文久三年7月17日
清とヨーロッパの緊張感が増していた頃、幕府の幹部達は頭を抱えていた。
対清帝国としてイギリスからの同盟要請があったのだ。
イギリスからの要求は4つ、海上の相互護衛(つまり長州の封鎖は終了させる。)、イギリスの物資を作れる工場を日本に建設と長崎の拡張工事、黒い魔神(洋介)のイギリス軍側に派兵、仁と洋介を軍医として派遣すること。
そして、それが飲めたらば日本の関税自主権の回復と領事裁判権の縮小、日本に新造の船を5隻用意すると言われたのだった。
はっきりというと幕府は江戸炎上を受け求心力や影響力が下がり始めた。
イギリスとしては極東の敵を納めた功績と清への懲罰と利益拡大、日本との交易強化、仁や洋介の医術を盗むことが目的とし、あわよくば日本の内乱を煽り傀儡政権の樹立を狙っていた。
幕府としてもイギリスとの同盟はイギリスとの先の戦闘から譲歩を引き出したと求心力を復活する上に増えたと言う薩摩藩の海軍力を押さえつけれると考えていた。
しかし、影響力が増した薩摩、佐賀、破れたとは言え強い長州、不穏な土佐……これら全てを押さえ付けれるかと聞かれるとそれは難しいの一言だった。
幕府は取り敢えず仁と洋介の確保に動いたのだった。
「幕府からの使者ですか?」
康は驚いていた。
幕府からの手紙は届いても幕府から直接幕臣が来たことは無かったからである。
「そうだ。田中先生に会わせてもらおうか。」
幕臣は偉そうに康を押し退けるとズカズカと家に入り込んでいった。
幕臣が扉を開くと洋介は治療をしていた。
病人を一列に並ばせて彼が手を掲げると直ぐに病気が治癒するのだった。
(これが大国主命、少彦名命、足手荒神、神農、黄帝の化身と噂されている者の治療……。)
思わず唾を飲み込み喉を鳴らしてしまった。
「そちらの方は誰ですか?」
洋介が立ち上がると使者は驚いた。
(六尺……[今で言うとだいたい180cm]ぐらいあるのでは無いのか……この御仁は。)
実際には洋介の身長は170cm後半なので当たらずとも遠からずである。
「私はさるお方から命を受けた佐藤安右衛門と申します。江戸からのお達しを持ってきました。」
安右衛門は江戸からの命令書を取り出して読み上げた内容は下の通りである。
1、洋介はイギリスへ留学すること。
2、洋介はイギリスの陸軍で働くならば年7000両の報酬が約束する。
3、洋介はイギリスに医術など優れた知識を見せこの国の威信を高めること。
4、洋介はイギリス以外とも連絡を取り世界の情報をいち速く幕府側に届けること。
といったような条件だった。
「すぐには決めかねます。それに私よりも南方先生の方が教えるのは数倍上手いですよ。」
洋介は渋るが安右衛門は
「わかりました。しかし、これは幕命……お分かりですね。」
と洋介を脅すのだった。
が、ここまでで修羅場を生き抜いてきた洋介は別に怖くもなかった。
(幕府が腐敗しているなら薩摩か長州、京に逃げればいいだけだしな。)
と簡単に考えていた。
使者の安右衛門が帰った後に洋介はどうするかを考えるのだった。
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