俺がポケモンマスター   作:てんぞー

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ブレイクタイム

『―――いやぁ、まさに白熱の第一回戦でした! まさかの試合終了時、状況は1:0! あのチャンピオン・オニキスも現役ジムリーダーテッセンの本気には苦労したように思えましたが……? そこらへん、どう思いますかルチアさん』

 

『うんと、ですね。テッセンさんとオニキスさんの勝負は薄氷の上の勝負の様に思えましたが、見ている限り、明らかにオニキスさんの方が余力を残している様に思えました』

 

『それは……?』

 

『それはオニキスさんが本当のエースをまだ出していないからです。今のオニキスさんが防衛戦に使っているメンバーではなく、新しいメンバーでホウエンを回っている事は耳聡い人達ならキャッチしている筈です。そしてオニキスさんの手持ちにはあの魔王龍の異名で知られる真のエースがいません! 彼女がいればおそらく後半、一人で3タテを果たしたんじゃないかと私は思っています!』

 

『成程……しかし、ルチアさん、詳しいですね?』

 

『実はミクリさんの対策ノートをこっそり覗いてまして……』

 

「ミクリには要注意、と……ま、手札を隠しながらだとこんなもんか。次回はもう少しスマートに勝負を進めたい所だな」

 

 そう言いながらスタジアムの様子が映るテレビを椅子に座りながら眺める。手元には栄養補給用に素早く摂取できるスポーツドリンクがあり、それを喉の奥へと叩き込んでいる。とりあえず第一試合は新しい事を試すという意味で色々とやった結果、それでややテッセンにやられたという形になってしまった。正直な話、出来る事なら2:0か3:0が目標だったので、個人的には非常に悔しい結果となってしまった。ジムリーダー相手に完全なスタメンではないとはいえ、1:0で勝利とは情けない。が、反省点は解った。次回に対する対処法も既に思いついた。

 

 次の機会があればより丁寧に、確実に磨り潰す事としよう。

 

「ふぅ、やはり公式戦でのタイミングを合わせるのは予想以上に難しいな。次回はもう少し介入の回数を増やして見るか」

 

 同じようにベンチに座る、ニンフィア化したナイトがスポーツドリンクを口にしながら呟く。キッチリと終盤で活躍する事が出来たダビデ辺りは気合いが入っているもので、コンセントから糸を伸ばして電気補給しつつ元気な姿を見せ、連戦が確定しているメルトはハピナスに軽くボディチェックをして貰っていた。バウンスであり受け流しの要であるメルトは特に連戦で酷使するので、マメなチェックとケアが重要になってくる。

 

「次回はもう少し華麗に活躍してみたいものね」

 

「お前の本番は対ククイの時だ。それまでは牙を研いで待っていろ。序盤から手札を明かすの勿体ないからな、驚かされている分、此方も多少はやり返したい、大体、今の試合で専用スキルの発動の流れも解った―――微調整を抜けば試合で十分使えるレベルだな、どいつも」

 

 ミクマリも異界展開組。つまり、この次の出番では異界の展開と共に戦術の中心を担う大きな役割を持ってくる。だが現在の所、テッセン戦では披露する機会がなかったおかげか、まだバレておらず、奇襲として作動するだろう。ともあれ、ククイ戦まで温存できるなら温存したい所である。それはそれとして、今注意すべきなのはギーマの事だろう。この大会に参戦している面子の中で、一足抜けているのはまず、間違いなくギーマの事だろう。次はエリートトレーナー達が相手だが、其方は戦力分析が完了している。今はなるべくギーマ、そしてそれに続くトウコ・ホワイト戦に関して思考を向けておきたい。

 

 ―――まずはギーマだ。

 

「ギーマ、か……今回のアイツのエントリーポケモンはキリキザン、レパルダス、ドラピオン、ドンカラス、ヘルガー、アブソル、サメハダー、そしてバンギラスの八体か」

 

「その内メガ枠はヘルガー、アブソル、サメハダーとバンギラスか」

 

「正直バンギラスの登用は難しいんじゃないかな? だってメガバンギにしたって特性がすなおこしでしょ? ギーマって異能型なら育成による特性の変更も難しそうだし、タイプは悪による統一パ―――ぼうじんゴーグルを装備したとしてもどう考えても自殺ばかりだと思うんだけど」

 

「やる」

 

