これはゾンビですか?~いいえ、ただの?病弱です~   作:ハヤテ

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初めての人の感触は存外心地よいものです

 

 

「話せ、ですか。まあ、それが貴女の頼みなら言いますけど……」

 

 けど、けどですねぇ

 

「貴女、随分と策士ですね? 自分が気になっている事は何が何でも聞き出す性質(たち)ですか?」

 

 僕がそう言うと、彼女は少し、本当に少し目を見開き、メモを見せてきた。

 

『違う。そんなつもりじゃ』

 

「ああ、いえ。別に責めている訳ではありませんよ? むしろ有効な手段だと感心したのです。恩を売り、その恩は自分にとって最も有効な形で返してもらう。義理がたい人なら即座に吐くでしょう」

 

 尤も、その相手が義理や何やらを全く気にしない人だった場合は無意味ですけど。

 

『違う。私は……』

 

「で、僕が何か、出したっけ? んー、何処から説明しましょうか? 鑢朧、6歳。職業、なし。親子関係、比較的絶無、と言ったところでしょうか? 何か質問は?」

 

 彼女の筆談を遮り、僕はペラペラと自分の個人的情報を明かしていきました。今の僕に話せる事は本当にこれで全部です。それ以外、何もないのだから仕方がない。

 

 彼女は少し驚いたようですが、すかさずメモ帳を見せてきました。

 

『特にない』

 

「そうですか」

 

 でしょうね。むしろ今の回答で質問されたら僕の方が驚きですよ。質問できるようなない様でも無かったですし。

 

『ユークリウッド・ヘルサイズ』

 

「うん?」

 

『私の名前』

 

「あ、ああ、そうですか。ですが……それが?」

 

『私も一人』

 

「はぁ……?」

 

『そして 貴方も一人』

 

 彼女は何が言いたいのでしょう? 今一要領が把握できませんが……、

 

 と、そんな事を考えていると急にフワリと僕の視界が白に覆われました。

 

「は―――」

 

『寂しかった?』

 

 現状把握。どうやら彼女―――ユークリウッド・ヘルサイズが僕を抱きしめているようです。それも、かなり強く。

 しかし……なんというか、妙な感覚ですね。こう、胸というか心がポカポカするというか。いや、どこぞの綾○じゃああるまいしとか思うかもしれませんが、なんか新鮮な感じなんですよ。

 ……そういえば、この世界に転生して6年と経ちますけど、人と接したのはこれが初めてですね。まあ、今まで人目に入る事を極力避けて生きてきましたから当たり前な気がしますけど。……悪く、ないかもしれません。ですが、

 

「痛いです」

 

 前述したように、かなり強めに抱きしめられているのです。僕の体はかなり華奢というか、細いので痛いんですよ。骨に直でダメージが来るのです。

 

『辛かった?』

 

 無視ですかそうですか。心は心地よいのに体が悲鳴を上げているとはこれ如何に。

 

『君は私と一緒に住む』

 

 突き付けられたメモ用紙を凝視してしまった僕は悪くない筈。いやいやいや、この人何言っちゃってるんですか!? 初対面の僕といきなり同棲をする? この人は無防備か! 絶対に【オレオレ詐欺】とかに騙されちゃう人ですよこの人。

 とりあえず、何処までマジなのか調べねば。

 

「良いのですか?」

 

『何が?』

 

「僕は化け物ですよ? 一緒にいると危険に晒されるかもしれませんよ?」

 

 そう、僕は化け物なんですよ。能力があるから化け物という訳ではありません。病魔一億に耐えきった僕自身が化け物なのです。

 確かに、体は耐えられるでしょう。なにせ七実さんスペックですからね。耐えられるのは初めから分かっています。しかし、僕自身は七実さんではないのです。

 あの人は、その体に見合った強靭な精神力の持ち主でした。己れ目的のためならば、どんな苦難、困難にも立ち向かい、あっさりと乗り越えていく天才でした。

 ですが、僕は違います。元の世界の記憶はありませんが、恐らく凡夫だった事でしょう。決して天才ではなかった筈です。それなのに、僕は耐えきってしまった。この6年間、幾度となく血反吐を吐きました。気絶した回数など数え切れません。そんな状況にもかかわらず、僕は耐えきってしまったのです。今では偶に調子が悪くなるぐらいで、人並みの生活が出来ています。

