これはゾンビですか?~いいえ、ただの?病弱です~ 作:ハヤテ
~ユー~
朧が・・・死んでしまった。
「そんな、まさか・・・」
セラも焦っている。
私は・・・どうすればいいか分からない。
いや、ひょっとすると、朧が演技しているのかもしれない。朧は偶に悪ノリする時があるから、今もそれかもしれない。試しに、少し揺すってみる。
反応なし。悪い冗談。
ちょっと強めに揺すってみる。反応なし。
朧・・・もう降参だよ。だから、目を開けてよ・・・。
・・・そうだ、息は止めていられても心臓は止められない。心臓は・・・・・鼓動がない。
「っ!!」
脈も・・・無い・・・。
「そんな・・・・・朧・・・」
「おい、まさか、冗談だろ。おい!朧!!」
歩が朧の背中をバンッ! と叩く。歩は自分がゾンビだと忘れているのか、体にあざが出来てしまうほどの強さで叩いた。
ゴポッ、と朧の口から血液が溢れた。
「おいおい、いくらなんでも、演技にしてはやりすぎじゃないか?」
・・・私は、失念していた。自然と強い人は刺された程度では死なないと思い込んでいた。歩はゾンビだから、刺されても何ともない。セラも痛いだろうが腹部を刺されたぐらいでは致命傷にならない。ハルナは・・・分からないけど、あのアリエルという人物は平気そうだったから大丈夫なのだろう。私も、たぶん、大丈夫。だけど、朧は違う。朧は人間。ここに居る誰よりも強くて全然かなわないけど・・・、
朧は人間なんだ
「あ・・・ああ・・・。」
認めたくない。認められるはずがない。でも、確かにその事実は今私の目の前にある。
朧は・・・死んだんだ・・・。
私は泣いていた。本当はこんなに激しく感情を動かしてはいけないのに、それでも泣いてしまう。いやだ、朧は死んでほしくない。
「ユー! 朧を生き返らす事は出来ないのか!?」
歩が私の肩を強く掴み、そう問いかけてくる。
『無理』
「なんで!!」
『歩の時は、歩が死ぬ寸前に言ったからなんとか出来た。でも、今の朧は』
死んでいる。死んでいては意味がない。さっきの魔装少女が自分の耳を潰して私の声を聞こえなくさせた様に。
「なら! 傷を治せば―――」
「歩、分からないのですか? この傷を治せば、今度はヘルサイズ殿がただでは済まないのですよ?」
「っ!!」
『そして、傷を治しても恐らく朧は生き返らない。死んだという事実は覆らない』
「・・・くそ!」
ダンッ! と拳を地面に打ち付ける歩。
セラは、腕を組んで目をつぶっている。冷静に見えるが、その口からは血が滲み出ている。歯で強く噛み過ぎたのだろう。
ハルナは、呆然としている。親しい人の死は始めてなのかもしれない。
そして、私は―――
『えー、朧どっか行っちゃったの? 仕方ないなー。じゃあ、代わりにあなたが持っててよ! ほら、これが朧だと思って大事に保管してて? もし、朧が死んだとかそういう重大な事になったらこれを迷わずに朧の心臓にブッ刺しちゃってね!!』
それは朧が私の元を去って1週間後の、 “通りすがりの死神さん”を自称した人の言葉。それを思い出していた。何故だかわからなが、不意にこの言葉が思い出されたのだ。
あの少女に貰った刃物(本人はこれも立派な刀だと言っていた)は、今もしっかり持っている。正直、あの少女を信用出来る要素は全くない。しかし、今はまさに藁にもすがる思いだ。言い方は悪いが、もう朧は死んでいるのだ。失敗して心臓に穴が開いても、問題ない。逆に生き返れば、これ以上嬉しい事は無い。駄目で元々、試さずにこのまま朧が死んだのを見ているくらいなら、死んだ朧の心臓に穴を開ける。
『助ける方法はある』
「本当か!?」
『だけど、確実とは言えない』
「確実じゃなくても、それで朧が生き返る可能性があるなら・・・!」
その言葉に頷き、懐から禍々しいオーラを漂わせた刃物を取りだした。
「それは?」
セラがこの歪な形の刃物を見て、そう聞いてきた。
『これを渡してきた人曰く―――
―――悪刀『鐚』』
これが、この刃物、いや、刀の名前らしい。
