洋介は翌日から良く働いていた。
錬金術で土の道ばかりだった里の道の表面にアスファルトを敷き詰めていった。
里の人に何処に敷いていいか聞きながらだが。
また、田んぼの水路も錬金術と土遁を使っていた。
邪魔な石があれば錬金術で土にし、木があれば超能力で植え替えて、インターネットを調べながら肥料を錬成し、村で配った。
ユビキタスと影分身と分身のスキルで増殖した洋介は里の方々で働いていた。
(働きやすいな。神様だと思われてるから何しても大丈夫だし。)
などと考えていた。
それから時間は過ぎた。
(なんか、若い女の子もいるから、泊めて貰うのも悪いな。)
数日もすると流石に泊めて貰うのに居心地が悪くなった洋介が、家を建てたいと言うと大きな男は家を建てていい土地を教えてくれた。
洋介の建築はすごく簡単である。
超能力で精度を上げて、木遁で一瞬にして建築した。
そこに木遁で作った家の柱や壁を固定化の魔法を施して腐らないようにする。
後は木を切り表札を作ってもらい、周りに魔法と忍術で水路と木と塀で囲み、内部は池や庭園を作っていた。
(インターネットの画像の庭園をすぐに作れるなんて、忍術と錬金術は便利だな。)
洋介の家は凝った作りをしていた。
所要時間が1時間の即席和風豪邸なのだが、かなりの外観であり固定化により燃えもしないし、腐らない、地震にも強く、風化にも強いと言ったような作りになっていた。
更に、家の端に茶室があったり、陶芸のスキルで土を捏ねて魔術で焼き上げた雑器等があった。
洋介の家は洋介が力を隠す必要が無いために、大抵のモノは洋介の能力で作っていた。
懐かしの薪割りも影分身たちに任せて山の上に居た。
軽く近くの薮蚊などを始末するスキルを作ると寝ていた。
家はあるのだが、家でゴロゴロしているところを見られたとしたら、外面を気にする洋介は嫌だったのである。
洋介のスキルか魔法で透明化すれば良いだけなのだが、それだけの為にスキルや魔法を使うのは躊躇われた。
現在でも本人はなにもしてないため、江戸時代に居た時と比べてかなり体力が余っていたが、一度覚えた楽な影分身は止めれない。
人間便利に成れば堕落するものである。
それは、一番現代人の洋介に色濃く出ていた。
山で何を洋介がしてたかと言うと何もしていなかった。
当初はインターネットを探って仙人の修行や荒行やっていたのだが里の回りの山々は一時間余りで一周出来るし、滝行や火渡りの行等をやっていたが何も苦もなく終わらせていた。
修行するのも影分身を使い、方々で作業させるだけで身体能力が跳ね上がる。
はっきり言って洋介の能力は便利過ぎた。
本人が堕落しきる位に強かったのだ。
家すら一瞬で建てれる上に一対一に持ち込めれば負けることはない。
数万の軍勢に同時に長い防衛線を攻撃されたり、広域におよぶ核攻撃などを受けたら負けるがそれぐらいである。
(なんか、毎日ここにいたいな。)
蝶が舞うのを見てぼーっとしてると遠くから声がかけられた。
「ここにいたのか。」
部屋を貸してくれた大柄の家主がいた。
突然現れたため驚いて声も出なかったのが災いして、大家と見つめ合う羽目になった。
男二人が山の木陰で見つめ合うという何とも言えない雰囲気を出していた。
家主が
「風は……」
と話始めたところで金縛りが溶けたように目をそらせた。
しかし、家主は洋介の隣に座った。
(何故だ。なぜこの人は見つめあった後に俺のとなりに……。江戸の時に見たバイセクシャルか何かか?)
洋介が考えていると家主は言葉を続けた。
「一点には止まらないものだ。旅人は旅をするから旅人だ。またマレビトも一点には止まらないものだ。」
あれを見ろと家主は指を指した。
大きな雲だった。
「あの雲の様に君は止まらずに。しかし、とどまれば恵みの雨を相手が傲れば雷を与えるそうなんだろ?」
家主は不器用な笑いを見せたが洋介は
(なんで、部屋を貸してくれたとは言え、おじさんに横に座られてポエムを聞かせられてるんだろうか?)
悲しくなってきてつい「はい。」と返事をしてしまった。
「そうか、我々が鎖になっていたんだな。気にするな旅に出て来なさい。また部屋を貸すからな。」
家主は立ち上がると一言
「銀子や里の皆には黙っておく。」と告げて山を降りていった。
洋介は知らない内に旅立つ事に決定してしまった。
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