これはゾンビですか?~いいえ、ただの?病弱です~ 作:ハヤテ
で、内容ですが、なんというか、会話が多くなってしまっております。やはり久しぶりだからなんでしょうか。あ、元からですかそうですか。まあ、地の文や文章全体のクオリティを上げれるように努力していきます。
海の何がいいのか。入れば体はべた付きますし、髪は傷む。紫外線により肌は赤くなりますし、皮膚ガンになる確率を高めてしまう。そんな所に誰が好き好んで行きたいと思いますか。暑いのなら家でクーラーを付けてゴロゴロしていればいい。運動したいのなら町内一周でもしていればいい。そう、別に海に何ぞ行かなくても良いではありませんか。大体今のシーズン、海なんて人が大勢いるではありませんか。僕は人混みが嫌いなんです。
「という訳で、行かなくても良いですか」
『その意見は認められない。何故ならもう既にそこにいるから』
ザバーンと忌々しい波の音、照りつける憎き太陽、キャッキャウフフと耳障りなリア充達の声。
そんな訳で、やってきてしまいました夏の海。
『ハァ、憂鬱です。ユーが隣にいるというのにこんな辛気くさいところで七実に愚痴を零すほど憂鬱です』
『はっ倒しても良いですか。悪かったですね、こんな辛気くさいところで』
『まあ、僕の精神なのでそっくりそのまま僕にも帰ってくる訳ですけどね』
海に来てから、兎に角日光を浴びない様にパラソルの中に逃げ込んだ僕と歩。歩はゾンビだからという理由で、僕は単純に肌が弱いからです。ユーも泳ぐ気はないのかパラソルの下でジーッっとしています。
『あなたもハルナさんを見習って泳いだらどうです? 一応泳げるのでしょう?』
『白装束で泳げと申すか』
歩は一応海という事で水着を着ていますが、僕はこの生涯で海水浴が目的で海になんて行かないと思っていたので水着など一つも持っていません。そこでユーが出した代案が『白装束』だったのです。まあ、禊ぎなどに使われる白装束なので水に濡れるのは良いんですが、場違い感が半端じゃないんですよね。道行く人に必ず二度見されるってどういうことですか。
『大体、海なんて汚いではありませんか。海の生物の糞尿が混じっているのですよ?』
『まあ、その辺は微生物さんがなんとかしてくれているのでしょう』
『それに太古の昔より一回も入れ替えとかしてないんですよ。七実は一回も入れ替えていないお風呂に入れますか?』
『そう言われると私も海が嫌いになってくるのですが……』
でしょう? 海なんて良いものじゃないんですよ。
「朧ー、幾ら海が嫌いだからってそろそろ現実逃避から戻ってこい」
「五月蠅いです。現実逃避なんかして無いですよ。ただ内なる自分と会話していただけです」
「ユー、やっぱりこいつは連れてこない方が良かったんじゃないか?」
おい歩、何故僕に末期患者を見るような目を向ける。連れてこない方がいいというのは同意しますけどね。
『朧は放っておくとすぐにどこかに行く』
「僕は猫かなにかですか」
そんなにしょっちゅうどこかに……ってあれ、よく考えたら最近、結構行方不明になってますね。夏に入ってから二回ぐらいですか。その内一回は僕が原因じゃないにしても、ちょっと多過ぎやしませんか。その内人知れず事故かなにかで死ぬのではないでしょうか。あ、ユーはそれを危惧しているのですか。成程、笑えん。
「まあ、それもそうだな。俺も居候が突然消えたら困るし」
「消えるって、僕は幽霊ではありませんよ。まあ、最近行方不明になり過ぎているのは僕が悪いですね。すみません」
『せめて痕跡を残して行方不明になってほしい』
そんな無茶な。行方不明になる時というのは、大体不測の事態に陥ってますから痕跡残すのも一苦労なんですけど。
「ヘルサイズ殿、スイカはお好きですか?」
次行方不明になったらどんな痕跡を残しておこうか、いやいやそれよりもまずは行方不明にならない事が大事でしょうが、と精神にて会議を繰り広げていたらセラがスイカを持ってやってきました。僕と歩に聞かなかったのは単純に僕は今にも死んでしまいそうなほどぐったりとしており、歩はクソ虫だからでしょう。歩に関しては意味が分かりませんがきっとそうなのでしょう。
