これはゾンビですか?~いいえ、ただの?病弱です~ 作:ハヤテ
魂が修復したと同時に僕は目を覚ましました。
目を覚ました場所は、ネネさんの家ではなく、僕の・・・精神世界? まあ、その様な場所でした。
何故その様な場所、と漠然的に言うのかと言いますと・・・、
トゥーン!
「ああっ! ちょっと!? 何故そこでパッ○ンが出てくるんですか! そこは空気読んで下さい!!」
何故か精神世界に置いてあるテレビ。何故かセッティングしてある64。そして、何故かそれで某配管工が突然変異したとしか考えられないような亀に姫様が攫われるゲームを白熱プレイしている七実さん。
「クッ、この亀、亀のくせに矢鱈強いですね・・・。というかバグが多過ぎではないでしょうか、このゲーム」
僕が見ている事を知らないのか、グチグチと愚痴りながら亀を踏みつぶしていく作業を繰り返している七実さん。
しかし・・・このご時世にWi○ではなく6○をやるとは・・・何と言うか、妙にマニアックですね。しかもプレイはこなれていると言うレベルを超越して何か神がかっているのですが・・・どういう事でしょう?
愚痴っていながらも、あの亀を踏みつぶす行為はもはやさっきも言ったようにまさに作業。若者が携帯で誰かにメールを送るみたいな手軽さです。強いと言いながらも亀を踏み殺すのに30秒もかかっていません。末恐ろしい。
そして、バグが多すぎと言いつつもむしろそのバグを利用してステージをクリアしていくその姿はまさに圧巻。スティックを弾く音が妙に響きますね。高○名人かあなたは。
「ふう、こんなもんですね・・・。さて、次はメト○イドでも・・・ん?」
ジーと見つめていたのでその視線に気が付いたのでしょう。不意に七実さんがこちらに振り向き、固まった。
「「・・・・・」」
目があったまま動かない七実さんと、目を逸らしたら負けだと思っている僕は、お互い目を逸らさないで、ジーッと見つめ合っています。
こうして見つめ合っていると、本当に僕と似てますね、七実さん。いや、順番的に言うと僕が七実さんに似ているのでしょうか? 兎に角、シンクロ率95%ぐらいで似ていますね。強いていうならば、七実さんは若干緑っぽい黒髪だとしたら、僕のは混じりっ気なしの黒髪というところでしょうか。あとは・・・女性か男性かという差ですね。
「・・・あー、おはようございます?」
「おはようございます、朧さん。具合はいかがですか?」
ゲームプレイ中のどこか人として終わり始めていたような雰囲気は何処へやら。すっかりアニメのどこか余裕のある七実さんに戻っていました。
普通ならここで見なかった事にしてサクサクと話を進めていくのでしょう。僕もそれが最善の事だとしっかり理解しています。なので・・・
「七実さん、ゲームがお好きですか?」
あえて爆弾を投下してみました。
いやね? ぶっちゃけ気になりません? あのブラコンである意味弟第一みたいな七実さんがゲームをしているのですよ? そのゲームをどこから出したのかも当然気になりますが、何よりもまず僕はそこに突っ込みたい。
「・・・げぇむとは、何でしょう?」
この期に及んで惚ける七実さん。そこまで隠したい事ですか。ふむ・・・。
「で、ゲームが好きなのですか?」
まさかの七実さんの質問は無視して再度同じ事を繰り返します。いや、好奇心猫をも殺すとは言いますが、あえて言いましょう。僕は自分が持った好奇心になら殺されても良いと。気になった事を知る事が出来ないまま死ぬぐらいなら、知ってから死んでやりますよ、ええ。
「・・・何のことかさっぱり」
「まあ、確かにその時代のゲームは良作が多いですよね。昔懐かしゲームも盛りだくさんですし、今の人気ゲームの初代なんてやっていて胸熱でしょう。僕もF○1をプレイした時の感動は今でも忘れませんし、マク○スがファ○コンにあったという事実も驚き、プレイした時はそれはそれは興奮した物です。で、七実さんはどのゲームがお好きで?」
こういう聞きたい事がある場合は、まず自分の事から曝け出して、相手の警戒心を和らげます。主に、自分と同じという事を印象付ける為に。
あくまで僕の見解ですが、類友というのが何故あるのかと考えた時に、要は自分と同じ考えの人、趣味の合う人、話が出来る人、などと言った事を理由に集まっていくからではないでしょうか? 分かりやすく言うと、オタクの友達にオタクが、スポーツマンの友達にスポーツマンが多いみたいな感じですね。あくまで僕の考えですけどね。
「・・・ハァ、分かりました。白状しましょう」
「そうですか。で、何がお好きで?」
「そうですね。私は基本的にRPGが好きなので、F○やドラ○エ、更にテイ○ズなどもよくやるのですが・・・あえて言いましょう、私が良くプレイするゲームはアルナムです、と」
「何故そのチョイス!?」
マイナーってレベルでは無いですよね!? というか知っている人いるのか!? 確かにPCエンジンからプレステに移植していますからよっぽどのゲーム好きで尚且つその世代の人なら知っていると思いますが・・・現代っ子は知らないのでは? まあ、知っている僕が言うのもおかしな話ですが。
というかあれ、とんでもないクソゲーですよね? 何故好きなのでしょう? いや、確かあれは某工場の焼ミスとかなんかで致命的なバグは発生していたものの(嘘の可能性が極めて高いですが)、1997年に新しく続編が出ていましたね。もしや、そっちのアルナム?
