これはゾンビですか?~いいえ、ただの?病弱です~   作:ハヤテ

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遅くなって大変申し訳ございません。色々自分自身思うことがあり、この小説を書くのを中断しておりますた。が、やっとこさ方向性を見つけ出しこうして投降した所存であります。
……まあ、需要があるかわかりませんが、楽しんでいただければ幸いです。


思わぬ魔改造に僕が泣き七実が笑った

 

 

 

 皆さんお久しぶりです、朧です。

 さて、なんだかビルに入るだけでエライ時間を喰った様な気がしますが、僕はそんな事は気にしません。前回に続き、ビルの入口に入ります。

 

『ちょっと待ちなさい』

 

『なんですか七実』

 

『何故マンホールの蓋を開けているのですか?』

 

『そこにマンホールの蓋があるからですけど』

 

『じゃあ何ですか。あなたはマンホールの蓋を見つけるたび片っ端に開けていくのですか?』

 

『んな訳ないでしょう。馬鹿なんですか七実』

 

 ファンが泣きますよ。あの知的な七実が実は馬鹿だったという事実は中々に衝撃的です。

 

『……じゃあ、教えてもらいましょうか? 何故、マンホールの蓋を開けたのですか?』

 

『ここが会社の……いえ、こう言った方がいいですね。ここが会長室に繋がる入口ですよ』

 

 若干どころか、かなり周りの人の目が痛いですが、まあ、元々和服なんてこのご時世には滅多に着ることの無い服装が常である僕からしてみれば、そよ風の様なものです。

 

『会長室の入口が此処って不潔ですね』

 

『確かにそうですが、案外面白いものですよ?』

 

『はい?』

 

『んじゃ、行きまーす』

 

『え、ちょっと、ま、キャァァアアアアアアアアアアア!!!?』

 

 

 

 

 

『随分可愛らしい声が出ましたね』

 

『後で覚えていなさい。虚刀流を喰らわしてあげます』

 

 やめなさい。

 マンホールを潜った僕は、そこからくり広がる世界最恐のジェットコースターも生温い速度でグワングワンと曲がりくねる道。途中で感じる浮遊感も良い感じのスパイスとなり、体験者を飽きさせません。まあ、ちょっとスパイスが効きすぎて七実さんが違う意味でキャラ崩壊しましたけどね。何ですか、『キャァァアアアアアアアア!?』って。似合わないにも程があるでしょうに。

 

『後であなたの関節を全て外します』

 

 やめなさい。

 で、そんな楽しい楽しいアトラクションから抜けた先にあるのは、真っ直ぐ一本の道です。

 

『この先が会長室です』

 

『普通こういうのって屋上にあるものではないのですか?』

 

『何言ってるんですか。あのビルは飾りで、本業は全部地下に広がっているんですよ? ここは地下の最下層です』

 

 あのマンホールはこの最下層への直通ルートなんですよね。知ってる人も僕を含め片手で数えられる程度しかいません。

 あ、そういえば。

 

『実は、ここから先が最も危なくてですね』

 

『何故ですか? たかが一本道でしょう?』

 

 そう言うのも無理はありませんが、まあ、実際に見てもらった方が早いでしょう。

 

『例えばですね、こう苦無を投げます』

 

 僕の手から放たれた苦無は一本道を真っ直ぐと進み、そして、

 

―――バババババン!!!

 

『……と、この様に素晴らしい防衛設備です』

 

『アレは何ですか?』

 

『僕が前いた時は自動で機関銃を発射する様な感じでしたが今回は自動でショットガンが連射されるようですねこの狭い一本道であんなもの喰らったら一瞬で蜂の巣どころか一瞬で肉塊になってしまいますよアハハハハハハアババババババ!』

 

『朧、落ち着いて下さい。ここにはその会長とやらの関係者がくるのでしょう? なら、どこかに必ず抜け道がある筈です』

 

『ないですよ』

 

『え』

 

『会長に話しがある人は全員電話です。そして、会長に直接会う人は、この程度の障害をものともせずに突破できる人達だけです』

 

 つまり、この程度の障害も突破できないようなら会長に会う価値すらないということなんですよね。ショットガン連射のセキュリティがこの程度かどうかは知りませんけど。というか、今回はガチで不味いですね、どうしろってんですかこんなの。

 

『人間の限界を超えた速度で走ってみましょう』

 

『悪刀があれば考えましたね、それ』

 

『世の中には段ボールという最強の鎧があってですね……』

 

『七実、あなたひょっとして僕に死んでほしいんですか?』

 