ユーはそんなセラの質問にコクッっと首を僅かに頷きました。
「スイカ割りは海に来た以上是非やるべきです。あちらに参りましょう。朧はどうしますか?」
「僕ですか? すみません、日差しがきついのでここで歩と待機しています」
「分かりました」
というか、僕の場合目を隠しても気配とか空気の流れとかでスイカが何処にあるか分かるんですよね。出来レースというやつになりますので、こういうことはあまりやらない方がいいのです。
『朧はそういう方面はチートですね。何故ですか?』
『天然チートには言われたくないんですけど。強いて言うなら、昔請け負っていた仕事がそういう類だからです。真っ暗で前後不覚の中、対象を始末することなんざらにありましたよ』
幾らこの身が七実のお蔭で人間にしてはハイスペック……というか、人類の頂点なんですけどね。その人類の頂点といえど、所詮人間ですから限界というものがある訳で。チーターみたくずば抜けた脚力なんてないですし、梟みたく夜でもバッチリ見える目もありません。ましてや鳥の様に空を飛べる翼もありませんし。で、僕はそれを技術で補っている訳です。足を早くしたいなら道具を使えばいいじゃない、目が見えなければ気配を辿れば良いじゃない、空を飛びたければ体重を無くせばいいじゃないという感じで。まあ、空を飛ぶに関しては『足軽』でなんとかなってますし、足もそこまで遅くないんですけどね。
『この体の身体能力は所詮借り物ですからね。使いこなせるわけが無い』
『ですが、その借り物の力を自分にあった形で使うというのは正しい選択です。その選択で、朧は今の形に落ち着いたのですから』
今の形というのがアサシンタイプなんですけどね。聖○戦争に呼び出されたらかの外道神父に捨て駒として消費されそうなタイプです。そうなりそうになったら絶対に正義の味方陣営に寝返りますね、僕だったら。マスターに対する忠誠心? ある訳ないじゃありませんかそんなもの。
『外道神父と朧が組んだと考えると、私は背筋が寒くなりますけどね』
『何でやねん。……ん?』
ふと、顔を上げて海の家の方を見てみると、見知った髪型の女性を発見しました。横にいる歩は何故か素敵なスイカ帽子を被っていますがそれはさて置き、僕の記憶違いでなければあれは……。
「歩、僕は海の家に行ってきます」
「ん? どうかしたのか?」
「あなたの頭の方がどうかしてますけどね。ちょっと見知った頭を発見しまして」
「頭ってなんだよ。まあ、分かったよ」
という訳でやってきました海の家。食事のレパートリーはそこそこ。まあ、普通の海の家という感じですね。今まで来た事ないのでこれが普通かどうかは知りませんが。
っと、そんなことより。
「やはりあなたですか、友紀さん」
「お、そういうお前は鑢か。なーんか海に場違いな奴が居ると思ったらお前だったのか。すごい偶然だな!」
「今あなたはすごい失礼な事を言ったのですが、これに関してはどうすればいいのでしょう?」
「ハハハ! ま、気にすんなって!」
自覚しているから別に良いんですけどね。
「まあそれはいいとして、それは一体何ですか?」
「何って、見ればわかるだろ? とんこつラーメンだ」
「んなもん見れば分かりますよ。僕が言っているのは、ラーメンにかけてる和風ドレッシングのようなものの事を聞いているんです」
「分かってるじゃねーか。鑢の言う通りだよ」
マジか。その様な食べ物に対する冒涜、信じられない所業を何かの間違いだと藁にも縋る思いで和風ドレッシングの『ようなもの』と言ったのですが、やはり当たっていましたか。現実はいつも非情ですね、七実。
「友紀さん、御覚悟を」
「なっ……そ、そんなハリセン何処から出したんだ!?」
「あなたは今までもそのドレッシングで多くの料理達を悲惨な目に合わせてきたのでしょう。胡麻ドレッシングで蹂躙し、青しそドレッシングで破壊し、シーフードドレッシングで辱しめる。そのような所業を繰り返し繰り返し……僕は今まであなたにより散らされた料理達の無念を今ここで晴らします」
「まて! は、話せば分かる!」
「いざっ!」
パシンッ!
