オーバーロードとフェアリーロード   作:skyline

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次はエ・ランテルに行きます。次こそはエ・ランテルに行きます。


ニグンさんの素晴らしい1日withガゼフの災難な1日

その日はニグン・グリッド・ルーインにとって、人生で最高の1日だった。

辺境の小村を襲った我らがスレイン法国の偽装兵の活躍により、周辺国家最強の戦士と言われるガゼフ・ストロノーフ率いる戦士団を追いつめたのだ。

ガゼフを引きずり出すためだけに無関係な村人を襲って殺戮を繰り返したことについて良心が痛まないこともないが--法国の統治の下で大いなる平和を作るための尊い犠牲だと考えれば、この程度の農民は誤差に過ぎないと彼は思っていた。

 

ガゼフを追いつめる決め手となったのは三番目に襲った村、カルナだかカルネだかいう所でガゼフの部隊を補足したことだ。

ニグンの予想通り、農民を救助して回っていたガゼフたちの戦力は、出発した時の報告の半分を割っており、およそ20名ほど。それに対するニグン率いる陽光聖典の人数は50名で、圧倒的数の有利で対峙した。

有利なのは数だけでなく、質もだ。陽光聖典はすべてのメンバーが第三位階魔法を使うことができる魔法のスペシャリスト集団であり、第三位階の魔法で召喚した天使も含めれば倍の戦力を持つ。ガゼフのワンマンチームである戦士団に勝ち目は無かった。

 

だからと言って、ニグンは侮ってなどいなかった。

腐っても王国戦士長。慢心をすれば次の瞬間首を掻き切られるのは自分だと己に言い聞かせ、ことに臨んだ。

 

しかし部下の全員がそうだったわけではない。

50名もいればまぁ当然ではあるが--ガゼフは自分たちを取り囲む陽光聖典の包囲網の中で油断をしている部分を的確に見つけ出し、そこを突破して脱出したのだ。

 

戦犯となった部下に与える罰を考えつつも、ニグンはガゼフの追討の命令を下した。

ガゼフたちが逃げ込んだのは愚かにも森の中。見通しが悪くなることで逃げることができる確率が上がると踏んだのだろうが、それでは馬の速度を活用できない。

 

《フライ/飛翔》で森全体を囲み、《ファイアーボール/火球》で焼き討ちにしてしまえばいくら王国戦士長といえどもひとたまりもあるまい。

悪魔的な発想を思いつき、その命令を下した時のニグンの顔には、隠しきれない愉悦が浮き出ていた--

 

 

 

 

 

 

 

 

王国戦士長、ガゼフ・ストロノーフは己の部下達に誇りを持っていた。

剣の腕は周辺国家最強であるガゼフよりも数段劣る者たちばかりだが、王国の民を思いやる気持ちと、腹を決めた時の覚悟はガゼフに勝るとも劣らない。

 

現に、先ほど天使を連れた法国の刺客たちの包囲網を突破する際に一番の活躍を見せたのはガゼフではなく、部下のリリックだ。

活路を見つけあぐねていたガゼフに対し、リリックは突貫による強引な突破を提案。一番包囲網が緩くなっている箇所を見つけ出し、ガゼフたちの命を救った。

 

そんなリリックはその突貫の際、ガゼフに切り掛かってきた天使の攻撃を代わりに受けて落馬。最後に聞こえた言葉は「どうかご無事で」だった。

 

ガゼフ・ストロノーフは部下たちに愛されている。しかしそれ故、ガゼフのために身を張って命を落とす仲間の姿は幾度となく目にしてきた。

命の価値は平等だなどと笑いながら民衆に手を差し伸べるその実、そんなことが偽りであるのは彼が一番よく知っているのだ。

 

 

最後尾の部下の20頭身ほど後ろから、法国の天使が高速で追いかけてくる。

全力で走らせている軍馬の速度に追いついてくるとは、魔法というのはなんでもありか。

半ば諦めにも似た思いを感じつつも、ガゼフは自分と部下たちを励ますため、目標を打ち立てて大声を上げる。

 