朧の制服を肌蹴させて、心臓のある部分を露出させれ。そして、『鐚』を振り被り、一気に朧の胸に―――
―――あてれなかった。
「・・・は?」
歩が間抜けた声を出す。セラも、しばらく茫然とした様子だったが、朧が消えた方へと目を向けた。私も、その様にする。
「朧! 大丈夫!?」
私達が見た方には、白のゴスロリを着た体格からして恐らく少女な人物が朧を抱きかかえていた。顔はよく見えない。
しかし、その発する声はかなり震えている。動揺・・・しているのだろうか? なら、彼女は朧の知り合いという事になる。
「そんな・・・・・朧・・・」
朧が死んでいる事に気が付いたのか、どこか気の抜けた声で朧の名を呟いた。
「・・・まだ。まだ間に合う」
そう言うと、その少女は朧を抱きかかえるようにして持つと、私達に背を向け、どこかに行こうとする。
「ま、待て!朧をどうする気だ!!」
「・・・なに? 別に関係ないでしょ」
「か、関係ない、だと・・・!」
その言葉に歩、セラ、ハルナ、そして私は怒りを覚えた。関係ない・・・? 関係はある。少なくとも、この人よりかはある筈だ
「まあ、関係はあるかもだけどさ、だから何? それが? 今の朧を助ける事が出来ないあなた達に朧を任せられると思う?」
「助けられる手段ならある!」
「それは確実なの? 少し見てたけど、そんな変な刃物突き立てただけで助かると思ってるの? どんな法則で?」
「そ、それは・・・」
分かる筈はない。これは何の説明を受けずに貰ったのも同然の物だ。どういう原理で人を生き返らすかなど、分かる筈もない。
「答えられないなら、くりすは行くよ。じゃあね」
「あ、待ちなさ―――」
セラが止めようと走るがすでに、自分の事を『くりす』と言っていた人物は居なくなっていた。
「・・・なんなんだよ。あいつは・・・。」
「とにかく! 早く朧を探さなくては!!」
「ああ、そうだな!」
その後、街中をくまなく探し回ったが、朧は見つからなかった。
~朧~
真っ暗です。今、僕は真っ暗な空間にいます。フレイと会うときは灰色っぽい空間に出るので、死んだのでしょうね。ホント真っ暗です。
「お先も真っ暗ですね・・・」
「ええ、ホントにそうですね」
・・・へ?
「どうしました? そんな間抜けな顔をして」
「えっと、あなたは?」
「わかりませんか? 鑢七実ですよ」
・・・は?どういうことでしょう? 鑢七実? あれは架空の人物、というかフィクションで西尾維○様の創作キャラクターの筈ですが・・・。
「あの時は本当にびっくりしました。七花に殺されて、やっと武人として死ねたと思ったらあの死神が現れていきなりこの体に放り込まれたのですから。フフフ、そうしたら今度はあなたがこの体に放り込まれ、この体の主導権を握ってしまったのだから尚驚きました」
・・・それは驚きですね。まさか、フレイがそんなことをしていたとは。
「僕に、主導権を奪われて不満ですか?」
「いいえ。もうすでに私は一度死んだ身。主人格でないといえ、意識があり、世界が見れるだけでも幸せです。そう思いませんか?」
「・・・そういうものですかね?」
「そういうもの。話を戻します。で、この体の中で私の魂と朧さん、あなたの魂が混ざり合い、あなたは私の力を手にしたというわけです。クスッ、良かったですね。いえ、悪いのかしら? 私の病気まで引き継いでしまったのだから」
あー、なるほど。そういうことですか。魂がごちゃ混ぜに、ね。
「理解しましたか?」
「はい、理解しました。で、七実さんはどうするんですか? 僕、死にかけてますよ?」
「というか、あなたは死にましたよ?」
「・・・そうでしたね。なんか、すみません。」
「いえ、主人格であるあなたが死のうが死ななかろうが、私はそれに従うしかありません。あと、今、あなたは死んでいますが、私は生きています。気絶しているけれど」
「僕が死んだのなら、七実さんも死ぬのでは?」
「いえ、死にません。あなたが死んだら私が主人格になります。一心同体ですが、そういうことが出来るようですね。あなたが生きている時でも入れ替わることは可能ですよ?」
