これはゾンビですか?~いいえ、ただの?病弱です~   作:ハヤテ

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引き続きお楽しみいただけたら幸いです。


頭が弱い人に物を教えるのはお金がかかる

 

 

 

 海に行ってから数日経ちました。数日経ったといえど、僕の身分は一応は学生ですので何の変わりもなく学校に行ったり、クリスとネネさんの家で酒盛りしたり、時たま出会って襲いかかってきたメガロを殺したりと、普通の日常を謳歌していました。夜野に動きは見られません。いや、動かないというか、これは機を窺っているのでしょうね。彼の最終目標はおそらく僕ですから、僕を襲撃する算段でも付けているのでしょう。くわばらくわばら。

 

 という訳で、どうも皆さん、潮風の所為で髪のキューティクルが一時低下してしまった朧です。やはり海は良いものではありません。終始日焼けには気を付けていたので肌は赤くはならなかったですが、やはり髪がパサパサになってしまうのは頂けないです。

 それと、実はこっちの方が重大な事なのですが、七実がですね、新世界の神がライバルのノートで殺害できた時みたいな顔をしていたんですよ。そして、次に言った言葉が何だったと思います?

 

『良い夢見れましたか?』

 

 ですよ? もうね、足が震えましたね。今思えば、七実がたかが不快な感覚だけであんな風になる訳が無かったのです。それに気付かずに喜んで醜態を晒していた僕はマジで道化です。ピエロですよピエロ。もう、七実には一生勝てないかもしれないと思った瞬間でしたね。

 

 この様なことがこの数日の内の起きた訳ですが、僕は元気です。開き直った訳でもヤキが回っている訳でもないのでご安心を。

 さて、学校と言えば勉強なのですが、その日頃の勉強で培った実力を試す場が設けられています。そう、テストです。歩がこの前『勉強を教えてくれー』と泣き付いてきたあのテストです。そのテストが近々行われるのです。で、それが指し示す事というのは、

 

「頼む鑢! オレに勉強を教えてくれ!」

 

 はいきましたよ。まあ、こうして教えを乞いに来る人がいることは予想していました。ただ、その相手は予想外でしたけどね。

 

「突然何ですか友紀さん」

 

「だから、勉強教えてくれって」

 

「確かに前々からあなたの頭は緩いと思ってましたし、誰かに助けを請うんだろうなー、と思ってました。ですが、何故僕なんですか。前回頼んだ人に泣きつけばいいじゃないですか」

 

「鑢って、この前のテストで学年どころか学校創立して以来初めての全教科満点だったんだろ? という訳で頼む! お礼はするからさ! なっ!?」

 

 手を『バチィン!!』と威勢よく鳴らして頼み込んでくる友紀さん。なんてことをしてくれるのでしょう。お蔭でクラスで注目を集めてしまっているではありませんか。

 

『知らぬは本人ばかりとはこの事でしょうか』

 

『え?』

 

『いえ、なにも(常に無表情且つ学校でもトップの成績を誇っているのに目立たない筈が無いでしょうが)』

 

 七実が何か言っていたような気がしますが、本人がなにもないと言っているので気にしない事にします。気にしたらきりが無い。

 

「まあ、別に構いませんよ」

 

「本当か!? 助かる!」

 

 僕の承諾を聞くと満面の笑みで僕の両手をブンブンと振ってくる。その所為で僕の肩が時折『バキッ! ボキッ!』となっているのですが、きっと肩が凝っているのでしょう。うん、先ほどから感じている手の痛みはきっと幻痛です。

 

「教えるのは良いのですが、何処で教えるのですか? 学校ですか?」

 

「あー無理無理。オレ学校で勉強すると気付いた時には閉校の時間になってるから」

 

「どんな体質ですか」

 

 僕は集団で集まっているところでは寝たくても寝れないので羨ましいと言えば羨ましい。ですが、よくよく考えれば椅子で寝ると体の節々が痛くなるのでそんなことはありませんでした。

 

「で、何処でやるんですか?」

 

「鑢の家は駄目か?」

 

「僕は現在居候中ですのでちょっと無理ですね」

 

 それに、セラがいますし、保守派と革新派で別れている現在の吸血忍者の状況でこの人がどっち派かは知りませんが、もし別の派閥だった時に面倒くさいことが起きそうなのでやはり無理ですね。

