これはゾンビですか?~いいえ、ただの?病弱です~ 作:ハヤテ
にじファンから読んでくださっている方々は分かっていると思いますが、この小説はにじファン時代のストーリーとは違います。なのでこの人も出さなくていいのではないかと思ったのですが、前の話にこの人が出てくるような話がちらほらあったので思いきって出しました。
賛否両論あるのは分かってますが、こういう話になったということでここはどうか一つ……ね?
どうでもいい事、関心の無い事に取り組んでいる時間は異様に長く感じられます。逆に、楽しい時間はあっという間に過ぎ去ってしまいます。この様に、この世界はプラスなものほど時間の経過が早く印象に残り難いものですが、マイナスなものほど時間の経過が遅く、印象に残ってしまうのです。ま、プラスはマイナスに塗りつぶされるということですね。数式の中でも、現実の中でも。
という訳で、どうも、退屈なテストが終わり窓の外を見て黄昏ていた朧です。いやはや、楽し過ぎて時間の流れが早くなる経験を実はあんまりしたことが無いのですが、退屈で時間の流れが遅く感じる経験は結構あるんですよね。あれ、ひょっとして、僕の人生、退屈し過ぎ…!? と小ネタ挟んでみてもやはり退屈なものは退屈です。
『いや、それなら早く帰れば良いじゃないですか。帰れば愛しのユーさんがいますよ?』
『それが出来たらとっくにそうしているんですけどね。まあ、出来ない訳が御座いまして』
『それは?』
『友紀さんが待ってろって』
そう。何故かテストが終わって開口一番に「鑢! ちょっと待っててくれ!」と行ったきりどこかに消えました。経過時間は二十分。そろそろ僕はキレても良いと思う。
『クリスと駄弁ろうと思ったのですが、テストの採点で忙しいらしいですからね。本当に暇なんですよ』
『そうですか。現実世界は大変ですね。それに比べて此処はワンダーランドですよ。いつでもどこでもゲームし放題マンガ読み放題のグータラし放題です』
七実が徐々に駄目人間と化していくのが目に見えて分かります。あ、良く考えれば出会ってすぐの辺りから既に駄目でしたね。そう考えると僕の精神世界的なところにいるときに暇を持て余し過ぎて駄目になったという事ですか。それなら、七実が駄目になったのは僕の責任でもあるということですか。ああ、なんだか責任を感じちゃいますね。
『さっきから人のよくもまあ駄目だ駄目だと言ってくれますね? 言っておきますが、私はまだ大丈夫です。今は駄目人間に見えるかもしれませんがいざって時には煌めきますから』
『今自分で駄目人間って認めましたよね?』
『自覚しない事ほど恐ろしいものはありません』
『なら駄目人間は大体七実と同じようにいざとなったら云々と言うということも自覚しましょう』
駄目人間ほどいざとなれば自分はできる人間だと錯覚しているものです。大抵はいざとなっても出来やしません。
『そこは大丈夫です。私をそこら辺の有象無象と一緒にしないでください』
『あなた何様ですか』
『七実様ですけど』
偶にいるハイスペックどころか廃スペックな能力を持っている駄目人間はコレだから手に負えないんです。
「やれやれ……」
「ごめん鑢! 待たせた!」
僕の中の人の駄目駄目っぷりに辟易していると横から声が掛けられました。僕に声を掛けた人は僕を此処に待たせた張本人、吉田友紀その人です。
「遅いですよ」
「悪かったって。ちょっと話しが長引いちゃってさ」
「お蔭で僕は昼ごはん食いっぱぐれですよ」
まあ、食いっぱぐれても特に問題ないどころか、普段は食べないんですけどね。ただ、こういう状況ですしからかってみたりしたいじゃないですか。
『朧はドSですね』
やかましい。
「やっぱりか……ま、丁度良いと言えば丁度良いな」
「ほう。昼ご飯を食いっぱぐれたことが丁度良いとぬかすか」