『いえ、そんな事は』

 

 段ボールってなんですか。そんなのでショットガン防げるなら今頃全世界段ボール祭りですよ。軍の兵隊さんはみんな段ボール装備しています。なにそれシュール。

 

『アマ○ンの段ボールがバカ売れですね』

 

『クロ○コヤマトでも良いでしょうが』

 

『いっその事ヤマゾンで』

 

『どこの裁判長ですか』

 

 っと、そんな馬鹿な話をしている場合じゃありませんでした。なんとか攻略法を考えないといけませんね。さっきの苦無の撃ち抜かれ方からして、おそらく射線に入ったら発射されますね。その場合、その射線に入らなければ良いだけの話ですが、入ってしまった場合が大変ですね。苦無にも反応したという事は、当然銃弾にも反応するでしょうし、発射されるのはショットガンですからね。一回の発射でそのまま何丁もの銃が誘発されることになります。

 

『ここまで考えましたが、何か質問は?』

 

『はい先生』

 

『なんですか七実くん』

 

『詰んでません?』

 

『さすが七実くん。君は実に優秀ですね。そうです、詰んでます』

 

 銃弾の雨を避けつつお嬢の部屋に行くのは無理です。【足軽】を使ってもたぶん何発かもらいますね。

 

『ならいっその事突っ込んでみましょう』

 

『ゑ?』

 

『いや、だからそのまま真っ直ぐ行ってみましょう、と言ったのです』

 

『七実、あなたは馬鹿なんですか? 馬鹿なんですね? そんなことしたら蜂の巣どころか肉片になりますよ?』

 

『ある人は言いました。人間賛歌は勇気の賛歌、人間の素晴らしさは勇気の素晴らしさと』

 

『蛮勇って言葉知ってますか?』

 

『蛮勇か勇気か。それは結果で変わるものです。さあ、進みなさい』

 

『いやです!』

 

 大体何なんですか、急に進めって。さっきまではその様な事言わなかったのに。

 

『私の勘ですが、ここの会長とやらは悪戯や人を驚かす事が好きですね?』

 

『はい? ……まあ、確かにそうですけど。……って、まさか』

 

『さっきの苦無は人為的なもので、本当は何も仕掛けられていないのではないかと思いました』

 

 え、いやいや、そんな筈は。

 確かめる為に、さっき苦無が砕け散った辺りにまで歩みを進めましたが、なにも起こりませんでした。そこら辺を適当にウロウロしても、ショットガンどころか輪ゴム鉄砲すらとんできません。

 

『あれだけ悩んだ結果がコレですか…………プフッ』

 

 ブチッ

 

「お嬢ぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」

 

 おそらく、人生で一番の速度で走れたと思います。

 

「だらっしゃぁぁぁあああ!!!!」

 

 会長室の目の前まで行くと、僕はその扉を思いっきり蹴破って中にダイナミック入室を果たしました。

 

「むぉう!? なんだなんだ何事だ!?」

 

「お嬢! 貴女と言う人は何年経っても変わらないですね!? そんなに人をおちょくって楽しいですか!! そんな性格、この! 僕が!! 修正してやる!!!」

 

「お前鑢くんかね? いやぁ久しぶりだな? 最近音沙汰無かったから死んだとばかり思っていたぞ」

 

「生きてます。そして死ぬ時は貴女の性格を修正してからです!」

 

「ふむその前に私のとてもたぁいせつな酒をパクったお前を粛正する事から始めようと思うのだがどうだ? いや答えは聞いていないコレは確定事項なのだからな!」

 

 その瞬間、会長室の壁から機械的なSYOKUSYUが現れ、お嬢にばかり気を取られていた僕はあっさりと捕まってしまいました。

 

「なっ!? この部屋また改造したのですか!?」

 

「二年ほど前にな。安心しろこれは対鑢朧専用粛清SYOKUSYUだからな」

 

「……何をする気です?」

 

「単純なことだ。お前の体をこれでくすぐる」

 

 と言って出てきたのはねこじゃらし。

 

「今日がお前の命日だよ鑢朧。あの仮面に伝言は伝えられただろう?」

 

 怪しくねこじゃらしを左右に振りながらこちらににじり寄ってくる。その顔は嗜虐心に満ちており、本人が満足するまで止めないだろうということが窺える。

 

「確か首が弱かったな?」

 

「ひっ……」

 

 そわぉっとねこじゃらしの先端を触れるか触れないかの絶妙な距離で撫でられる。首が弱いとか関係なく、こんな事されたら普通声が出てしまうでしょうに。

 