 

 それに、僕の部屋は七実の所為でちょっと見せられない状況になってますし。

 

「図書館とかどうでしょう?」

 

「行ったことないけど、どんなところなんだ?」

 

 まさか今までの人生で行ったことないのですか、図書館。まあ、僕もありませんけど。いや、あそこって本が好きな人が行くか、家じゃ勉強できないガリ勉が行くようなところでしょう?(偏見) 僕に縁なんてある訳が無い。

 

「静かなところですね」

 

「うへー。じゃあ駄目だ。絶対に眠くなっちまう」

 

 一応真面目に教えをこうつもりはあるんですか。まあ、教えてもらっているのに寝てしまうのはとても失礼に値しますしね。僕は気にしませんけど。相手が寝てしまったら僕は僕でやることをやるだけですし。

 

「ファミレスならどうです? あそこなら静かでもなく、小腹が空いたら料理が頼めますよ。フリードリンクもありますし」

 

「お、それいいな。じゃあ、そこにしよっか!」

 

 と言っても、実は僕、ファミレスに行ったことないんですけどね。食にそこそこのこだわりを持つ僕は回転寿司にもいきません。目の前で焼いてくれる鉄板料理の店とか、回らない御寿司には付き合いで昔はよく行ったんですけどね。今は行く暇が無いというか、ハルナさんの料理で十分といいますか。

 

「じゃあガ○トでいいですね?」

 

「え? デ○ーズだろ?」

 

「そこでこだわりますか。まあ、僕としては何処でも良いのでそこにしますか」

 

 違いが分からないので何処でも良いんですけどね。ただ、フリードリンクの有無は結構大事だと思うんですけど。

 

「ねえ、そこってフリードリンクあるんですか?」

 

「知らないけど? あるんじゃないか? オレ、ファミレスとかあんまり行ったことないからわかんねぇけど」

 

 なら何故選んだし、デ○ーズ。

 

 

 

 

 

「らっしゃーせー、にめーさまですかー?」

 

「またあなたですか。はい、二人です」

 

「こちらへどーぞー」

 

 やる気の無い店員もとい、ウェイターさんは僕たちを席に案内した後、メニューを机の上に放り、そのまますたすたと指定の位置に戻って行きました。

 

「なんか、変わった店員だな」

 

「常時仮面を着けてるとか、めっちゃ浮いてるのに自覚ないんですかね? まあいいや。で、なに飲みます?」

 

「食べる選択肢はないのか?」

 

「あなたは此処になにしに来たんですか」

 

 流石に食べながら勉強はできないでしょう。それともこの人はこんなところでもラーメンを求めるのでしょうか。というか、ここにラーメンは売っているのでしょうか?

 

「食事は後で飲み物頼みましょうよ。すみませーん!」

 

「はい、ご注文はお決まりですかー?」

 

 うわ、またこの人か。レジの仕事じゃなかったんですか。

 

「僕はこのコーヒーを」

 

「タバスコはお付けしますか?」

 

「お付けする訳ないでしょう。馬鹿なんですか?」

 

「いえ、以前タバスコ入りのコーヒーをご注文した御客様がいるもので」

 

「どこの誰ですかその猛者!?」

 

 タバスコ入りのコーヒーとか正気の沙汰じゃありませんね。辛党にも限度があるでしょうに。

 

「では朧様は普通のコーヒーを。そちらの御客様は?」

 

「え、あ、じゃあ、メロンソーダ」

 

「普通のコーヒー一つ、メロンソーダ一つ、以上でよろしかったでしょうか?」

 

「よろしいですよ」

 

「では」

 

 うーん、やはり仮面をつけたウェイトレスってかなり目立ちますね。悪い意味で。なのに、何故一般の客は気にするそぶりを見せないのでしょう? まさか、そういう特殊な効果でも付いているのでしょうか?