「いやいや! そうじゃなくて、この前勉強教えてくれたろ? だから何かお礼しなきゃいかんな~ってな」
「え? ああ、別に良いですよ気にしなくて。嫌だったり面倒だったら断りますし」
「そうか? でもさ、それじゃオレの気が済まないんだ。オレの自己満だからお礼させてくれよ? な?」
うーん。ぶっちゃけお礼されるのはいいのですが、友紀さんの事ですからラーメン屋で何か奢るとかそんなことだと思うんですよね。僕、昼間からラーメンのような脂っぽいものを食べると胃がもたれて夕飯が食べれなくなるんですよね。そうなると、ユー達と食卓を囲めなくなってしまいます。それだけなら別に僕は構わないのですが、ユーに寂しい思いをさせてしまうと考えるだけで胸が張り裂けそうになります。ですから、お礼はラーメン屋以外が望ましいです。
『ユーさんとクリスさん……薄々感じていたのですが、朧ってひょっとしなくてもロリコ……』
『七実、それ以上言ったら足先から磨り潰していきますよ?』
『あ、はい』
何やら駄目人間が人に不愉快な称号を付けようとしていましたが、それを未然に『話し合い』によって防ぐことが出来ました。言葉は人類に与えられた素晴らしい能力の一つです。皆さんも積極的に相手と『話し合い』、コミュニケーションを取っていきましょう。
「そこまで言うならお礼してもらいますけど……僕は食べ物では釣れませんよ?」
「うげっ、そうなのか? 折角お勧めのラーメン屋に連れて行こうかと思ったのにな……」
「昼間っからそんなもの食べたら胃もたれしてしまうんですけど」
「そっかー……じゃあどうすっかな?」
「いや、僕に聞かれましても……」
お礼の内容を本人に聞くってどうなんですか。本人がお礼を望むなら良いんですけど、僕自身お礼なんてどうでもいいと思っているのでどうするかと言われても反応に困ります。という訳で脳内会議タイムです。マッハで済ませますよ。
『どうしましょう?』
『私に聞かれても……。そもそもこれは朧の問題でしょう?』
『そんな冷たい事言わないでくださいよ。僕達一蓮托生じゃありませんか』
『いつからそんな甘ったれた事言うようになったんですか。まあ、朧がしてもらいたいことをしてもらえばいいんじゃないですか?』
『帰りたい』
『……お礼する側にとってこれ以上ない悲惨な答えですね』
『でしょう? まあ、仕方ありませんね』
何故される側がする側の気を使わないといけないのか。これが昔から上司の気分を害さないように常に窺っていた弊害ですか。
「そこのラーメン屋、あっさりした物もありますよね?」
「へ? あー、まあ、あるぞ? しょうゆラーメンとか」
「そうですか。じゃあ、早くそのラーメン屋に行きましょう」
「良いのか? 胃がもたれるんじゃ……」
「まあ、偶にはこういうのもありかなと。それに、そのラーメン屋は友紀さんのお勧めなんでしょう? ラーメンマニアのあなたの進めなら食べてみたい気がするんですよ」
「そうか! じゃあ早速行こうぜ!」
と言って僕の手を引っ張って走り始めました。
さて、ここで思い出されるのは友紀さんのスペックです。本人は隠しているようですが僕は初対面で彼女が吸血忍者であるという事は分かっています。それだけでも人ならざる身体能力があるというのに彼女は陸上部に入っているらしいんです。唯でさえ高い身体能力に日々陸上部にて鍛え上げられている脚力。そして、そんな友紀さんに引っ張られて走らされる僕の脆い体はというと……
「いだだだっ!? ちょ、取れる! 手が取れちゃいます!」
「早く行かないとすぐ混んじゃうからな! ペース早めで行くぜ」
校内だというのに『ズドドドッ!』と足音立てて走り抜く様は正に陸上部のエース。だが、そんな名誉ある称号は今の僕にとっては唯の害にしかなりません。現に今、僕の関節がブチブチと鳴らしては、鳴ってはいけない音がし出しているんです。という訳で、助けて七実!
