これはゾンビですか?~いいえ、ただの?病弱です~   作:ハヤテ

13 / 22
人間、どんなに頑張ったって避けられないことはあるのです

 

 

「・・・ねえ、クリス」

 

「んー? なーにー?」

 

「今日、学校ですよね?」

 

「そうだね」

 

「・・・なんで僕達居酒屋に居るんでしょうね?」

 

「あ、安心して。くりすはちゃんと休み取ったし、朧は普通にサボり扱いだから」

 

「ちょっとまてやこら」

 

 

 

 恐らく今の会話だけでは内容理解が難しいと思われるので、説明しましょう。

 以下回想・・・

 

 

 

「あ、歩、おはようございます」

 

「ああ。・・・昨日の晩は酷い目にあった」

 

「ハハハ・・・流石に猛省してます」

 

「コンビニがあってよかったな」

 

「そうですね。・・・そういえば」

 

「どうした?」

 

「この前ケルさんが来ていたではありませんか。その後、どうなったのです?」

 

 僕はあの後すぐに寝てしまったので分からないんですよね。

 

「そうだな・・・どうやら、サクられているらしぞ」

 

「は? サクられ・・・は?」

 

「サクリファイスされたの略らしいんだが・・・知らないのか?」

 

「ああ、サクリファイスね。・・・連続殺人犯の仕業ですかね?」

 

「たぶんな」

 

「ふむ・・・サクリファイス・・・膨大な魔力・・・・・成程」

 

 ま、生きている人が考える事などその程度でしょう。

 

「おいおい、何か分かったのか?」

 

「確証がありませんが・・・ま、その連続殺人犯に出くわしたら一筋縄ではいかないと思っていて下さい」

 

「ああ、分かった」

 

「ん、それじゃあ、僕は一足先に学校に行っていますね」

 

「早くないか?」

 

「偶には良いでしょう」

 

 まあ、気まぐれみたいなものですね。

 

 ・・・この気まぐれが、後の悲劇を生みだすとは思いもよりませんでした。

 

 

 

 

 

「で、登校中にクリスに拉致されて今に至ります」

 

「何処向いて話してるの?」

 

「画面の方向いて話してるの。あ、おっちゃんさん、ネギま追加で」

 

「あいよ!」

 

「ねえ、今その発音に不穏なものを感じたんだけど?」

 

「気の所為」

 

 と、喋っている間にねぎまが出来上がりました。うむ、うましうまし。

 

「おっちゃんさん、相変わらず良い仕事しますね」

 

「まあな! それにしても鑢坊主、お前今日学校じゃねぇのか?」

 

「クリスに拉致られましたよ」

 

「ガッハッハ! やっぱりそうか! 俺もお前らの事4年ぐらい見てきたが、相変わらずだな!」

 

「それは褒めているので?」

 

「勿論だ!」

 

 ・・・元気なおっちゃんさんですね。

 

「ま、若いうちは色々経験しておきな。後になって出来なくなる事なんて山ほどあるからな」

 

 ・・・妙に説得力もありますし、言ってる事も正しいですね。

 

「学校サボるなんて学校に通ってる内にしかできないよねー。おっちゃん! 皮の塩追加ね! あと焼酎!」

 

「ガハハ、違いねぇ! そしてあいよ! 皮塩と焼酎追加!」

 

「・・・朝っぱらから酒飲むのもどうかと思うんですけどね?」

 

 

 

 

 

~歩~

 

朧が学校にいない。朧のクラスの奴らに聞いてみたところ、どうやら初めからいなかったらしい。サボりか? でも、あいつって変な所で真面目だからな。サボったりするような奴か? ・・・あ、そういえば担任の栗須もいないな。確か朧と栗須は知り合いだったような・・・。何か関係あるのか? まあ、何にせよ、一応連絡ぐらいは入れとくか。

 

 

 

 

 

~セラ~

 

皆さん、おはようございます。セラフィムです。歩は学校に行きましたし、現在はこの家には私も含め三人しかいません。

先ほど歩から連絡がありました。内容は、『朧が学校に居ないから何か連絡があれば教えてくれ』というものでした。・・・朧の身に何か起きたのでしょうか? いや、あの朧の事です。きっとどこかで呑気に過ごしているでしょう。

 

「ところでヘルサイズ殿」

 

私が名前を呼ぶとこっちをわずかに見る。

 

「この家の家計は誰が担当しているのでしょう?」

 

『朧がしている』

 

「そうですか。・・・お金は何処から出ているのですか?」

 

『朧の貯金』

 

 一般高校生の貯金で私達を賄えるものなのでしょうか・・・?

