これはゾンビですか?~いいえ、ただの?病弱です~   作:ハヤテ

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初の学校が高校っていうのもどうなのでしょう?

 

 

 ユーと秘密を暴露し合った日から10年経過しました。かなり年数が経っております。まあ、光陰矢のごとしと言いますし、ユーにとっては10年などあっという間なので問題ないでしょう。僕も気にしません。

 10年たったと言っても、この10年間ずっとユーと一緒にいた訳ではありません。ユーと別れたのは4年前、つまり僕が12歳の頃です。まあ、ちょっと訳ありでしてね。下手すればユーが死ぬ可能性があったのでやむを得なく、別れたのです。具体的に何があったかは言えませんが、そうですね、ダークサイドに片足突っ込んだどころかそのままダイブしてクロールをした、とでも言っておきましょう。……後に作者が補完してくれる筈(ボソッ)。あ、因みに、ユーのは秘密ですよ? こんな事バレたら確実に怒られる。無言でジーっと見つめられながら無言の重圧を受ける。あれはもはや隊長格並の霊圧です。

 

 さて、今の僕の現状ですが、とある変態の家に居候しています。この変態との出会いを簡単に説明するのならば、ナンパされたから、でしょうね。男が男をナンパするとはもう変態確実でしょう? まあ、世間にその事を秘匿して欲しいと変態が頼みこんでくるので、条件として居候をさせてくれる事になりました。世の中、利害一致が全てですよね。

 

「朧、俺は先に学校に行ってるぞ」

 

「そうですか。……一緒に行きますか? 変態」

 

「変態じゃねぇ! ま、一緒に行くのは構わないがな」

 

 そう、僕が今居候しているのはズバリ『相川家』です。そこまで大きくない家。というか普通の一軒家。生活する上でそこまで困る事の無い安定した経済力(親はいないようですが)。素晴らしい居候先です。

 

「ほら、早く行くぞ」

 

「唯一のネックが、変態がいる事なんですよねぇ……」

 

「だから変態じゃねぇ!! あれはちょっと間違えただけだろ!」

 

「どう間違えれば僕を女と間違えるのです?」

 

「鏡見てこい」

 

 まあ、確かに僕の顔は七実さんと瓜二つですけど。

 

「そういえば、今日から学校ですけど、へん……歩には友達いるのですか?」

 

 あ、今更ですがこの変態の本名は相川歩。一軒家で一人暮らしという憎たらしいほど羨ましい生活をしている人です。普通一人暮らしと言ったらアパートでしょうに。常識的に考えて。なんですか一軒家って。リッチか、相川家はリッチなのか!! クソ、金持ちは敵です! 欲しがりません、勝つまでは!

 

「という訳で歩。いっちょイラクに単身で突撃してきて下さい」

 

「なんでそうなったんだよ!? 俺に死ねってか!?」

 

「歩がリッチな生活をしているので、ここは昔の日本に習おうかと」

 

「一番習っちゃいけない時期だろうが!」

 

 まあ、確かにそうですけどね。あ、そうです。

 

「話変わりますけど、ちょっと待っていて下さい」

 

「? 急にどうした?」

 

 歩を玄関に待たせて、僕は相川家の普通冷蔵庫の中からビールを取り出しました。そして、それをバックの中に仕舞い……。

 

「さて、行きましょうか」

 

「待て待て! なんだそのバックからはみ出てるのは!? 酒か? それ酒だろ!」

 

「ビールですけど?」

 

「普通に言いやがった!? いや、なんでそんな当たり前の事みたいに言うんだよ?」

 

「お酒の事ですか? ああ、僕の友人というか恩人? まあ、そんな感じの人がいるんですよね。かれこれ2年ぐらい会っていませんでしたからね。プライベートで渡そうかと」

 

「……まあ、プライベートならいいか。その人、酒豪なのか?」

 

「かなりの飲んだくれです。体の8割は酒で出来ていると豪語していました」

 

「そういうのって、普通他人が言うんじゃないか?」

 

「自他共に認める完璧な飲んだくれです」

 

「嫌な飲んだくれだな」

 

 根は良い人なんですけどね。目的と娯楽のためなら世界中の人の命が埃みたいに軽くなる様な人ですけど。あれ? そういうのは世間一般的に外道って言うのではないでしょうか? という事は、僕の友人は外道という事ですか? まあ、僕自身も外道ですし、類は友を呼ぶ、略して類友という事なのでしょう。

 

「さて、行きましょうか。流石に入学式を遅刻するのは不味い」

 