「ぐあああああっ!!」
「悪は滅びた……」
これで散っていった同胞たちにも顔向けができます。見ていてくれていますか、ラーメン。僕、あなたの仇を取りましたよ。
「オ、オレを倒したところで第二第三のドレッシング中毒者が……」
『なんですかこの茶番』
「ところで何故こんなところに一人で居るんですか?」
「この海の家のラーメンが絶品だって聞いたからだ」
海の家までラーメン食べに来るとか聞いたこともないんですけど。この人、ドレッシング中毒だけじゃなくラーメン中毒者でもあるんですか。いや、唯のグルメって言う可能性も―――
「やっぱりラーメンにドレッシングは合うよな! 特に青じそが!」
前言撤回、唯の味音痴でした。略してアンチ、僕の敵です。
「そういう鑢こそ何でこんなとこに来てんだ? お前って見た目からして、い…イ……インモラルだろ?」
「ひょっとしなくても喧嘩売ってますよね」
公衆の面前でなんという事を言うのですこの人は。周りの目がすごく痛いんですけど。
「インモラルでは無くてインドアです。何故僕がそんな反社会的な存在にならなければならないのですか」
「おお、そうだそうだ。で、そんなインドアな鑢がなんでこんなところにいるんだよ?」
「連れに誘われたんですよ。僕は行きたくないと言ったのですが、強引に」
「ハハハッ、なんだそれ! お前押しに弱いのか?」
「特定の人に対しては押しに弱いですね」
ユーのあの無機質な目で見つめられるとどうしても断れないんですよね。それと、クリスの絡み酒からのお店梯子も断りきれないんですよね。何故でしょう?
『ギャルゲ風にいうと朧の好感度が一定以上上がった人はそうなるのではないでしょうか』
『五月蠅いですよゲーム脳』
『いえ、ギャルゲは冗談ですけどそれ以外は本音ですよ? あなたは自分が一定以上信頼している相手には極端に甘くなるのは以前から気付いていたことです』
マジか。そんなつもりはなかったのですけど……。
『それも仕方の無いことです。人間というのはみんな平等とか言いつつどこかで順位づけるものですからね』
『七実のナンバーワンが七花くんであるようにですか?』
『あれは私のオンリーワンです』
どれだけ優先順位高いんですか。ひょっとして、自分よりも優先順位上なんじゃありませんか?
『いえ、それはありません』
『またナチュラルに心を読みますね。で、それが無いというのは?』
『もしそうだった場合、七花に私を殺させていません』
あー、成程。確かにそうかもしれませんね。殺してほしいから殺してもらったのに、七花くんの方が優先順位高い訳もありませんか。
「それでな、鑢。ちょっと頼みがあるんだ」
「なんですか。押しに弱いと聞いた瞬間頼んでくるとは存外がめついですね、友紀さん」
「まあまあ、そういうなって。ただ単純に早食い大会に出ないかって話だから」
「早食い大会? 出るのは一向に構いませんが、何故僕を誘うんですか。一人でも参加できるでしょうに」
「知り合いがいた方が楽しいだろ? なんなら鑢も連れを誘うか?」
早食い大会……かき氷とかでしょうか。歩はパラソルの下で暇そうにしていましたし、誘っておきますか。よく考えたら、そろそろ昼時ですし……うん?
「友紀さん。あなたラーメンも食べて早食い大会にも出るんですか?」
「おう! 最終戦にはラーメンが出るからな!」
どんだけラーメン好きなんですか。
「まあ、僕が言いたいことはそういう事じゃなくてですね。はっきりというと、太りますよ?」
「って言われてもな。オレ、食べてもあんまり太らないんだよな」
女性を敵に回す発言を平然と言い放ちましたよ。横にいる方が箸を片手で圧し折ってますよ。超怖い。
「たぶん、陸上部で走ってるからだな」
『いや、絶対その牛のような乳に養分がいってるんですよ。そうに違いない』
『七実、あなた嫉妬してます?』
『別に。乳なんてあるだけ邪魔です』
全世界の貧乳にコンポレックスをお持ちの人の希望となる発言と共に全世界のたわわに実った方を敵に回しましたよこの人。しかも、本人はちゃっかり平均並みには胸があるという。一種の嫌味か何かでしょうか?