 

「なあ鑢」

 

「はい?」

 

「お前、あの店員と知り合いか?」

 

「ええ、まあ」

 

「ふーん」

 

「何か?」

 

「いや、鑢って変な知り合い多いんだな。学校でも栗須先生と仲良いんだろ?」

 

「あれ? 言ったことありましたっけ?」

 

「いや。ただ仲良さそうに話してたのを見たことがあるだけだ」

 

 まあ、隠すようなことではないのでその辺は割とオープンでしたから目撃者がいても不思議じゃありませんね。

 

「そんなことより、さっさと勉強を始めま―――」

 

「コーヒーとメロンソーダ、お待たせしました」

 

「タイミング悪っ!」

 

 飲み物がきましたが、飲みながらでも勉強はできるので早速勉強開始です。

 

「で、なにが分からないんですか? あ、全部と言ったら見捨てますので」

 

「うぐっ……そ、そうだな、数学とか理科とか……」

 

「理系が駄目なんですか」

 

「いや……実はそれ以外も駄目駄目なんだ……」

 

「分かってます。あなたの頭が残念な事になっている事も踏まえて僕はあなたの勉強を見ることを引き受けたんですよ。一番苦手な奴からやりましょう」

 

「じゃあ……数学から頼む」

 

「はいはい」

 

 

 

 

 

「因数分解ってなんだ?」

 

「そこからなんですか!? 中学で習いましたよね!?」

 

「3乗の計算が訳が分からないんだけど……」

 

「公式があるんですけど、どうしても覚えられないならこの様に全てばらして計算しましょう」

 

「後はこれとか……」

 

「これはこうしてですね……」

 

 

 

 

 

 夜10時。気が付けばいつの間にやらこんな時間になってしまっていました。夜10時とかお巡りさんに出会ってしまったら補導されること間違いなしです。まあ、その場合は全力で逃げさせていただく訳ですけどね。

 

「つっかれた~!!」

 

「お疲れさまでした。それにしても、よくこの学校に合格しましたねあなた」

 

 友紀さんの学力は僕の予想を大きく下回ってきました。それが原因でこんな時間までファミレスに缶詰していた訳ですけどね。途中からウェイターさんが仮面越しからでもその表情が窺い知れてしまうほど殺気を僕にぶち当ててきましたからね。僕の首が捻子切れた姿を幻視してしまいましたよ。

 

「ハハハ……まあ、その辺はアレだ。うん」

 

「というか、飲み物代だけでとんでもない額になりましたね。何で0が4つもあるんですか……」

 

 いや、よく見ればラーメンとかステーキとか高級ドレッシングとかありますし、妥当な値段なのでしょうか? いや、そんな訳ないでしょう。何ですかこの高級ドレッシングって。何で値段が6890円もするんですか。一体どんな素材使ったらこんな意味不明な値段になるんですか。

 

「す、すまん。ドレッシングと聞いたら反射的に頼んじまったんだ。あの店員も聞きとして勧めてきたし」

 

「当たり前でしょう。そのドレッシング代はあの人の懐に入るんですから。あの人はお金にかなりシビア且つ、がめついですよ?」

 

 つまり、友紀さんのような頭が弱い人は絶好の獲物という訳です。

 

「でも、あれは確かに今まで飲んできた中で最高のドレッシングだった! 後悔はしてねぇ!!」

 

「飲む……?」

 

 え、この人かけるだけに飽き足らず飲んでいるんですか? 何それ怖い。

 

「まあ、ここは割勘で良いですよ」

 

「え、で、でも鑢に悪くないか?」

 

「良いんですよ。偶に使わないとお金が腐りますし」

 

「そうか……ありがとな」

 

「いえいえ」

 

 という訳で、ファミレスで1万4800円という驚異記録を叩きだした僕達は帰路に着きました。

 

「今日はありがとな」

 

「まあ、家にいてもすることはありませんし。ところで、友紀さんの家はどこですか? こんな時間ですし、送りますよ」

 

「いいっていいって。オレん家はこっから結構近いからさ。これ以上鑢に迷惑掛けるわけにはいかねぇよ」

 

「そうですか? まあ、僕の家はここから少し離れているので助かったわけですけど」

 

「……プ、ハハハ!」

 

「何か面白いことでも?」

 

 僕からしてみれば突然笑い始めたあなたの方が面白いものなんですけど。

 

「いや、鑢ってさ、こうズバッというよな」

 

「隠す事でもない事は隠さない主義なんで。まあ、それによって言い争いが起こることもあるんですけどね」

 