「--リリックの犠牲を無駄にするな!俺たちはきっと王国へ戻る!」

 

「おおおおおおおお!!」

「そうっすね!隊長!!」

「アイツはウチの隊で一番体重が重かったからな!リリックがいない分だけ俺たちの逃げる速度も速くなった気がするぜ!」

「ははっ!違いねぇな!」

 

相棒の--馬のアングラウスに鞭を打ち、追走する部下たちの表情を見る。表情は皆、底ぬけに明るい。

ガゼフはこれまでの経験から、明確な形で死が近づいた兵士の士気は、一時的に狂気に駆られたようになる事があるということを知っていた。

 

苦虫を噛み潰し、わずかな逡巡の後ガゼフは指令を下した。

「--前方の森へ突入する!天使(デカブツ)は森の中で派手な動作ができない!馬の足元に気をつけろ!」

 

森の中で天使の動きが鈍るというのはガゼフの希望的観測だ。だが、今はそんな願望に縋りつかずには居られなかった。

 

先頭を走るガゼフが森へ突入したのを確認すると、戦士団は次々と後に続いた。その後を天使が追うことはなく、戦士団は無事に追っ手との距離を離すことに成功した。

 

 

まるで木々が避けていくように、異様なほど走りやすい。

鬱蒼とした森に入ったガゼフたちが抱いたのはそんな感想だった。平原を走っていた時よりも、馬の速度が上がっているような気がしてならないのだ。

 

ありえないことだ。

森の中というのは、得てして道などというものはない。足下には木の根が這っているものであり、歩くことすらままならないのが普通だ。

 

(なんらかの魔法が掛けられた森なのか?--いや、森そのものが巨大な魔獣の可能性も考えたほうがいいのか?……馬鹿馬鹿しい)

 

自らの知識に思い当たることがなく、すぐさま考えることをやめるガゼフ。部下たちも異様さに気がついたようで、森に入る前の高いテンションは鳴りを潜めていた。

 

そんな中、ガゼフにほど近い位置を走る、飛び抜けて視力のいい部下が前方を見つめて叫んだ。

 

「ガゼフ隊長!--前方に遺跡のような建築物です!」

「……森の中に遺跡だと?」

 

一度は報告を疑ったのものの、すぐにその遺跡はガゼフの視界にも捉えられるようになった。

ガゼフの第六感が警鐘を鳴らす。

魔法が掛かっていると思わしき森の中にある遺跡など、まともな建物であるはずがない。

様々な可能性を視野に入れ--カルト宗教の拠点である可能性、遺跡の姿を擬態した食人モンスターである可能性などを考慮した結果、ガゼフは接近するという合図を出した。

王国の領地に存在している以上、いずれは調査せねばならないのだ。

 

「お前たちは遺跡から十分な距離を維持しろ。後部の者は法国の追っ手に気を配れ。--もし誰もいないようなら、法国の奴らが撤退するまで屋根を貸してもらおうじゃないか。」

「了解しました。--隊長、気をつけて下さいね。」

ガゼフは馬の速度を緩めると、警戒したまま少しずつ遺跡へと接近する。

 

「……誰かいないのか!」

 

返事が返ってくることには期待していない。

遠い過去に打ち捨てられた廃墟ならば人がいる可能性は低いし、もし誰かが住み着いていたとしても故意的に声を返さない可能性は十分にある。

油断した訪問者に不意打ちを仕掛け、死体から所持品や装備品を剝ぎ取る稼業の人間だ。

法国の特殊部隊から見事に逃げ切った先で盗賊に殺された、なんて話は笑いものにならない。

 

ガゼフは遺跡の正面に出ると、馬から降りてその全体像を伺う。距離が縮まるにつれて、その眉はひそまっていった。

想定外に立派な建物だったからだ。

 

純白に近い輝きを放つ建物で、表面を滑らかに研磨した石をくみ上げて作られていた。

建てられてから相当な年月が経過していそうなのに、その建物のどこにも傷を見つけることができない。

数段の階段--大理石で作られているその先には巨大な二枚扉があり、そのどちら側も大きく解放されている。建物の奥は暗くて見通せなかった。

霊廟か何かかとガゼフは想像する。それと同時に。

 