『ワー、キ○リはやっぱりいらない子だなー』
『七実!? 僕の危機に何悠長にF○に勤しんでいるんですか! そんな器用貧乏なキャラ育てるくらいなら僕を助けて下さいよ!』
『だがしかし私はこいつは一流のロン○に育て上げるんです! 主にリュ○ク方面で』
『突飛な方行くかと思えばまさかの王道! って、そんなことどうでも良いんで助けて下さい』
『私にどうしろというのですか』
『……確かに』
助けを求めることが出来るのが七実だけという事で考えなしに助けを求めましたが、考えてみると実にそれがナンセンスな事かが分かりました。手を引くのは友紀さん、引っ張られるのは僕。七実からしてみれば確かに『どうしろと』ですよね。
『まあ、アドバイスするなら、【足軽】を使って体を浮かせれば良いんじゃないですかね』
『神様仏様七実様ですね! ありがとうございます!』
前言撤回、七実は精神世界にいても打開策を授けてくれる僕の素晴らしいパートナーです!
七実の助言を受け、忍法【足軽】で体を適当に軽くさせると、友紀さんが手を引く事により感じる痛みを感じなくなりました。ま、体重を限りなく零に近付けさせればこんなものですよね。
「あれ? 鑢なんか急に軽くなったな」
「元々体重が軽いので。あと、あなたの走るスピードが人間離れしてるからですよ。あなたが本当に人間であるか疑うレベルで」
「な、あ、ハハハ……そ、そうか? いやー、陸上部だからな。脚力が鍛えられてるんじゃないか?」
何その苦しい嘘。
「あ、近道して良いか?」
「別に良いですけど、何でそんなこと聞くんですか?」
「裏路地を通るからさ」
だから何故女子高生が裏路地を通じての近道を知っているのかと。この人、自分が人間じゃないと口外はしてないにせよ怪しい人間になってしまう事に気付いていないのでしょうか? ……いないんでしょうね。
『これが噂のバ可愛いですか』
『急に何ですか七実』
『いえ、この人バカで可愛いなと思っただけですよ。性格に裏表が無い分、嘘が苦手なんですね。七花みたいです』
『うーん、僕に良く分かりませんね。まあ、友紀さんが他の人に比べて顔が整っているというのは分かりますが』
そもそも僕って友紀さんに対してどんな感情を抱いているのでしょうか? 友人であるとは思っているのですが。あれ? 友人ですよね? 思ってるの僕だけじゃないですよね?
「うおっ!?」
うん? どうしました? 異常事態ですか?
「すまん鑢! ここで待っててくれ!」
「え? ……いや、何あれ」
突然友紀さんが僕を此処に置いていくと言うので何事かと前を見てみると、学ランを着たクラゲのような生物の群れがいました。はい、どう見てもメガロです本当にありがとうございます。
いや、それは別にいいんです。日常茶飯事です。問題はその触手に捕まって『これなんてエロゲ?』みたいな事態になっているハルナさんと歩であって……。
うん、物凄く……
「気持ち悪いわボケェ!!」
振り上げた勢いで袖から苦無を取り出し、ハルナさんと歩にヤラシイことしているクラゲの群れのヘッド狙って投げます。一度に投げれるのは三本なのでどう頑張っても三体より多くは倒す事はできないのですが、火事場の馬鹿力が働いたのでしょう、一体のヘッドを貫通して後ろにいるクラゲにも刺さりました。
『なんという外道神父。次は剣でも投げてみます?』
『剣を真っ直ぐ飛ばせる自信がありません』
絶対にクルクル回りながら飛んでっちゃいますよあんなもん。そうなってしまうのならむしろ剣に爆弾くっつけて『壊れた幻想(偽)!!』とか叫びながら投げますよ。
「鑢……お前」
「まあ、話しは後で。そんな事よりもさっさとあのクラゲを片付けましょう」
と言っても、仕込みは既に済んでいるんですけどね。