「因みに私が好きなのは牙の方ですよ」
「よりにもよってゲテモノの方でしたか!」
「バグって面白くないですか? 爆笑物ですよ?」
確かに笑えるバグもありますけど! ポケ○ンとか! ですが! あれのバグってそんな生易しいものではないでしょう!? 閉じ込められたり、努力が水泡に帰したり、挙句の果てにラスボス居ないってどういうことだって話ですよ。
「バグが起きるか起きないか、そのハラハラ感がたまりません」
「窮地に興奮するタイプですか?」
「いえ、窮地に発情するタイプです」
「変態です!?」
そんな嫌ですよ。首刎ねられる寸前に発情してクネクネし始めるとか。気持ち悪いの度を通り越して形容しがたき嫌悪感が湧きでてきますよ。
「流石に冗談です。ですが、バグを楽しんでこその真のゲーマーでしょう?」
「自分の事をゲーマーと暴露するあたり開き直ってますね」
「・・・ぁ」
無意識かい。
というか、この人普通にゲーマーやらバグやら言っていますね。最初に会った時はチートの意味が分からなかったようですが、それは隠す為の演技でしょうか?
「でも、確かあれってフリーズをしますよね?」
「ええ、苦労して覚えた炎系の最強気法を敵味方が使ったらフリーズします」
要はドラ○エでメラゾーマ打ったらフリーズって事です。ものすごい理不尽。縛りプレイ好きな人が好きそうなバグですが・・・これはもはやMと言わざるを得ない。
ん? 待って下さい。という事は・・・
「七実さんって、実はMで・・・いやすみません何でもないです」
「Mですか?」と言おうとした瞬間、背筋に氷でもぶち込まれたような悪寒が走りました。七実さんの目は普段となんら変わりはありませんが、よく見るとその目の奥底に暗い光を宿しております。瞬間に覚りましたね、ああ、これはいけない。言ってはいけない、と。
「まあ、無い物として扱えば特に困りませんよ」
「そ、そうですか・・・」
ユー、七実さんに口論で負けたばかりではなく、遂には眼光にも負けましたよ。でも、仕方ないですよね? あの眼光は、もしビームになるならば日本列島が消滅してそうなぐらい強烈だったのですから。
マイナーなゲーム談義を終え、僕は七実さんの本題を切りだしました。
「で、どうやってゲームを出したのです」
「それは本題と違うでしょう」
おっと、つい興味の方に思考が移ってしまいました。
「では、改めて・・・此処からはどうやって抜け出すのです?」
そう言った瞬間、七実さんは思案顔になり、小首を傾げます。
「どうやっても何も、一回抜け出せていましたよね」
その疑問は尤もです。ですが、あの時と今とでは状況が違います。あの時、僕は自分のキャラを保つ事を第一に考え、というかむしろそれしか考えていませんでした。
キャラ崩壊。
よくアニメのギャグ回などでよくあるあれはご存知でしょうか。今まで積み重ねてきたその人の人物像をたった一つの行動もしくは言葉で跡形もなく崩壊してしまうあれです。
確かに、アニメや漫画、小説などでは面白いですし、そこに一種の萌え―――ギャップ萌え―――などを見出す人もいるでしょう。例を挙げてみるとクールで知的美人な人が取り乱すとか、まあ、そんな感じです。
上記した様なキャラ崩壊なら可愛らしい物です。僕も生温かい目で静観します。ですが、よく考えてみてください。僕のあの状況下でのキャラ崩壊という物を。
普段は大人しく、礼儀正しい。そんな彼は実は認知症で尚且つオカマだった!