--間違いなく何者かが手入れをしている。

ガゼフは確信し、再度声を上げる。

 

「誰か、ここに住む者はいないのか!」

「--大声ヲ出サズトモ良イ。聞コエテイルゾ、人間ノ戦士ヨ。」

 

人間以外の何かが無理矢理に人の言葉を出している、そんな声がガゼフの問いに応えた。

声が聞こえてきたのは遺跡の中、開け放たれた扉の奥だ。ガゼフは五感を集中させ、奥からやってくる者を補足する。

 

何十枚もの鎧が重なり合うような擦過音が遺跡の奥から聞こえ、そして姿を見せたのは2.5メートルはあろうかという巨大な青い甲冑だった。

神殿の大黒柱を想起させる逞しい腕は四本もあり、大きな青い瞳は顔を挟むように三つずつ。太く鋭い棘のついた尻尾は遺跡の闇の中へ続いている。誰がどう見ても人ではない。

 

未知の異形をその目に捉えた部下が、怯えを隠すために剣を抜こうとするのを片手のサインで押しとどめ、ガゼフは青い甲冑との交渉を試みる。

 

「--私はリ・エスティーゼ王国の王国戦士長、ガゼフ。この近隣を荒らす帝国の騎士を退治するため、王の命を受け村々を回っていたのだが、途中で法国の刺客に襲われ退却してきた。……迷惑でなければ我々を匿っていただき、一晩の屋根を借り受けたい。」

 

ガゼフの名乗りを聞いた青い甲冑は、軽く頭を下げて謝罪を口にした。

「……王国ノ戦士、ガゼフカ。スマナイガ、客人トシテ受ケ入レルコトハ出来ナイ。」

 

魔物にしか見えないが、きちんと話は通じる。問答無用で切り掛かってくる盗賊の類いよりも危険度は高くないだろうと見積もったガゼフは、無理な願いを言ってしまったと反省した。

 

「いや、こちらこそ済まない。突然大人数で押しかけておいて匿って欲しい、宿が欲しい、というのはそちらにも負担が大きいだろう。--この立派な建物は、貴方の所有物なのか?」

「否、ワタシノモノデハナイ。ココハ我ラガ至高ノ御方ノ住マイデアリ、ワタシニ与エラレテイルノハ第五階層ノミ。」

「第五階層……見たところ一階建てのようだが--ということは、ここには地下があるのか?」

「ソウダ。--名乗リ遅レタガ、我ガ名ハコキュートス。コノ地ノ第五階層ノ守護者ノ命ヲ、至高ノ方々ヨリ賜ッテイル。」

 

ガゼフの詮索を断ち切るかのように、青い甲冑--コキュートスは名乗りを上げた。

その立ち振る舞いは精強な戦士のそれであり、『至高の方々』という存在に心からの尊敬をしているのもわかった。ガゼフは、もし時間が余っていたのならこのコキュートスという魔物と手合わせをしてみるのも面白かったかもしれないと思った。

周辺国家最強という呼ばれ方をしている自分と比べて、目の前のこの異形はどの程度の力を持っているのだろうか。決して格下には見えないから、もしかすると自分に匹敵するくらいの力かもしれない--

時間がないのが無念だ。

 

「--コキュートス殿というのか。この度は押しかけて申し訳なかった。……追っ手が来てしまってはコキュートス殿にも迷惑が掛かるだろう。私たちはそろそろ失礼するよ。」

「……ソレハ無理ダロウ。--ワタシハ熱ニ敏感デナ。コノ森ノ至ル所デ火ノ手ガ上ガリ始メテイルノヲ感ジトレタ。今カラ脱出シヨウトシテモ間ニ合ウマイ。」

「なっ!……法国の魔法使いどもが森に火を放ったと!?」

「アア。間違イ無イ。オ前達ガコノ森ニ逃ゲ込ンダカラ、追ッ手ガ火ヲ放ッタノダロウ。」

 

