文久三年7月5日夕暮れ
洋介は変装をといて江戸の救済に走り回っていた。
文久三年7月6日朝
幕府が開いた病院(焼け跡に柱を建てて布を張っただけの簡素なもの)には近隣各地から集められた医者が居た。
洋介はここで2度目となるある男と出会う。
(しかし、酷いものだな。)
焼けただれた傷口を見ながら洋介はそう考えていた。
洋介はケアルガを唱えると次々に怪我を治していく。
だが、火傷の後は元通りにはならなかった。
(火傷が酷すぎるんだな……鹿児島ではろくに怪我の治り具合をみてなかったから気付かなかったな。)
別に火傷が酷いからではなく今日は洋介が魔法を使いすぎて魔法の力が少し下がっただけと言ったような理由だった。
ふと正面の診察所を見ると髭を生やした男と坊主の様な男、小柄の男、若い女が診察をしていた。
テレビで見たことがあるような手術用のコートみたいなのを着ていた。
(あの髭を生やした男と若い女には見覚えがあるような?)
等と考えながら治療を続けていた。
昼時となり交代で医者が休み常時診療を続けていた。
(なんだかな、あの医者はやっぱり昔医療ドラマや医療特別番組に出てきた医者みたいな動きや器具を使っている。)
洋介は怪しがりながら見ていた。
見られた方も怪しがりながら見ていたのであるが、それがわかる人間はここにはいなかった。
数刻後の夕飯の時間に髭面の男が洋介に寄ってきた。
「お久し振りです。私は仁友堂の南方仁と言います。」
お辞儀をされたのでお辞儀を返しながら洋介も名乗った。
「こちらこそ挨拶に行けずにすみません。小田原病院の田中洋介と言います。」
と話したところで南方の目付きが変わった。
「病院?それはどういう意味なのですか?」
薄い期待を目から感じとり洋介は言葉を選びながら答えた。
「病院とは病気を治す医療所と言う意味ですよ。」
この答えに南方はより目を輝かせた。
戊辰戦争後に病院という言葉が一般化するのである。
つまり、洋介は未来人といっているようなものである。
「ではそれはいつ思い付いたのですか?今ここには私と貴方しか居ませんからお答えして頂けますか。」
南方の言葉に怪しさを感じながらも答えた。
「それは……貴方はところでこの世界の人間ですか?」
言葉に詰まる南方を尻目に洋介は言葉を続ける
「貴方は未来から来たのでは無いのでしょうか?」
洋介はインターネットで今さっき調べた事実から南方の正体を見抜いた。
彼が勤めていた先を知っているので洋介は彼、南方仁が未来から来たことをわかっていた。
「……私は記憶を……。」
仁の言葉を遮るように洋介は一言発した。
「記憶をなんて話は良いので、ここには貴方と私しかいませんと南方仁先生が仰ったではないですか。それに、お互いこうなったのですから腹を割って話しましょうよ。私は話す用意ができています。」
洋介は仁に話すように仕向けたのだった。
仁は意を決した様子で語り始めた。
自分がこの時代の人間ではないこと、自分が未来で医者をしてたこと、ペニシリンの開発をしていること、坂本龍馬と知り合いだということ、今は自分が知る歴史から大きく逸脱していると言うこと。
洋介は黙って聞いていた。
しかし、仁が気になることを話した。
「あなたは私が未来にいた時に急患で運ばれてきた患者に良く似ていて更に名前まで一緒だ。あなたは未来から私と共にタイムスリップしてきたのではありませんか?」
(俺は……現代でこの人に会っている?)
「因みに南方仁先生それはいつの話ですか?」
洋介は仁に強く聞いた。
「……南方で結構ですよ。あれはあの患者が運び込まれる二時間前だから2000年6月×日 18時ごろだったかと。貴方は品川で倒れていたらしくスーツ姿でしたよ。」
南方の言葉に洋介は動揺した。
(俺が記憶があるのは1999年7月×日 13時位だ……。つまり約一年位空白の時間がある……俺は何をしていたんだ。)
急に洋介は頭が痛くなりうめいた。
「大丈夫ですか!」
仁が立ち上がったが洋介は手を出して仁を止めた。
「大丈夫です……記憶が無いので思い出そうとしたら頭痛がしただけですから。」
洋介の言葉に仁は診断させてくれと言い洋介は外部的要因で記憶喪失になったのではないだろうかと言われた。
洋介は新たな事実に困惑していくのだった。
よろしければ感想をお願い致します