嫌すぎるでしょう! 可愛らしくもなければただひたすらにイタイだけでしょう! ギャグ的にはありかもしれませんが、リアルにこんな人がいたらドン引きでしょうが!
そりゃあ、必死にもなりますよ。そんなレッテル貼られたらたまったものではありませんから。
つまり、先ほどはどうやってこの場を抜け出したのかというと。
「やけっぱちと火事場のなんとやらというやつですね」
「何故そこまでキャラを保つことに必死になるのか理解できません」
「既にかなぐり捨てた人が言うと一味違いますね、その言葉」
というか、登場した次からはもうキャラ崩壊ってどういう事なんでしょう?
「・・・朧さん、あなたにとって私はついさっき出会った存在なのでしょうけど、私には16年間ほどずっとここに居たんですよ? まあ、9年程を傷の修復に費やしてぐっすりと寝てましたが・・・5年もあればキャラを保つことの不毛さを悟りますよ。こんな何もない場所」
見渡してみると、確かに何もない。さっきあったテレビゲームまで無い。本当に真っ黒なところですね。これが僕の精神世界ですか。殺風景と言いますか、もう少し何かあっても良いんじゃないでしょうか? まあ、具体的に何があって欲しいとかの要望は思い浮かばないんですけど。
「・・・ん? 何もない? 七実さん、先ほどまであったゲームはいずこへ?」
「ああ、あれですか? アレは私が想像で作りだしたものですので、消すのも私の自由ですよ」
・・・作った? え、なにそれ怖い。
「ここはあなたの精神世界であるのと同時に、私の居場所でもありますからね。私が望めば割とどんな物でも作りだせますよ。こんな感じに」
と言って七実さんが手を翳したところに現れたのは・・・。
「コケ?」
ニワトリでした。いや何ゆえ。ニワトリである意味が分からない。そこはゲーム機で良いじゃありませんか。何故ニワトリを作ったし。
「主食が卵な物でして」
「ものすごく不健康な生活っすね!?」
「しかも生」
「よくそれで気が狂いませんでしたねあなた!!」
「山の幸が恋しくなってきた3年前ほど」
「むしろよく二年持ちましたね!?」
この七実さんツッコミどころが多い。あかん、このままじゃ僕のツッコミキャラが定着してまう。・・・くそ、似非関西弁になってしまった! 本格的に不味い!
というか、卵だけで生きて行けるのでしょうか? 栄養バランス的に無理があると思うんですけど・・・。
「唯の自己満足だから。それに、この場において栄養とかはあまり関係ないですよ。私、魂ですし」
ああ、そうですね。体があるから栄養とかに気を使いますけど、なければそんな物どうでもいいですからね。納得。
「にしても、火とかで焼けばよかったのでは? 焼いただけでも大分違いますよ」
あとは・・・調味料とかですかね? なんでも作れるのならそれぐらい可能では?