「え」

 

「奴はやるんだよ……それが……」

 

 ギーマはそういう奴だ。奴は四天王で、メディアへの露出が多い。その為、戦術や戦い方と言えるものは何度も確認しているし、発覚しているとヒガナに告げる。ギーマは本当に生粋のギャンブラーで、戦闘にそれが不利であろうとも、スリルを生むのであればそれを許容するだけの頭の可笑しさがある―――それでもなお、四天王として活躍しているのだ。その卓越したバトルタクティクスは解ってくるだろう。何よりも、面倒なのはギーマのギャンブルの異能だ。おいうち+必中で12:一撃必殺を付与するが出た場合はエースであろうと一撃で落とす―――いや、奴のキリキザンであれば間違いなくそれぐらいはやる。

 

「明らかにあいつはバトルに遊びを入れる―――だがそれこそが奴の狂気を作ってる。そしてまた一つ、上の次元にプレイを押し上げている。非常に面倒な事この上ないが、ギーマの奴はトレーナーとしては超一流だ。何より奴はイカサマを得意とするからな……」

 

「……もしかして一番欲しいタイミングで欲しい数字を出す?」

 

 ナチュラルの言葉に頷く。だがそこはちょっと違う。ギーマの手品のネタは()()()()()()()()()()()()と自分は思っている。アレはダイスを振った時にランダムで数字を決定しているのではなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだと思う。たぶんそれがイカサマの原理だ―――まぁ、それだけではないと思う。何かがイカサマを手伝っている。

 

「異能で能力を作る分にはいいが、それを使ってイカサマを同時にする事はできないからな……」

 

「えっ? ボスイカサマしてるじゃん」

 

「俺の処刑場はルール順守と殺意のフィールド充填、領域形成でリソースのほとんどを使い切ってるんだよ。キリングオーダーはそれに適応させたポケモン達側のリソースを割いて発生させているんだがな……ここら辺、というより異能関係はあまり経験というか接点が少なかったからな、四苦八苦しながら何とかキリングオーダーも完成させた」

 

「いえーい」

 

 ダブルピースをヒガナが浮かべている―――そう、こいつだ。キリングオーダーや異能関連に関しては、こいつの方が遥かに才能があるのだ。流石レックウザの奥義を伝承し、そしてそれを一時的にだが他のポケモンにも使える様に付与できるだけの異能の才能、容量、そして理解だった。ぶっちゃけた話、異能の領域に関しては異能の人間にしか解らない部分でもある。ヒガナを連れまわしていて正解だった。

 

「それで……ギーマの対策はどうするんだい?」

 

「イカサマを見破る。んでそれを突き付ける」

 

「そうすると?」

 

「知らんのか。処刑場が本気出す」

 

「察した」

 

 イカサマを許す訳ないんだよなぁ……。まぁ、それがギーマに対する勝負の分かれ目だろう。正直な話、悪統一という態勢を整えている以上、弱点が大きく露出しているのでギーマの相手はそこまで難しくない。何故なら俺自身が悪タイプというタイプに関して深い理解があるからだ。大体どういう動きを取れるか解る為、大体どういうスキルを育成させているかを理解できる―――まぁ、あのギャンブル狂いの事だから、十中八九全て確率関係なのだろうが。

 

 ともあれ、それとトウコだ。

 

「トウコ・ホワイト。イッシュ出身。イッシュ地方リーグ優勝経験者。伝説種・レシラムを捕獲した事で有名ではあるが、公式大会の露出が低い為にその戦法はあまり広まっていないが、相手に実力を出させない戦い方をする……か」

 

「何故か解らないけどその子を見ていると悪寒しか感じないんだよね、僕」

 

 そりゃあお前。本来ならお前らライバルという永遠のカマセ犬だったからな、と心の中で呟く。さて、どうするかなぁ、と考えていると、スピーカーから次の試合の呼び出しがやってくる。意外と早かったか? と思うが時間を見るとそれなりに経過していた。少し話すのに夢中になり過ぎたか。そう思いながらモンスターボールの中に参加面子をしまって行く。

 

「それじゃあ勝ってくる」

 

「行ってらっしゃーい」

 

「一回の勝利より一回の伝説を求める」

 

「自分でやれ」

 

 相変わらずブレないヒガナの発言に苦笑しながら帽子をかぶり直し、そのままスタジアムへと進む。

 