「僕はずっと死んだままですか?」
「安心してください。傷の具合にもよりますが、私が代わりに出ている間、魂は修復していくので、死んだままではありませんよ。分かりやすく言えば、あなたが死んでも、私が生きていれば、あなたは何回でも復活出来るということです。逆もまた然り。」
「・・・僕って随分チートだったんですね。」
「チート? ああ、確か不正とかインチキという意味でしたか? 確かに、そうですね。敵になった人は朧と私を倒さなくてはいけないのですから、確かにずるいですね」
クスクス笑う七実さん。・・・正直、まさかご本人に会うとは夢にも思いませんでした。というかフレイ。あなた何やってるんですか。ほかの小説は普通に力を与えてるのに、あなたはほかの人の魂を混ぜて力を与えてるんですか? しかも、七実さん死んだはずの人なのにそれを強引に僕の魂と混ぜたということですか? ハァ、死者を弄んじゃあ駄目ですよ。唯一の救いは、七実さんがそこまで怒ってないということですね。
「で、七実さんはどうするんですか? 久しぶりの現実世界でしょう。何かしたい事とかあるのではないですか?」
「そうですね・・・、ああ、服を買いたいです」
「・・・はい?」
「今まであなたに散々呼びかけても一切反応が無かったのですが、一回自覚して貰えば、私も主人格なれますし、そうなれば、服などの支障がでますから、買っておかないと」
「・・・そうですね。僕も知ってしまった以上七実さんをずっとここに留めておくのも道徳的にも厳しいですし。でも、服なら着物ですし七実さんも着れますよ?」
「黒色か白色はありますか?私もあなたの行動を全部見ていた訳ではないので何色があるのかわかりません。・・・なければ、何色でもいいのですが」
「ありますよ。丈は・・・そういえば、身長は僕と同じくらいですか?」
「というか、体が同じなので」
「そうでしたね」
喋ってみると中々楽しいですね。相性がいいのでしょうか? いや、魂がごちゃ混ぜになっているのだから相性が悪い筈がないのかもしれません。
「では、私は戻ります。そろそろ意識を取り戻さないと、心配かけてしまうでしょう? それはあなたが望むところではないでしょう?」
「ええ、まあ・・・、そういえば、僕は今どこにいるのですか? あの墓場ですか?」
「いえ、ひまわり荘という場所で、治療を受けています。では」
そう言って、七実さんは消えました。たぶん意識を覚醒させたのでしょう。
というか、ひまわり荘? ひまわり荘って確か、ネネさんが住んでいるところですよね? 何故そこに居るのでしょう?
『朧!! よかった、気が付いた!』
『もう、心配かけちゃダメだよー?』
『すみません。気を抜いてブスリとやられてしまいました』
おお、うまい具合に僕の真似をしてますね。うんうん。やっぱり気遣いが出来る良い人―――
『ところで、あなた方は誰ですか?』
『『え?』』
・・・ちょっとぉぉ!?
「七実さん! 何やってるんですか!!?」
「何とは?」
「いやいや!! 分かるでしょう!? 何故僕の知り合いに向かって「あなた誰?」とかほざいているんですか!?」
『お、朧?一体どうしたの?頭でも打った?』
『朧君? ちょっと頭見せてくれる?』
そら見た事か! 完璧に頭打ち付けておかしくなったと思われていますよ!!
『いえ、私は大丈夫です。ご心配なく』
僕の話聞いていましたかねぇ!?
「oi misuおい、紀伊店のか」
「なんですかそれ。何語?」
『『私ぃ!!?』』
『ホ、ホントにどうしたの朧?なんか変だよ?』
『・・・これは、専門の所で見てもらう必要があるかな?』
「ああ、もう! いいです! 僕が出ます!!」
『え? 朧さん? あ、今出たら―――』
どうなろうと知った事か! これ以上状況が悪くなる事は無いでしょう!!
「ふう、あー、すみません。ちょっとおかしくなってました。もう、大丈・・・夫?」
あれ? くらくらします。治療した筈では?