「や、やめ―――」

 

「だが断る」

 

 その後、僕は首だけと言わず、体の隅から隅までねこじゃらしで弄りまわされました。

 

 

 

 

 

「くっ……! ふうっ……!」

 

『朧がとてもエロティックな事になりました(チャンチャン)』

 

 う、五月蠅いですよ七実……。

 

「ふう満足だぞ鑢くん。で、私に何か用があって此処に来たのだろう? まあ君がマンホールの蓋を開けるシーンからばっちり全て見ていたから全て知っているんだがね」

 

「なら……早く……下さい……」

 

 くそ、笑い過ぎて碌に声が出ない。肺と腹筋がやられました。

 

「渡すのは構わんのだが少し問題があってな」

 

「問題……?」

 

「うむまあぶっちゃけ改造してしまったのだよ」

 

「……はあ!?」

 

「いや改造というか改変だなむしろ」

 

 尚の事悪いわ! というか、普通勝手に人の物を改造とかしますかね!?

 

「少しばかり興味の湧く事件があってね。丁度いい素材が無かったから長年君に使われて血と怨念をたっぷりと吸った君の『武器』を使わせてもらった。反省も後悔もしていない」

 

「後悔しなくても良いのでせめて反省して下さい。ですが、一応使えるのでしょう? なんやかんやであれが一番手に馴染んで使いやすいんですよ」

 

 ここに忘れて置いて行ってしまったのは僕は今世紀最大の失態です。

 

『どのような武器ですか?』

 

『鎌です。ほら、あれって力はいらないでしょう? 遠心力とそれをうまく操る技量があれば良いのですから』

 

『知りませんよ。見たことありませんから』

 

 あれ、そうでしたっけ。『刀語』の世界に鎌とか……あー、ありませんでしたねそういえば。あそこはなんやかんやで刀が主でしたもんね。それ以外と言えば……鞭とか銃ぐらいですかね? あ、レイピアがあったわ。

 

「使えることには使えるぞ。ただぁし! 私というか四月朔日グループの糞マッド共がふんだんに君の鎌に霊をブチ込んでしまったお蔭で使い手を極端に選ぶ武器になってしまったがね」

 

「具体的には?」

 

「霊をブチ込んだと言ったがどれもかれも悪霊というレベルを超越したじゃじゃ馬でね。例えるなら貞○を5、6倍強力にした奴だな。それを大量にブチ込んだ結果触れただけで即死するレベルの悪意が流れ込む様になったのだ」

 

「それに耐えられる人だけが扱えるのですね?」

 

「ああただし100人に試したがその内99人が即死したぞ。全員が! 2秒と経たないうちに! だ。唯一耐えたのはあの仮面だけだ。その仮面もその後一日寝込んだそうだがな」

 

 何そのゲテモノ。

 

「勿論メリットもある。いやむしろこのデメリットさえクリアできればコレは間違いなく最強の武器だ。なにせまず『形』がない」

 

「『形』がない?」

 

「『無形武器』というやつだ。霊をブチ込み過ぎたのか武器自体が霊体になってしまってな。今はあの仮面のお蔭で形を保っているが、本来は黒い霧のような状態だ。まだあるぞ。この武器は霊体という点から……」

 

 勿体ぶるな、早く言えよ。僕この焦らされる時間大嫌いなんですから。

 

「魂に直接攻撃できる」

 

「ほう」

 

「しかもこれに傷つけられた魂は修復が不可能でな。どこぞの作品の名言を少しパクるのならば『魂があるのならば何でも殺す事が出来る』と言ったところか。そこら辺の不死者もこれがあれば殺せるだろう」

 

 凄まじいデメリットですが、それを踏まえてでも欲しい武器ですね。確かに不死者を無効化する事はできますが、殺す事はできませんからね。うん、欲しいです、この武器。というか元々は僕のモノだったので……。

 

「一通りの説明はした訳だがどうするかね? これ死ぬかもしれないが欲しいか「欲しいです。というか早く返して下さい」……即答とは無謀なのか勇者なのかわからんな。まあいいだろう。ほら、持って行け」

 

 いや何処から出したそのケース。ああ、無形だからそういう器に入れておかないと大惨事になるからですか。

 

「了解。んじゃ早速」

 

「あ。バ―――」

 

 ケースを開けた瞬間、黒い霧が取り込むかのように僕を覆いました。その瞬間、黒い霧に溶け込むかのように意識を失ってしまいました。

 