「・・・朧さん」
それを言った瞬間、七実さんは随分深刻そうな顔で話しかけてきました。何ぞ急に。
「炎とは、何処からともなく勝手に発生する物ですか?」
「は? ・・・まあ、何らかの外的要因があれば発生しますけど」
「それです!」
ビシッ! と指を突き付けてきた。イメージ的には逆転○判。しかし、突き付けられてられている指は丁度僕の額の辺りで静止しています。
「・・・なんですか?」
「気持ちが悪くなってくるでしょう?」
「そういうことか! 変な嫌がらせはやめい! ・・・で、何がそれです! なんですか?」
「ああ、要は、この場において私が作りだせるのは本当に物だけという事です。炎とか、水とか、風とかは作りだす装置がないと無理です」
ああ、成程。・・・ってちょっと待て。
「今の世の中、ガスコンロなる物があるんですけど?」
「構造を完璧に把握しないと作れませんよ。私の見稽古を持ってしても限界というのはあります」
見稽古・・・僕のその恩恵にあやかったりもしていますが、あれは物体の構造を把握できるようなものではなかったような気がします。精々使い方が分かる程度です。
「ああ、使い方が分かれば簡単なものならその構造を把握できます」
ああ、そういう事ですか。まあ、確かに簡単なものなら出来ますよね。・・・もう一度言います。ちょっと待て。
「じゃあ、あのテレビやゲームはどう説明するので?」
あんなの、いくらファミ○ンとはいえ、かなり複雑な構造ですし、テレビに至っては液晶でした。つまるところ、文明の最先端を行っているのですよ。とても七実さんには把握しきれないと思います。
「・・・・・」
「・・・・・」
目を瞑り、静かに佇む七実さん。おそらく、どういい返したものか考えているのでしょう。良いです、僕は待ちますよ。あなたの至高の回答が出るまで。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・ぁいです」
「はい?」
愛です? え? ゲーム愛でそこまで出来るものですか? 純粋にすごい。
「気合です」
「まさかの根性論!?」
愛と大差ない気もしますけど!!!
「話が脱線しましたね」
「そうですね。脱線どころかそのまま他の車と衝突事件を起こして国際的に問題になるレベルですね」
「そこまで!?」
国際的という時点でかなりの大事件ですね。その事故にはどれほどの国の重鎮がいたと言うのですか。総理か? 総理なのか?
「いえ、アメリカの大統領です」
「国際問題どころじゃないですよそれ!」
とんでもないですねそれ! 世界の経済とか色々傾きそうです!
「って、また脱線した!」
「私と朧さんの会話の様式美にしましょう。脱線」
「止めて下さい。小説的に話が進まないと言う致命的な欠点になり得ます」
まあ、僕としては人と話すのは結構好きなので構わないのですが。
「そんなの作者の都合でしょうに。私達が作者に合わせる必要があると言うの?」
「いや、僕達がそれを言ったら色々と終わりでしょうに。好き勝手やっちゃダメですよ」
「バッシングを受けるのは作者です。無問題」
この七実さん、随分自分勝手である。
「とかなんとか言ってる内にまた脱線しました」
「本当に様式美になってきましたね。信じられます? この余談話と脱線話で既に6000文字いってるんですよ?」
マジでか。小説的にやばいですね。
「という訳ですぐさま脱出法を教えて下さい。このままでは話が進まない上に、よく考えたらユー達がかなり心配している可能性があります」
流石に放置は頂けないと言うか、普通に人としてやってはいけない事でしょう。心配している人を放置。鬼畜というか人でなしです。
「確かにそうですね。では、教えて差し上げましょう」
上から目線なのが気になりますが、まあ、教えてくれるなら良いんですけど。
「ぶっちゃけ、気合です」
ここまで引き延ばしてまさかの気合!?
どうも、気合でなんとか脱出出来た朧です。世の中気合でなんとかなると言う台詞に妙に納得いってしまった今日この頃。
僕は理系人間ですからね。気合とか根性とかそういう非科学的な物はあんまり信じていないのですが、まあ、その考えも改める必要がありそうですね。
余談ですが、理系人間のくせに幽霊とかそういうのは信じていたりします。信じていると言うか居ますしね、現実に。
さて、現在僕はネネさんの家から相川家に向かっております。ネネさんの家を出る時に、クリスと一悶着あったりもしましたが、やはり心配させっぱなしというのはよくないので、クリスにはまた今度ちゃんとお礼すると言って、今日は帰らせて頂きました。
既に時刻は深夜一時。電車など動いていません。タクシーを使おうにも、ここは結構な田舎と言いますか、あまりタクシーが通りません。通ったとしても、誰かしら乗っている事が主ですし、現在僕は自らの足で帰っております。
屋根から屋根へと飛び移り、時たま電柱を使い方向転換します。【足軽】による体重操作で程良い体重にしていますので、そのスピードは世界最速の男をも超えているでしょう。無論、自分の足でしっかり停止も出来ます。うん、やはりこのぐらいのスピードがこの虚弱体質には丁度いいです。戦闘でも、僕の戦いに求められるのは速さではなく技術ですから、やはりこのぐらいで良いです。
家に着きました。正直、滅茶苦茶入り難いのですが、家に明かりが付いていない事から、誰もいないのでしょう。まだ、僕を探しているのかと思うと胸が痛みますが、とりあえず家に上がりましょう。
玄関のカギは開いていました。不用心だなと内心毒づきながら扉を開けると、月明かりに反射して何かが輝きました。その反射している物をよく見てみると、それはプレートアーマー、ユーが常に身につけているプレートアーマーでした。いや、それだけではありません。そこにはその持ち主であるユークリウッド、その人もいました。
「ユー・・・?」
ユーは玄関で横になって眠っていました。すっとここで待っていたのでしょうか? こんな時間まで、一歩も動かずに此処で?
