さんは戻っていた。
「すまない」
私に愚痴られたイタチさんだが素直に謝る。まぁ、元々任務を達成する気が無かったとしても、自来也さんに邪魔をされ、木の葉の里ではマイト・ガイさんに邪魔をされては仕方が無い。
マイト・ガイさんはこの世界で一番私を殺せる可能性の高い人間だ。本当に人間かどうか定かではないが、彼に狙われては、即効性の高い影貫礫で弾幕を張りながら死ぬ気で距離をとるしか無い。
私が得意な相手は、遠距離タイプと鈍足なパワータイプだ。体術を極めた彼は私にとって最悪の相手と言える。
というか、相性以前に死門を開いた彼の戦闘力は文句無しに世界トップレベル。正面から戦って勝てる人の方が少ない。とても怖いお人だ。願わくば一生会うことが無いように祈ろう。
『構わない』
「そんな事より何で失敗したのかな? うん」
「……三忍の自来也と螺旋丸や飛雷神の術を駆使する石隠れの里の忍びに邪魔をされた」
自来也さんなら仕方が無い。自来也さんなら……ふぁ!? 螺旋丸や飛雷神の術を駆使する石の里の忍びってもしかしなくても量産型ミナトさんじゃないですかやだー。
何で、暁と戦闘になるのだ? 私が暁の一員だという事は里の子達も知ってるし、敵対しないようにとも言っていたのに。
「自来也は分かるが、石隠れの里?」
「あぁ、かなりの使い手だった。それこそ記憶に残る四代目火影のような」
「うーん。無名の里だから気にしたこと無かったけど潰した方が良いかな? うん」
ちょっと! やめてあげてよ。せっかく寝る間も惜しんでコツコツと大きくしてきたのに、空襲爆撃とかほんとにやめてよね。
『止めた方がいいんじゃないかな』
「ふん。あんな小さな里、オイラのC3で一撃なんだな。うん」
止めるように促すが、デイダラくんはやる気満々のようだ。他のメンバーも止める様子が無い。
あばばばば。どうしたらいい。流石にうちの里の子達は爆撃如きで殺られるようなヤワな鍛え方はしていないが、暁と戦争はしたくない。
くっそー。誰がやったんだ。
『あー、えー』
「なんだ?」
デイダラ君に指示を出していた小南さんが私を見る。仕方が無い、言うしか無いか。
『石隠れの里ってウチの里なんだよね』
「む? 黒兎は石隠れの里出なのか? ならば、情報を教えろ」
『そういう事じゃなくて、彼処は私のモノという意味』
『現在進行形で』
「「「……」」」
「という事は、もしかすると黒兎は里長なのか?」
『もしかしなくてもそうだね』
「……何故言わなかった」
『聞かれなかったからな』
『だから、潰すのは止めてほしい』
『私から暁に手を出さないように言っておく』
せっかく秘密にしておいたカードだったのに、無駄なところで使ってしまったな。もう少し勿体ぶりたかったのに。ま、いいか。どのみち直ぐにバレていただろうし。
というか隣の国の里長が私と同じ面をしているのに今までよくバレなかったなと関心する。それだけどうでもいいくらい弱小国家だったのだろうか。
「おい。なんでお前、里長なのに暁なんかはいってんだ?」
『元々、大蛇丸って変態に身体を狙われてて、大蛇丸が暁を裏切った時共闘したら成り行きでそのまま入った』
『暁に入っている事がバレたら他里から狙われるだろうが』
『バレなきゃいい話だし』
「へぇー」
話を聞いたデイダラ君は興味を失ったように適当な話をした。大して面白い話でもないし仕方ない。
『私は里に向うよ』
『じゃあね』
そう、言い残し、そそくさとアジトを立ち去った。
□
『再不斬さん』
石隠れの里いにる私は、再不斬さんを見つけると呼び止めた。
「……なんだ」
『ちょっと水の国までクーデターに行こうと思うんだけど一緒にどう?』
「……ちょっとまて、今のは俺の聞き間違いか? それともいつもの冗談か?」
『いや、冗談じゃないですよ』
『少し計画は前倒しになってしまうけどね』
『実は準備は既に終わっているんです』
「おい、準備ってなんだ」
『いえ、以前約束したじゃないですか、クーデターの協力をすると』
『再不斬さんが修行にせいを出している間、クーデターの為の準備をしていたんですよ』
「……お前」
マスクのせいで表情はよく分からないが、目を見開いて感動しているようだ。不良がちょっといい事するとイイ人に見えるというアレだろうか。所謂ギャップ萌えという。とすると、再不斬さんの心を射止めてしまったのだろうか? まったく私は罪な女だ。
本当は再不斬さんの為というのは建前でクーデターは私にも旨味のある話だ。別天神の術の性質を考察するにオビトさんは四代目水影やぐらくんの側に居るはず。やぐらくんを監視している限りオビトさんの姿は見えないが、彼にちょっかい出せば何らかの行動に移してくれるだろう。
釣れなかったら釣れないでもそれでいいが、もう外堀は埋めているんだ。そろそろ、ウロチョロされるのは目障りだ。
今回のクーデターの根回しの為に、再不斬さんが外でクーデターの為の組織を組んでいるという事を暗に伝え、照美メイさんとの何度も交渉に望んだ。側に居る青さんに何度も邪魔をされつつも、暁やうちはマダラの情報を提示してなんとか協力体制を結ぶ事に成功した。