 

『朧は甲斐性はある』

 

「え?」

 

『朧は8歳の頃ぐらいからよく分からないバイトをしていた』

 

「8歳・・・? ちょっと待って下さい、そのぐらいの年齢の一般的な子供は、まだ親の庇護かにある筈ですが?」

 

『朧はそれに当てはまらない。朧は捨て子』

 

 すて・・・ご?

 

『出会ったのは朧が6歳の時。コンビニで出会って、そのまま同棲』

 

 掻い摘んで説明しているのはよく分かりますが、そのままの意味で取ると随分軽薄なものだと思ってしまいますね。

 

『バイトをし始めた切っ掛けは本人曰く、ただの暇つぶし、らしい』

 

「嘘、ですね?」

 

『朧はこういう嘘が下手』

 

 同棲していたという情報を鑑みるに、恐らく朧はヘルサイズ殿に気を使ったのでしょう。恩ばかり受けているから逆に返さねば、と。

 

『朧は不器用。本当は優しいのに、その優しさを表す為に色々工作している』

 

「私は朧と出会って日が浅いですが・・・確かに、そんな気がします」

 

 私と出会った時、朧は『殺す筈でしたが、面倒くさくなった』といって、逆に私を迎え入れてくれました。迎え入れるだけなら、そんな殺す云々言わなくても良い筈です。ただ一言、朧風に言うならば「別に来ても構いませんよ?」と言えば良いだけなのですから。

 ・・・そういえば、

 

「ヘルサイズ殿はご存知かもしれませんが、朧は私にこう言ってきました。『僕ごときを助ける為に、命を投げ出すなんて、バカげたことだと思いませんか?』と。この考えも、昔からなのですか?」

 

 私がそう言った瞬間、ヘルサイズ殿は僅かですが驚いたかのように目を見開きました。

 

『バカ』

 

 

 

 

 

~その頃のバカ~

 

「ちょ!? クリス! 飲み過ぎですよ!?」

 

「にゃははは! おっちゃん! 足りない! 全然アルコールが足りないよ!! もう樽さら持ってきて!!」

 

「クリィィィス!!」

 

「あいよ!」

 

「『あいよ!』じゃないですよ!! 良いんですか!? 大赤字ですよ!?」

 

「ガハハハ!! 問題ねぇよ!! 鑢坊主が『しっかり』払ってくれるんだろう?」

 

「・・・・・」

 

 怖っ!? なに今の圧力!? ヤバい、意地でも払わねば!!」

 

 

 

 

 

~歩~

 

学校が終わり、織戸と一緒に京子のお見舞いに行った。ついでに京豆腐ももらいに行く。大先生が食べたくてハルナに頼んだそうだが、ハルナは東京と京都を間違えたようだ。

 

「すまないな、わざわざ用意して貰って」

 

俺は代金を払おうと財布を出したが京子ちゃんがそれを止める。

 

「お金なんていいですよ! 私もこれ貰いましたし」

 

良い子や~。朧たちも見習って・・・いや、よく考えたら朧は毒舌だったが礼儀、気づかいとかはすごいよかったな。ユーも食事の時の礼儀作法はしっかりしているし、セラも然り。・・・見習ってほしいのはハルナだけだな。

 

「相川さん?」

 

「ああ、なんでもない。ありがとう、頂いておくよ。どうしても食べたいって人がいて」

 

「ええーっ、相川さんが食べるんじゃないんですかぁ?」

 

頬を膨らませ下を向く。可愛いな~。

 

「相川は京子を食べるつもりじゃないか」

 

「ええぇ!!?」

 

織戸がセクハラ発言をして、京子ちゃんはリンゴの様に紅くなった。

 そのあと、普通に会話を楽しんだが、ユーに早く帰れと言われたのを思いだし、「そろそろ帰る」といって病院を後にした。京子ちゃんは俺が見えなくなるまで手を振っていてくれていた。やっぱり、けなげでいい子だな。

 で、大先生に電話をして夜九時に墓場で待ち合わせすることを約束した。

 

 

 

 

 

そして、夜九時。大先生らしき人物を発見しさっそく京豆腐を渡そうとすると突然後ろから刺された。

 

「なん・・・・・で?」

 

何故だ。何故、俺を刺した? 俺は何かしたか?

 

「こんばんは、相川さん」

 

この声、まさか・・・。

 

「アリエル先生は来ませんよ。私がお仕事を頼みましたから。」

 

お前・・・か。

 

「残念でしたね♪」

 

俺を殺した犯人は――――

 

「あなたは何回殺せば死ぬのですか?」

 

お前だったのかよ!!京子!!