「・・・なんで」
いや、考えるのは後です。こんなところで寝ていたら風邪を引いてしまいます。早くユーの寝どこに移動させなければ。
ユーは横に体を丸めて寝ていますので、おんぶという形には持っていけませんので、ユーには悪いですが、世間一般的に言う所の『お姫様抱っこ』をします。
(軽いですね・・・)
非力な僕でも軽々と持ち上げる事が出来ました。軽い、こんな少女が言葉もろくに話せず、感情も表に出せないような辛い運命を背負っているなど、誰が想像できようか。
ユーを抱っこしながら階段を上がっていきます。確かユーは寝る時にあの赤い鎌を抱き枕にしていましたが(なんて物騒な)、どうしましょう? 序でに言うと、ユーは寝事対策におしゃぶりを付けて寝ているのですが、それもどうしましょう?
「・・・?」
腕の中でユーが動くのを感じました。階段を登る時の振動で起こしてしまったのでしょうか?
「・・・ぁ」
下から微かに声が聞こえました。見てみると、ユーがその瞳を大きく見開き、固まっています。
「ユー・・・すみません、起こしてしまいましたか」
「朧!」
お姫様抱っこの状態からガバッと起きあがり、僕に抱き付いてきました。
階段を登っている時に、そんなことされたら当然階段から落ちてしまいます。が、ユーが抱き付いてきた瞬間僕は咄嗟に【足軽】を使い、ゆっくりと階段の下まで落ちました。うん、危機一髪。一瞬冷やりとしましたよ。
「ユー・・・?」
『死んでない?』
抱き付いている状態で顔だけを上げ、メモを見せてきました。
「死んでません。死んでたら、こうして会う事は出来ないでしょう?」
『本当に?』
む、何故そんなに疑っているのでしょう。
「嘘つく理由がありますか?」
『心配した』
「・・・すみません」
『とても心配した』
更に言葉を重ねてそう言ってくる。何故か、自覚はしているというのにその言葉に胸がチクリとしました。
『私の前からいなくなるのかと思った。また、いなくなってしまうのかと思った』
「それは・・・」
思い出すのはユーと別れた日の事。
あの日僕は、唐突にユーに別れを告げた。理由は「これ以上僕と一緒に居るとユーが危ないから」でしたっけ。全く・・・とんだ偽善ですね。
あの時の僕は、ユーが傷つくからと、ユーが危ないからと自らユーの元を離れていきました。ですが、それは違う。あれは、ただ僕が逃げただけです。
ただ、ユーを失うのが怖かったから。何も無かった僕に出来た唯一のモノを無くすのが怖かったから。そして何より、自分の所為でユーをしなせてしまうかもしれないという事が怖かったから。
だから、そうなる前に僕は逃げたのです。
僕がいなければ、ユーに危害は加わらない。と、僕はユーに身体的な危害が加えられない様にする事だけを考えていました。しかし、精神的な事は何も考えていなかったのです。
「・・・すみません」
その結果は、この通り。ユーには一種のトラウマとまでは行きませんが、それに近い物を植えつけてしまった。
『もう、勝手にいなくならないで』
何故それに気が付いたのか。単純なことです。ユーは喋らない事と、感情を表に出さないという事に関しては超エキスパートです。何があっても絶対に喋らない様にしていますし、不意打ちをしても喋りません。感情の起伏で言うと微妙ですが・・・まあ、そんなユーが帰ってきた僕を見て、僕の名前を叫びながら抱き付いてきたのですよ? ユーにとって喋るというのは禁忌にも等しいというのに。
つまり、一種の依存でしょう。僕がこの世からいなくなったり、あるいは行方不明になる事に恐怖を抱いているのです。
まったく・・・どうして僕に依存なんてしてしまったのでしょうね。僕なんて、いつ死ぬかも分からないのに。
ですが、