「同感だ」

 

 

 

 

 

 クラス決め。ここに本人の運やら意思やらが混じる事は一切なく、唯一混じるとすればそれは本人の学力である。一説では、学年全体がほとんど同じようなレベルになるようにしているらしい。まあ、特殊な学校はこのクラスは下でこのクラスが上、という風にするらしいですけど。この『創遊学園』は正しく普通の学校ですので、そういう事はありません。普通に分けられます。によって……、

 

「あれま、別れちゃいましたね」

 

「まあ、だろうな。うちのクラスには平松がいるし」

 

平松? 誰やねんそれ。

 

「ああ、朧は知らないか。俺の幼馴染だよ。まあ、あんまり喋った事も無いが」

 

「そうですか。僕のクラスには……ん? ああ、下村がいますね」

 

 あの冥界人はこんなところで何をやっているのでしょう? 地球での生活をエンジョイしているのでしょうか?

 

「知り合いか?」

 

「本当にちょっとしたですよ? 過去に2・3言葉を交えただけですから」

 

「その2・3の会話で相手の名前を覚えてたお前に驚きだよ」

 

「歩のド低能な脳みそと一緒にしないでください」

 

「喧嘩を売っていると思って良いか?」

 

「歩に売るぐらいならそこら辺の不良に売ります」

 

「何危ない事言ってんの!? 不良に売るぐらいなら俺に売れ!」

 

「遂にMに開花しましたか。どんどん変態が進行していきますね」

 

 今のでMが追加されました。因みに、今の歩はMを合わせて、ロリコン、ゲイ、助平というのがあります。

 

「……もう警察に行った方が良いんじゃないですか?」

 

「何深刻そうな顔で言ってるんだよ! 俺は普通だ!」

 

「そういう事にしておきましょうか。じゃ、僕は自分のクラスに向かいますね」

 

「何だこの仕方ない雰囲気。まあいい。帰りはどうする?」

 

「用事があるので僕は残っていきます。歩は?」

 

「俺は普通に帰る。ああ、そうだ」

 

 何でしょう? いい加減教室に行かないと遅れそうなんですけど。

 

「最近、この辺りで連続殺人が起こっているから気を付けろよ。お前がやられるとは思わんが」

 

「何を根拠に僕が大丈夫だと?」

 

 歩相手に一回も暴力を振るった覚えはないのですけど。意外かもしれませんが。

 

「なんとなくだ」

 

「なんとなくで人の安否を断定しないで下さいよ。まあ、やばくなったら逃げますよ」

 

 『普通の』殺人鬼なら逃げますけど、ちょっと頭の螺子が弾け飛んでいる殺人鬼はその場で沈めますけどね。普通の殺人鬼なら直に捕まるでしょうし。まあ、捕まるまでの間結構な数の被害者が出そうですけど、そこは日本警察の頑張り所でしょう。僕と歩に被害がいかない限り、心底どうでもよろしい。

 

「そうか。ま、気を付けろよ」

 

「はいはい」

 

 

 

 

 

 教室に着くと、既に結構な人がいました。中には同じ中学の人もいるのか笑い声が聞こえてきます。中学に行っていない僕には勿論そんな友達いません。

 さて、僕の席はかなり後ろの辺りです。具体的に言うと、窓際一番後ろから2番目。もっと分かりやすく言うと、キ○ンと同じ席です。後ろは涼宮さんみたいなぶっ飛びキャラじゃないことを切に願います。

 

「お、お前がオレの前の席か! オレは吉田友紀! これからよろしくな!!」

 

 ぶっ飛びキャラではありませんけど、元気キャラが来ましたね。元気キャラもどちらかというと苦手なんですけど。僕は、ユーとか歩みたいに会話しなくても生活する上で差し障りがない人の方が付き合いやすいんです。特にユー。ああ、ユーとの生活が懐かしい。今は仕事とかであまりやっている時間が無いのですが、居間でゴロゴロゲームしていた頃が懐かしい。今頃ユーは何をしているのでしょう? ミラボ○アスをソロ狩り出来るようになってますよきっと。僕はレア素材集めるのに四苦八苦している間に、ユーは余裕でG級キリ○防具作ってましたもん。その時の僕はまだG級のバサルモ○防具だったのに。

 

「ど、どうした? 何か涙目になってるぞ?」

 

「ちょっと過去の記憶が蘇りましてね・・・。大丈夫、もう収まりました」

 

「そうか?」

 

 この人、初対面の人の心配をするなんて案外良い人なのかもしれません。……が、んー、残念。本当に残念ですね。この人、人外でしょう?