 

 

 

~一方その頃の朧~

 

「ヒャッハー!! 汚物は消毒だー!!」

 

「クリスゥゥゥ!! あなたは一体どこに向かおうとしているですかぁぁぁ!!」

 

「朧も飲めぇぇ!!」

 

「ちょ、ビール!? せめて焼酎に・・・みゃ!?」

 

「飲め飲めー!!」

 

「あぶぶぶぶ・・・!」

 

「ガッハッハ!! いいぞいいぞ! 若いうちに経験しておけ! 未成年飲酒なんて未成年の内でしか出来ないからな!!」

 

 ※この小説は未成年飲酒を推奨するものではありません。良い子は真似しないようお願いします。

 

 

 

 

 

~歩~

 

 ・・・あれ? おかしいな。大して衝撃はないな。あれか、朧には予め忠告を受けていたからか。ショックと言えばショックだが、そこまでではない。

 

「アユム!!」

 

「ハルナ・・・なるほど・・・だから相川さんには記憶操作が効かなかったのですか」

 

「うっさい黙れ!」

 

「んなっ! 相変わらず気にくわない・・・」

 

「で・・・アユム、こいつ誰?」

 

「俺を殺した魔装少女様だ」

 

「アユムの敵? ・・・・・だったらあたしの敵だな。」

 

いや、お前の敵って、お前魔装少女にもなれないだろ。そんな状態でまさか戦うつもりか?

 

「へえ・・・面白い。ミストルティンはどうしました? 素手で戦うつもりですか? 

思いあがるのもいい加減にしてください!」

 

っ、ハル―――

 

「やれやれ―――ヘルサイズ殿に言われて加勢に来てみれば」

 

秘剣『燕返し』!!?

ホント、この吸血忍者様はタイミングがいいな。

 

「敵は人間ですか?」

 

「心配するな。あれは人の皮を被ったバケモンだ」

 

「あれ? その目・・・・・私と同じじゃないですか」

 

は? 吸血忍者?

 

「セラ・・・」

 

「知りません。私とまた別に力を感じます」

 

「なんでだよ・・・」

 

え?ハルナはどうしたんだ?

 

「なんであいつ、メガロと同じ魔力持ってるんだよ」

 

どういうことだ? あいつは魔装少女で吸血忍者でしかもメガロなのか? 意味わからん。

 

「なあ・・・どうしても聞いておきたかったんだが、どうして人殺しなんかしたんだ?」

 

「相川さんだって殺して永遠の命が貰えると知ったら・・・殺すでしょう?」

 

「ふざけんな・・・。そんなもんほしくねえよ」

 

「それは嘘ですよ。だって相川さん、不死身じゃないですか・・・。どうすれば死んでくれるんでしょう? 消し炭はどうかなー?」

 

っ!? やばい!

 

・・・いつまで待っても衝撃が来ない。どういうことだ?

 

「やっと来てくれました。お待ちしてましたよ」

 

あ・・・? ユー?

 

「ユー!」

 

なんでユーがミストルティンを・・・?まさか変身する訳ないよな?

 

いや、まて。初めて会った時ハルナが言った事をよく思い出せ。魔力を根こそぎ奪えるのはあり得ないくらいの魔力が無いと出来ないと言っていた。俺はてっきりハルナの魔力は俺が奪ったのだと思っていた。だが、違う!! ハルナに魔力を奪ったのはユーだったんだ!!

 

「では・・・本気で行きますよ?」

 

京子が魔法を放ち、ユーはそれを片手で止める。

 

「なるほど。」

 

「ッ!!」

 

「その籠手には魔力を消す力があるのですか。凄い防具です。ですが・・・、ちょっと残念ですね」

 

ユーが弾き飛ばされる。

 

「扱う人間が弱すぎます。膨大な魔力ももったいない・・・」

 

「・・・っ」

 

もしかして、ユーは戦闘能力が低いのか?今まで俺に戦わせていたから自分が手を下すまでもないということかと思っていたが、どうやら違うようだ。そういえば、朧もユーにだけは指一本どころか、髪の毛すら触れさせないような戦い方をしていたな。まさか・・・そういう事か?

 

「ユー! 俺も一緒に・・・」

 

『逃げろ 邪魔』

 

そう、地面に書かれていた。

 逃げるわけないだろう。あいつは・・・俺が倒さなくちゃダメなんだ!!

 

『せめて動くな 絶対』

 

「ユー!!」

 

「待って下さい。あなたが行っても邪魔になるだけです」

 

「なんでだよ!」

 

「ヘルサイズ殿の言葉には強い力がある」

 

「その能力については聞いているさ!」

 

・・・ん? 待てよ。言葉を聞いたものが・・・?

 

「それって対象者を選べないのか?」

 

「その通りです。見てください」

 

!? 京子が・・・倒れている?