「・・・ええ、出来る限り、ユーの前から勝手にいなくなる事はしないようにします」
ユーが僕に依存してしまっているのなら、僕は出来る限りユーを不安にさせないようにしましょう。僕の持論では、依存というのは決して悪い事ではないという事です。人間は、必ず何かに依存して生きていますからね。それがユーの場合僕と言うだけの事。それにユーの場合、僕に依存はしていますが、自主性はありますから、別段問題があるという訳でもありません。
と、その時、玄関のドアが空く音が聞こえました。
「ユー、朧は・・・って、朧!? 無事だったのか!」
玄関を開けて入ってきたのは歩でした。その後ろからセラ、ハルナさんと、相川家の住人が勢揃いしたようです。
『ほう、これが朧さんの同居人ですか』
『今まで黙ってると思ったら急に喋り始めましたね』
『空気読みました』
さいですか。
「はい、おかげさまで。心配を掛けて申し訳ありません」
「まったくだ」
と言いつつも、ホッと安心したかのような表情をしている歩。
「ところで、何処に居たのですか?」
ヒョイッと玄関で止まっている歩をかわしてそう僕に訪ねてきたのはセラです。ということは、セラも探してくれたのでしょうか?
「邪魔!」
そんな歩を見事なドロップキックで蹴飛ばしたのはハルナさん。つまり、ハルナさんも探してくれたのでしょうか? ちょっと感動です。
因みに、先ほどのハルナさんのドロップキックから推測したのですが、どうやらセラが歩をかわして入ってきたのは、歩をかわした訳ではなく、ハルナさんをかわしたようですね。歩に教えもせず淡々と僕に質問してくるとはやりますね。
「えっと、そうですね。友人の友人の家にいました」
「友人? ・・・となると、あの突然現れて朧を拉致同然の形で持って行った白いゴスロリ少女は朧の友人という事になりますか?」
クリスはそんな風に僕をネネさんの家に運んだのですか。もっと、事を穏便に運ぼうとか、そう言った思考は出来ないのですかね? 出来ないのでしょうね、魔装少女ですし。魔装少女の思考って何か悪役っぽいですしね。誕生日を最悪の日にするとか、パーティーでは物を破壊するとか、完璧に悪役ではありませんか。
『悪役というか、ラスボス? 破壊と絶望を司る○○、みたいな?』
『サラッと心読みましたね。ラスボス云々には同意しますけど』
『ああ、私と朧さんの魂は融合していますからね。頑張ればそれぐらいは出来ます』
『ふむ、つまり僕でも出来るという事ですか?』
『いいえ?』
『一方的にプライベートが赤裸々じゃないですか!?』
僕のプライベートに嘗て無い激震が走りました。
「まあ、友人というジャンルは超越しますけどね」
「「「!!!」」」
む、何やら今度は三人方に激震が走った御様子。僕はそんなに変な事を言いましたかね?
『つまり、彼女?』
「え?」
『ロリコン』
へ? 彼女? え? 待て、待て待て待て。なんで友人を超越したその先が彼女になるのですか!? 世界ふ○ぎ発見!もびっくりな発見ですよ!?
「ち、違いますよ! 彼女とかではありませんよ! ただ、3・4年前から知り合ってそこから居酒屋で一緒に喋ったり映画見に行ったりショッピングしたり、居酒屋行ったりしているだけの仲ですって!」
「朧、そういうのを世間一般的に彼女って言うんだぞ?」
「なっ!? 親しい人と一緒に行動する事の何がいけないのですか!?」
「ふむ、つまり朧はロリコンと(確かに、ヘルサイズ殿も種別的にはそうなりますね)」
「色白さん、へんたーい」
え、ちょ、なぜこんな話の流れになっているのですか!? さっきまでシリアスしていたのに何でこんな風に・・・ていうか、
「僕は変態ではありません!」
『ロリコンは黙れ』
ものすごい辛辣!?