 僕の体質は少々特殊で、人間かそうではないかを感じ取れるのです。まあ、男女が異性に感じる情欲と似たようなものです。あくまで『似ている』だけで、中身は違いますけどね。

 

「ええ、本当に大丈夫です。……あ、自己紹介がまだでしたね。僕は鑢朧と申します。同じクラス且つ前後の席という事で、これからどうぞよろしくお願いします。あ、因みに、敬語は素ですので気にしないでください」

 

「ヤスリオボロ? どういう字を書くんだ?」

 

「ああ……こう書くんです」

 

「うげっ」

 

 おい、人の名前を見て『うげっ』とは何ですか。確かに自分の戸籍を作る時に市役所の人に似たような反応されましたけれども。あ、戸籍は勿論偽物です。親いませんし、親代わりになってくれるような心優しい知り合いもいませんし。自分から率先してなってくれるという人はいるにはいたのですが、僕の方から断りました。何が嬉しくてあんな化け物と一緒の戸籍に入らればならん。しかも、苗字がもれなく『鑢』から『哀川』に変わるおまけ付き。死んでも嫌だわ。あの人は家族とかそんなんじゃないんですよ。

 

 

「『うげっ』とはなんですか」

 

「はは、悪い悪い。オレ、バカだからさ。こういう難しい漢字とか見ただけで頭痛くなってくるんだ」

 

「ああ、成程。まあ、自分でも難しいとは自覚しております。ホント、こんな名前を付けるなんて何考えてるんでしょうね? うちの親は」

 

 尤も、名前の漢字は僕が自作しましたし、苗字に至っては自分で勝手に付けただけです。によって、こんな合計画数が多い名前になったのは僕の所為なのですけどね。

 まあ、今では結構便利なんですけどね。だって僕の苗字と名前、パッと見なんと書かれているか分からないではありませんか。仕事とかで名前バレは不味いんですよ。便利便利。

 

「ホントだぜ! オレなんかさ……」

 

「? 吉田さんは普通の名前では?」

 

「!? あ、い、今の無し!」

 

 ……成程、頭が弱いのは本当みたいですね。というか、今の会話だけで『吉田友紀』という名前が偽名である事がバレましたね。まあ、それがどうした、ですけど。

 

 

 

 

 

 その後、吉田さんと他愛のない話をし、時間となったので入学式に出て、校長の無駄に長い話を聞き流し、クラスに戻り皆それぞれ無難な自己紹介をして下校を始めました。

 そんな中、僕は玄関に向かう生徒とは逆方向に向かっていました。目的地は理科室。確か理科の担当だった筈ですので、そこにいるでしょう。まあ、この学校に入学すると言ってあるので、確実にいると思いますけど。酒が付けば尚更ですね。

 

 理科室に着き、ドアの前で少し深呼吸。久しぶりに会うので少し緊張します。

 

「失礼します。クリス、居ます「遅いっ!」みゃっ!?」

 

 ドアを開けた瞬間ヤカンが飛んできて、それが見事僕の額にクリーンヒットしました。普通に痛いです。何の捻りも無くただ純粋に痛いです。あ、少し涙が出てきました。

 

「~~~っ! 痛いじゃないですか!?」

 

「朧が遅いのがいけないの!」

 

 そのヤカンを投げた人は理科室の備品であるガスバーナーと七輪でスルメを焼いてクチャクチャしていました。おっさんがやるのにふさわしいその仕草をしているのは、白色のゴスロリを着用したそこら辺にいる美少女が霞んで見える程の美少女です。なんというミスマッチ。

 この少女の名前はクリス。この学校で教師をやっています。まあ、こんな小さくて明らかに労働基準法に抵触しそうな危ない橋は渡っていません。

 クリスは少し訳ありで、酔っている状態でないとこの元の美少女の姿になれないのです。普段は無個性なおっさんの姿をしています。

 

「仕方がないでしょう? 入学したばかりなので、教師とかの話がエライ長いんですよ」

 

「ま、確かにそうだね。……で、例の物は?」

 

「あー、はいはい。どうぞ」

 

 ビールをポイッとバックから出してクリスに投げる。

 

「わーい! 朧愛してるー!」

 

「はいはい」

 

 そのままその怪力でメキョッとビンの蓋を開け、グピグピ酒を煽り始めるクリス。実に教育に悪い絵になってますね。

 

「ビールってそんなに美味しいですか?」

 

「プハァ! ん? 美味しいよ。朧も飲む?」

 

 コテンと首をかしげながらビールを渡してくるクリス。しかし、その表情は薄らと笑みを浮かべています。この人……!