 

「ヘルサイズ殿は今・・・こう言葉にしているのです」

 

 

「死んで」

 

 

「あっ・・・」

 

その言葉一つで・・・人が死ぬのかよ・・・。

今だからこそわかった。何故、ユーがハルナの照れ隠しの「死ね」にあそこまで反応したのか。あの時の言葉はいろんな思いがこもっていたんだな。

 

その時、閃光が走った。

 

空中にはユーがいる。魔装少女の服も無くなっていることからやられたのか?

 

「ユー!?」

 

俺はユーを受け止めようと移動したが・・・

 

 

 

ユーが空中で消えた。

 

「なっ――――。」

 

ずさああああああああああああああああああああ!!

 

何か、高速で移動していた物体が地面を削って止まる音がした。

 

なんだ?なにが起こっている!?

 

「・・・ハァ。」

 

聞き慣れた、ため息が聞こえた。

 

「やれやれ、やっとこそ酔っ払いから一時的逃亡を遂げたというのに、来てみればまた厄介事・・・。しかも相手は魔装少女。ホント、今日は付いてないですねー。疫病神でも憑いているのでしょうか?」

 

「・・・まさか、あなたは」

 

「ああ、久しぶりですね」

 

「っ、まだ死ぬわけにはいかないのにまさかこんな所で・・・」

 

突然、風が吹いた砂煙が晴れた先に居たのは・・・

 

「ところで・・・」

 

そこには俺たちが毎日のように見ている着物を着た・・・

 

「ユーをボロボロにしたのはあなたですか?」

 

鑢朧。まさにその人がいた。

 

 

 

 

 

~朧~

 

 異変に気付いたのはクリスの何気ない一言でした。

 

「うみゅ? 何か魔力が・・・ま、いっか」

 

 この一言。クリスが言った事です、気の所為だなんて事はないでしょう。そう思い、この街をある程度調べていたところ、墓場にて戦闘をしているであろう魔力の乱れがありました。しかも、何か感じた事がある、というか、日々身近に感じている魔力です。

 

「あれっ、これ、ユーじゃね?」

 

 そう気付いたが最後、気になって仕方がない。という訳で、クリスに一言いって、素っ飛んで行った訳です。

急いで来てみたらなんと!! ユーが空中にふっ飛ばされていました。そもそもユー、なぜあなたが戦場にて戦っているんですか・・・。あなたの戦闘力は言っては悪いですが、底辺に近いですよ? その辺の弱小メガロにも負けますよ? それなのにこんな強い魔装少女と何故戦っているのか不思議でしょうがないです。・・・あ、でも、一回殺してましたね。まあ、一回ぐらいならユーなら余裕でしょうが・・・、あの魔装少女も無茶しますね。まさか、自分の耳を壊して声を聞こえなくするとは、恐れ入りますねぇ。

 

「あなたは・・・あの時の化け物じゃないですか。どうしてここに?」

 

「まったく・・・折角人が楽しく居酒屋で宴会やっていたのに、なんか暴れてるからわざわざ来てみてら、ユーはボロボロだし、僕もちょっと酔いが回ってきていますし・・・」

 

嗚呼、不幸です。

 

「よ、酔いですか・・・。なら好都合です。私もまだ死ぬわけには行きませんし、その人の魔力手に入れたいですから」

 

あー、ありきたりなユーの魔力目当てですか。

 

「あいつ・・・何で死んでないんだ!!」

 

そりゃあ、あれのせいでしょうね。生体の宝珠。

 

「残念でしたね。私は、あと十回ほど死ねますから」

 

 ああ? 10回? そりゃあ・・・相当な数殺してきてるな。まあ、分かっていたと言えば分かっていましたが。

 

「ハルナ・・・生体の宝珠は習ったでしょう? 相川さんに―――」

 

「その必要はありません。歩、生体の宝珠って言うのは死を無効にするアーティファクト・・・アイテムです。生きている者限定ですがね。無論、そんなアイテム、使うには膨大な魔力が必要なのですが・・・」

 

「成程、それでサクリファイスか」

 

「正解」

 

 まあ、それぐらい分かってもらわないと今後困りますよね。

 

「さて・・・歩」

 

「何だ?」

 

「僕はユーを看ています。歩は彼女と決着付けて下さい」

 

「朧は? 朧は何もしないのか?」

 

「歩、良くも悪くも、歩にとって始まりは彼女でしょう? なら、やはりケリは歩が付けるべきですよ。そうですね、終わったら、僕は一発殴るだけで済ませましょうか。本気で」

 

 ユーをボコったのならそれぐらい良いですよね?