先ほど苦無を投るのとは別に、もう一方の手で鋼糸をそこら中に張り巡らしていました。いつでも片手の人差し指一本で相手を殺せるような配置で。
しかし、一対多数での戦闘で相手を一人一人殺していくのはいささか効率が悪いです。なので、僕は、
「友紀さん、そこから動かないでください」
手を握り締め、勢い良く後ろに引く。
それと同時に、この場にいたクラゲの頭と触手が永遠の別れを告げました。序でに、歩の胴体が真っ二つになりました。
「ギャアアア!? お、朧、お前、お前……っ!!」
「いや、態とじゃないんですよ? 偶然、歩がいい感じのところに居て、偶然、僕の仕掛けた鋼糸が歩の胴体あたりにあった。それだけの事です」
「どう考えても偶然じゃないだろ!? 助けにきてくれたのはありがたいが、俺まで真っ二つにすることないじゃないか!?」
「歩……ごめんなさい」
「お、おう……。分れば良いんだ。分かれば―――」
「僕達、助けに来たんじゃなくて偶々この道を通っただけなんです」
「そっちかよ! ちげぇよ! 俺の求めてた謝罪とちげぇよ!」
「む、素直に謝ってみればこの言い分。じゃあ僕にどうしろというのですか!?」
「謝れよ! 俺の胴体真っ二つにした事を詫びろよ! 何逆切れしてんの!?」
「ハイハイハイ。ハンセイシテマース」
「ハイは一回! なんだそのやる気の無い反省は!」
「お、おい、鑢……」
「ん? あ、そういえば説明しなくちゃいけませんね」
「おい、朧、その子は誰だ?」
「その辺含めて色々話し合いましょう。ね? 今は僕の反省の気持ちとかありもしないものなんて後回しにして」
「そうだな……うん? ちょっと待て。今なんて―――」
「お待たせしました……といっても、既に終わっているようですが」
歩の言葉を遮って上から降ってきたのはセラ。タイミングは丁度良いですね。歩が喋れないという意味で。
「いや、何でセラが此処にいるんですか?」
「歩から連絡を受けたからですが、朧こそ、何故ここに?」
「友紀さんとラーメン屋に行く予定だったんです」
ポンと背中を押して友紀さんを前に出します。僕は自分の事以外の説明が面倒なのでセラと友紀さんに丸投げしようという考えです。
『堕落してますね』
『それはあなただけには言われたくないです』
現在進行形で堕落しているのはあなたの方でしょうに。
「よっ、セラフィム! 久しぶりだな」
「セラ? この子と知り合いなのか?」
「まあ……そうですね。同じ吸血忍者です」
「吸血忍者って……うちの学校じゃないか」
「歩、うちの学校って結構そういうのいますよ?」
「マジか!?」
『ジーザス!』とでも言いたげな表情を手で覆い嘆く歩。それをまるで養豚場にいる豚でも見るような目で見降ろすセラ。どこか不満げなハルナさん。チラチラこっちを見ては何か聞きたそうにしている友紀さん。それを完全にスルーする僕。
『何これカオス』
「とりあえず、どこか話せるところにいきません?」
「ファミレスが良い!」
シャピッと挙手して威勢よく手を挙げたのは友紀さん。前回ので味をしめましたか。
「良いんじゃないか?」
「ええ、良いと思います」
「ハルナさんは?」
「うー……分かった」
やはりどこか不満げなハルナさんでした。
という訳で、再びやってきましたデニー○。
「いらっしゃ―――またあなたですか」
「いや、仮にも客に対してその対応はどうなんですか?」
「朧様だけですので」
「ならいいです」
「いやいいのかよ」
いいのです、知り合いですから。
「何頼みます? 僕はコーヒーを一つ」
「俺はメロンソーダで」
「じゃあオレもそれ!」
「私は遠慮しておきます」
「……じゃああたしはドデカミン」
「あるの!?」
「ありますよ」
あるんだ!?