『外部だけですよ。魂まで修復しきっていません。ハァ、だから言ったのに、もしかして朧さんはバカでしたか?』
「い、え・・・バカでは・・・」
無いです・・・。
「え!? 朧!? 朧ぉ!!」
「ちょ、朧君!?」
はい、また意識はシャットダウンです。
「ハァ、全く、まだ修復しきって無いのに、あんな無茶を・・・」
「いや、今回は仕方ないです。このままでは僕の頭がおかしくなったと思われてしまいますから」
「確かに、私の対応は失敗の部類に入るかもしれませんね。私は久しぶりの世界なので緊張していたようです」
「・・・あれで、緊張ですか?」
「ええ、緊張です」
「いや、緊張に見え」
「緊張です」
「・・・緊張に見」
「緊張です」
「・・・緊張していたんですね」
「はい」
・・・ユー、僕は生れてはじめて口論で負けました。ショック。
「では、時間もたくさんありますし、今後どのように生活するかを考えましょう。七実さんはどうしたいですか?」
「今まで通り、私が内であなたが外でいいですよ。」
「・・・・・え? いいんですか? せっかく僕が七実さんに気付いたんですよ? 外の世界で楽しみたいとかは無いんですか? あなたの生きていた時代とはだいぶ変わってますけど、それが逆に新鮮でいいと思いますけど」
「この体の主導権を握ったのは朧さん、あなたです。それに、私はもうすでに死んだ身。今更表舞台に出しゃばろうとは思いません。さっきのはちょっとしたおふざけです。朧さんの人生は朧さんが主人公です。そこに偶然、鑢七実が居たというだけです。私は、主人公の影が薄くなるようなことはしませんよ。昔もそうでした。七花は私を倒したことによって七花は前日本でも最強になれました。私はつまり、脇役体質なんです」
・・・アニメとかで見たときは怖いなー、残酷だなー、とか思ってましたが七実さんの評価を急上方修正しましょう。
この人、めっちゃ良い人やん!!
何この人、女神? 女神なんですか!? 自分の体でもある筈のこの体を、先に主導権を握ったのがそちらだからというだけで、譲ってくれるその器!! 感動しました!! 更に自分の事を脇役体質だと割り切り、誰かのサポートをするその心意気にも感動しました!!
個人的に言わせてもらうと、脇役体質ではないと思いますけどね。
「七実さん!!」
「は、はい? 何でしょう?」
「ありがとうございます!! お礼と言っては何ですが、一週間に一回、この体を七実さんのモノにしたいと思います!!」
「い、いえ、良いですよ。元々、私はここから見る外の風景が好きなんですからお気遣いなく」
「・・・でも、その場合僕の気が収まりませんが?」
「それなら、話し相手になって下さい。」
「話し相手、ですか?」
「はい。一人でいることには慣れてますが、話し相手がいるなら話すに越したことはありませんから」
「それで、良いのですか?」
「いいです。元々、あなたとは一回会ってさようならする予定だったので」
「そうなんですか?」
「はい、さっきも言ったように出しゃばる気はありませんでしたから。」
むぅ、納得はいきませんが、本人がそれで良いというのならそれでいいのでしょう。
「わかりました。では、そろそろ休みましょう。ここで寝れば修復も早くなるんですよね?」
「朧さんは聡明ですね。その通りです」
「では、お休みなさい」
そして僕は修復されるまでの間、眠り続けました。
やっと七実さんが出せました。なんかすっきりしましたよ、ええ。若干テンションも上がっています。
あ、七実さんが出てきたことによる注意事項ですが、僕の小説内での七実さんは完全なるキャラ崩壊を起こします。完膚なきまでに粉砕しますので、その点をご留意ください。
今回はNGではなく舞台裏みたいなもをやってみようと思います。決してNGに飽きたからではありませんよ?
一同「おつかれー」
朧「いやー、今回は大変でしたね」
歩「ああ、何気にお前が一番大変そうだったな」
ユー『数分間にも及ぶ息止めと、心臓停止。鬼畜の所業』
セラ「それをやらせる監督(作者)は外道ということですね」
朧「まったくですよ。しかも前の舞台(にじファン時代)の時はアリエルと戦う時に悪刀はちゃんとあったのですよ? それなのに今回はないってどういうことでしょうかね?」
アリエル「あ~、あれですかぁ? ちょっとスタッフさんが噂していたのを聞いたのですがぁ・・・」
一同「うんうん」
アリエル「うっかり第一話にでフレイさんに渡すように言うのを忘れていたからだそうですよぉ?」
一同「マジ!?」
※マジな話です。
朧「え、なんですかそれ! うっかりってレベルじゃないですよね!?」
セラ「ああ、だからフレイは第一話終わった後に少し違和感ありげな顔をしていたのですね!」
ユー『死刑』
歩「確かに、うっかりってレベルじゃないな。朧はキレても良いと思うぞ?」
朧「マジですか? ではちょっと言ってきます」
舞台裏というか作者のミスを暴露するような場になってしまいました。NGとコレ、どっちがいいですかね? どっちでも良いと思った方も、どちらかといえば、という方針でご意見よろしくおねがします。