 

「・・・分かった。俺に任せてくれ」

 

「頑張って下さいね」

 

 

「なぁ・・・アユム、この気持ち・・・・・何だと思う?」

 

「その根暗マンサーがやられたってだけで・・・無性にあいつをぶん殴りたい!」

 

「歩・・・新しい技を思いつきました。帰ったら・・・朧と一緒に名前を考えて貰えますか?」

 

うわー、なんか死亡フラグっぽい。僕の経験上、ああいう事言う人は100%死にます。僕が居ますので死なせませんけど。その死亡率は黒魔しかいないPTと同意です。逆にフラグを立てまくり、回避される時もありますけどね。

 というか、今見稽古を使って相手と歩たちを見比べているんで分かるんですが・・・・・勝てませんね。歩が魔装少女になれば話は別ですが、今のままだと絶対に勝てません。断言もできます。理由ですか? そうですね・・・。総じて、場数が違いますね。セラは大丈夫なのですが、歩とハルナがね。というか、全員動きが読まれてますね。ああ、駄目です歩。そこは蹴りではなく拳で行かないと。・・・やっぱり死角から攻撃されましたか。しかも、魔装少女の方は余裕ときています。って、全員で一斉攻撃!!? 何考えてるんですか!? その人は竜巻も操れるんですよ? まとめてふっ飛ばされてお終い・・・あー、吹き飛ばされました。

 んー、今の流れを見るに、セラと場数はどっこいでも、実力があの連続殺人犯の方が勝ってますね。これは・・・ああ、魔装少女と吸血忍者のスペック違いですか。うん、努力でも覆せないどうしようもない壁ですね。それに、あっちは吸血忍者の力まで持ってると来た。そりゃ、勝てませんよね。

 

「やっぱり、援護した方がいいですかねぇ・・・」

 

その時、着物の裾を掴まれた。

 

『駄目』

 

「ハァ・・・分かってますって、ああ言ってしまった手前、僕から手を出す事はあり得ませんよ。あっちが手を出して来ない限りは。それよりも、ユーは大丈夫ですか? 言霊使ったでしょう?」

 

『我慢できる痛み』

 

「我慢するくらいなら寝てください。」

 

ユーは少し考えた後、再び目を閉じました。

 

さて、話しているうちに戦況はだいぶ変わり、歩が押してる状況になっております。魔装少女になってますね。・・・そっちのが強いなら初めからそうすればいいじゃないですか。

 というか、怖いですね。切られようが竜巻で細切れにされようが相手に向かって前進していくのですから。あの魔装少女も成す術なしです。

あの連続殺人犯の間違いは、ゾンビ相手に時間を掛けてしまったことです。そんな、何回殺しても意味がないような生物相手に持久戦なんかあり得ませんから。

 

「倒れろ!跪け!消えろぉ!」

 

ほら、ゾンビ相手に持久戦なんかするから。・・・あれ?今、妙に大きい魔力を感じましたが、何でしょう? あの魔装少女のですか? うーん、でも一瞬でしたし、気のせいでしょうか? いや、しかし、何事も一瞬の感知が生死を分ける物ですし・・・。

 

「あんたは、強かった。今までで誰よりも強かった。おかしいくらいに強かった」

 

・・・魔装錬器を素手で握りつぶしましたか。ああ、ちなみに僕は一切、歩の能力を見取ってません。見取れるかどうかは知りませんけど。理由? そんなの、ゾンビになるのが嫌だからに決まってるじゃないですか。言い忘れてましたが、僕はホラー映画とかに出てくるゾンビが大っ嫌いです。見ると虫唾が走り、殺したくなってきます。学園○示録なんて最悪です。・・・作者は大好きなようですが(ぼそっ)。んん!それはともかく、歩からは何も見取ってません。

 

「そんな!魔装錬器を素手で・・・握りつぶすなんて・・・」

 

「すまない。実は俺もおかしいくらい強いんだ」

 

 歩がおかしいくらい強かったら僕やクリス、ネネさん、そしてアリエルや女王、悪魔男爵はどうなるんですか。気違いということになるんですか? 馬鹿言っちゃいけませんよ。その魔装少女だってそれらの人に比べたらカスですよ? 僕だって手を使わず、鋼糸だけで倒せる自信があります。まあ、前回は油断してミスって仕留め損ないましたけど。とりあえず、本当におかしいくらい強い人なんてヴァリエとかにたくさんいますよ。・・・まさか、ゾンビだからって最強とか思ってませんよね?