 

 

 

 ―――第二試合、対ヒムロ。

 

 トクサネ出身のエリートトレーナーヒムロは浅瀬の洞穴で修業を積んだトレーナーであり、ゆきふらしを起点としたあられパを使うポケモントレ-ナーだった。【天候適応:霰】を育成を通して手持ちに付与する事で、タイプに関係なく霰のダメージを防ぎ、逆にその恩恵を受けることが出来るというコンセプトであった。エースは適応進化をしたデルタドリュウズであり、ゆきかきとゆきがくれのコンビネーションによって対戦相手を苦しめる戦い方を行う。その他にもデルタバンギラスを保有し、凶悪になった必中の雪技で殺しに来る、優秀な構成をしていた。

 

 だが致命的に黒尾との相性が悪かった。ヒムロの選出の一部にはあられを受ける事で回復するというスキルがポケモンに組み込まれていた為、それで持久戦を行えるはずが、黒尾の【異界:奈落に咲く煉獄の花】によってその効果が一瞬で反転する。あられを通して回復する筈だったパーティーはその効果が反転する事によって逆に固定された割合ダメージを継続的に受ける事になり、それで耐久力の高いエース達が封殺される。

 

 結果、3:0の圧勝。勝利の鍵は黒尾の異界の展開であり、それと同時に初めてスタジアムで明確に異界の展開、利用が確認され、新しい戦術を中心にパーティーを構築し始めている、というのがメディアに露出した。それにより大会と個人としての注目度が更に上昇する。このホウエンへと来てから大きく変更しつつある戦術が漸く最終的な形へと到達しつつある事を誰もが予感する戦いだった。

 

 ―――第三試合、対リッケン。

 

 此方のエリートトレーナーもホウエン出身である。フリーであるヒムロとは違い、彼は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()である。しかもただの契約トレーナーではなく、本人自身がデボンコーポレーションで働く社員であり、開発部に所属する開発部からのエリートな刺客であった。それだけを見ればジョークのような塊だが、本戦に勝ち残ったトレーナーで実力がジョークな者はいない。

 

 デボン開発部には化石復元の部署も存在し、リッケンはそこ出身である。それ故にリッケンが操るパーティーコンセプトは古代パ、とも呼べる古代から存在し続けるポケモンのみで構成されたパーティーである他、強制的に古の戦闘ルールへと引きずり込むという能力を保有している。その為、多くの育成等を通した強化が無力化され、原始的な戦闘を強いられ、育成、異能、統率型のトレーナーにとっては鬼門とも言える相手になる。

 

 ただ、相手が何をやってくるのかを理解していれば、そこまで難しい相手ではない。古代パーティー、化石パーティーは比較的にタイプが読みやすい相手でもある上、原始的な戦いとはつまりもっとシンプルな読みの戦いでもある。

 

 ここでミクマリとナタクがひたすら無双を開始する。キリングオーダーと絡めて相手の速度を上回って戦闘を行う事で、つねに抜群相性の攻撃を叩き込み続ける事が出来る、安定した戦いを見せる事が出来た。何よりも、グリーンやレッド相手にこの手のバトルは腐る程慣れていたという経験的優位も存在した。

 

 最終的には4:0で勝利。テッセン戦でのギリギリの勝利が嘘であったかのようにチャンピオンとしての威厳を衆目に見せつける事に成功し、また、新しい戦術に対する適応を更に進める事となった。

 

 これにて序盤戦が終了する。参加者は全員で10人、全員が3試合を終わらせた事で序盤戦が終了し、次の4試合をそれぞれが終わらせる事で大会の中盤戦が、そしてその後に終盤戦が始まる。

 

 大会序盤で入る新しい戦術等による奇襲は序盤戦が終わるころには情報収集用のスタッフがスタンドなどから撮影等を行って記録を取り、トレーナー側へと伝えたりする為、大会中に新しく出てきた情報への警戒等が始まる。

 

 ―――次試合、対ギーマ。

 

 黒尾 …… メンタルハーブ

 メルト …… オボンのみ

 ナタク …… ラムのみ

 ピカネキ …… でんきだま

 シド …… あくのジュエル

 ダビデ …… きあいのタスキ

 

 戦闘準備完了。




 次回、ピカネキフィールドに立つ。

 という訳で次回、ギーマ戦でやんす。
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