ガゼフは己が失態を悔いた。

カルネ村から離れようとして森に入った結果、無関係のこの魔物の住処を火の海にしてしまうなんて。

相手が例え魔物であろうと、同じ王国の領地に住む者--申し訳なさで胸が一杯になった。

 

ちょうど、後ろで見張りをしていた部下が付近を火が囲んでいることを焦燥気味に報告する。

その様子を見たコキュートスはカチリと顎を鳴らした。

 

「……すまない、コキュートス殿。君の住む周りに災厄を持ってきてしまって、本当に申し訳ないと思っている。」

「--マァ、イクラ森ガ燃エヨウト、ワタシガ守ッテイルコノ場所サエ無事ナラバ問題ナイノダガナ。」

「それについてなんだが……火が収まった後は恐らく、法国の魔法使いたちは血眼になって私の死体を探すだろう。ここまで迷惑をかけてしまってから言うのはおこがましいと自覚してはいるんだが--君にこれ以上の迷惑をかけないため、私はこの場所から可能な限り離れようと思う。今度こそ本当に失礼させて--」

「--ソノ必要ハナイ!」

 

突然、コキュートスから発された殺気の奔流が、皆のもとへと戻ろうとしていたガゼフの足を強制的に止めた。

 

(……声色が変わったな)

 

ガゼフのチェインシャツの下に冷や汗が溢れ出る。

四年前の激戦--ブレイン・アングラウスの殺気よりも遥かに濃い。恐らくはかなりの強敵だろう。

 

「オ前タチヲ襲イ、森ニ火ヲツケタ犯人ハ、モウオ前タチヲ追ッテクルコトハデキナイダロウ。--ソシテ、オ前タチモコノ地カラ逃ゲルコトハデキン。」

「--追ってくることができないというのはどういう意味かはわかりかねるが……コキュートス殿。どうやら腕に自信があるようだが、私は王国の戦士長、ガゼフ・ストロノーフだ。この名を知っていれば、身を引いてもらうのも得策だと思うのだがな?」

「オ前ノ名ハセバスカラ聞イテイル。弱キ者ヲ助ケ強キ者ヲ挫ク、ソノ姿勢。王国ノ民ガ敬意ヲ示スニ値スル者デアルト。ダガ--」

 

コキュートスは四つの腕を広げると、嘲笑を込めたため息を大きくついた。

顎の周りの空気が凍りつき、パキパキと氷が弾ける。

 

「--ソレダケダ。対面シテ改メテ理解シタガ……人間トイウノハ余リニモ脆イ。」

「一瞬でも憐憫を持った私が愚か者だったな。化け物は所詮化け物でしかないということか……!」

 

ガゼフは剣を抜き、一直線に構える。

 

(--このコキュートスという魔物、王国を敵に回すことを恐れていない。さほど日数の掛からない距離にエ・ランテルがあるのを知った上でか?)

 

ガゼフは己の剣に絶対の自信を持っている。しかし、それは剣を持った人間を相手にした時のものだ。眼前にいるのが人ならざる化け物である以上、ガゼフの勝算は神のみぞ知るところ。

だが、王国戦士長という肩書は相手に左右されるものではない。もしガゼフが王国に帰らなければ、王の命でこの周囲一帯を捜索隊が探し始めるだろう。

そしてこの場所はエ・ランテルに近い。帝国と法国に接しているため諍いも多く、他の都市と比べると段違いの人数を誇る兵士が在中しているはずだ。

そんな諸々の背景を、このコキュートスはわかっているのだろうか。

 

穏便ならざる空気を感じた部下たちがガゼフを囲うように集まり、一斉に剣を抜いてコキュートスに向けた。

対するコキュートスは背中から大剣と大槍を抜き、四本の腕のうち二本に構える。どちらも、ガゼフの身長以上はあろうかという極端な大きさだ。

 

(--いや、違うな。王国を敵に回しても怖くないという表れか。どちらにせよ剣を交えればわかるというもの。)

 