 

 

 

 

~七実~

 

 ハァ、朧は意識を失いましたか。いえ、失ったというより持っていかれたというべきかしら。あっちはあっちで霊の怨恨やら怨念やらとバトって捩じ伏せるのに忙しいでしょう。まあ、こっちも……。

 

「負け犬の戯言が五月蠅いですけどね」

 

『アア……クルシイ……ユルセナイ……』

 

『ニクイ……ニクイ……アイツガニククテタマラナイ……』

 

『コロスコロスコロスコロスコロスコロス……』

 

 あの会長とかいう方が貞○の5、6倍強力と言ったからどんなものかと思ったけれど、こんなの、ただの負け犬の遠吠えじゃない。くだらないわ。

 

「失せろ」

 

『『『アアアァァァァァァァ………』』』

 

 たった一言で消える悪霊なんて、そこら辺に落ちている石ころと変わらないわ。さて……

 

「朧の方はどうなったのでしょう?」

 

 

 

 

 

~朧~

 

『それを! あの妹は全部奪っていったの! 私の愛した人は全てあの女に奪われていったわ! もう、もう呪い殺すしか無いじゃない!』

 

「ええ、ええ。そうですね、そんなのはもう妹ではありません。悪女です。そんな悪女に自ら手を下すなんて馬鹿らしくありませんか? 貴女を捨ててあの女に靡いた男どもに関してはこう思うのです。『自分の価値に気付かずにあんな女に靡いた馬鹿な男』と! 僕なら家事も出来ずに男をATMの如く扱う顔が良いだけの馬鹿な女よりも器量よしで家事全般完璧な貴女を選びますね」

 

『……そう。そうよね。あんなのに構う方がどうかしてるのよね。ところで、私を選ぶって言ったけどそれってどういう―――』

 

「ハイ次の方どうぞー!!」

 

 いや「どうぞー!!」じゃないし。どうしてこうなった。死ね死ね言ってくるから適当に言いくるめていただけなのに何でいつの間にか鑢朧の行列のできる相談所が出来上がっているのですか。おかしいでしょう。自分の未練ぐらい人間である僕に頼らずとも断ち切って下さいよ。

 

『シネェェェエエエエエエエエ!!!』

 

「何故です?」

 

『……何故だろう?』

 

「論外。ハイ次ー」

 

 いや、だから「次ー」じゃないし。何なんですか僕。ノリにしてもやり過ぎでしょう。誰か止めてくれる七実はいないかなー?

 

「ここにいますよ」

 

「おお。願ったら出てくるとか貴女はランプの魔人ですか?」

 

「ランプを擦って出てきた訳じゃありませんので。こっちはどうなっているのか気になったから見に来たんです」

 

 そんなご近所に回覧板届けるようなノリで来れるものなんですか、ここ。僕も完全にここの仕組みを理解している訳ではありませんが、普段僕達が会話している場所がマンガ喫茶とかの二人部屋だとすれば、今居る場所は完全な個室のようなものですよ?

 

「鍵が掛かっていなければ出入り自由でしょうに」

 

「それは確かに」

 

 そもそも他人が勝手に出入りしてくるとか考えも付かないのですが。

 

「で、何してたんですか?」

 

「いや、この迷える悪霊たちの未練を断ち切ってました」

 

「何故?」

 

「何故って……何故でしょう? 何かノリで」

 

 本当のところ、悪霊が『シネ』だの『キエロ』だの言ってきたのでそれに疑問を呈してみたらこんな風になっていたんですけどね。この人達、いやもう人じゃありませんけど、膨大な恨みを抱えているくせにそれの根本的な理由を忘れちゃってたりするんですよね。さっきの女性は例外として、手段と目的が逆転している典型ですよこれ。僕、失笑。

 

「ハァ。まあいいですよ。それよりも、早くこんな辛気くさいところ出ませんか?」

 

「え、いや、僕にはまだこの迷える悪霊たちが……」

 

「あなたは聖職者かなにかですか。それとは間逆の位置にいるというのに。さ、良いから出ますよ」

 

「あーれー」

 

 呆れ顔で僕の襟を掴んだ七実はズルズルと非力な僕を引き摺って行きました。その姿はまるで何も知らない純朴な子牛を売りに行く―――

 

「くだらないことを考えているとその素っ首、圧し折りますよ」

 

「考えただけで折られるとはこれ如何に」

 

「いいからさっさと」

 

 え、あの、何故にそんな如何にも今から投げますよ的な体制に入っておられるのでしょうか七実様。

 