 僕はゾンビを殺す方法は持ち合わせていませんが、無力化する方法なら持ち合わせていたりするのですよ? 特注の鋼糸・・・というか、ぶっちゃけ曲弦糸ですけど。その糸での拘束、生き埋め、コンクリ詰め、首切ってどこかに永久保存したり。たぶんですが、クリスやネネさん、アリエル辺りも何らかの方法で無力化出来ると思われます。

 こう考えると、ゾンビってそこそこ強いのですがやっぱり中堅止まりですね。僕の知り合い含めても。というか、僕の知り合いもとい仕事仲間的な人達がおかしいんですけどね。

 

 代表してあげるなら受付さん。

 

「・・・ありがとう。お前に殺されたおかげで人生変わったよ」

 

人じゃありませんけどね。ゾンビですからね?

 

「だから、今度はお前の人生を変えてやる」

 

 おい、貴様はどこぞのエロゲの主人公か。なんだその口説き文句は。落としに掛かっているのですか? あ?

 しかもその台詞、人を殴り飛ばしながら言うセリフでもないですよね? ものすごく回転しているんですけど。

 

「ユー、朧」

 

「ヘルサイズ殿、朧」

 

「おーい、根暗マンサー。そして、色白さーん」

 

歩たちの呼びかけに、ユーはうっすらと目を開けます。

 

『終わったの?』

 

「ええ、歩がやってくれましたよ。」

 

「ハァ、危ない戦いでしたね。歩ももうちょっと近接戦闘を・・・・・ああん?」

 

 ・・・成程、やはり気の所為は気の所為で済ましてはならぬようです。

 

見れば歩は連続殺人犯に止めを刺そうとしていました。

 

「ちゃんと息の根を止めてやらんとな」

 

 歩は放っておいても死にはしないでしょう。死ななければ安い。死んでいなければ僕がどうとでも出来る。によって、この場合は・・・。

 

「セラ」

 

 今の僕の声は、とても無機質で冷たいものだと客観的に思いました。ああ、久しぶりに会う事になるので、イラついているんでしょうね。あー、くそ。胸糞悪ぃ。

 

「な、なんですか?」

 

「ユーとハルナを連れて早く逃げて下さい。歩はこちらでなんとかします」

 

「どういう事か詳しく―――」

 

「言ってる暇がないから端的に言っているのです。・・・きやがった」

 

 連続殺人犯にトドメを指そうとする歩の腕を掴む者。それは唐突に現れ、僕以外の誰もがその登場に反応できなかった。その人物は・・・。

 

「あなたがアユムさんですね? うちの生徒に何するんで―――」

 

「死ね」

 

 登場した人物に最後まで台詞を言わせることなく、僕はその首目掛けて短刀を振り抜いた。が、その短刀に肉を切り裂いた感触はなく、空を切った。

 

「・・・あなたは・・・もしかして」

 

「また仕留め損なった。どーしていつもあなた相手だと初撃は空振るんでしょうね」

 

「攻撃する時に声を出していれば嫌でも気付きますよぉ。・・・久しぶりですねぇ」

 

「ああ、そういう事ですか。いや、溢れ出る思い(殺意)が無意識のうちに声に出ていたようです。・・・ええ、久しぶりですね」

 

「「クソアマ(朧くん)」」

 

 出会いは4年前。とある事情でヴィリエに乗り込み、ドンパチやっている最中に出会ったのが始まりです。それから2度、ばったり出くわしたりして、その出会いがしらに殺そうとしているのですが・・・結果はご覧の通り。

 殺そうとしている理由は、また後ほど。語るべき時に語ります。

 

「女性に向かって“クソアマ”は無いんじゃないですかぁ?」

 

「は? 何言ってるんですか。女性だからこそ、ですよ」

 

 女性にしか言えないですしね。

 

「・・・変わりませんね、朧くん」

 

「知らん。どうでもいい。それよりも」

 

 右手に持つ短刀を前に出し、左手には苦無を取り出し、後ろに構える。

 

「殺しても良いですか?」

 

「まだ死ぬわけにはいきませんねぇ」

 

 その会話を皮切りに、僕は後ろ手に構えていた苦無を投躑し、それと同時に僕自身もアリエルの首を斬り裂こうと走る。

 先に投げた苦無は、アリエルの二刀の内、一刀で防がれ・・・っ!?