 

「僕がビール嫌いなの知っていて言ってますよね、それ」

 

「きゃははは! バレた?」

 

「むしろ何故バレないと思ったのです? 僕は果実酒とかの方が好きなんですよ。ワインとか」

 

「クリスあれ嫌い。お酒はもっと豪快に飲むべきだよ! イッキイッキ! みたいな?」

 

 アル中になって死ぬでしょうが。というか、本当に考え方がおっさんですね。残念美少女ってこういう事を言うのだと思います。

 

「ちびちび飲むのも良いものですよ?」

 

「豪快に一気飲みするのが良いんだよ!」

 

「……では、高級酒も一気飲みすると?」

 

 それは勿体ないというものでしょう。

 

「それはそれ、これはこれだよ」

 

 そういうものなのでしょうか? まあ、僕は成人していませんしそこのところの機微はよく分かりません。

 

「まあいいです。僕にもスルメ、頂けます?」

 

「いいよ」

 

 ん、と焼けたスルメを渡してくるクリス。それを受け取り、口に含む。

 それからは特に会話も無く、クリスはお酒を飲み、僕はその様子を眺めながらシャッシャッと苦無などの暗器を研いでいました。

 

「うみゅ~」

 

「酔いました?」

 

「それは元からだよ~」

 

 そういえば僕、クリスの素面を見た事がありませんね。ん? それ、どこぞの酒呑童子とキャラ被ってませんか?

 

「でさ~、朧~」

 

「何ですか?」

 

「究極の選択でさ~、もし朧が死ぬか、朧の大切な人が死ぬか選べって言われたらどうする?」

 

 ああ、これは泥酔状態ですね。こんな訳の分からない質問をしてくるとは。まあ、答えなかったらもっと五月蠅いので素直に答えますけど。

 

「……まあ、そりゃあ、僕が死にますよ」

 

「なんで?」

 

「なんでって、それ以外に選択肢があります?」

 

「大切な人が死ねばいいんじゃないかな?」

 

「……前に一度言いましたよね? 僕の命は、他の人に比べて軽いんですよ。なにせ僕は―――」

 

「それ以上言ったらクリス怒っちゃうよ? 全く、初めて会った時から変わってないんだから……」

 

 変わっていない、か……。まあ、そうなんでしょうね。

 

「駄目だよ~? そんな自分を軽く見ちゃ。クリスだって、世界が破壊されるか自分が死ぬかで究極の選択されたら迷わず世界が破壊される方を選ぶよ? クリスを見習えとは言わないけど、少なくとも2割ぐらいは見習ってほしいよ」

 

「と言われましてもねぇ……僕が僕自身に価値を見いだせないので無理っすよ」

 

「駄目駄目じゃん」

 

「駄目駄目ですよ」

 

 でも、どうしようも無くないですか? 流石に自分から進んで死のうとかは思いませんけど、どうしても他の人と比べると自分の命が軽くなってしまうのですよね。僕自身が、そう強く認識してしまっているのでどうしようもありません。

 

 

 

 

 

「やだー! もっとお酒飲むのー!!」

 

「いや、クリスは飲んでいても良いのですよ? ですが、僕は歩の家に帰らねばならないんですよ」

 

「やー!!」

 

 クリスとの重いのだか軽いのだかよく分からない会話を終え、普通の雑談をしていたらいい感じの時間になったので(夜9時ごろ)帰ろうとしたところ、何故かクリスがぐずって帰してくれません。どうしましょう?

 

「だから、僕がいなくても酒は飲めるではありませんか」

 

「朧が一緒にいるとお酒が美味しいの!」

 

「なんで!?」

 

 僕にお酒を美味しくさせる能力などありませんよ!?

 

「なんて言うの? アロマセラピーみたいな?」

 

「意味が分かりません。という訳で帰る」

 

「待って~!!」

 

 結局、帰るまでに30分ぐらい掛かってしまいました。最後にとんだ災難です。

 

 

 

 

 

 




~NGシーン~

「ま、確かにそうだね。・・・で、例の物は?」

「あー、はいはい。どうぞ」

「わーい! 朧愛してるー! ・・・ぶえっ!?」

「!? な、なんです?」

「けふっ、けふっ、お、朧君? これは何かな?」

「何って・・・エタノール?」

「なんてもの渡してくれとるんじゃ!!」
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