「まあ、気を取り直して、まず友紀さんは何か聞きたい事とかありますか?」
「んじゃあ、まず鑢は何者なんだ? 妖怪を瞬殺したりとラスボスみたいなスペックだったけど」
ラ、ラスボスって……まあ、間違ってないですけど。七実さんはあの世界ではラスボス並みのスペックを誇ってましたし。
『あらゆる方面のトップから化け物と呼ばれた私は伊達ではありません』
『まあ、僕自身はラスボスの一つ前ぐらいですからね』
七実さんがいるからこそラスボススペックなんです。
「僕が何者と言われましても、正直なんと言えば……。まあ、昔何でも屋みたいな事をやっていたってことぐらいですかね」
「何でも屋? 銀○んみたいな感じか?」
「助手もマスコットもいませんけどね」
まあ、何でも屋というのは表の顔で実際は子飼いだった訳ですけど。あのお嬢の。
「実力は保証しますよ。少なくとも、そこの虫や私よりも強いです」
「マジか!?」
「いや待て。今ナチュラルに俺の事『虫』って言わなかったか? そしてそれをお前は疑問にも思わなかったよな?」
「さて、じゃあ次は歩が質問する番ですか。何かあります?」
「俺の事をクソ虫という件について」
「セラ、回答どうぞ」
「例えばですが、ゴキブリは別名『油虫』と言いますよね?」
「そうですね」
「そういうことです」
「おい、つまりクソ虫は俺の別名ってことか?」
「え、いえ私の中では正式名称です」
「相川歩は『油虫』っすか!?」
「じゃあ次いきましょうか」
「待てよオイ!」
「歩、安心して下さい」
「あん?」
「僕はちゃんと歩の正式名称を『相川歩』と認識してますから」
「あ、ありがとう……って、良く考えたらそれ当たり前の事だよな?」
「じゃあ次は僕の質問いいですか?」
「聞いてよ」
いや、もうこのやりとりもう飽きましたし。
「まあ、僕にはあまり関係ない事ですが、友紀さんってどっち派なんですか?」
「オレか? まあ、シーザードレッシングか和風ドレッシングかって言われれば和風ドレッシングだな」
「いや、ドレッシングの事じゃなくてですね」
「醤油ラーメンととんこつラーメンだったら醤油ラーメンだな」
「ラーメンの好みの話しでもなく、あなたの派閥の話ですよ。ほら、あるでしょう? 革新派と保守派って」
「あー、あれか。おう、確かにあるぞ。オレが革新派でセラフィムが保守派だな。ってか、鑢は随分オレ達の内情に詳しいな?」
「まあ、昔ちょこっと」
「なんだよ『ちょこっと』って」
「禁則事項です」
「は? なんだよそれー、教えろよー」
「昔少し調べただけなんですって」
「ふーん、そっかぁ」
まあ、もう少し詳しく言うと、ユーを狙ってくる吸血忍者がうっとおしかったのでお灸を据えようと思ったから調べたんですけどね。結果的に行動に移す前にあっちから引いていったのでやってませんけど。
「さて、粗方疑問は出尽くしましたか?」
「オレ、まだ気になってることあるんだけど」
「え? 何か?」
「こいつら、誰?」
「あー、そういえば言ってませんでしたね。男の方は相川歩。僕の居候先です。で、こっちのブスッと機嫌悪そうなのがハルナさん。居候先の住民です」
「なっ、ブスッとってなんだよ!」
いや、さっきからしてるじゃないですか、ブスッと。
「あー、そういえばこの前言ってたな。ほら、ファミレス言った時」
「ええ」
「ファミレス? え、お前らそんな仲なのか?」
と、ニヨニヨ口角を上げながら訊いてきたのは歩。そのムカつく顔面に備え付けの爪楊枝を突き刺し、喉に拳を入れておきます。
「ぶげぇ!?」
「馬鹿な事を言うのはその口ですか?」
「がはっ、ごほっ」
「一緒にファミレス……これはヘルサイズ殿に報告ですね」
「ん? セラ、何か言いましたか?」
「いえ、何も」
いや、絶対に何か言いましたよ。聞こえるか聞こえないか絶妙な声量でしたけど。
「……そういえば、相川って首が刎ねられても生きてるけど何でだ?」