 この際はっきり言っておきますが、病魔一億は伊達ではありません。普通の人なら一日も持たないでしょう。

 耐えきれる僕がおかしいのです。化け物ですよ

 

「もう一度聞きます。良いのですか? 僕は化け物ですよ?」

 

『私は【死を呼ぶ者】』

 

 はい?

 

『あなたは化け物 私は【死を呼ぶ者】。釣り合いが取れている』

 

「すみません、マイナス方面に傾きまくってます」

 

『それに』

 

 ここで、彼女の腕に更に力籠った。

 

『貴方は温かい。化け物じゃない、人間の証拠』

 

 不覚にも、少しグッときてしまいました。優しくされるのにされてなさすぎですね、僕。まあ、ぶっちゃけると、グッときたところでそれは恐らく自分の感情ではないのでしょう。他人の模倣ですから。ですが、そう感じたのは事実。

 

「……化け物にも、体温はありますよ」

 

『違う。体温じゃない。心の問題。心が 温かくなるでしょう?』

 

 ……ポカポカ、しますね。まるでお風呂に入ってジーンとなる様な感じです。

 

『あなたは 少し周りと違うかもしれないけど、ちゃんと人間だよ』

 

 ……あれ、おかしいですね。目の前が滲んでるんですけど。目から溢れてる水は何ですか? ああ、勿体ない。こんな事で貴重な水分を使ってしまうとは。

 

「……ぅ、っく」

 

 止まらない。何ですかコレ。しかも妙に思考が乱れています。正常に運転しません。

 

『大丈夫。これからは、私が傍にいるから』

 

「……はい」

 

 目からの謎な水分は止まらず、思考は乱れたままですが、心はポカポカしていました。

 

 

 

 

 

~ユークリウッド・ヘルサイズ~

 

 私は、何故目の前の幼児―――鑢朧にあのような提案をしたのか自分でも分からなかった。

 ただ、彼を放っておくと壊れてしまいそうで、いつか破綻してしまいそうで、人間として落ちるところまで落ちてしまいそうで、それを考えると居ても立っても居られなかった。私が人の運命を狂わす、【死を呼ぶ者】だったとしても、私は彼の傍にいなくてはならないと思った。

 

 彼を、鑢朧を一人にしてはいけない。

 

 誰かに強要された訳でもない(される筈もないが)。自分の意思でそう思った。彼をこのまま返したら、きっと取り返しのつかない事になってしまう。

 

 このまま返したら、もう会う事も無いのかもしれない。私には、全く関係のない事になるのかもしれない。だが、

 

「……ぅ、っく」

 

 コンビニの前で出会った時の様な異様な雰囲気は微塵も無かった。小さい。あまりにも小さく、今にも現実に押しつぶされそうな子供でしか無かった。

 泣いている子供を見捨てる気など、更々ない。

 

『大丈夫、これからは、私が傍にいるから』

 

「……はい」

 

 彼、朧の事を思っての提案だったのだが、受け入られた私も存外、嬉しかった。

 こうして、私と朧の共同生活は始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、

 

「あー、クソッ、何故、火竜の○玉が出ないのですか! かれこれ50匹は狩っているのですよ!? どれだけ僕は運に恵まれていないのですか!!」

 

『また出た』

 

「ユーが僕を裏切った!!」

 

『ニ個出た』

 

「ジーザス!」

 

 何故かゲームが最先端になってしまった。

 

 

 

 

 

 




お詫び。

なぜか第三話が第二話になっていたこと、深くお詫び申し上げます。この話が大三話で、先ほど修正したのが本当の第二話です。このようなミスをしてしまい、大変申し訳ございませんでした。
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