 

「っと!」

 

 防がれたと思ったのですが、剣先で苦無の取っ手を絡み取り、そのまま回転させて僕の方に投げ返してきました。それを僕は短刀で防ぐのですが、その所為で隙が出来ました。

 アリエルはその隙を見逃すことなく、刀を振り下ろしてきた。

 

「くっ・・・」

 

「朧くん、あなたの戦闘パターンはばっちり対策済みなんですよぉ?」

 

 ああ、成程。道理で迷いがない訳です。くそ、これだから科学者系の敵を相手にしたくないんです。喧嘩売っているのは僕の方ですけど。

 

「なら、これはどうですか?」

 

 アリエルの額の辺りに指を一本突き出し・・・

 

忍法【爪合わせ】

 

「っ!?」

 

 アリエルは後方に跳ぶ事でギリギリの所で回避したようですが、米神辺りを掠って行ったのか、少し血が滲んでいます。

 

「それは・・・?」

 

 両手をクロスさせ、両手の指4本の爪を40センチほどに伸ばす。

 

「見たことないですよね? 当然です、あなたの前では僕は短刀と苦無だけで戦っていましたから」

 

「・・・一回、朧くんの戦闘パターンを検証し直さなくてはなりませんね」

 

「しなくても良いですよ? だって・・・

 

 

あなたはここで殺しますから」

 

 

「・・・あらぁ」

 

「いやね? 戦闘パターンや分析を行っていたのはあなただけではないんですよ。少なくとも、僕は二度の戦闘であなたの事を『視て』いますからね」

 

「・・・つまりぃ?」

 

「準備期間は終わりです。今日は・・・マジで殺しにかかるので覚悟して下さい」

 

 伸ばした爪の硬度を今の会話の間で上げれるだけ上げ、一気にアリエルに向かって斬りかかる。

 

 キイィン!!

 

 振り降ろした爪はアリエルの刀で防がれました。

 

「力比べでは絶対に・・・」

 

「勝てない事は分かっています」

 

 僕とアリエルの単純な腕力の差はまさに天と地の差です。逆立ちしたって敵いはしませんし、アリエルの片手は恐らく僕の両手でも勝てないでしょう。

 ですが、それがどうしたって事ですよ。

 

「殺すのに、力比べは必要ですかね?」

 

 振り下ろした爪を鍔ぜり合わせることなく、逆に刀を利用してそのまま上にジャンプする。そして、アリエルの真上に来た辺りでもう一方の爪でアリエルの脳天を突き刺す。

 

「・・・!」

 

 しかし、突き出した手をそのまま掴まれ、僕はそのままアリエルに背中から地面に叩き付けられた。

 

「カハッ・・・」

 

 肺の中の空気が全て吐き出される。が、そんな事で止まっていられない。そもそも肺の中の空気が無くなった事はそこまで大事ではない。こちとら酸素ボンベなしの極限水中バトルした事もあるんですからね。あの時ほど酸素が美味しいと思った事はありませんね。

 

「シッ!」

 

 叩き付けられ、酸素が肺から全て吐き出されたが、なんとか息を吸うのを我慢し、アリエルに足払いを掛ける。

 まさか叩き付けた即座に足払いを掛けられるとは考えていなかったであろうアリエルは足払いを喰らい、倒れはしなかったがバランスを崩した。僕はその隙にアリエルと距離を取り、息を整える。

 

「ハァ・・・ハァ・・・ふう。全く、普通真上から攻撃されたら回避しませんかねぇ」

 

「そっちこそぉ、背中叩き付けられたら普通息を吸いますよねー」

 

「それですよ。あなたなら手を掴んだ時点で僕を殺せたはずです。何故殺さなかったので?」

 

「殺されたかったのですかぁ?」

 

「殺しに掛かっている以上、殺されても恨み事も文句も言いませんよ」

 

「そうですか。・・・少なくとも、私はあなたを殺す気はありませんよ」

 

 ・・・くそ、この人は何時もそうです。僕が今日の合わせて3度殺しにかかってもこの人は僕を殺す気はないと言う。・・・過去のあの話を聞く限り何故殺さないかは分かりますが、それでも納得いきませんね・・・。

 

「それでも、僕はあなたを殺す」

 

「・・・せめて、こちらの事情を聴く位はする気ありませんか?」

 

「・・・気が向いたら」

 

 そう言ったのと同時に僕は右手でアリエルに爪を突き刺そうとする。アリエルはそれを当たり前のように受け流すが、僕はそうなる事は分かっていたので、次は左手でアリエルを斬り裂きに掛かる。

 アリエルはそれを受け流したのとは逆の刀で受け止る。

 

「・・・埒が明かない」

 

 受け流された右手で再度斬り裂こうとしますが、それも防がれました。ならばと今度は手ではなく、跳び膝蹴りを入れようとしました。が、

 

「・・・楽しいダンスだった」

 

 その言葉と共に、僕の鳩尾が激しい熱を持った。

 

あー、これは、突き刺されてますね。いままで戦闘に集中していた頭が、急にクールになり、周りの声が聞こえてくる。というか、貫通していないのが疑問なんですが・・・ああ、成程、アリエル、あなたですか。

跳び膝で蹴りを入れる瞬間、アリエルは回避する準備は整っていました。が、あの言葉が聞こえた瞬間、回避を中断し、逆に僕を突き飛ばしてきました。自分の事も厭わずに、です。・・・くそ、殺さない理由も分かるし僕を助けようとする魂胆も分かる。ですが、僕はそれがどうしても認められない。いや、違いますね。これは・・・認めたくても意地で認めたくないというのが正しいでしょうか?