 歯に衣着せぬ物言いとは無駄な争いを生むことにもなります。実際、これが原因で殺し合い一歩手前まで発展したことありますし。あの時は死ぬかと思いました。

 

「そうか? ま、オレは好きだぞ、そーいうの」

 

「どうも。じゃ、僕はこれで」

 

「おう! またな!」

 

 僕と友紀さんの家は反対方向らしいので、互いに背を向けて帰路に着きました。

 

『良い人ですね』

 

『え?』

 

『ああいう裏表の無い性格の人は好感が持てます』

 

『へえ。七実はああいう人が好きなんですか?』

 

『人付き合いする上で、ですよ。何も考えずに話せる人というのは存外貴重なものですよ。朧には友人や掛け替えのない人はいますが、気兼ねなく話せる人は何気に少ないでしょう?』

 

『え、そうなんですか?』

 

『自覚なしですか。あのですね、私が見た限り、朧が気を許して話しているのはユーさんとクリスさん、ギリギリで友紀さんと、こんなものですよ?』

 

『マジで?』

 

『ええ。おそらく、歩さんには居候先ということでどこか遠慮している部分がまだあるのではないでしょうか。そして、セラさんも出会ってまだ間もないという事で完全に心を開き切っていませんね。ハルナさんは……まあ、これは相性の問題で完全に歩さんに丸投げしているでしょう?』

 

『……知りませんでしたね』

 

『岡目八目ってやつですよ。私も人間関係にそれほど目聡いという訳ではないので間違っているかもしれませんが』

 

 七実はこう言っていますが、僕は8割方合っていると思っています。

 歩やセラ、ハルナさんの事は嫌いではありません。いや、ハルナさんに限っては若干の苦手意識はありますが、それだけで心を開いていないということはない。……と、思っていたのですが、やはりどこかで開き切って無かったのでしょうか。

 

『いや、単純に考えて朧のような境遇の者が短期間で心を開くとか無理があるでしょう。聞いた話、七花もとがめさんとその他有象無象の気配を見分けるのに苦労したようですし、朧もこれからですよ』

 

『もしかして……慰めてくれてます?』

 

『まさか。そもそも朧は落ち込んでいないでしょう?』

 

『あ、分かります? どちらかというと驚きなんですよね。やはり自分の事は自分が良く知っているというのは精神面ではアテにならないのだと実感しましたよ』

 

『ああ、それは同感ですね。肉体面では自分の事はよく分かるのですが、こと精神面となると分かりませんからね』

 

 自分の精神面まで完璧に把握しているのならメンタルカウンセラーなんていらないでしょうしね。

 

『話しは戻りますが、私は一つ疑問に思っていることがあるんですよ』

 

『大体分かりますよ。何故僕が友紀さんと七実基準で普通に話せているか、ですよね? それこそ、歩よりも出会ってから間もないのに』

 

『そうです。何故ですか? こればっかりは本人しか分からないでしょう?』

 

『何故か、と言われてもですね。まあ、強いて言うなら、相性の問題……ではないですね』

 

 それだと、似たような性格のハルナさんとの相性に問題が出てきます。

 となると、何なのでしょうね。僕が友紀さんと普通に話せる理由。

 ……あ

 

『分かりました』

 

『何ですか?』

 

『七実の好きなギャルゲ風に言うなら』

 

『ちょっと待ちなさい』

 

 七実の異論は無視して、先ほど至った結論を述べる。

 

『弱ったところを、落とされちゃいました』

 

 まあ、つまり、こういうことですよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ああ、そういえば七実』

 

『何ですか?』

 

『さっき七実が挙げた僕が気を許している人達に中に一人入っていない人がいますよ?』

 

『え、本当ですか。いや、私が朧の交友関係を間違える筈が―――』

 

『七実が入っていないじゃありませんか』

 

『……え?』

 

『あ、そろそろ家に着きますね』

 

『え、いや、あの、え?』

 

「ただいま戻りました」

 

 

 

 

 

 




何故か友紀さんがヒロインっぽくなっている気がするのはきっと作者気のせい。気のせいったら気のせいなんです。

という訳で投稿終わります。拙い文章でしたが、楽しんでいただけたら幸いです。
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