第一目標としてやぐらくんに掛かっている幻術の解除。そして、背後に居るであろうマダラの討伐。
作戦成功後の水影の決定権を譲る変わりに、再不斬さんに掛かっている罪過の取り消しと霧隠れの里への帰還の許可を貰った。
本当はもう少し、戦力を強化したかったのだが、暁に里長の件がバレてしまったから仕方が無い。
小南さんが口ではああ言っていたが、腹の中で何を考えているかは分からない。だから、万が一の事を考えて邪魔をされる前に、行動に移す必要があった。
『教官とウチの里の上から十人連れていくから』
「十分だな。助かる」
べ、別に再不斬さんの為じゃないんだからね、と脳内でお約束の返事を返しつつ、私は手をひらひらと振りながらその場を去る。
ミナトさんと量産型ミナトさん十人も居れば大丈夫だろう。量産型とはいえ、勝ち負けは別として暁とも戦える実力はあるだろう。
音の子どもたちは今回は悪いけどお留守番だ。
さて、水の国に向かう前にメイさんに声をかけなくてはいけない。
……今更だけど、なんでトップの私が一番動いて居るのだろう。
□
『こんばんわメイさん』
「卯月くん! どうしたのこんな夜に」
メイさんに会いに部屋の前に行きノックをして入室する。男の姿に変化している為仮面は付けていない。その方がアラサー女子の照美メイさんにはいいと思ったのだが、思った以上に効果覿面で――
『苦しいですメイさん』
「あぁ、ごめんね。卯月くん」
想像以上に好かれた。
入ってきたのが私と分かると、たわわと揺れる二つの柔らかな果実を私の頭に押し付けて抱きしめる。ちゃんと女性が好きな私としては嬉しいのだけど、いつまでもこうしている訳には行かず、腕をほどいてもらう。
この人はたぶん根っからのショタコンだ。外見は性別しか変えて無いので今の私は十一歳。それに原作でも我愛羅くんやサスケくんに好感を持っていたようだし。私が二十代と分かると「合法ショタ!」と言って口を抑え興奮していた姿を見た時は流石の私も引いてしまったが。
そう言えばやぐらくんも合法ショタだ。もしかして、だから今まで放置してたのか? だとしたら筋金入りだ。そうでない事を祈りたい。
『メイさん、悪いんだけど計画が前倒しになるけど大丈夫?』
「どういう事?」
『実は、暁に感づかれて邪魔される前に動く必要があったんです』
「私たちの方は問題ないわ」
『ありがとうございますメイさん』
「じゃあ卯月くんの仲間が来るまではまだしばらく時間が有るわよね?」
まぁ、やぐらくんの動きは私の分身が見張って居るし、此処で準備する事もほぼない。里に内部協力者が居るだけで、もう半分は作戦も成功しているようなものだ。
『はい』
『秘密裏に動いているので二日は掛かると思いますが、それまでは私のする事は無いです』
「ふふ、じゃあそれまでおねーさんと遊んでいましょう」
『まっ』
メイさんは私に頬ずりしながら、身体を抱き上げた。こういう目論見があったとはいえ、こうもストレートに好意をぶつけられるのは恥ずかしい。
「卯月くんも、子どもじゃないんだから」
いつの間にか、ベッドに押し倒され組み敷かれている。完全に主導権を握られてしまった。
やはり色仕掛けとかそういう事は私には向いていない。反省する。そんな、やる直前になってか足がすくむチェリーボーイのように成りながら、身動ぎする。
「嫌いじゃないでしょ? こういう事」
嫌いじゃない。私でもそういう事には興味がある。女の子になったとはいえ、メイさんのような豊満な身体に触れる機会なんて滅多にないんだ。
しかし、彼氏彼女でも無い人間に簡単に身体を許してしまうのは如何なものだろうか。こういうものは順を追って一つづつ仲を深めていくものじゃないのか?
「脱がすね」
メイさんは私の返事待たずに着物の帯を解いていく。
ごめん、白。お姉ちゃん汚されちゃう。
というか、一応私にも付いているがちゃんと機能するのだろうか。もし、機能せずに女の子とばれてしまったら今回の作戦も破談に成ってしまうかも。いや、バレなかったとしても、直前までいって機能しなかったら私は一生心に深い傷を負う事だろう。
こんな事ならば、事前に調べておけば良かった。いや、正直に言うと少し誘惑はあったが、性別を変えてそういう行為をする事は、ちょっと変態っぽくて抵抗があったのだ。
「卯月殿来ていらっしゃるのですか。うづっ!?」
「チッ」
混乱しながら半ば諦めると、丁度いいタイミングで青がやってきた。
私はメイさんから脱がされた着物を拾い青さんの方に駆け寄った。
『いいタイミングだ青さん、助かったよ』
「いえ、それよりも卯月殿。早くお着物を」
『うん』
まぁ、確かに私は裸だが今は男だ。そんなに目を背けなくても……ハッ! よく見たら青さんの頬が僅かに赤く染まっている。もしかして、ホ○!?
再不斬さん、鬼鮫さん。思い返してみれば変態ばかりだ。もしかして霧隠れの里は変態が育ち易い土壌なのかもしれない。
驚愕した。知らず知らずのうちに私は変態の里に来てしまっていたようだ。
私は急いで着物を着ると部屋を飛び出す。
「ふふ。また後でね」
……私は、あと二日間貞操を守れるだろうか。
明日、下を投稿します。