「まあ、あなたが太りやすかろうがどうだろうがどうでもいいんですけどね。じゃあ、僕は連れを誘いに行ってきます」
「おう、頼んだ!」
「腐れゾンビ、海の家でイベントがあるのであなたも……ってなんですかその素材そのものを活かし過ぎた帽子は。流石にそのセンスは人類には早過ぎますよ?」
「見て分からんのか! スイカだよ! スイカ投げつけられたんだよ!!」
「あっそ。で、イベントがあるんですけど行きますか? 一応こういう内容になっていますけど」
貰ってきたプリントを歩に手渡す。そこには優勝景品から何を食べるかまで詳しく記載してあります。優勝景品はもふもふ抱き枕でしたっけ。僕には無縁のものですね。
「早食い? またお前に似合わない催しだな」
「クラスの友人に誘われたんですよ。歩も暇そうだったのでどうかと」
「折角だから皆も誘うか。おーい、ちょっと来てくれー!」
という訳で相川家の居候、全員集合しました。
「早食い大会ですか……確かに昼時に丁度良いですね」
「ささやかながら優勝者には景品が出るらしいですよ? なんですかコレ、もふもふ抱き枕?」
「もふもふ抱き枕!!」
うわっ、なんですかハルナさん。急に紙を引っ手繰らないでくださいよ。何? どこか喰いつく箇所ありました?
「もふもふ抱き枕……!」
あ、それですか。なに、抱き枕でそんな気炎が生じるほどやる気出してるんですか。そんなに欲しいですか抱き枕。
『鎌があれば十分』
「それはユーだけですから」
鎌が抱き枕って、あなたは一体誰と戦っているんですか。
『世界と』
「随分壮大な敵ですねぇ!!?」
しかもユーの場合強ち間違っていないという罠。確かにユーにとって世界は敵ですよね。
「んん! ヘルサイズ殿、朧、話しはその辺りにして早く会場に向かいましょう。プリントによるとそろそろですよ、早食い大会」
そんな訳でやってきました早食い大会会場。
『そういえば朧』
『ん? なんですか?』
『何故早食い大会に出たのですか? まさかあのクラスメイトに誘われたから出る、という訳じゃありませんよね? そして、歩さん達を誘う為という訳でもない』
『良く分かってますね。僕は最近ある事に気が付きましてね。それを今日試そうかと』
『気が付いたこと?』
『ま、それは後々』
「さあ始まりました! 第一回戦はかき氷です!!」
お、かき氷ですか。これは試すのに丁度良いですね。
「いただきます」
シャクっと一口、シャクシャクっと二口。
『……!』
シャクシャクシャクっと三口。シャクシャクシャクシャクっと四口。
『こ、これは……!』
シャクシャクシャクシャクシャクシャクシャクシャクシャクシャクシャクシャクシャク……
『っ~~~!!』
お、実験成功です。
さて、いい加減なにをやっているのか説明しましょう。以前、七実が僕の視覚やら思考やらを自分でも見れると言っていたでしょう? あの時は七実だけに許された特権でした。しかし、僕はそれを良しとしませんでした。僕だけプライベートが筒抜けというのはどうも納得いかなかったのです。ですが、やはり七実の様に視覚や思考を共有する事はできませんでした。悔しかった。それはもう悔しかったのです。僕には七実に一生勝てないのかと。このまま負け犬で終わるのかと。
しかし、ある時思ったのです。視覚や思考は無理でも、それ以外ならイケるんじゃないかと。触覚とかならイケるのではないかと。で、思いついた日から地道に練習を繰り返し、手ごたえを掴んだ今日、実践した訳です。
そしてその結果が、
『お、朧……これは?』
『キーンとくるでしょう? 僕が感じる筈の感覚を七実に丸投げしたんです』
そう、それは僕の感じている全ての感覚を七実に丸投げすることです。だから、僕が感じる筈だったこのキーンとする感覚も七実に丸投げすることが出来るのです。これでいつでも熱々のお茶が飲めます。
『いやどんだけ鬼畜なんですか。止めて下さいよ? 絶対に止めて下さいよ!?』
『振りですか』
『振りではありません! というか、この喋っている間にもかき氷をたべないでくさあああぁぁぁぁ!!?』
分かります。あのキーンとする感覚はどう頑張っても抗えませんよね。
まあ、分かっているところで止めないんですけど。
『つぅ!? ちょ、ほ、んとに! 止めてくださ!? あ、あああああああああぁぁぁぁぁl!?』
ハァハァと元々青い顔を更に青くしながら頭を振り回し悶える七実。声だけ聞くと官能的な雰囲気があるという不思議。
『あっ、あっ……』
『何か某ダブルハンターの脳みそ弄られてる人みたいになってますね。七実、安心して下さい。かき氷は終わりました』
『ほ、本当ですか……?』
『ええ、次はフランクフルトです』
『』
絶望は、終わらない。
まさかの次回に続くエンド。実はこの話は七実さんを虐めたいが為だけに書いたという(ぇ