『まあ、女の人と友人を超越した関係と言えばそんなものでしょうね』
『それを早く言って下さい!』
『鈍い朧さんが悪い。考えもせずそんな事を言った朧さんが悪い。大体、口を挟めるシーンなど無かった。よって私は悪くない。完 全 論 破!(ドヤァ)』
うざ!? 嘗て無いほどうざ!?
「・・・ハハハッ!」
「あ? どうかしましたか歩。僕がこんなにも誤解を解こうと苦しんでいるのにもかかわらずあなたはその姿を見て爆笑ですか? ん? 一回心臓を抉りだされてみます?」
「グロい事を言うな! いや、別に朧がおかしくて笑った訳じゃない」
「ほう? 続けて」
「ただな、昔の俺ならこんな事絶対にありえなかったなと思ってさ。5人で楽しく喋るとか・・・さ」
「あっそ」
「・・・まさかこの話の流れで流すとは思わなかったぞ」
「流れだけに?」
「うまくねぇよ!」
まあ、確かに昔の歩にとってみれば、そうなのかもしれませんね。他人との関係に無関心と言いますか、孤独を愛していましたからね。そんな歩がこうして5人で談笑をしているなど、考えもつかなかったでしょう。
「・・・ま、それは僕もですがね」
「ん? 何か言ったか?」
「いえ、何も」
『それよりも、白黒はっきり付ける。彼女なの? 違うの?』
「だ・か・ら! 違うって言ってるじゃありませんか!」
とりあえず、今はこの日常を楽しむとしましょうか。物騒な事に巻き込まれつつある僕たちの、このささやかな日常を。
舞台裏
全員「おつかれ~!」
朧「今回の台本はなんかチグハグですね」
ユー『作者がテスト開けでどう話の流れを持って行くか忘れたらしい』
ハルナ「駄目駄目じゃん」
セラ「だらしがないですね」
朧「まあ、それが作者ですからね。この人、小説は少し流れを考えただけで後はノリと流れで書いてますから」
七実「ですから、私やフレイさんの様な勝手に動いてくれるキャラはとてもありがたいと言っていました」
フレイ「ホントだらしないね!」
セラ「というか、この話の流れって変わってますよね? 前の舞台(にじファン)では、確かクリスと一緒にGI☆N☆ZAに行ってますよね?」
クリス「そうだよー! なんだってこの舞台(ハーメルン)ではそのシーンがないのさ! くりすと朧との貴重なツーショットだよ!?」
ユー『その分、この舞台では矢鱈あなた達のツーショットはある。私よりも多い』
朧「まあ、作者が前の舞台とは違うものを! と色々やってますからね。今回の話以降、完全に一から書き直すそうです」
歩「マジか? それなら更新は遅くなるな?」
朧「ええ・・・ん? スタッフさん? え? 手紙? どれ・・・・・」
セラ「どうかしました?」
朧「ちょっと作者締めてくる」
フレイ「んー? 『三國無双のオンラインと燐光レムリアが面白い』・・・なにこれ?」
セラ「要するに、執筆する時間が削られるという事ですか。・・・本当にだらしがない」
ユー『駄目駄目』
クリス「あ、くりすも作者絞ってくるよ」
フレイ「あ、ちょっと此処でアンケートね。期限は今日から二週間後の11月5日深夜3時までね。じゃ、アンケの内容だけど、ぶっちゃけヒロインの話ね。いやー、作者がさ、前の作品と違うものをってことで、その辺から変えてこうとしてるんだよね。まあ、個人的にはどっちでもいいんだけど。スタッフー! アンケのカンぺ持ってきてー! ん、ありがと! じゃ、読んでいくよ」
1、 前と一緒で良いんじゃない?(つまりハーレム)
2、 ユールートでしょjk
3、 いやいや、ここはセラでしょ
4、 クリスじゃね?
5、 此処は変化球でフレイじゃない?
フレイ「チョイ待ち! なんで私まで選択肢に入ってるの!? え? 何? 別に良いじゃないって? ・・・まあ、そういう指向ならしょうがないね。
さて、七実ちゃんが選択肢にない理由だけど、まあ、今は言えないかな? 察してくれーと作者は言ってたね。というわけで、察して上げてくれままえよ! んじゃ、シーユーアゲインハバナイスデーイ!」