「オ前タチガコノ森ニ入ッテコナケレバ、森ガ焼カレルコトハナカッタシ、私モオ前ト戦ワズトモヨカッタ。運ガ悪カッタノダ。」

「本当にそうだな。--おい、お前たち。今すぐ馬に乗ってこの場を離れろ。これは隊長命令だ。」

「し、しかし!」

「ガゼフ隊長を置いて逃げることはできませんよ!」

 

忠誠心の高い部下たちに内心で賞賛を浴びせながら、ガゼフは突き放すように叫んだ。

「--お前たちがいると邪魔にしかならん!早く逃げろ!」

「……ッ!」

 

邪魔という言葉に反応して幾人かが一歩引いたが、それでも逃げようという者はいない。

ガゼフの厚い人望が枷となっているのだ。

 

コキュートスはぼんやりとそれを見て、ハッと思い出したように、残っている手で拍手をした。

 

「……感動ノ劇ハモウ終ワリカ?中々面白イ見世物ダッタ。ダガ無意味ダ。最初カラ誰一人トテ逃スツモリハナイ。」

 

青い巨体は大理石の石段を一歩ずつ降りてくる。一歩ごとに威圧感が倍々になっていく錯覚に囚われ、部下の数人がじりじりと下がった。

もう間違いない。コキュートスは強い。

 

「安心シロ。剣ヲ持ッテ立チ向カッテクル限リ、誰一人死ナスツモリハナイ。--背ヲ向ケタ場合ハ保証デキンガナ。」

「……では、その慢心ごと断ち切らせてもらうとしよう。--ハァッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「--まさか、留守番をしていたら私の森が焼かれるとは思いもしなかったよ。……マーレに頼んで1日がかりで作ってもらった森なんだがね。彼にどう詫びたらいいものか皆目見当もつかない。」

 

言葉とは裏腹に飄々とした口調で話しかけてくる巨大な魔人に、ニグンは腰を抜かすことしかできないでいた。

 

切り札は切った。後光を背負って現れた最上位天使を、しかしこの魔人は数発殴って消滅させた。そんな化け物に生身の人間であるニグンが勝てるはずがない。

 

身長2メートル半はあろうかというその魔人は、美しい銀色の体を持っていた。遠目で視認した時は鎧かと思ったが、そうではない。鎧のように硬質化した皮膚だ。

薄く大きな羽は、まだそこらに散る残り火の輝きを受けて、淡い赤に発光しているように見える。

サソリのように長い尻尾は意志を持って動き、それが人ひとりを容易く打ち殺すことができるほど強力な武器であることもわかった。

 

だが、そいつの頭の上に浮かぶ大きく歪な球体は理解できない。ニグンの頭で理解しようと思ってもどうしても思考が追いつかないのだ。

--森に火を掛けた陽光聖典の50人の部下たちと、その召喚下にある50体の天使たち。それらを集めて五体満足のままボール状に押し固めれば、こんな形になるんじゃないだろうかとは、人間であるニグンの頭では考えることができないことだった。

 

「……さて、このボールの記憶を探った所によると、君たちはスレイン法国とか言うところの特殊部隊、陽光聖典という名前なんだね。君が隊長のニグン君だね?」

「あっ、あぁそうだ!私がッ!私こそがニグン・グリッド・ルーインだ!なんでも話す!嘘はつかない!助けてくれッ!」

「そうか。やはりそうか。--なら、もうその体は必要ないな。記憶だけもらうよ。」

 

魔人は手を伸ばす。牙のように太く鋭い爪が煌めき、ニグンの視界に迫った。

 

「あッ!待て!待て待て待ってくれ!おっ、おまっ!おまおっ、お前は一体ッ!何者なんだぁぁッ!?」

「私か?私は……」

 

魔人は少し悩むそぶりを見せたが、すぐさま腑に落ちるものが見つかったように楽しげな声を上げた。

その言葉は目の前の哀れな人間ではなく、どこか遠いものを見つめるようにして宣言された言葉のようだった。

 

「……そうだな。オーベロンがいい。君の部隊に無残にも焼かれてしまった森の主人、妖精王のオーベロンだよ。」

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