「目覚めなさい」

 

 まさか一日の内に二回も暗転する羽目になるとは思ってもみませんでしたよ、ええ。

 

 

 

 

 

「アバダケダブラ!?」

 

「私に向かって死の呪文を唱えるとはいい度胸だな鑢くん?」

 

 目覚めた瞬間、僕は訳の分からない言葉を発してしまったようです。意味が分かりませんが、どうやらそれが頭にキたようで、額に青筋浮かべてこちらを睨んできます。おおこわいこわい。

 

「まあ実際に何かある訳でもないから良いのだがね。しかし二日も眠ったままというの流石の私も少し焦ったぞ。他の有象無象とは違い死んではおらずむしろ寝言で『いあいあくとぅるふ』と幸せそうに呟いていたから心配はしていなかったがな」

 

「それはむしろ心配して下さい。というか、二日も寝ていたのですか?」

 

「そうだな。ああそういえば君は今居候しているのだったな。ならすぐに帰らねば心配してしまうな?」

 

「あなたがそんなこと気にする人ですか」

 

「別に待たされている君の居候先の奴を気にしている訳ではない」

 

 まあそうですよね。お嬢が周りの事を気にするとか似合わないにも程があります。

 

「じゃあ帰らせてもらいますね。元々の目的はコレですし」

 

 手に意識を向けると、黒い霧が集まり朧気に苦無を形取った。予想とは大分違ったものになってしまっていますが、まあ結果オーライってやつでしょうね。戦力はかなり増加しましたし。

 

「ああ。いやちょっと待て」

 

「なんですか?」

 

 この人が呼ぶ止めるとは珍しい。

 

「いや大したことはない。少しジッとしていればすぐ終わる」

 

 と言ってその地位に似合わず質素な椅子から腰を上げてこちらに近づき、僕の頭を鷲掴みにしてきました。

 

「え、何これ」

 

「慌てるな。すぐに済む」

 

 何が、そう聞こうと思った次の瞬間には、お嬢の顔がすぐ近くにあり、唇にはとても柔らかい感触が―――

 

「!?!?!?!?」

 

「……んっ」

 

 突然の出来事で未だ状況が巧く捉えきれたいない僕が次に感じたのは口の中に入ってくる柔らかい異物。それが口の中を蹂躙し、それが終わったと思ったら次は喉の奥に入り込んできました。

 

「んぐっ……おえっ!?」

 

「ふうやはり腹に仕込むものではないな。取るのがすこぶる面倒だ」

 

「お、お嬢……何をしたんですか?」

 

 舌をあり得ないほど長く伸ばしたお嬢。これを見ると、やはりお嬢は人間ではない『ナニカ』なのだと確信してしまいますね。そして、そんなお嬢を少しとはいえ体に入れてしまった僕は一体どうなってしまうのでしょうか? R‐18Gのような展開は御免ですよ。

 

「心配するな。数年前に君に掛けた呪いを解除しただけだ。覚えているだろう? 国外に出ると鬱になるやつだ」

 

「ああ、あれですか。大して不便していなかったのですが、何故今更になって?」

 

「君ももう一人前かと思ってな。国内なら私の目が届くから国外にはなるべく行ってほしくなくてね」

 

「何故ですか?」

 

「鑢くんはまだ幼かっただろう? 私としても昔から面倒を見ている君が無惨に殺される様はみたくなかったのだよ」

 

「……へえ」

 

 まあ、今はこの事は良いですね。というか……

 

「本気で帰っていいですか? 僕もあまり心配かけたくないんですよ。もう手遅れですけど」

 

「おおそうだったな。じゃあまたな鑢くん?」

 

 お嬢に一礼してそのまま真っ直ぐ出口に向かう。入口はアレなくせに出口はしっかりしているんですよね。

 

『朧、彼女は人間ですか?』

 

『まさか。噂によると、頭撃ち抜かれようが液体窒素で固めてショットガンブチかまそうが次の日にはケロッとあの椅子に座っているらしいですよ。信憑性は結構高いのが困りものですよね』

 

 あの人を殺すには核兵器を持ってくるしかないそうですよ。アホらし。

 

『……朧、誰かが言ったかもしれませんが、あなたの知り合いに碌な人がいませんね?』

 

『はい、知ってます』

 

 

 

 

 

 




朧「ギルティ」
作「え」
七実「虚刀流―――」
作「すみませんでしたっ!」

という訳で、再度待ってくれていた方々、お待たせして大変申し訳ございませんでした。
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