「ああ、歩はゾンビなんですよ。だから何やっても死にやしません。面倒な体でしょ?」
「そうか? 便利な体だと思うけどな」
「朝に極端に弱くなりますよ?」
「うげっ、それはやだな」
ですよね。朝に弱いというか、日の光に弱いんですけどね。活発的に活動出来るのは日の光が無いところだけ……まあ、夜になるんですけど。昼夜逆転生活を余儀なくされるという訳です。そんな中、学校に行く歩は素直にすごいと思います。
「いてて……とりあえず、話し合いはこれで終わりか? もう聞きたいことも何もないだろ?」
「僕は元々ありませんから大丈夫です」
「オレもだな。それより鑢、このドレッシング注文しても―――」
「セラ、このノウタリンをアームロックして下さい」
「はい」
「いだだだっ!」
「で、ハルナ。お前は大丈夫か?」
「……もう、いい。早く帰ろ?」
そう言えば、ハルナさんずっとブスッとしたままでしたね。自分の事が無視されるのが嫌なのか蚊帳の外なのが気に食わないのか……。ま、ハルナさんの事は歩に一任……という名の丸投げをしてますからね。歩の非公認ですけど。
「そうですね。解散しますか。と言っても、友紀さん以外は同じ家なんですけどね」
「そうなんだよなー。ま、しょうがねぇよ。んじゃ、鑢、また明日な」
「ええ、また明日」
因みに、お会計は各個人で済ませました。
「意外だったな」
「何がです?」
帰り道。特に話す事もないため皆無言で歩いている中、急に歩が口を開きました。
「お前に学校内に知り合いがいたことだよ。お前、基本ボッチじゃん」
「五月蠅いですよ。好きでボッチになっている訳じゃないんですよ。むしろ、ボッチになっている理由をこっちが知りたいですよ」
「(そりゃあ、黙っていれば儚げな美少女だし、どこか達観したところがあるから高嶺の花みたいな感じだからだろ。言わないけど)」
歩が何やら慈愛を含んだ目でこちらを見てきます。気持ち悪いので目潰し喰らわしておきました。
prrrrrr
「お? 誰の携帯だ? セラか?」
「いえ、私は携帯を持っていないので」
「じゃあハルナか?」
「あたしじゃない」
「俺も持ってないし……」
「あ、僕です」
「お前かよ!? ていうか携帯持ってたのかよ! メアド教えろよ!」
さりげなくメアド聞いてくる歩はマジでチャラ男ですね。と、それはそうと誰からでしょうか? あれ? 【非通知】ですか。珍しくもなんともないのですが、最近はなかったので少し驚きました。
「じゃあ、ちょっと失礼。―――もしもし?」
『よぉ、おっくん。元気してたか?』
―――ドクンッ
その声を聞いた瞬間、心臓が跳ね上がった。
ずっと聞きたかった声、しかし、聞きたくもなかった声。それが突然、日常を謳歌していた僕に降りかかった。
「……あなたは」
『お? なんだ? 久しぶり過ぎてあたしの声も忘れたか?』
忘れる筈もない。初めて僕が死にかけた相手でもあり、初めて僕が負けた相手でもあり、そして、初めて子供の僕を引き取ろうとした稀有なあの人を、誰よりも赤いあの人を忘れるわけがない。
『まあ、仕方ないか。人間は髪形で誰か判断してるって言うし。じゃあ、改めて自己紹介だ』
心は広いが気は短い。彼女は僕が名前を忘れている(と思いこんでいる)にも関わらずケラケラ笑って自己紹介した。
『哀川潤。しがいない人類最強の請負人だ。おっくんはあたしの事を潤さまと呼んでいたから、そう呼ぶように』
はい、という訳で出ました哀川潤さま。出すか出さないか悩んだ問題の彼女です。
今回、投稿時間が長引いてすみませんでした。またエタったかと心配した人々にはその心配はないとだけ言っておきます。
因みに、投稿が遅れた理由ですが、まあ、あれですよ。うん、FFXやってたんです。
すみませんごめんなさい石投げないでくださいリュック可愛いです。
まあ、そういう訳で遅れましたが、エタってはないです。これからも投稿はします。
……まあ、一番の理由はアナログパットが壊れたことなんですけどね!