まあ、そんな僕の過去の葛藤は今は置いておきまして、僕は今鳩尾を刺された状態な訳です。アリエルが突き飛ばしてくれたお蔭で心臓にまで達してはいませんが・・・致命傷ですね。

 

「そんな・・・なんで・・・。」

 

ユーがに動揺している・・・?まさか・・・。

 

腹を刺した人物を確認する。例の魔装少女だった。が、違う。この人はさっきの人とは違います。鳩尾から突き刺されたものが引き抜かれる。アリエルが倒れてきたのでそれを支えます。・・・くそ、非常に徹しきれていませんね。ハァ・・・中途半端ですね。

まあ、いい。それよりも、今体から突き刺さった物が引き抜かれた事で分かった事があります。

 

 

――――僕、死にます。

 

 

 主な原因は失血でしょうか? 重要な血管を切られました。血が止まりません。口からもナイアガラの如く吹き出してくる。

 

「やあ、元気そうで何よりだ。そんなに怖い顔をしないでくれ、ユークリウッド。まだ何もするつもりはないんだから。」

「では、皆さん。また会いましょう。」

 

「・・・成程、どうやら私が間違っていたみたいですねぇ。私を騙すなんて許しませんよ!」

 

 間違うも何も、間違うまでに僕が攻撃したのでまだ間違っていないでしょうに。実際思っていた事はどうか知りませんけど。

 

「逃がしませんよぉ! 待ちなさい!」

 

 その言葉とは逆に、チラリと僕の方を見てくるアリエル。それに対して僕は手をヒラヒラさせてとりあえず行けと目で訴える。

 それが通じたのか、アリエルは紫色の霧に消えようとしている謎の人物を追いに行きました・

 

「・・・ふう」

 

 しっかし、死ぬ時は死ぬと割り切ってはいましたが、結構あっさりとした物ですね。死に場所が墓地というのも結構乙なものですし。

 

「ハァ・・・まあ、こんなもんですかね」

 

 悔いがあるとすれば、ユーの悩みを解決して上げれなかった事でしょうか・・・。まあ、その辺りは歩に任せるとしましょう。

 ・・・さて、眠りましょうか。

 

 

 

 

 

~ユー~

 

私は震えていた。まさか、この件に、あいつが関わっているなんて思いもよらなかった。

おもわず、歩に抱きついてしまったのは仕方がない。

 

「うまく歩けません。あなたは私の松葉杖になってもらいます」

 

といって、歩を松葉杖にするセラフィム。

 

「ユー、さっきのは何だったんだ?」

 

『あれは あの霧は 私が消滅させたはずの ゾンビの力』

 

ともかく、これでこの場はなんとかなった。早く家に帰ってお茶を・・・。

 

「おい、色白さん!どうしたんだよ!!」

 

不意にハルナが叫んだ。・・・そういえば、朧は?いつもなら終わってすぐにでも喋りかけてくるはずだ。「大丈夫ですか?」「怪我はないですか?」と。なのに、今日はそれがない。

嫌な予感が頭をよぎる。

 

 朧は彼とハルナが大先生と呼んでいた人物が消えた方をずっと見続けているように見えた。見えた、というのは、今は朧の後ろ姿しか見えないから、自然とそう思っただけ。

 しかし、その予測はすぐに外れる事になる。

 

 突然、朧が揺れたと思ったらそのままうつ伏せに倒れてしまった。慌てて駆け寄る。

 私が駆け寄った時には既にハルナが朧の元に居て、朧に声を掛けている。

 

「・・・色白さん!!なんでだよ!! 何で目を開けないんだよ!! なんで・・・、なんで・・・、息してないんだよ・・・・・!」

 

 ピクリとも動かない体、生気の無い目。

 

 それを見て私は全てを悟ってしまった。

 

 朧が、死んでしまったのだと。

 

 

 

 

 




伏線が乱立したのにも関わらず死んでしまった情けない主人公がいました。

今回はNGシーンなしです。まあ、この空気壊したくありませんし。ぶっちゃけ、NGシーンといっても作者がぱっと思いついて没にしたネタをそのまま書いているだけですから、思いつかなかったら何も書けませんけどね。

では、次回でまた会いましょう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。